アトピー性皮膚炎の標準治療についてのインフォームドコンセント
役に立つかどうか解りませんが、こういうものを試作してみました。
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アトピー性皮膚炎の標準治療についてのインフォームドコンセント
日本皮膚科学会では、日本全国どこでも均質なアトピー性皮膚炎の保険診療が受けられるように、ガイドラインを作成して推奨しています。これを標準治療といいます。標準治療を6ヶ月間行った治療成績は以下の通りです。
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アトピー性皮膚炎の標準治療についてのインフォームドコンセント
日本皮膚科学会では、日本全国どこでも均質なアトピー性皮膚炎の保険診療が受けられるように、ガイドラインを作成して推奨しています。これを標準治療といいます。標準治療を6ヶ月間行った治療成績は以下の通りです。
黄色の囲みは「コントロール不良群」と判定します。ステロイド単独治療では19%、プロトピック併用治療では6%あります。
このように、ガイドラインに基づく標準治療は、全ての患者さんで有効と言うわけではありません。「コントロール不良群」の中には、ステロイド外用剤を使いすぎて効かなくなってしまった「ステロイド依存(Steroid addiction)」や、皮膚表面の黄色ブドウ球菌の影響による「ステロイド抵抗(Steroid resistance)」の患者さんが存在します。これらへの対処は、現在のところガイドラインに記載されておりませんので、標準治療とは別に対処法を考えなければなりません。
標準治療は、それに従っていれば、将来にわたって、ステロイド依存や抵抗性に陥らないことを保証してくれるものでもありません(現在標準治療でうまくいっている患者さんが、将来ステロイド依存や抵抗性に陥らないという保証はありません)。
標準治療は、全国どこでも同じ質の保険診療が受けられるという意味で有意義ですが、それで副作用が起きないという意味では決して無いので、注意深く皮疹や外用剤に対する反応を観察し、異常を感じたら担当医に申し出てください。
文責)「ステロイド依存2010」著者 日本皮膚科学会認定皮膚科専門医 深谷元継
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pdf版は、こちらからダウンロード・印刷できます。
今回の朝日新聞の記事や、今後展開されるであろう「標準治療キャンペーン」に対して、脱ステロイドを頑張っていらっしゃる患者さんたちの一助になれば幸いです。学校や職場で、朝日新聞の記事などを読んだ先生や同僚上司から、「標準治療を受けて治して来なさい」と言われたりしたときに説明するのに役立つのじゃないかと思います。
皮膚科医の一人として、このような混乱に患者の皆さんが置かれ続けている状況について、心からお詫び申し上げます。
科学的に正しいことは、いつかは認められます。そして、今、わたしがこうして発信している情報が、当たり前のこととして認められ、わたしのこのブログやわたしの存在自体が忘れられてしまう日が来るのを祈ります。
追記)わたしの肩書きを「ステロイド依存2010著者」でなく「鶴舞公園クリニック院長」としたバージョンも作ってみました。→こちら
こちらのほうが無難で学校や職場に見せるには使い勝手がいいかもしれません。ただし、くれぐれも申し訳ないのですが、わたしは現在アトピーや脱ステロイドの患者さんを個別に診療することは控えておりますので、そこのところは誤解なきようお願い致します(最初のバージョンに医院名を記さなかったのは、そのためです)。
追記その2)この4×4表なんですが、治療前後で「軽い」→「軽い」は判定に悩みます。「コントロール良好」とは必ずしも言えません。「コントロール不良」とも言えないですが・・(仮にこれをコントロール不良」と判定すると、治療前「軽い」であった患者はすべて「コントロール不良」になってしまう)。ですから「100%-コントロール不良な率=コントロール良好な率」とはいえないです。
また、厳格に考えると、
標準治療は、それに従っていれば、将来にわたって、ステロイド依存や抵抗性に陥らないことを保証してくれるものでもありません(現在標準治療でうまくいっている患者さんが、将来ステロイド依存や抵抗性に陥らないという保証はありません)。
標準治療は、全国どこでも同じ質の保険診療が受けられるという意味で有意義ですが、それで副作用が起きないという意味では決して無いので、注意深く皮疹や外用剤に対する反応を観察し、異常を感じたら担当医に申し出てください。
文責)「ステロイド依存2010」著者 日本皮膚科学会認定皮膚科専門医 深谷元継
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pdf版は、こちらからダウンロード・印刷できます。
今回の朝日新聞の記事や、今後展開されるであろう「標準治療キャンペーン」に対して、脱ステロイドを頑張っていらっしゃる患者さんたちの一助になれば幸いです。学校や職場で、朝日新聞の記事などを読んだ先生や同僚上司から、「標準治療を受けて治して来なさい」と言われたりしたときに説明するのに役立つのじゃないかと思います。
皮膚科医の一人として、このような混乱に患者の皆さんが置かれ続けている状況について、心からお詫び申し上げます。
科学的に正しいことは、いつかは認められます。そして、今、わたしがこうして発信している情報が、当たり前のこととして認められ、わたしのこのブログやわたしの存在自体が忘れられてしまう日が来るのを祈ります。
追記)わたしの肩書きを「ステロイド依存2010著者」でなく「鶴舞公園クリニック院長」としたバージョンも作ってみました。→こちら
こちらのほうが無難で学校や職場に見せるには使い勝手がいいかもしれません。ただし、くれぐれも申し訳ないのですが、わたしは現在アトピーや脱ステロイドの患者さんを個別に診療することは控えておりますので、そこのところは誤解なきようお願い致します(最初のバージョンに医院名を記さなかったのは、そのためです)。
追記その2)この4×4表なんですが、治療前後で「軽い」→「軽い」は判定に悩みます。「コントロール良好」とは必ずしも言えません。「コントロール不良」とも言えないですが・・(仮にこれをコントロール不良」と判定すると、治療前「軽い」であった患者はすべて「コントロール不良」になってしまう)。ですから「100%-コントロール不良な率=コントロール良好な率」とはいえないです。
また、厳格に考えると、
上図の黄色部分はすべて「コントロール不良」と言えるのではないかなあ。実際、患者が普通に「コントロール良好」と考えるのは、6ヶ月治療後少なくとも「軽い」と判断されることでしょうから、これがいちばん患者のイメージに近い判断だと思います。だとすると、ステロイド単独治療で64%、プロトピック併用で37%が「コントロール不良」です。
「ステロイドが効かなくなった」患者を選別するには、
「ステロイドが効かなくなった」患者を選別するには、
の黄色部分を取るのが一番理にかなっています。黄色部分のすべてがステロイド依存・抵抗性ではないかもしれませんが、この範囲に存在する率が高いと思います。
古江先生らは、論文中で
古江先生らは、論文中で
の黄色部分を「コントロール不良」と判断していますが、これは「中等症」以下に皮疹を抑えることを標準治療のゴールとすると考えていらっしゃるということを意味します。それなら標準治療の説明の折に、そうはっきりと話すべきでしょう。ていうか「コントロール不良なのはステロイド単独治療で19%プロトピック併用で6%」というのは「6ヶ月かけて中等症レベルまで抑えられなかった割合だ」と考えると、これは結構な数字だと思います。また、ステロイド単独使用の場合の最頻値である※の部分を、「不良」とカウントしないための恣意的な処理ではないか、という解釈も成り立ちますが、それは少々悪意に取りすぎかもしれません。
「改善以上」は、
「改善以上」は、
の黄色部分にあたりますが、ステロイド単独治療では37%、プロトピック併用で67%です。一方、以前記した玉置先生の論文では脱ステロイドでの改善以上は26例中18例(69%)です。ですから、標準治療は、脱ステロイドよりも改善率がよいとはいえません。むしろ、ステロイド外用剤を用いることは、短期的には皮疹を抑えても、長期的にはアトピー性皮膚炎が本来持つ自然治癒を阻害し、改善率を下げるということを意味しているのかもしれません。喘息モデルではありますが、動物を使った基礎研究に、この考えを支持するものがあります。喘息モデルというのは、表皮バリア破壊を介しません(気道は粘膜)ので、この自然治癒阻害のメカニズムは、存在するとしたら、依存やリバウンドとは別の、純粋に免疫系への作用なのでしょう。わたしの思いつき的な仮説ではありますが、「Th2系のサイトカインストーム」の図を用いて説明しますと、ステロイドを外用しないと、炎症は強く、図cのようにアレルゲンはdermal DCにキャプチャーされて、Th1系へのシフトが起こるが、ステロイドを外用していると図bの状態が続いていつまでもTh2系への刺激がくすぶり続ける、ということかもしれません。
2010.11.19
2010.11.19