アイピーディ軟膏の奏効例(ケース4のその後)
ケース4の方は、クロフィブラート無効、ロシグリタゾン軟膏無効、食物制限(穀物)無効、の方です。アイピーディ軟膏が効いたようなので、写真経過の報告です。
下写真の上は初診時、下は白色ワセリン外用2週間後です(二重盲験)。
下写真の上は初診時、下は白色ワセリン外用2週間後です(二重盲験)。
下写真の上はクロフィブラート外用3週間後、下は6週間後です。3週間後の判定として「奏功せず」でしたが、この方は最初のもの(ワセリン)と次のクロフィブラート軟膏との違いを言い当て、「クロフィブラートは若干効くような気がする」とのことであったので、さらに継続して6週間試用してもらいました。しかし6週後の判定としても「奏功せず」でした。
次にロシグリタゾン軟膏を試みました。下写真の上はロシグリタゾン軟膏2週間外用後です。肘の部分は若干効いているように見えなくもないですが、全体としてはむしろ、季節の影響もあるのか(このとき10月はじめ)、皮疹は拡大傾向でした。
軟膏はいったん中断し、成人アトピーでときどき「隠れアレルゲン」として働いていることのある、穀物類を控え、肉食で二週間過ごしてもらいました。下写真の下が2週間後です。むしろ軽度悪化した感じです。このとき11月初めで、直前のロシグリタゾンが実は効いていたとか、食事制限がよくなかったというよりは、季節的な悪化と考えます。
軟膏はいったん中断し、成人アトピーでときどき「隠れアレルゲン」として働いていることのある、穀物類を控え、肉食で二週間過ごしてもらいました。下写真の下が2週間後です。むしろ軽度悪化した感じです。このとき11月初めで、直前のロシグリタゾンが実は効いていたとか、食事制限がよくなかったというよりは、季節的な悪化と考えます。
次に、アイピーディ軟膏を試用しました。これは、本人的にも「効いた」という実感があったようで、2日目くらいでそう感じたそうです。下写真は2週間後です。全身的に赤みや浸潤が退いて、色素沈着だけになってきています。
この方の場合、アイピーディ軟膏が効きそうなので、もう2週間外用を続けてもらいます。そのあと、休薬して、再燃があるなら、中止後何日で再燃するか?を確認し、その後数か月単位で外用→休薬・リバウンドの有無確認、を繰り返しながら、一年くらい経過を見ようと考えています。
また、アイピーディの内服の経験は無いようですが、飲んでみて眠気など来ないようであれば、内服も併用するといいのかもしれません。
アイピーディ軟膏は、ほかにもう一人、今回の20名以外で、クロフィブラート無効・穀物制限有効であった患者(国立名古屋勤務時代から診ていて、現在もなお美容クリニックのお客さんとして通っていらっしゃる方です)にも、試用してもらったところ、はっきりと皮疹が抑えられました。
ですから、以前記した通り(→こちら)、クロフィブラート無効なケースで、有効かもしれません。
こういったタマネギの皮を一枚一枚剥いていくような考え方は、やはり以前記しましたが(→こちら)、多因子疾患に対する戦略として臨床的な意味で重要です。ある治療法で効かない例があったとき、次に何を行えばいいか?を考え続けていけば、その医者自身のSPECとしての「治癒率」はどんどん上がっていきます。
昔から不思議に感じているのですが、ある一つの「治療法」についての有効性は検討されることが多いのですが、複数の治療法を総合した場合の有効性や有意差というものは、あまり言及されません。
たとえば、Aという治療法があって、10人に一人が有効であったとします。20人で二重盲験試験を行っても、有意差は出ないでしょう。するとAという治療法は「効かない」、ということになってしまいます。
しかし、同じく10人に一人効く治療法がB、C・・Jと10種類あった場合に、「AからJまでの何れかで効くか、効かないか」、について検定すれば、当然有意差は出ます。
アトピー性皮膚炎が多因子疾患である、というのは、今回私がクロフィブラートの試験の患者20名を解説しているのをご覧いただければ、ご理解いただけるでしょう。多因子疾患への臨床的対応は、タマネギの皮むき方式しかないのです。
昔「先生の『脱ステロイド療法』の治癒率は何%ですか?」とときどき聞かれましたが、こんなナンセンスな質問はありません。そもそも脱「ステロイド療法」は、治療法ではありません。多因子疾患と認識して取り組んでいる、という意思表示以外の意味はないです。
当然ですが、今回の20名にしても、脱ステロイド療法としての治癒率ではなく、私個人という医療職人のSPECとして100%を目指すわけです。そこにステロイドも脱ステロイドもありません。黒い猫だろうが白い猫だろうが、使える猫なら何でもつかいます。
ステロイド外用剤だけでは100%にならないから、脱ステロイドというか、こういう非ステロイドの取り組みや、依存からの脱却指導が入るわけです。
2012.11.18
また、アイピーディの内服の経験は無いようですが、飲んでみて眠気など来ないようであれば、内服も併用するといいのかもしれません。
アイピーディ軟膏は、ほかにもう一人、今回の20名以外で、クロフィブラート無効・穀物制限有効であった患者(国立名古屋勤務時代から診ていて、現在もなお美容クリニックのお客さんとして通っていらっしゃる方です)にも、試用してもらったところ、はっきりと皮疹が抑えられました。
ですから、以前記した通り(→こちら)、クロフィブラート無効なケースで、有効かもしれません。
こういったタマネギの皮を一枚一枚剥いていくような考え方は、やはり以前記しましたが(→こちら)、多因子疾患に対する戦略として臨床的な意味で重要です。ある治療法で効かない例があったとき、次に何を行えばいいか?を考え続けていけば、その医者自身のSPECとしての「治癒率」はどんどん上がっていきます。
昔から不思議に感じているのですが、ある一つの「治療法」についての有効性は検討されることが多いのですが、複数の治療法を総合した場合の有効性や有意差というものは、あまり言及されません。
たとえば、Aという治療法があって、10人に一人が有効であったとします。20人で二重盲験試験を行っても、有意差は出ないでしょう。するとAという治療法は「効かない」、ということになってしまいます。
しかし、同じく10人に一人効く治療法がB、C・・Jと10種類あった場合に、「AからJまでの何れかで効くか、効かないか」、について検定すれば、当然有意差は出ます。
アトピー性皮膚炎が多因子疾患である、というのは、今回私がクロフィブラートの試験の患者20名を解説しているのをご覧いただければ、ご理解いただけるでしょう。多因子疾患への臨床的対応は、タマネギの皮むき方式しかないのです。
昔「先生の『脱ステロイド療法』の治癒率は何%ですか?」とときどき聞かれましたが、こんなナンセンスな質問はありません。そもそも脱「ステロイド療法」は、治療法ではありません。多因子疾患と認識して取り組んでいる、という意思表示以外の意味はないです。
当然ですが、今回の20名にしても、脱ステロイド療法としての治癒率ではなく、私個人という医療職人のSPECとして100%を目指すわけです。そこにステロイドも脱ステロイドもありません。黒い猫だろうが白い猫だろうが、使える猫なら何でもつかいます。
ステロイド外用剤だけでは100%にならないから、脱ステロイドというか、こういう非ステロイドの取り組みや、依存からの脱却指導が入るわけです。
2012.11.18