リバウンドを抑える研究(その2)
Olopatadine hydrochloride accelerates the recovery of skin barrier function in miceAmano, T et al. British Journal of Dermatology, Volume 156, Number 5, May 2007 , pp. 906-912(7)
前章と同じ、協和発酵キリンの薬理研究所の論文です。メーカーの論文ではありますが、掲載誌はBritish Journal of Dermatology ですから、立派なものです。2007年のもので、ステロイド外用剤の長期連用によるリバウンド現象が、表皮バリア破壊メカニズムによることが、解明されつつある時期のものです。早速、アレロック(オロパタジン)でも、その動物実験モデルによって、効果を検討しようと考えたのでしょう
前章と同じ、協和発酵キリンの薬理研究所の論文です。メーカーの論文ではありますが、掲載誌はBritish Journal of Dermatology ですから、立派なものです。2007年のもので、ステロイド外用剤の長期連用によるリバウンド現象が、表皮バリア破壊メカニズムによることが、解明されつつある時期のものです。早速、アレロック(オロパタジン)でも、その動物実験モデルによって、効果を検討しようと考えたのでしょう
*P < 0.05, **P < 0.01, ***P < 0.001
マウスの耳を、テープストリッピング(貼って剥がすことを繰り返して、角層を取り除く)して、TEWL(経表皮水分蒸散量)を測定します。ストリッピング前を0%ダメージ、直後を100%ダメージ(0%リカバリー)として、1,3,6,9時間後の回復を見ています。 マウスには、あらかじめ、DW(水)、Olo(オロパタジン)を内服させておきます。オロパタジン投与マウスでは、用量依存性に、TEWLの回復が早くなっています。(注:前章で記したように、ヒトでの常用量は、ネズミの実験に換算すると、だいたい3mg/kgくらいです
マウスの耳を、テープストリッピング(貼って剥がすことを繰り返して、角層を取り除く)して、TEWL(経表皮水分蒸散量)を測定します。ストリッピング前を0%ダメージ、直後を100%ダメージ(0%リカバリー)として、1,3,6,9時間後の回復を見ています。 マウスには、あらかじめ、DW(水)、Olo(オロパタジン)を内服させておきます。オロパタジン投与マウスでは、用量依存性に、TEWLの回復が早くなっています。(注:前章で記したように、ヒトでの常用量は、ネズミの実験に換算すると、だいたい3mg/kgくらいです
ステロイド外用すると、このTEWLの回復が遅延することがわかっています。そこで、オロパタジンを内服させてやると、このステロイド外用によるTEWLの遅延(ステロイド外用剤による表皮バリア破壊)が、改善するかどうかを、次にみています。 Vehは基剤で、Betaはベタメサゾン(ステロイド外用剤)で、■のステロイド外用群は、TEWLの回復が遅れますが、オロパタジンを内服させておくことで、若干改善することが確認されました。ステロイドの長期連用による副作用軽減が確認されたわけです。 ステロイド外用と同時にアレロックを内服しておくことは、単にかゆみを抑えるだけではなく、依存(リバウンド)を生じにくくする効果がある、ということになります。もっとも、これは、前から繰り返し念押ししているように、かなり軽い「ステロイド依存」の動物モデルにおいての話なので、脱ステの外来で遭遇する重度の依存患者に、どれだけ効果があるかは、また別の話ではあります。しかし、メーカーのかたが、こういう動物実験で、きれいな結果を出してくれるのは、臨床医にとっても患者にとっても励みになります。
マウスの表皮は、テープストリッピングを繰り返していると、表皮細胞は増殖をはじめ、表皮は肥厚してきます。Shamは、ストリッピングをしないコントロール、DWはストリッピングをして水を飲ませたコントロール、Oloはオロパタジン内服群です。オロパタジン内服は、TEWLの回復を早めると同時に、角層破壊に引き続く表皮肥厚の現象も抑えるようです。
なんだか、自分が協和発酵キリンのMRさんのような気がしてきましたが、製薬会社の研究室のかたが、こうやってステロイドの長期連用の副作用をはっきりと現象として認識して、自社の製品がそれにどう役立つかを研究しているというのは、皮膚科医として嬉しいし、また患者にとっても有益なことです。もちろん企業ですから収益第一でしょうが、社会的使命を果たしていると感じます。薬理研究所の方々にお会いしたことはありませんが、敬意を表します。アレロックが良いと宣伝しているつもりはありません。他の製薬会社の抗ヒスタミン剤・アレルギー剤薬剤についても、依存やリバウンドへの効果の基礎データを、どんどん臨床現場に報告して欲しいです。
なんだか、自分が協和発酵キリンのMRさんのような気がしてきましたが、製薬会社の研究室のかたが、こうやってステロイドの長期連用の副作用をはっきりと現象として認識して、自社の製品がそれにどう役立つかを研究しているというのは、皮膚科医として嬉しいし、また患者にとっても有益なことです。もちろん企業ですから収益第一でしょうが、社会的使命を果たしていると感じます。薬理研究所の方々にお会いしたことはありませんが、敬意を表します。アレロックが良いと宣伝しているつもりはありません。他の製薬会社の抗ヒスタミン剤・アレルギー剤薬剤についても、依存やリバウンドへの効果の基礎データを、どんどん臨床現場に報告して欲しいです。
なぜ、アレロック(オロパタジン)といった抗ヒスタミン剤が、バリア保護に働くかですが、上の棒グラフは、テープストリッピングをしない場合とした場合とで、マウスの耳の組織中のヒスタミン含量を比較したものです。テープストリッピングをすると、ヒスタミン含量が増加しています。これ(ヒスタミン)が、ひょっとしたらTEWLの回復を遅らせたり、表皮肥厚の原因となっているのかもしれません。もしそうであるなら、バリア保護と言うのは、抗ヒスタミン剤に普遍的な効果なのかもしれません。ステロイド外用剤を用いるときは、バリア保護の観点から抗ヒスタミン剤を併用するべき、あるいは、依存で離脱後の患者は、バリア回復させてリバウンドを和らげるために抗ヒスタミン剤の内服を続けたほうがよい、という考えが、いずれ教科書に記されるのかもしれないですね。
2009.10.21
2009.10.21