ケルセチン(quercetin)はインタールよりも効果が強い(+ケース20、13、3、4、14、19)
ケルセチンというのは、植物由来のフラボノイド、すなわちポリフェノールの一種で、サプリメントとして購入することが出来ます(→こちら) 。
先回記したインタール(クロモグリク酸→こちら)よりも、ケルセチンのほうが、マスト細胞からヒスタミンなどの放出を抑える力が強い、という2012年7月リリースの論文を見つけました。
(Quercetin Is More Effective than Cromolyn in Blocking Human Mast Cell Cytokine Release and Inhibits Contact Dermatitis and Photosensitivity in Humans
Zuyi Weng et al. PLoS One. 2012; 7(3): e33805)
(Quercetin Is More Effective than Cromolyn in Blocking Human Mast Cell Cytokine Release and Inhibits Contact Dermatitis and Photosensitivity in Humans
Zuyi Weng et al. PLoS One. 2012; 7(3): e33805)
これが論文中の図表で、培養マスト細胞をIgEおよび抗IgE抗体で刺激したときの、ヒスタミン遊離が、WSQ(水溶性ケルセチン)、Que(ケルセチン)、Crom(クロモグリク酸)それぞれで、どの程度抑制されるかを見ています。ヒスタミンのほか、PGD2、ロイコトリエンも同様に抑制されます。
もっとも、これと似たヒスタミン遊離抑制効果のデータは、シソの実エキスやペパーミント抽出物など、いろいろなフラボノイドで確認されているようです(→こちらやこちら)。
この論文で興味深いのは、ヒト(ニッケルアレルギー患者9人)での実験結果が報告されている点です。
あらかじめ3日間、一日1g(上のサプリメントしすると一錠500mgなので、一日2錠にあたります)服用したのち、ニッケルのパッチテストを施行すると、パッチテストの反応が抑制されました。
もっとも、これと似たヒスタミン遊離抑制効果のデータは、シソの実エキスやペパーミント抽出物など、いろいろなフラボノイドで確認されているようです(→こちらやこちら)。
この論文で興味深いのは、ヒト(ニッケルアレルギー患者9人)での実験結果が報告されている点です。
あらかじめ3日間、一日1g(上のサプリメントしすると一錠500mgなので、一日2錠にあたります)服用したのち、ニッケルのパッチテストを施行すると、パッチテストの反応が抑制されました。
なおかつ、“Moreover, any associated pruritus disappeared as did the generalized pruritus present in one patient with pre-exsiting atopic dermatitis.”(さらに、被験者の一人はアトピー性皮膚炎があったのだが、全身の痒みが無くなった)と記されています。話がうますぎるような気もしますが・・
ちなみに掲載誌はPLoS ONE(→こちら)といって、広く科学・医学分野の論文を扱う科学雑誌で、インパクトファクターは4.4です。筆頭著者のWeng ZはボストンのTufts university school of medicineの薬理学者で、パッチテスト等を施行したのは、共著者であるChristina Antoniouという皮膚科医でしょう。
ちなみに掲載誌はPLoS ONE(→こちら)といって、広く科学・医学分野の論文を扱う科学雑誌で、インパクトファクターは4.4です。筆頭著者のWeng ZはボストンのTufts university school of medicineの薬理学者で、パッチテスト等を施行したのは、共著者であるChristina Antoniouという皮膚科医でしょう。
(→こちら) |
ギリシャの大学教授です(→こちら)。かなりの皮膚科の研究業績もあります(→こちら)。
UVBによる紅斑も抑制するようです。
あらかじめWSQを1g服用しておくと、最少紅斑量(MED)の値が大きくなります。
UVBによる紅斑も抑制するようです。
あらかじめWSQを1g服用しておくと、最少紅斑量(MED)の値が大きくなります。
この論文のデータを信用するならば(論文上は、とくに疑う理由も見当たりませんが・・たかがサプリでこれだけの効果が本当にでるのか?もしそうなら、なぜこれまで注目されなかった?という疑問くらいです。)、ケルセチンの内服は、アトピー性皮膚炎の痒み対策になると同時に、ケース20(やケース17)のような、原因不明の接触皮膚炎に、ひょっとしたら、役立つかもしれません。
これは、最近送られてきたケース20の方の皮疹の画像なのですが、どう見ても私にはアトピー性皮膚炎には見えません。「アトピー性皮膚炎様」くらいなら言えます。
拡大すると、小水疱が見られ、表皮のスポンギオーシスを伴った急性の湿疹反応であろうことは解ります。この拡大像だけなら、アトピー性皮膚炎でもいいです。しかし、全身の分布がおかしいです。何かに反応している通常のアレルギー性接触皮膚炎だと考えます。
金属アレルギーのパッチテストは陰性であったそうで、ニッケルアレルギーではありません。香料の何かで陽性にでたとのことなので、洗剤や化粧品が疑わしくないとしたら、食物中の香料の何かだろうか?TARCは141で、IgEは71.4、どちらも低いです。以前一回だけTARCが高かったことがあるようですが、たぶん検査上の問題でしょう。
TARCが低ければ、「表皮性炎症」のクロフィブラートが効く可能性は薄いし、IgEが低いので、アイピーディも向きません。こういう方には、だめ元で、ケルセチン一日1g内服してみると抑えられるかもしれません。
あくまで、対症療法というか、一時しのぎですが、
クロフィブラート、ロシグリタゾン(Avandia)、アイピーディ、インタール(クロモグリク酸)、ケルセチンと紹介してきましたが、これらalternative(optional)な薬剤の使用方法を現時点でまとめると、
TARC 高値 →クロフィブラート(またはロシグリタゾン)軟膏
IgE 高値 →アイピーディ軟膏
TARC、IgE ともに低値 →インタール外用、または、ケルセチン内服
ということになろうかと思います(あくまで私の予想です。検証はこれからです)。
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ケース13のかた(→こちら)の続報です。
どうしても欠かせない用事があるとのことで、一時的にステロイドを使用しました。使用量はトータルで、ロコイド軟膏5g(顔)とフルメタ軟膏5g(体)です。用事を済ませて、ステロイドを再び中止し、クロフィブラート軟膏に切り替えました。下の写真はクロフィブラート切り替え10日後です。
金属アレルギーのパッチテストは陰性であったそうで、ニッケルアレルギーではありません。香料の何かで陽性にでたとのことなので、洗剤や化粧品が疑わしくないとしたら、食物中の香料の何かだろうか?TARCは141で、IgEは71.4、どちらも低いです。以前一回だけTARCが高かったことがあるようですが、たぶん検査上の問題でしょう。
TARCが低ければ、「表皮性炎症」のクロフィブラートが効く可能性は薄いし、IgEが低いので、アイピーディも向きません。こういう方には、だめ元で、ケルセチン一日1g内服してみると抑えられるかもしれません。
あくまで、対症療法というか、一時しのぎですが、
クロフィブラート、ロシグリタゾン(Avandia)、アイピーディ、インタール(クロモグリク酸)、ケルセチンと紹介してきましたが、これらalternative(optional)な薬剤の使用方法を現時点でまとめると、
TARC 高値 →クロフィブラート(またはロシグリタゾン)軟膏
IgE 高値 →アイピーディ軟膏
TARC、IgE ともに低値 →インタール外用、または、ケルセチン内服
ということになろうかと思います(あくまで私の予想です。検証はこれからです)。
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ケース13のかた(→こちら)の続報です。
どうしても欠かせない用事があるとのことで、一時的にステロイドを使用しました。使用量はトータルで、ロコイド軟膏5g(顔)とフルメタ軟膏5g(体)です。用事を済ませて、ステロイドを再び中止し、クロフィブラート軟膏に切り替えました。下の写真はクロフィブラート切り替え10日後です。
先回の写真(→こちら)と比べると、ずいぶん良くなっているのですが、本人的には「また少し悪くなってきた」とおっしゃっています。とにかく女性の顔の皮疹というのは、冷静な自己評価が難しいと感じます。
先回まとめたように、この方の場合、ステロイド外用剤依存歴は無いですから、本当にひどくなったときには、適宜ステロイドを外用しながら、十分な保湿(+クロフィブラート軟膏)でOKと考えます。ステロイドをたまに外用しながらの、クロフィブラート軟膏長期フォロー(一年間)を開始しました。
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ケース3の方は、遠方でリバウンド真っ盛りで、名古屋までまた来ることは難しいかもしれませんが、TARC 916、IgE 60100と、IgEが非常に高いタイプなので、アイピーディの内服が近医で処方してもらえるようなら、試してみるといいです。痒み対策に通販のケルセチンのサプリを試みるのもいいかもしれません。
ケース4の方とケース14の方は、アイピーディ軟膏を用意しておきますので、よろしかったら次回来院時お渡ししますので、試用してみてください。「説明と同意書」UPしました(→こちら)。
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ケース19の方(→こちら)から連絡があって、腕の健常皮膚に外用していた部に皮疹が出てきたそうです。
先回まとめたように、この方の場合、ステロイド外用剤依存歴は無いですから、本当にひどくなったときには、適宜ステロイドを外用しながら、十分な保湿(+クロフィブラート軟膏)でOKと考えます。ステロイドをたまに外用しながらの、クロフィブラート軟膏長期フォロー(一年間)を開始しました。
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ケース3の方は、遠方でリバウンド真っ盛りで、名古屋までまた来ることは難しいかもしれませんが、TARC 916、IgE 60100と、IgEが非常に高いタイプなので、アイピーディの内服が近医で処方してもらえるようなら、試してみるといいです。痒み対策に通販のケルセチンのサプリを試みるのもいいかもしれません。
ケース4の方とケース14の方は、アイピーディ軟膏を用意しておきますので、よろしかったら次回来院時お渡ししますので、試用してみてください。「説明と同意書」UPしました(→こちら)。
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ケース19の方(→こちら)から連絡があって、腕の健常皮膚に外用していた部に皮疹が出てきたそうです。
これは、単なる赤み(一次刺激)ではなく、丘疹成分があるので、接触皮膚炎(かぶれ)かもしれません。
顔で「改善」と判定されたのは、リスポンダーであったための改善>かぶれによる悪化、ということであったと考えます。しかし、合わないものの外用を続ければ結局は難治化につながりますから、残念ですが、クロフィブラートはあきらめましょう。
念のため、1/10濃度でオープンパッチテストを再検してもらおうかとも思います(試験に用いている濃度は、動物実験の10倍なので)。
同時に、ロシグリタゾン、EPAをオープンパッチテストしてみて、使えそうなものを探して試用を続けます。
本人から「私はIgEが高いので、アイピーディ軟膏はどうだろうか?」と質問いただいていますが、表皮炎症系のクロフィブラートでリスポンダーだと思うので、まずはロシグリタゾンあるいはEPAを試みましょう。それで駄目なら、アイピーディ軟膏試用します。
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コメント欄を通じて、私に診てもらえないか、という問い合わせをいくつか頂いているのですが、これ(20例)以上は、今の私には無理です。返信もしなくて申し訳ありませんが、20例の方々の経過報告を一年間発信していきますので、参考になさってください。
また、この20名の方々は、「クロフィブラート軟膏の試用」という、未知のリスクのある試験に応募してくださった方々だということを、忘れないでください。薬剤費用の計算などいろいろ記していますが、彼ら彼女らから費用は一切頂いていません。臨床試験の続きです。
私は、彼ら彼女らのパイオニア・ボランティア的な志に敬意を表しながら、診させて頂いています。私は今後も、病気の患者から代金を頂いて診療するという行為はしないでしょう。自分の精神・価値観を害するからです。
私もまた、自分の心身の不調をまた来たしかねないというリスクを背負いながら診ています。お金と自分の健康とを取引する気はありません。私が患者にチャージするのは、あくまで、彼ら彼女らの「志」すなわち”Good will”であり、それは、結果的に社会のため、ひろく他の患者や医師たちの参考になる情報発信につながるか?ということです。
2012.10.29
顔で「改善」と判定されたのは、リスポンダーであったための改善>かぶれによる悪化、ということであったと考えます。しかし、合わないものの外用を続ければ結局は難治化につながりますから、残念ですが、クロフィブラートはあきらめましょう。
念のため、1/10濃度でオープンパッチテストを再検してもらおうかとも思います(試験に用いている濃度は、動物実験の10倍なので)。
同時に、ロシグリタゾン、EPAをオープンパッチテストしてみて、使えそうなものを探して試用を続けます。
本人から「私はIgEが高いので、アイピーディ軟膏はどうだろうか?」と質問いただいていますが、表皮炎症系のクロフィブラートでリスポンダーだと思うので、まずはロシグリタゾンあるいはEPAを試みましょう。それで駄目なら、アイピーディ軟膏試用します。
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コメント欄を通じて、私に診てもらえないか、という問い合わせをいくつか頂いているのですが、これ(20例)以上は、今の私には無理です。返信もしなくて申し訳ありませんが、20例の方々の経過報告を一年間発信していきますので、参考になさってください。
また、この20名の方々は、「クロフィブラート軟膏の試用」という、未知のリスクのある試験に応募してくださった方々だということを、忘れないでください。薬剤費用の計算などいろいろ記していますが、彼ら彼女らから費用は一切頂いていません。臨床試験の続きです。
私は、彼ら彼女らのパイオニア・ボランティア的な志に敬意を表しながら、診させて頂いています。私は今後も、病気の患者から代金を頂いて診療するという行為はしないでしょう。自分の精神・価値観を害するからです。
私もまた、自分の心身の不調をまた来たしかねないというリスクを背負いながら診ています。お金と自分の健康とを取引する気はありません。私が患者にチャージするのは、あくまで、彼ら彼女らの「志」すなわち”Good will”であり、それは、結果的に社会のため、ひろく他の患者や医師たちの参考になる情報発信につながるか?ということです。
2012.10.29