ヒアルロン酸と羊水・その2
中間分子量ヒアルロン酸が、ステロイドによる表皮の萎縮を予防する作用は、羊水と関係があることを先回少し記しました。もう少しわかりやすく解説を試みます。
Scarless wound healing(瘢痕を残さない創傷治癒)という言葉があります。形成外科の夢であり課題です。
胎児の皮膚と言うのは、成人と異なっています。どう異なるかと言うと、傷を付けても、まったく瘢痕を生じずに、元通りに復元します。
その境目は、妊娠27週頃です。これ以降の胎児は、皮膚に傷がつくと、成人と同じく瘢痕治癒するようになります。
どこに違いがあるのでしょうか?その一つが、羊水中のヒアルロン酸にあることが、つい先日の医学論文で報告されました(Hyaluronic acid, an important factor in the wound healing properties of amniotic fluid: In vitro studies of re-epithelialisation in human skin wounds. Nyman E, et.al.J Plast Surg Hand Surg. 2013 Apr;47(2):89-92. )。
この論文では、妊娠16週頃の妊婦さんから採取した羊水中に、成人の皮膚片に傷を付けたものを入れて培養して、皮膚片の傷の治り方を観察しています。
羊水を加えた培地では明らかに治りが早く、なおかつ、羊水にヒアルロニダーゼ(ヒアルロン酸分解酵素)を加えてヒアルロン酸を分解してやると、その効果は無くなりました。
下図は、8週の胎児です。まだ皮膚は出来ていません。
Scarless wound healing(瘢痕を残さない創傷治癒)という言葉があります。形成外科の夢であり課題です。
胎児の皮膚と言うのは、成人と異なっています。どう異なるかと言うと、傷を付けても、まったく瘢痕を生じずに、元通りに復元します。
その境目は、妊娠27週頃です。これ以降の胎児は、皮膚に傷がつくと、成人と同じく瘢痕治癒するようになります。
どこに違いがあるのでしょうか?その一つが、羊水中のヒアルロン酸にあることが、つい先日の医学論文で報告されました(Hyaluronic acid, an important factor in the wound healing properties of amniotic fluid: In vitro studies of re-epithelialisation in human skin wounds. Nyman E, et.al.J Plast Surg Hand Surg. 2013 Apr;47(2):89-92. )。
この論文では、妊娠16週頃の妊婦さんから採取した羊水中に、成人の皮膚片に傷を付けたものを入れて培養して、皮膚片の傷の治り方を観察しています。
羊水を加えた培地では明らかに治りが早く、なおかつ、羊水にヒアルロニダーゼ(ヒアルロン酸分解酵素)を加えてヒアルロン酸を分解してやると、その効果は無くなりました。
下図は、8週の胎児です。まだ皮膚は出来ていません。
下図は16週の胎児。このころに、羊水中のヒアルロン酸(分子量10万、ヒアルプロテクトと同じです)が増加し、表皮細胞の分裂増殖・角化を促します。羊水が表皮を育てるわけです。
たいへん興味深いことに、この分子量10万のヒアルロン酸、胎児自身の腎臓で産生されて、尿とともに羊水中に排出されるようです。胎児が自分自身で皮膚を育てています。うまいこと出来ていますね。
上図は7ヶ月の胎児。このころから、皮膚に生じた傷は、瘢痕として残るようになります。Scarless woond healingの終わりです。
また、ちょうどこのころから、胎児は炎症反応を起こすようになります。外部からの侵襲に対して、繊維芽細胞などが反応して、防衛できるようになります。皮肉なことに、この高等生物特有の「炎症反応」が、美容的には好ましくない「瘢痕」の大きな原因のようです。
下等生物は、瘢痕治癒しないScarless wound healingが普通なんですよ。トカゲなんか、尻尾切られても元通り再生までしちゃうし。
Scarless woond healingは、炎症反応のまだ未熟な胎児が、羊水中の中間分子量のヒアルロン酸などの助けを借りて再生するメカニズムであるわけです。
上に示した「羊水中のヒアルロン酸に傷を早く治す力がある」という論文とは全く別に、Hyaluronan fragments improve wound healing on in vitro cutaneous model through P2X7 purinoreceptor basal activation: role of molecular weight. Ghazi K,et al.PLoS One. 2012;7(11):e48351.という「中間分子量サイズのヒアルロン酸(10万~30万)には、傷を治す力があるが、小分子量(5千~2万)や大分子量(100~140万)のものには無い」という内容の論文が2012年夏に出ました。
しかし、この著者は、羊水中のヒアルロン酸との関連に気が付いていないかもしれません。論文中で触れられていないからです。
一方、最初に記した論文もまた、羊水中のヒアルロン酸分子量が特殊なサイズであることに、触れられていません。
「ステロイドによる皮膚萎縮が中間分子量サイズのヒアルロン酸で予防できる」ことを明らかにしたジュネーブのBarnes, Kaya,Saurat先生らのグループの論文も、主なものは一通り読みましたが、羊水中のヒアルロン酸との関連を記したものはありません。
ひょっとしたら、最近注目されてきた中間分子量サイズのヒアルロン酸が、羊水中のものと同じであることに気が付いたのは、マジで世界で私が最初かもしれません。もっとも、気が付いたからと言って、特許が取れるわけでもないし、自分で研究した結果ではないですから、手柄にもなりませんが。また、私が気が付くくらいだから、いずれ時間の問題で、皆気が付いて、ちょっとした話題になるんじゃないかな。
この中間分子量ヒアルロン酸、いろいろ臨床応用が可能です。たとえば、大やけどのときなどの培養表皮作成時に添加してやれば、今よりさらに早く大きな表皮シートが作成可能なはずです。また、眼科で、コンタクトレンズで角膜に小さな傷がつくことがありますが、目薬にこのヒアルロン酸を入れてやれば、早く治るはずです。
ステロイドによる表皮の萎縮の予防や再生もまた、この臨床応用の一環と考えられます。要は、ステロイドや老化、あるいは創傷などで傷付いた表皮を、妊娠16週ころの羊水と同じ環境でもって、再生治療するということですね。
下に示す写真は、以前にも紹介しましたが、PRP療法と言って、自分自身の血小板(に含まれるPDGFなどの成長因子)を利用して、真皮の繊維芽細胞を活性化してコラーゲンを作らせ、ステロイドによる真皮の萎縮を復元する方法です(→こちら)。
また、ちょうどこのころから、胎児は炎症反応を起こすようになります。外部からの侵襲に対して、繊維芽細胞などが反応して、防衛できるようになります。皮肉なことに、この高等生物特有の「炎症反応」が、美容的には好ましくない「瘢痕」の大きな原因のようです。
下等生物は、瘢痕治癒しないScarless wound healingが普通なんですよ。トカゲなんか、尻尾切られても元通り再生までしちゃうし。
Scarless woond healingは、炎症反応のまだ未熟な胎児が、羊水中の中間分子量のヒアルロン酸などの助けを借りて再生するメカニズムであるわけです。
上に示した「羊水中のヒアルロン酸に傷を早く治す力がある」という論文とは全く別に、Hyaluronan fragments improve wound healing on in vitro cutaneous model through P2X7 purinoreceptor basal activation: role of molecular weight. Ghazi K,et al.PLoS One. 2012;7(11):e48351.という「中間分子量サイズのヒアルロン酸(10万~30万)には、傷を治す力があるが、小分子量(5千~2万)や大分子量(100~140万)のものには無い」という内容の論文が2012年夏に出ました。
しかし、この著者は、羊水中のヒアルロン酸との関連に気が付いていないかもしれません。論文中で触れられていないからです。
一方、最初に記した論文もまた、羊水中のヒアルロン酸分子量が特殊なサイズであることに、触れられていません。
「ステロイドによる皮膚萎縮が中間分子量サイズのヒアルロン酸で予防できる」ことを明らかにしたジュネーブのBarnes, Kaya,Saurat先生らのグループの論文も、主なものは一通り読みましたが、羊水中のヒアルロン酸との関連を記したものはありません。
ひょっとしたら、最近注目されてきた中間分子量サイズのヒアルロン酸が、羊水中のものと同じであることに気が付いたのは、マジで世界で私が最初かもしれません。もっとも、気が付いたからと言って、特許が取れるわけでもないし、自分で研究した結果ではないですから、手柄にもなりませんが。また、私が気が付くくらいだから、いずれ時間の問題で、皆気が付いて、ちょっとした話題になるんじゃないかな。
この中間分子量ヒアルロン酸、いろいろ臨床応用が可能です。たとえば、大やけどのときなどの培養表皮作成時に添加してやれば、今よりさらに早く大きな表皮シートが作成可能なはずです。また、眼科で、コンタクトレンズで角膜に小さな傷がつくことがありますが、目薬にこのヒアルロン酸を入れてやれば、早く治るはずです。
ステロイドによる表皮の萎縮の予防や再生もまた、この臨床応用の一環と考えられます。要は、ステロイドや老化、あるいは創傷などで傷付いた表皮を、妊娠16週ころの羊水と同じ環境でもって、再生治療するということですね。
下に示す写真は、以前にも紹介しましたが、PRP療法と言って、自分自身の血小板(に含まれるPDGFなどの成長因子)を利用して、真皮の繊維芽細胞を活性化してコラーゲンを作らせ、ステロイドによる真皮の萎縮を復元する方法です(→こちら)。
ステロイドによる真皮の萎縮には、PRP療法、表皮の萎縮には中間分子量ヒアルロン酸という手法があるこということです。こういう再生医療的な考え方に基づく治療法は、今後もさらに進化していくことでしょう。
もっとも、ステロイドを使いすぎて皮膚の萎縮を生じさせないことが一番良いのは言うまでもないことですけどね。
2013.04.01
もっとも、ステロイドを使いすぎて皮膚の萎縮を生じさせないことが一番良いのは言うまでもないことですけどね。
2013.04.01
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