ステロイド外用剤を連用するとKLK6が増加して、それは表皮細胞の増殖を促す
旭川医大の先生が書かれた論文の解説です。
Important role of kallikrein 6 for the development of keratinocyte proliferative resistance to topical glucocorticoids.
Kishibe et al, Oncotarget. 2016 Jun 8
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27283773
このブログの始めのほうで、Dr. Corkのバリア破壊説について記しました(→こちらとこちら)。「ステロイド外用剤はプロテアーゼKLK7(=SCCE)の発現を促してcorneodesmosomeを破壊する。それは取りも直さず表皮バリア破壊であり、その結果外的刺激の皮膚への進入が容易になり、リバウンドや依存を引き起こす」といった話です。
その後、「ステロイドはKLK7の発現に関わっていないようだ」という論文が出て、Dr.Corkの説に疑問が生じました。ただし、直接発現はさせないものの、KLK7自体はステロイド外用によって増加しており、間接的にKLK7を増加させてバリア破壊に働くのかなあ?と考えました(→こちら)。
今回紹介する論文では、KLK6が研究されています。KLK6もまた、表皮細胞間の接着分子を破壊する酵素であり、こちらは明確にステロイド外用によって発現増加するようです。
ここからが興味深いところです。著者の岸部麻里先生は、KLK6の表皮バリア破壊ではなく、表皮細胞を増殖させる効果のほうに注目なさいました。
ステロイド外用剤連用(論文では2週間)によって、表皮のKLK6はどんどん増えていきます。岸部先生はKLK6を産生できないネズミを人工的に造り、普通のネズミと、ステロイド外用剤連用後に皮膚を比較しました。
両者共に表皮は萎縮して薄くなりましたが、普通のネズミでは、KLK6を産生できないネズミに比べて、表皮細胞の分裂増殖は活発になりました。すなわち、KLK6が増加することの意味は、ステロイドの表皮萎縮作用にあがらって、生体が表皮の厚さを維持しようとしているということではないか、これが論文の結論となっています。
まとめるとこういうことです。
Important role of kallikrein 6 for the development of keratinocyte proliferative resistance to topical glucocorticoids.
Kishibe et al, Oncotarget. 2016 Jun 8
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27283773
このブログの始めのほうで、Dr. Corkのバリア破壊説について記しました(→こちらとこちら)。「ステロイド外用剤はプロテアーゼKLK7(=SCCE)の発現を促してcorneodesmosomeを破壊する。それは取りも直さず表皮バリア破壊であり、その結果外的刺激の皮膚への進入が容易になり、リバウンドや依存を引き起こす」といった話です。
その後、「ステロイドはKLK7の発現に関わっていないようだ」という論文が出て、Dr.Corkの説に疑問が生じました。ただし、直接発現はさせないものの、KLK7自体はステロイド外用によって増加しており、間接的にKLK7を増加させてバリア破壊に働くのかなあ?と考えました(→こちら)。
今回紹介する論文では、KLK6が研究されています。KLK6もまた、表皮細胞間の接着分子を破壊する酵素であり、こちらは明確にステロイド外用によって発現増加するようです。
ここからが興味深いところです。著者の岸部麻里先生は、KLK6の表皮バリア破壊ではなく、表皮細胞を増殖させる効果のほうに注目なさいました。
ステロイド外用剤連用(論文では2週間)によって、表皮のKLK6はどんどん増えていきます。岸部先生はKLK6を産生できないネズミを人工的に造り、普通のネズミと、ステロイド外用剤連用後に皮膚を比較しました。
両者共に表皮は萎縮して薄くなりましたが、普通のネズミでは、KLK6を産生できないネズミに比べて、表皮細胞の分裂増殖は活発になりました。すなわち、KLK6が増加することの意味は、ステロイドの表皮萎縮作用にあがらって、生体が表皮の厚さを維持しようとしているということではないか、これが論文の結論となっています。
まとめるとこういうことです。
Dr.CorkはKLK7に、岸部先生はKLK6に注目しましたが、作用は似ています。岸部先生の着眼点は、ステロイド外用剤を連用中止した後に、一過性に非常に表皮が肥厚する現象の説明になります。
今回の記事は、解説でもありますが、私の考えの整理でもあります。こうして一つ一つの研究の結果をパズルのピースを並べるようにこのブログに書き込んでおくことで、少しずつアトピー性皮膚炎やステロイド依存の正体が見えてくるのではないかと思います。
岸部先生の論文の中で、KLK6を産生できなくしたネズミ(KLK6ノックアウトマウス)が出てきますが、このネズミでGrabbeの行ったような実験(→こちら)をしたら、結果はどうなるのでしょうか?もしもリバウンドが生じないのであれば、KLK6がステロイド外用後のリバウンドに関係が深そうだと言うことになって一層興味深いです。
(2016.10.4)
今回の記事は、解説でもありますが、私の考えの整理でもあります。こうして一つ一つの研究の結果をパズルのピースを並べるようにこのブログに書き込んでおくことで、少しずつアトピー性皮膚炎やステロイド依存の正体が見えてくるのではないかと思います。
岸部先生の論文の中で、KLK6を産生できなくしたネズミ(KLK6ノックアウトマウス)が出てきますが、このネズミでGrabbeの行ったような実験(→こちら)をしたら、結果はどうなるのでしょうか?もしもリバウンドが生じないのであれば、KLK6がステロイド外用後のリバウンドに関係が深そうだと言うことになって一層興味深いです。
(2016.10.4)
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