リバウンドを抑える研究(その1)
Olopatadine hydrochloride suppresses the rebound phenomenon after discontinuation of treatment with a topical steroid in mice with chronic contact hypersensitivity T. Tamura et al.
Clinical & Experimental Allergy, Volume 35, Number 1, January 2005 , pp. 97-103(7)
協和発酵キリンの抗アレルギー剤にアレロックという薬があります。この論文には、マウスで実験的にSteroid addictionを作って離脱させリバウンドを引き起こし、それがアレロックで抑えられる、ということを確認した論文です。ファーストネームの田村忠文さんというかたは、協和発酵キリンの薬理研究所に所属していらっしゃるようです。
実験は、オキサゾロンという物質をマウスの耳に外用してその腫れを測定しています。オキサゾロンは外用によってアレルギー性接触皮膚炎を起こし、血液検査でもT細胞をTh1→Th2にシフトさせ、IgEを増加させることが分かっているので、アトピー性皮膚炎のモデルとして使えます。
Clinical & Experimental Allergy, Volume 35, Number 1, January 2005 , pp. 97-103(7)
協和発酵キリンの抗アレルギー剤にアレロックという薬があります。この論文には、マウスで実験的にSteroid addictionを作って離脱させリバウンドを引き起こし、それがアレロックで抑えられる、ということを確認した論文です。ファーストネームの田村忠文さんというかたは、協和発酵キリンの薬理研究所に所属していらっしゃるようです。
実験は、オキサゾロンという物質をマウスの耳に外用してその腫れを測定しています。オキサゾロンは外用によってアレルギー性接触皮膚炎を起こし、血液検査でもT細胞をTh1→Th2にシフトさせ、IgEを増加させることが分かっているので、アトピー性皮膚炎のモデルとして使えます。
横軸は日数、縦軸は耳の厚さ(腫れ)です。全例でオキサゾロンは週に3回外用を続けます。●はコントロールです。▲はステロイド外用、△は、0-17日目までステロイドを外用し、18以降は中止します。30日以降は、●よりも△のほうが腫れが強いですから、これはリバウンドと言っていいです(Steroid addictionの動物モデルです)。
□は、18日目以降ステロイド外用剤を中止すると同時に、アレロック(オロパタジン)10mg/kg/day内服開始しています。 10mg/kg/dayというと、50kgのヒトで500mg/dayになってしまいますが(アレロックの成人常用量が10mgなので50倍)、しかし、マウスの実験で用いた量をヒトに換算するには、体表面積比を用いる必要があり、だいたいマウス用量の9分の1と概算できます。なので、実際の常用量の50×1/9=5.5倍くらいと考えられます。 30日目以降も、□は●を超えていないので、リバウンドが抑えられたといってよいです。
これは、38日目に、血液を採取し、IL-4を測定した結果です。左から、Aceはアセトンでコントロール(オキサゾロンはアセトンに溶かして外用するためアセトン外用をコントロールとした)、Oxはオキサゾロンのみ外用、Oloはアレロック(オロパタジン)内服で、Predはプレドニン(ステロイド)外用です。真ん中の、「Day0-17までPred外用して18-37中止したマウス」や、右から二つ目の「Day0-17までPred外用+Olo内服して18-37中止したマウス」では、Oxに比してIL-4が上昇しています(ヒトのリバウンドと似た現象が起きていることが確認できました)。
血清IgEを見てみると、ステロイドを塗り続けた群(PredやPred/Olo)では、Ox群に対して有意な上昇が見られました。ステロイド中断した場合(リバウンド)はもっと上がりました。
これらは、第二十章で紹介した、木俣先生の「アイピーディーでリバウンドを抑えることが出来た」とする論文に似た結果です。失礼ながら、アイピーディーごときでリバウンドが抑えられるのだろうか?と疑問を抱いて、木俣先生にお問い合わせしたところ、「確かに依存症例としては、軽い患者であったかもしれない」と、コメントを頂きました。軽い依存のリバウンドというのは、アイピーディーやアレロックといった抗アレルギー剤で抑えられるのかもしれません。この論文の実験も、ステロイドの外用はプレドニゾロンという比較的弱いもので17日間なので、たしかにリバウンドはリバウンドなのですが、軽症だと思われます。
日本の製薬メーカーも、このように着々と、ステロイド依存に対する、自社製剤の有効性を検証して、海外の英文雑誌に報告して実績を積み上げています。しかし、おそらく、これは、日本の診療現場には、情報としてあまり生かされていないと思います。 それはなぜかと言うと、日皮会ガイドラインを作成している、あるいはその上で重鎮として君臨し、「ステロイド依存など存在しない」という非科学的な姿勢を崩そうとしない一部の皮膚科の先生がたがいるからです。
患者も、また診療現場の若い先生がたも、非常な不利益を蒙り続けていると、わたしは思います。
2009.10.21
これらは、第二十章で紹介した、木俣先生の「アイピーディーでリバウンドを抑えることが出来た」とする論文に似た結果です。失礼ながら、アイピーディーごときでリバウンドが抑えられるのだろうか?と疑問を抱いて、木俣先生にお問い合わせしたところ、「確かに依存症例としては、軽い患者であったかもしれない」と、コメントを頂きました。軽い依存のリバウンドというのは、アイピーディーやアレロックといった抗アレルギー剤で抑えられるのかもしれません。この論文の実験も、ステロイドの外用はプレドニゾロンという比較的弱いもので17日間なので、たしかにリバウンドはリバウンドなのですが、軽症だと思われます。
日本の製薬メーカーも、このように着々と、ステロイド依存に対する、自社製剤の有効性を検証して、海外の英文雑誌に報告して実績を積み上げています。しかし、おそらく、これは、日本の診療現場には、情報としてあまり生かされていないと思います。 それはなぜかと言うと、日皮会ガイドラインを作成している、あるいはその上で重鎮として君臨し、「ステロイド依存など存在しない」という非科学的な姿勢を崩そうとしない一部の皮膚科の先生がたがいるからです。
患者も、また診療現場の若い先生がたも、非常な不利益を蒙り続けていると、わたしは思います。
2009.10.21