中間分子量ヒアルロン酸化粧水の分子量サイズの問題について(その1)
中間分子量ヒアルロン酸は、私が製作販売している化粧品の主成分です。現在のところ、これを使用した化粧 品は日本では他にありません。
製品名を明示すると、ブログ記事が薬事法第86条(未承認医薬品の広告禁止)に抵触するおそれがあるので、記事中では製品名を伏しています。関心のあるかたは、お手数ですが検索して探してください。
現在準備を進めている中間分子量ヒアルロン酸断片(HAFi)化粧水(保湿剤)ですが、原材料はキッコーマンバイオケミファのFCS-SUで、分子量は5~11万です。Barnes先生らの論文のHAFiは、分子量5~40万です。
もし、活性を示す分子量が11~40万にあったら、この化粧水は効果無いのではないか?・・うーん、たしかにそうかもしれません。
結局のところ、作ってから、実際に何らかの形で確認してみなければわかりません。もっとも、仮に効果がなくても、化粧品としてのヒアルロン酸保湿剤としては問題はないのですが。
一応、文献などあたって、反証(5~11万では効かないことを示唆するデータ)がないか、考察しておこうと思いました。
そもそも、Barnes先生が、なぜ5~40万のレンジに注目してこれをHAFiと命名したかを引用文献をさかのぼって調べてみると、1996年のMcKee先生の論文が元のようです(→こちら)。下図はMcKee先生が実験に用いた3種類のヒアルロン酸の分子量分布です(ヒアルロン酸は単一分子量での調製は困難)。
製品名を明示すると、ブログ記事が薬事法第86条(未承認医薬品の広告禁止)に抵触するおそれがあるので、記事中では製品名を伏しています。関心のあるかたは、お手数ですが検索して探してください。
現在準備を進めている中間分子量ヒアルロン酸断片(HAFi)化粧水(保湿剤)ですが、原材料はキッコーマンバイオケミファのFCS-SUで、分子量は5~11万です。Barnes先生らの論文のHAFiは、分子量5~40万です。
もし、活性を示す分子量が11~40万にあったら、この化粧水は効果無いのではないか?・・うーん、たしかにそうかもしれません。
結局のところ、作ってから、実際に何らかの形で確認してみなければわかりません。もっとも、仮に効果がなくても、化粧品としてのヒアルロン酸保湿剤としては問題はないのですが。
一応、文献などあたって、反証(5~11万では効かないことを示唆するデータ)がないか、考察しておこうと思いました。
そもそも、Barnes先生が、なぜ5~40万のレンジに注目してこれをHAFiと命名したかを引用文献をさかのぼって調べてみると、1996年のMcKee先生の論文が元のようです(→こちら)。下図はMcKee先生が実験に用いた3種類のヒアルロン酸の分子量分布です(ヒアルロン酸は単一分子量での調製は困難)。
McKee先生の論文は、610万ダルトンがピークのヒアルロン酸(上)と、47万(中)、28万(下)ダルトンをそれぞれピークとする三種類のヒアルロン酸の、肺胞マクロファージ細胞のCD44レセプターへの結合の強さを比べたものです。28万ダルトンのものが一番強かった。なおかつこれを分解した3万5千ダルトンのものでは活性は見られなかった、というものです。
Barnes先生たち(スイスジュネーブ大学のSaurat教授の門下)は、ここから、5~40万のレンジに注目したようです。
それでは、McKee先生は、なぜこの28万ダルトンがピークのヒアルロン酸を実験材料に選んだかと言うと、「commercially obtained purified HA fragments from human umbilical cord」とあるので、たまたまこのサイズのヒアルロン酸が試薬として入手できたので実験に用いた、ということだ解します(積極的な意味はなさそう)。ちなみに一番上のHEARON(ヒーロン)は、眼科の点眼ヒアルロン酸と名前が同じなので、原材料として商用で製造されているものなのでしょう。
ところで、ヒアルロン酸というのは、どうも、分子量に応じて、様々な働きをしていることが最近判明しつつあるようです。たとえば分子量3万5千のヒアルロン酸断片は、腸管上皮のディフェンシンという非特異的な抗菌物質を発現させます(→こちら)。
ヒアルロン酸と言うのは、細菌によって分解されますから、そのとき出てくる低分子量の断片を感知して、腸管が防衛体制を敷く、ということなのでしょう。
表皮細胞のCD44が、なぜ中間分子量サイズのヒアルロン酸を認識するのか?なぜ大でも小でもないのか?に、何か意味があるのでしょうか?これを考えるヒントが、同じくSaurat教授の教室に属するKaya先生の論文中にありました(→こちら)。
ちょっと解りにくいと思うので、元のイラストを少し加工してあります。厳密を期す方は、元論文のイラストで確認してください。
Barnes先生たち(スイスジュネーブ大学のSaurat教授の門下)は、ここから、5~40万のレンジに注目したようです。
それでは、McKee先生は、なぜこの28万ダルトンがピークのヒアルロン酸を実験材料に選んだかと言うと、「commercially obtained purified HA fragments from human umbilical cord」とあるので、たまたまこのサイズのヒアルロン酸が試薬として入手できたので実験に用いた、ということだ解します(積極的な意味はなさそう)。ちなみに一番上のHEARON(ヒーロン)は、眼科の点眼ヒアルロン酸と名前が同じなので、原材料として商用で製造されているものなのでしょう。
ところで、ヒアルロン酸というのは、どうも、分子量に応じて、様々な働きをしていることが最近判明しつつあるようです。たとえば分子量3万5千のヒアルロン酸断片は、腸管上皮のディフェンシンという非特異的な抗菌物質を発現させます(→こちら)。
ヒアルロン酸と言うのは、細菌によって分解されますから、そのとき出てくる低分子量の断片を感知して、腸管が防衛体制を敷く、ということなのでしょう。
表皮細胞のCD44が、なぜ中間分子量サイズのヒアルロン酸を認識するのか?なぜ大でも小でもないのか?に、何か意味があるのでしょうか?これを考えるヒントが、同じくSaurat教授の教室に属するKaya先生の論文中にありました(→こちら)。
ちょっと解りにくいと思うので、元のイラストを少し加工してあります。厳密を期す方は、元論文のイラストで確認してください。
先回解説した「ヒアルロゾームプラットフォーム」付近での反応を、Kaya先生らは、2006年時点で、こう考えていた、という概念図です。まだ、角質細胞特有の「突起」との関係は記されていません。
黄色い棒のCD44がヒアルロン酸のレセプターで、これを中心として、いくつかの分子が関与しています。
黄色い棒のCD44がヒアルロン酸のレセプターで、これを中心として、いくつかの分子が関与しています。
まず、ヒアルロン酸が、一つのCD44にくっつきます。
細胞膜と言うのは流動的で、表面分子は細胞膜の海を漂流するように動いています。CD44にくっついたヒアルロン酸は、近くにある別のCD44にもくっついて、これを引き寄せます。
すると、付近の構造が変わって、MMPがPro HB-EGFの先にあったHB-EGF(成長因子)を押し出します。
すると、付近の構造が変わって、MMPがPro HB-EGFの先にあったHB-EGF(成長因子)を押し出します。
ついで、HB-EGFは、erbB1すなわち、成長因子のレセプターにくっつき、これを介して表皮細胞は活性化されます。
繰り返しますが、イラストは元論文中のものを少し改変しています。私が理解できた限りでは、Kaya先生は、こういうイメージを、論文中のイラストで示しているのだと思います。
そして、この仮説から、なぜ中間分子量でなければだめなのか?が導かれます。大きすぎても小さすぎても、さらに近くのヒアルロン酸にくっついてこれを引き寄せるには向かない、ということでしょう。
2012年のBarnes先生のイラスト(→こちら)は、Kaya先生のイラストに、突起(仮足)の構造変化を加えたものと言えます。すなわち、ヒアルロン酸が2個のCD44にくっついてEGFの刺激が伝えられると、アクチン繊維が形成されて突起が伸び、その先でさらにHAS3がヒアルロン酸を作り始めて、正のフィードバックが始まる、ということでしょう。
ちなみに、HAS3が産生するヒアルロン酸の分子量は20万~>200万のようです(→こちら)。
繰り返しますが、イラストは元論文中のものを少し改変しています。私が理解できた限りでは、Kaya先生は、こういうイメージを、論文中のイラストで示しているのだと思います。
そして、この仮説から、なぜ中間分子量でなければだめなのか?が導かれます。大きすぎても小さすぎても、さらに近くのヒアルロン酸にくっついてこれを引き寄せるには向かない、ということでしょう。
2012年のBarnes先生のイラスト(→こちら)は、Kaya先生のイラストに、突起(仮足)の構造変化を加えたものと言えます。すなわち、ヒアルロン酸が2個のCD44にくっついてEGFの刺激が伝えられると、アクチン繊維が形成されて突起が伸び、その先でさらにHAS3がヒアルロン酸を作り始めて、正のフィードバックが始まる、ということでしょう。
ちなみに、HAS3が産生するヒアルロン酸の分子量は20万~>200万のようです(→こちら)。
(上記の現京都産業大学教授の板野先生の論文から。右端がHAS3の産生するヒアルロン酸)
HAFi の分子量5~40万に比べると大きいですが、これは、HAS3 が産生したヒアルロン酸が、壊されて断片化したものが、CD44 に結合する、ということを意味するのでしょう。
たとえば、外部からのヒアルロニダーゼ(細菌が産生します)によって、このヒアルロン酸が断片化すると、CD44が刺激され、表皮が分裂増殖して厚くなる、バリアを強化する、といったメカニズムが考えられます。さらに分解された数万以下の断片は、ディフェンシンを発現させて抗菌力をも加わるのかもしれません。
、
さて、そこで、ここからは私の考えなのですが、分子量というのは、重量ですから、ヒアルロン酸の場合、単純に体積に比例すると考えていいと思います。上のようなメカニズムを考えるとき、重要なのは、ヒアルロン酸の直径でしょう(二つのCD44の距離が関係)。すると、直径は、分子量の三乗根に比例すると考えられます。
HAFi の分子量5~40万に比べると大きいですが、これは、HAS3 が産生したヒアルロン酸が、壊されて断片化したものが、CD44 に結合する、ということを意味するのでしょう。
たとえば、外部からのヒアルロニダーゼ(細菌が産生します)によって、このヒアルロン酸が断片化すると、CD44が刺激され、表皮が分裂増殖して厚くなる、バリアを強化する、といったメカニズムが考えられます。さらに分解された数万以下の断片は、ディフェンシンを発現させて抗菌力をも加わるのかもしれません。
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さて、そこで、ここからは私の考えなのですが、分子量というのは、重量ですから、ヒアルロン酸の場合、単純に体積に比例すると考えていいと思います。上のようなメカニズムを考えるとき、重要なのは、ヒアルロン酸の直径でしょう(二つのCD44の距離が関係)。すると、直径は、分子量の三乗根に比例すると考えられます。
何が言いたいかというと、この場合「分子量5万と40万の中間は、(5+40)÷2=22.5万ではなくて、16.5万だろう」ということです。
だから、何かが言える、というわけでもないですが・・仮に「至適分子量」があったとすると、その裾野は分子量が大きいほうに長く、分子量が小さいほうに短い、ということでしょうか。至適分子量が10万くらいであってくれるといいんですけどね・・。
McKee先生は28万付近にピークのあるヒアルロン酸でデータを出していますが、これは肺胞マクロファージ細胞のCD44を用いた実験です。
表皮細胞とはCD44の密度は当然異なるだろうし、また、表皮細胞には、何よりも先回解説したような突起があり、この突起付近(ヒアルロゾーム・プラットフォーム)で、反応が起きているという事情があります。肺胞マクロファージとは、反応至適ヒアルロン酸分子量が異なってもおかしくないと思います。
とまあ、いろいろ考えてみるのですが、結局は、出来上がった化粧しで実地に試験して、ステロイドによる表皮萎縮を防止する働きがあるのか?を確認してみるまでは、今のところ何も言えません。
とりあえず、調べた範囲では、5~11万の分子量では、明らかにダメ、というデータ(仮説に対する反証)は、いまのところ無さそうです。
もし、実地に検証してみて、結果が出なかったら、ヒアルロン酸というのは、超音波でソニケートすれば機械的に断裂して分子量が小さくなるようだから(McKee先生の図の上と中)、大分子量のものを買って自作してみようと考えています。分子量分布測るくらいは、どこかで外注すればやってくれるところあるでしょう。見つからなければ、自分で機械揃えてできなくもない。昔取った杵つか、若いうちに何でもやっておくに限ります。
手間はかかりそうですが、まあ、やれるところまでやってみます。それだけの価値はありそうな気がするので。
・・とはいえ、どなたか、超音波処理やヒアルロン酸の分子量測定やっていただける研究機関や大学勤務の方いらっしゃいませんか?もしいたら連絡ください。よろしくですm(_ _)m。
追記1)
HAFi(中間分子量ヒアルロン酸断片)の作り方についての付記です。
Depolymerization of hyaluronan by sonication. Glycoconjugate Journal (1993) 10:435-439
からの引用です。分子量40万のヒアルロン酸(ヒト臍帯由来)に1分、10分、1時間とソニケート(超音波処理)を加えると、下図のようにほぼ連続的に分子量が小さくなっていくようです。
だから、何かが言える、というわけでもないですが・・仮に「至適分子量」があったとすると、その裾野は分子量が大きいほうに長く、分子量が小さいほうに短い、ということでしょうか。至適分子量が10万くらいであってくれるといいんですけどね・・。
McKee先生は28万付近にピークのあるヒアルロン酸でデータを出していますが、これは肺胞マクロファージ細胞のCD44を用いた実験です。
表皮細胞とはCD44の密度は当然異なるだろうし、また、表皮細胞には、何よりも先回解説したような突起があり、この突起付近(ヒアルロゾーム・プラットフォーム)で、反応が起きているという事情があります。肺胞マクロファージとは、反応至適ヒアルロン酸分子量が異なってもおかしくないと思います。
とまあ、いろいろ考えてみるのですが、結局は、出来上がった化粧しで実地に試験して、ステロイドによる表皮萎縮を防止する働きがあるのか?を確認してみるまでは、今のところ何も言えません。
とりあえず、調べた範囲では、5~11万の分子量では、明らかにダメ、というデータ(仮説に対する反証)は、いまのところ無さそうです。
もし、実地に検証してみて、結果が出なかったら、ヒアルロン酸というのは、超音波でソニケートすれば機械的に断裂して分子量が小さくなるようだから(McKee先生の図の上と中)、大分子量のものを買って自作してみようと考えています。分子量分布測るくらいは、どこかで外注すればやってくれるところあるでしょう。見つからなければ、自分で機械揃えてできなくもない。昔取った杵つか、若いうちに何でもやっておくに限ります。
手間はかかりそうですが、まあ、やれるところまでやってみます。それだけの価値はありそうな気がするので。
・・とはいえ、どなたか、超音波処理やヒアルロン酸の分子量測定やっていただける研究機関や大学勤務の方いらっしゃいませんか?もしいたら連絡ください。よろしくですm(_ _)m。
追記1)
HAFi(中間分子量ヒアルロン酸断片)の作り方についての付記です。
Depolymerization of hyaluronan by sonication. Glycoconjugate Journal (1993) 10:435-439
からの引用です。分子量40万のヒアルロン酸(ヒト臍帯由来)に1分、10分、1時間とソニケート(超音波処理)を加えると、下図のようにほぼ連続的に分子量が小さくなっていくようです。
超音波をかけ続けると、10時間以降は1.1万の分子量で止まります。これ以上は小さくならないようです。
最小分子量は、ヒアルロン酸の由来によって異なり、ニワトリのとさかのヒアルロン酸は100万くらいですが3千で底打ち、細菌由来の120万のヒアルロン酸は6万で底打ちです。
大分子量のヒアルロン酸が構造的に不安定ということでも無いようで、論文ではほかに色々な処理を試みていますが、超音波にだけ弱いようです。
ですから、分子量5~40万のヒアルロン酸を作りたい場合には、100万くらいのものを数分ソニケートしてやればいいようです。
あらかじめ処理時間を様々にとった後のヒアルロン酸を電気泳動して分子量プロファイルを確認し、グラフにプロットして最適条件(時間)を確認しておきます。
あとは、2%の分子量100万のヒアルロン酸を延々と同様処理すればいい。製造工程にソニケートが一手間加わりますが、出来ない話じゃないです。
ヒアルロン酸を電気泳動して分子量確認してもらえる外注会社も見つかりました。
これで、5~11万分子量のヒアルロン酸で効果がなかった場合に、次にやることが決まりました。追々記:ヒアルロン酸の活性は分子量4.4~25.4万(ピークは13.7万)にあることが、別の論文から判明しました→こちら)
追記2)
先日来紹介しているBarnes先生らの研究に関して、ピエールファーブルジャポンという化粧品会社(アヴェンヌを売っているところ)が特許を取得しているのを見つけました。
「コルチコステロイドとヒアルロン酸断片を含んでなる抗炎症性の皮膚用組成物、およびその使用」(→こちら)
ステロイド外用剤にHAFiを添加して、萎縮の副作用が出にくくする、すなわち、「HAFi添加ステロイド外用剤」の特許です。
しかし、この特許、製薬会社が注目するかどうか・・。というのは、この製剤を作って売り出されるためには、ステロイド外用剤による皮膚萎縮がまず大きく問題視されて、これを回避したいという医療側あるいは患者側のニーズが高まらなければなりません。
ピエールファーブルジャポンと提携してHAFi入りステロイド外用剤を発売したときには、「ステロイド外用剤による皮膚萎縮を防止します」とアピールすることになりますが、「じゃあ、今までのステロイド外用剤は、そんなに問題があったのですか?」と突っ込まれることになってしまいます。
製薬会社が投資しなければ新薬は世に出ません。アヴェンヌの化粧品会社は自力でHAFi入りステロイド外用剤を製造するだろうか?そうでなければ、ピエールファーブルジャポンが特許を確保したことで、このアイデアは逆に活用されることなく、お蔵入り、ってことになってしまいそうです。ピエールファーブルジャポンに特許使用料を払う分、コストが高くなりますからね。
また、HAFi自体を化粧品(保湿剤)として売り出すことは、別に特許に抵触しません。先日紹介した南アフリカの会社はもう販売しているし、私も化粧水売り出します。すると、ますますHAFi入りステロイド外用剤は世に出ないんじゃないかなあ。
2013.03.18
大分子量のヒアルロン酸が構造的に不安定ということでも無いようで、論文ではほかに色々な処理を試みていますが、超音波にだけ弱いようです。
ですから、分子量5~40万のヒアルロン酸を作りたい場合には、100万くらいのものを数分ソニケートしてやればいいようです。
あらかじめ処理時間を様々にとった後のヒアルロン酸を電気泳動して分子量プロファイルを確認し、グラフにプロットして最適条件(時間)を確認しておきます。
あとは、2%の分子量100万のヒアルロン酸を延々と同様処理すればいい。製造工程にソニケートが一手間加わりますが、出来ない話じゃないです。
ヒアルロン酸を電気泳動して分子量確認してもらえる外注会社も見つかりました。
これで、5~11万分子量のヒアルロン酸で効果がなかった場合に、次にやることが決まりました。追々記:ヒアルロン酸の活性は分子量4.4~25.4万(ピークは13.7万)にあることが、別の論文から判明しました→こちら)
追記2)
先日来紹介しているBarnes先生らの研究に関して、ピエールファーブルジャポンという化粧品会社(アヴェンヌを売っているところ)が特許を取得しているのを見つけました。
「コルチコステロイドとヒアルロン酸断片を含んでなる抗炎症性の皮膚用組成物、およびその使用」(→こちら)
ステロイド外用剤にHAFiを添加して、萎縮の副作用が出にくくする、すなわち、「HAFi添加ステロイド外用剤」の特許です。
しかし、この特許、製薬会社が注目するかどうか・・。というのは、この製剤を作って売り出されるためには、ステロイド外用剤による皮膚萎縮がまず大きく問題視されて、これを回避したいという医療側あるいは患者側のニーズが高まらなければなりません。
ピエールファーブルジャポンと提携してHAFi入りステロイド外用剤を発売したときには、「ステロイド外用剤による皮膚萎縮を防止します」とアピールすることになりますが、「じゃあ、今までのステロイド外用剤は、そんなに問題があったのですか?」と突っ込まれることになってしまいます。
製薬会社が投資しなければ新薬は世に出ません。アヴェンヌの化粧品会社は自力でHAFi入りステロイド外用剤を製造するだろうか?そうでなければ、ピエールファーブルジャポンが特許を確保したことで、このアイデアは逆に活用されることなく、お蔵入り、ってことになってしまいそうです。ピエールファーブルジャポンに特許使用料を払う分、コストが高くなりますからね。
また、HAFi自体を化粧品(保湿剤)として売り出すことは、別に特許に抵触しません。先日紹介した南アフリカの会社はもう販売しているし、私も化粧水売り出します。すると、ますますHAFi入りステロイド外用剤は世に出ないんじゃないかなあ。
2013.03.18