クロフィブラート軟膏のパイロットスタディ・ケース5、6
4週間の試用を終えた5例目の方のケースレポートです。 20才台女性、ステロイド外用歴20年、中止後3ヶ月。
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【経過】ステロイド使用歴の申告は「20年」だが、実際には中学高校と調子よく、社会人になって東京で1人暮らししていた頃はアトピーであったことを忘れたくらいだった。1年ほど前から実家に帰ったところ悪化。ステロイドを使って抑えるがなかなか改善しない。この3ヶ月間はステロイドを使っていない。
【診断】依存・リバウンドではなく、通常の成人再発型のアトピー性皮膚炎。
【使用した軟膏】
0 week →2 weeksクロフィブラート入り軟膏25g
2 weeks →4 weeksクロフィブラート入り軟膏25g
【VAS判定】
患者側 0 week : 60、 2 week : 70、 4 week : 60
医師側 0 week :30、 2 week : 30、 4 week : 20
【総合判定】
不変(クロフィブラート奏効ぜす)
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写真の経過は下のようです。
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【経過】ステロイド使用歴の申告は「20年」だが、実際には中学高校と調子よく、社会人になって東京で1人暮らししていた頃はアトピーであったことを忘れたくらいだった。1年ほど前から実家に帰ったところ悪化。ステロイドを使って抑えるがなかなか改善しない。この3ヶ月間はステロイドを使っていない。
【診断】依存・リバウンドではなく、通常の成人再発型のアトピー性皮膚炎。
【使用した軟膏】
0 week →2 weeksクロフィブラート入り軟膏25g
2 weeks →4 weeksクロフィブラート入り軟膏25g
【VAS判定】
患者側 0 week : 60、 2 week : 70、 4 week : 60
医師側 0 week :30、 2 week : 30、 4 week : 20
【総合判定】
不変(クロフィブラート奏効ぜす)
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写真の経過は下のようです。
この方も、ケース4の男性(→こちら)と同じく、成人再発型のアトピー性皮膚炎で、ステロイド歴もあまり無く、皮疹も肘や首など擦過部を中心とした、古典的なものです。
この方の皮疹的な特徴は、下の写真のようなにきび様のものがところどころ(特に顔)に出来るという点で、皮膚科でも「にきびではないか」と言われるそうですが、痒みをともなっており、にきびではなく丘疹様の湿疹です。これも、とくにステロイド皮膚症やリバウンドが関係したものではなく、通常のアトピー性皮膚炎の皮疹のバリエーションの範囲内です。
この方の皮疹的な特徴は、下の写真のようなにきび様のものがところどころ(特に顔)に出来るという点で、皮膚科でも「にきびではないか」と言われるそうですが、痒みをともなっており、にきびではなく丘疹様の湿疹です。これも、とくにステロイド皮膚症やリバウンドが関係したものではなく、通常のアトピー性皮膚炎の皮疹のバリエーションの範囲内です。
ここの個所を見ると、4週間かけてゆっくりと湿疹が退いた(クロフィブラートが効いた?)ようにも見えます。しかし、ゆっくりすぎますから、単に自然経過で治まっただけかもしれません。一応0→2週の判定としては、不変(クロフィブラート無効)です。
この方の場合、東京で1人暮らしをしているときは調子がよく、田舎に帰ってから再燃したので、何か環境系の悪化因子か?とも考えられます。
また、「昔は卵アレルギーがあったが、食べられるようになった」とのことなので、「隠れアレルゲン」が関与した食物アレルギーの可能性もあります。しかし、卵については、実家に帰ってアトピーが出るようになってからは、この一年ほどは避けているとのことなので、卵ではなさそうです。
問診していてひとつ浮かび上がってきたのは「お米」です。東京でひとり暮らししているときは、自炊もせず、ご飯をあまり食べませんでした。実家に帰ってきてから、食生活の変化と言えば、お米をよく食べるようになった、という点でした。
それで、1ヶ月くらい「お米断ち」をしてみることを勧めました。隠れアレルゲンの検索は、候補となる食材を、一定期間(1ヶ月くらい)断って、その後で食べてみて、悪化するかどうか?で判定します。
ここで注意すべきは、お米を断ってもすぐには改善を感じないであろう点です。いったん出てしまった湿疹は、原因から回避されても速やかには退きません。ゆっくりと退きます。
お米断ちのあと、ご飯を一杯食べてみると、もしもそれが原因であれば、悪化は速やかに起きるはずです。負荷時のほうがわかりやすいのです。
また、この方は、私に、ステロイド依存やリバウンドではなさそうだと言われたことで、精神的に救われた気持ちになったそうで、それならば、ステロイド軟膏を使いたいが、ついては、安全な使い方を教えて欲しい、とのことでした。
いわゆるリアクティブ治療(→こちら)
が良いのではないかと考えます。
この方の場合、東京で1人暮らしをしているときは調子がよく、田舎に帰ってから再燃したので、何か環境系の悪化因子か?とも考えられます。
また、「昔は卵アレルギーがあったが、食べられるようになった」とのことなので、「隠れアレルゲン」が関与した食物アレルギーの可能性もあります。しかし、卵については、実家に帰ってアトピーが出るようになってからは、この一年ほどは避けているとのことなので、卵ではなさそうです。
問診していてひとつ浮かび上がってきたのは「お米」です。東京でひとり暮らししているときは、自炊もせず、ご飯をあまり食べませんでした。実家に帰ってきてから、食生活の変化と言えば、お米をよく食べるようになった、という点でした。
それで、1ヶ月くらい「お米断ち」をしてみることを勧めました。隠れアレルゲンの検索は、候補となる食材を、一定期間(1ヶ月くらい)断って、その後で食べてみて、悪化するかどうか?で判定します。
ここで注意すべきは、お米を断ってもすぐには改善を感じないであろう点です。いったん出てしまった湿疹は、原因から回避されても速やかには退きません。ゆっくりと退きます。
お米断ちのあと、ご飯を一杯食べてみると、もしもそれが原因であれば、悪化は速やかに起きるはずです。負荷時のほうがわかりやすいのです。
また、この方は、私に、ステロイド依存やリバウンドではなさそうだと言われたことで、精神的に救われた気持ちになったそうで、それならば、ステロイド軟膏を使いたいが、ついては、安全な使い方を教えて欲しい、とのことでした。
いわゆるリアクティブ治療(→こちら)
が良いのではないかと考えます。
プロアクティブ治療でもいいのですが、週二回皮疹を生じてないところにも外用する、という点に抵抗がある方は多いだろうし、何よりもプロアクティブ治療だと、ステロイド中止時期が無くなってしまいます(延々と外用し続けることになる)。
寛解導入後、一年間に限りプロアクティブ治療(週二回外用療法)、一年後からはリアクティブ治療、というのが、理論的には、再燃も少なくてベストでしょう。
標準治療では、アプローチ1でも、ステロイド外用量が過剰だと私は考えます。過剰即依存・リバウンドではありませんが、少なくて済むものをわざわざ多量に使う必要はありません。
具体的には、「毎日1回、湿疹の出ているところに外用し、ある程度落ち着いてきたら中止。通常、しばらくはぶり返しが無いだろうから、外用を中止し、再燃があったら、そのときにまた1日1回外用し、良くなったら中止」(=リアクティブ治療)です。いちばん普通で解りやすい外用法です。
問題は、ステロイドを外用しても治まらない、あるいは、外用中止するとすぐに再燃悪化してくるような場合で、この場合には、(1)悪化要因を探して排除、(2)依存・抵抗性に陥った可能性、を考えます。彼女の場合は、(2)は考えなくてもよいので、(1)の対処です。ぼちぼちとやればいいでしょう。
彼女は、ステロイドを使いたいが、できれは私に処方してほしい、との希望だったので、おみやげにロコイド軟膏とフルメタ軟膏を一本ずつ差し上げました。私が処方したステロイドなら安心して外用できそうだからだそうです。久しぶりにその言葉を聞きました。昔、私の外来で、ステロイドの軟膏の処方を受けた患者の多くが、同じことを言いました。
やはり、ステロイドの依存・リバウンド・抵抗性といった現象を認識して、これを通常のアトピー性皮膚炎と鑑別しようとする姿勢こそが、患者の側から見て、安心してステロイドの処方を受けることにつながるのだろうと、私は感じます。
~~~~~~~~~~
もうお1人(ケース6)、20台女性、ステロイド外用歴は「7才から12才まで。および成人してからは1~2年に一度、1週間くらい外用する」という方です。
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【経過】皮疹は、顔(両上まぶた)および躯幹。上まぶたは3ヶ月くらい前から、躯幹は2週間ほど前から。
【診断】依存・リバウンドではなく、通常の成人再発型のアトピー性皮膚炎。
【使用した軟膏】0 week →2 weeksクロフィブラート入り軟膏15g
【VAS判定】患者側 0 week : 60、 2 week : 50医師側 0 week :7、 2 week : 5
【総合判定】改善(クロフィブラート奏効)
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この方は、残念ですが、4週間後は都合で来院できませんでした。電話にて「その後も調子は良い」とのことでした。0→2週の判定のみで、ひょっとしたら、自然経過を見ているだけかもしれませんが、治験の結果としては「改善」です。
寛解導入後、一年間に限りプロアクティブ治療(週二回外用療法)、一年後からはリアクティブ治療、というのが、理論的には、再燃も少なくてベストでしょう。
標準治療では、アプローチ1でも、ステロイド外用量が過剰だと私は考えます。過剰即依存・リバウンドではありませんが、少なくて済むものをわざわざ多量に使う必要はありません。
具体的には、「毎日1回、湿疹の出ているところに外用し、ある程度落ち着いてきたら中止。通常、しばらくはぶり返しが無いだろうから、外用を中止し、再燃があったら、そのときにまた1日1回外用し、良くなったら中止」(=リアクティブ治療)です。いちばん普通で解りやすい外用法です。
問題は、ステロイドを外用しても治まらない、あるいは、外用中止するとすぐに再燃悪化してくるような場合で、この場合には、(1)悪化要因を探して排除、(2)依存・抵抗性に陥った可能性、を考えます。彼女の場合は、(2)は考えなくてもよいので、(1)の対処です。ぼちぼちとやればいいでしょう。
彼女は、ステロイドを使いたいが、できれは私に処方してほしい、との希望だったので、おみやげにロコイド軟膏とフルメタ軟膏を一本ずつ差し上げました。私が処方したステロイドなら安心して外用できそうだからだそうです。久しぶりにその言葉を聞きました。昔、私の外来で、ステロイドの軟膏の処方を受けた患者の多くが、同じことを言いました。
やはり、ステロイドの依存・リバウンド・抵抗性といった現象を認識して、これを通常のアトピー性皮膚炎と鑑別しようとする姿勢こそが、患者の側から見て、安心してステロイドの処方を受けることにつながるのだろうと、私は感じます。
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もうお1人(ケース6)、20台女性、ステロイド外用歴は「7才から12才まで。および成人してからは1~2年に一度、1週間くらい外用する」という方です。
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【経過】皮疹は、顔(両上まぶた)および躯幹。上まぶたは3ヶ月くらい前から、躯幹は2週間ほど前から。
【診断】依存・リバウンドではなく、通常の成人再発型のアトピー性皮膚炎。
【使用した軟膏】0 week →2 weeksクロフィブラート入り軟膏15g
【VAS判定】患者側 0 week : 60、 2 week : 50医師側 0 week :7、 2 week : 5
【総合判定】改善(クロフィブラート奏効)
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この方は、残念ですが、4週間後は都合で来院できませんでした。電話にて「その後も調子は良い」とのことでした。0→2週の判定のみで、ひょっとしたら、自然経過を見ているだけかもしれませんが、治験の結果としては「改善」です。
現時点(n=6)のまとめは下記になります。
(1) 0週→2週(二重盲験)
白色ワセリン 有効 0 無効(不変) 3
クロフィブラート軟膏 有効 2 無効(不変) 1
(2) 0週→2週が白色ワセリンで無効であったうち、2→4週(クロフィブラート軟膏)で有効であったもの
3例中1例(有効率1/3)
2012.08.27
(1) 0週→2週(二重盲験)
白色ワセリン 有効 0 無効(不変) 3
クロフィブラート軟膏 有効 2 無効(不変) 1
(2) 0週→2週が白色ワセリンで無効であったうち、2→4週(クロフィブラート軟膏)で有効であったもの
3例中1例(有効率1/3)
2012.08.27