クロフィブラート軟膏のパイロットスタディ・ケース7
4週間の試用を終えた7例目の方のケースレポートです。 30才台男性、ステロイド外用歴10年、中止後7年。
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【経過】高校の頃に発症、ステロイド外用開始。以降29才まで10年間外用。離脱時リバウンドあり、約半年で治まるが、その後も炎症は続く。季節的悪化あり(夏に悪化)。
【診断】依存・リバウンド。
【使用した軟膏】
0 week →2 weeksクロフィブラート入り軟膏110g
2 weeks →4 weeksクロフィブラート入り軟膏120g、エマルジョン120ml
【VAS判定】
患者側 0 week : 60、 2 week : 50、 4 week : 40
医師側 0 week :40、 2 week : 35、 4 week : 30
【総合判定】
クロフィブラート奏効。
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写真の経過は下のようです。
彼の場合、顔から退き始めました。
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【経過】高校の頃に発症、ステロイド外用開始。以降29才まで10年間外用。離脱時リバウンドあり、約半年で治まるが、その後も炎症は続く。季節的悪化あり(夏に悪化)。
【診断】依存・リバウンド。
【使用した軟膏】
0 week →2 weeksクロフィブラート入り軟膏110g
2 weeks →4 weeksクロフィブラート入り軟膏120g、エマルジョン120ml
【VAS判定】
患者側 0 week : 60、 2 week : 50、 4 week : 40
医師側 0 week :40、 2 week : 35、 4 week : 30
【総合判定】
クロフィブラート奏効。
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写真の経過は下のようです。
彼の場合、顔から退き始めました。
皮膚炎は手首あたりできれいな境界を作っています。この一枚を診るだけで、この方はステロイド依存(リバウンド)の方だと判ります。このような境界の形成は、古典的なアトピー性皮膚炎には、記載がありません。また、ケース3の方(→こちら)にも見られた、手の平のしわにそった独特な皮疹もみられます。
0週→2週→4週と、経時的に改善しています。
0週→2週→4週と、経時的に改善しています。
全身紅皮症の状態ですが、ゆっくりと改善しています。通常リバウンドというのは、顔→体→四肢へと広がりますが、退くときもこの順を辿ります。
この方は、離脱して7年でこの皮疹ということは、直後は、かなり大変だっただろうと察しますが、幸い仕事は続けていらっしゃるし、離脱後に結婚もなさっていらっしゃる。これは本当に立派です。誇っていいと思います。ほんとすごい。敬意を表します。
たぶん、彼の場合、外用歴が10年ですから、7年経ってまだリバウンドが治まらないとは、離脱当初は想定していなかったでしょう。私は、昔、「リバウンドというのは、どのくらいで治まりますか?」とよく聞かれたのですが、答えるべきではないと考えていました。実のところ、感覚的には、だいたい外用期間の2割くらい、たとえば10年外用なら、2年くらい、という経験的な見積もりはあったのですが、中には、この方の様に遷延する例もあります。だから、「判らない」と答えていました。
なぜかというと、だいたいこのくらいで通常は治まる、と言うと、中には「それでは、その間仕事をやめて、治療に専念しよう」と考える人も出てきます。そこまでは責任が持てません。「いつ治まるか判らない」という答えのほうが、「それでは仕事など生活・人生設計と並行して進めざるを得ない」という判断に結びつきやすいです。アトピーや脱ステロイドの場合、「治療に専念」はしないほうがいいです。辛くても大変でも、可能な限り、社会生活と並行したほうがいいです。
そのためには、ステロイドの一時的再使用も、全身投与もありだと考えます(昔は「戦略的撤退」と患者に言っていました)。ケース3(→こちら)の方で、ステロイド再使用の選択肢もありだと記したのは、そういう意味です。
しかし、この方の場合は、絶対にステロイド外用剤を再使用すべきではありません。なぜなら、10年の外用後のリバウンドがここまで遷延するということは、よほどリバウンドを起こしやすい体質(皮膚質)だと考えられるからです。社会生活を維持しているという理由もあります。せっかくここまで来て、ステロイド再使用するなんて、もったいないです。よほど、ここ一番、どうしても、という具体的な事情があれば、また話は別ですが。
彼の場合、最初の2週間がクロフィブラート軟膏でしたから、厳密には、ケース2の方(→こちら)と同じく、白色ワセリンの基剤が効いた(保湿効果)可能性を否定できません。離脱直後は、過敏性が亢進していて、何も受け付けなくても、何年か経つと、乾燥して過敏性も治まって、むしろ保湿したほうが調子がよい、という方は多いです(→こちら)。
厳密には保湿効果を鑑別すべきで、そのためには、二重盲験を「白色ワセリン」に当たるまで繰り返すのが理論的には正しいのですが、手間のかかる割りに得られるものが少ないので、一応、クロフィブラート有効例と分類して、2週間休薬を経て、一年間のクロフィブラート長期外用を試みます。それによって、リバウンドの最後のステージが治まってくれるのを、私が後押しする結果になれば、非常にラッキーなことです。
~~~~~~~~~~~~
以下、ここまで(n=7)のまとめです。
(1) 0週→2週(二重盲験)
白色ワセリン 有効 0 無効 3
クロフィブラート軟膏 有効 3 無効 1
(2) 0週→2週が白色ワセリンで無効であったうち、2→4週(クロフィブラート軟膏)で有効であったもの
3例中1例(有効率1/3)
ここまでの印象ですが、クロフィブラートというのは、効く人と効かない人が、かなりはっきり分かれるような気がします。それは、依存やリバウンドの有無とは関係なく、もともとの皮膚質というか個性によるのかなあ、と思います(あくまで印象なので、今後の症例の蓄積を待ちます)。
追記) リバウンドの期間についてですが、健常者皮膚に6週間出デルモベートを外用したあと、皮膚が回復するまでにだいたい2週間かかっています(2/6=33%、→こちら)。私の「外用期間のだいたい2割くらい」という経験的感覚と、だいたい合います。ITSANが訴えている「全ステロイド外用剤に、2週間以上の使用で、リバウンドが起きうる事を明記せよ」という主張(→こちら)は、2週間の2~3割=3~4日であり、このくらいからリバウンドが実感・負担となる目安ということだろうと理解できます。もっとも、上の方(ケース7)のように遷延するタイプもあれば、まったくリバウンドを起こさない人もいますので、個別には当てはまりませんが。
2012.09.02
たぶん、彼の場合、外用歴が10年ですから、7年経ってまだリバウンドが治まらないとは、離脱当初は想定していなかったでしょう。私は、昔、「リバウンドというのは、どのくらいで治まりますか?」とよく聞かれたのですが、答えるべきではないと考えていました。実のところ、感覚的には、だいたい外用期間の2割くらい、たとえば10年外用なら、2年くらい、という経験的な見積もりはあったのですが、中には、この方の様に遷延する例もあります。だから、「判らない」と答えていました。
なぜかというと、だいたいこのくらいで通常は治まる、と言うと、中には「それでは、その間仕事をやめて、治療に専念しよう」と考える人も出てきます。そこまでは責任が持てません。「いつ治まるか判らない」という答えのほうが、「それでは仕事など生活・人生設計と並行して進めざるを得ない」という判断に結びつきやすいです。アトピーや脱ステロイドの場合、「治療に専念」はしないほうがいいです。辛くても大変でも、可能な限り、社会生活と並行したほうがいいです。
そのためには、ステロイドの一時的再使用も、全身投与もありだと考えます(昔は「戦略的撤退」と患者に言っていました)。ケース3(→こちら)の方で、ステロイド再使用の選択肢もありだと記したのは、そういう意味です。
しかし、この方の場合は、絶対にステロイド外用剤を再使用すべきではありません。なぜなら、10年の外用後のリバウンドがここまで遷延するということは、よほどリバウンドを起こしやすい体質(皮膚質)だと考えられるからです。社会生活を維持しているという理由もあります。せっかくここまで来て、ステロイド再使用するなんて、もったいないです。よほど、ここ一番、どうしても、という具体的な事情があれば、また話は別ですが。
彼の場合、最初の2週間がクロフィブラート軟膏でしたから、厳密には、ケース2の方(→こちら)と同じく、白色ワセリンの基剤が効いた(保湿効果)可能性を否定できません。離脱直後は、過敏性が亢進していて、何も受け付けなくても、何年か経つと、乾燥して過敏性も治まって、むしろ保湿したほうが調子がよい、という方は多いです(→こちら)。
厳密には保湿効果を鑑別すべきで、そのためには、二重盲験を「白色ワセリン」に当たるまで繰り返すのが理論的には正しいのですが、手間のかかる割りに得られるものが少ないので、一応、クロフィブラート有効例と分類して、2週間休薬を経て、一年間のクロフィブラート長期外用を試みます。それによって、リバウンドの最後のステージが治まってくれるのを、私が後押しする結果になれば、非常にラッキーなことです。
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以下、ここまで(n=7)のまとめです。
(1) 0週→2週(二重盲験)
白色ワセリン 有効 0 無効 3
クロフィブラート軟膏 有効 3 無効 1
(2) 0週→2週が白色ワセリンで無効であったうち、2→4週(クロフィブラート軟膏)で有効であったもの
3例中1例(有効率1/3)
ここまでの印象ですが、クロフィブラートというのは、効く人と効かない人が、かなりはっきり分かれるような気がします。それは、依存やリバウンドの有無とは関係なく、もともとの皮膚質というか個性によるのかなあ、と思います(あくまで印象なので、今後の症例の蓄積を待ちます)。
追記) リバウンドの期間についてですが、健常者皮膚に6週間出デルモベートを外用したあと、皮膚が回復するまでにだいたい2週間かかっています(2/6=33%、→こちら)。私の「外用期間のだいたい2割くらい」という経験的感覚と、だいたい合います。ITSANが訴えている「全ステロイド外用剤に、2週間以上の使用で、リバウンドが起きうる事を明記せよ」という主張(→こちら)は、2週間の2~3割=3~4日であり、このくらいからリバウンドが実感・負担となる目安ということだろうと理解できます。もっとも、上の方(ケース7)のように遷延するタイプもあれば、まったくリバウンドを起こさない人もいますので、個別には当てはまりませんが。
2012.09.02