ケース19のその後
最初に2ちゃんねるの話(→こちら)の続きです。
というコメントがありました。
私は(日本)皮膚科学会と戦っているという意識はありません。それどころか、私自身、現在も日本皮膚科学会の専門医ですし、今後も専門医更新を続けるでしょう。
私が主張しているのは、日本皮膚科学会のガイドラインには、ステロイド外用剤による依存や抵抗性の記載や警告が無いので、これを加えるべきだ、というその一点につきます。自分が専門医として所属する学会であるからこそ、内部からそういう声を上げなければならないと考えています。
「依存という言葉を使うのは語弊があるから使いたくないが近い状態はいくつか存在します。だからこそ指示した期間内は怖がらずに十分な量塗って貰わないと困るし指示した期間外自己判断で勝手に塗るのもやめてほしい。」と言う皮膚科医は、良心的かどうかは置いておいて、依存についての認識が甘いです。
ステロイド外用剤による依存は、非常に個人差があります。依存を起こさないタイプの患者では、かなりの強さや量・期間用いても、依存を起こしてきませんし、起こすタイプの患者は本当に少量短期間でも中止後リバウンドを起こします。そういうタイプの患者にとっての選択肢は、ステロイド外用剤を使わない、それしかありません。
薬物依存(注)というのはだいたいそうです。依存に陥りやすい体質の人に「オン・オフをはっきりさせて投与すれば依存しません」と言うのはナンセンスです。
(注)薬物依存には、精神的依存と身体的依存とがあります。身体的依存とは、薬物の中止によって、たとえば痙攣などの身体的離脱症状(退薬症状、禁断症状)を呈するもので、アトピー性皮膚炎におけるステロイド長期連用後のリバウンドは、身体的依存にあたります。(Weblio辞書「離脱症状」参照→こちら)
ステロイド外用剤は、精神的依存はきたさないが身体的依存を起こしうる薬剤だ、ということです。
=====
さて、ケース19(→こちらとこちら)のその後です。クロフィブラート外用(0.25%)が奏効はするが、腕にオープンパッチテストを試みたところ赤み・丘疹が出てきてしまうので、かぶれるようだ、という方です。
その後、クロフィブラート0.025%では反応がないことは確認しましたので、薄い濃度のクロフィブラート外用でも良いのですが、試みとして、エパディール(EPA)外用を行ってみました。
エパディール(EPA)外用剤というのは、まだ詳述してなかったようなので、あらためて解説します。エパディール(EPA、エイコサペンタエン酸)は、動脈硬化や高脂血症の内服薬です。これを1..8%濃度に適当な基剤(ケース19の方の場合はスクワランオイル)で薄めます。1.8%というのは、渡辺先生の文献(→こちら。EPAとDHAトータルで1.8%)にならっています。
EPA(エイコサペンタエン酸)には、クロフィブラート同様PPARリガンド作用があります。ただ、α・γどちらに作用するのかのデータが見つかりません。おそらく両方に作用するのでしょう。それで(選択性がないので)、基礎実験論文では用いられないのだと思います。
ケース19の方は、クロフィブラートが有効そうだが、かぶれのため用いにくいので、同じくPPARαリガンド作用のあるEPAを用いてみようという発想です。
外用剤の作製はいたって簡単です。エパディールはクロフィブラートと同じく油状でカプセル剤なので25G針で吸い出してやります。
私は(日本)皮膚科学会と戦っているという意識はありません。それどころか、私自身、現在も日本皮膚科学会の専門医ですし、今後も専門医更新を続けるでしょう。
私が主張しているのは、日本皮膚科学会のガイドラインには、ステロイド外用剤による依存や抵抗性の記載や警告が無いので、これを加えるべきだ、というその一点につきます。自分が専門医として所属する学会であるからこそ、内部からそういう声を上げなければならないと考えています。
「依存という言葉を使うのは語弊があるから使いたくないが近い状態はいくつか存在します。だからこそ指示した期間内は怖がらずに十分な量塗って貰わないと困るし指示した期間外自己判断で勝手に塗るのもやめてほしい。」と言う皮膚科医は、良心的かどうかは置いておいて、依存についての認識が甘いです。
ステロイド外用剤による依存は、非常に個人差があります。依存を起こさないタイプの患者では、かなりの強さや量・期間用いても、依存を起こしてきませんし、起こすタイプの患者は本当に少量短期間でも中止後リバウンドを起こします。そういうタイプの患者にとっての選択肢は、ステロイド外用剤を使わない、それしかありません。
薬物依存(注)というのはだいたいそうです。依存に陥りやすい体質の人に「オン・オフをはっきりさせて投与すれば依存しません」と言うのはナンセンスです。
(注)薬物依存には、精神的依存と身体的依存とがあります。身体的依存とは、薬物の中止によって、たとえば痙攣などの身体的離脱症状(退薬症状、禁断症状)を呈するもので、アトピー性皮膚炎におけるステロイド長期連用後のリバウンドは、身体的依存にあたります。(Weblio辞書「離脱症状」参照→こちら)
ステロイド外用剤は、精神的依存はきたさないが身体的依存を起こしうる薬剤だ、ということです。
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さて、ケース19(→こちらとこちら)のその後です。クロフィブラート外用(0.25%)が奏効はするが、腕にオープンパッチテストを試みたところ赤み・丘疹が出てきてしまうので、かぶれるようだ、という方です。
その後、クロフィブラート0.025%では反応がないことは確認しましたので、薄い濃度のクロフィブラート外用でも良いのですが、試みとして、エパディール(EPA)外用を行ってみました。
エパディール(EPA)外用剤というのは、まだ詳述してなかったようなので、あらためて解説します。エパディール(EPA、エイコサペンタエン酸)は、動脈硬化や高脂血症の内服薬です。これを1..8%濃度に適当な基剤(ケース19の方の場合はスクワランオイル)で薄めます。1.8%というのは、渡辺先生の文献(→こちら。EPAとDHAトータルで1.8%)にならっています。
EPA(エイコサペンタエン酸)には、クロフィブラート同様PPARリガンド作用があります。ただ、α・γどちらに作用するのかのデータが見つかりません。おそらく両方に作用するのでしょう。それで(選択性がないので)、基礎実験論文では用いられないのだと思います。
ケース19の方は、クロフィブラートが有効そうだが、かぶれのため用いにくいので、同じくPPARαリガンド作用のあるEPAを用いてみようという発想です。
外用剤の作製はいたって簡単です。エパディールはクロフィブラートと同じく油状でカプセル剤なので25G針で吸い出してやります。
これを1.8%になるように適当な基剤で混和するだけです。
それで、ケース19の方の経過ですが、
クロフィブラート使用前
それで、ケース19の方の経過ですが、
クロフィブラート使用前
2週間後
EPA2週間使用後
クロフィブラート使用前
2週間後
EPA2週間使用後
この方の場合、エパデールはクロフィブラートと同様あるいはそれ以上に効いてくれるようです。
血液検査上もTARC値が下がっています。
血液検査上もTARC値が下がっています。
ご本人の希望として、「アイピーディ軟膏など、いろいろ試して合うものを見つけたい」ということなので、現在は、アイピーディ軟膏を、エパディール外用剤(スクワラン基剤)に追加する形で、併用効果を確認中です。また経過報告します。
2012.12.07
2012.12.07