2010年11月13日の朝日新聞の記事
「11月10日の記事」はこちら。「11月11日の記事」はこちら。 「10月12日の記事」はこちら。
ーーーーー(ここから引用)-----
【皮膚 大人のアトピー:5 悩む人のため闘病経験生かす】
重症のアトピー性皮膚炎で入院治療を受けた荻野美和子さん(31)は、8日間で快適な肌を取り戻した。その後も月1回、定期的に通院した。強い症状は治まり、「新しい自分」になった気がしていた。
2007年1月、あらためて就職活動を始めようと、就職支援塾に通い始めた。就職難の中で勝ち取った内定を辞退し、アトピーに悩んでふさぎ込んだ5年半を取り戻したかった。でも、過去を振り返るうち、アトピーが切っても切り離せない存在だと気づいた。「悔やみながら生きるのはやめよう」 経験を生かそうと思った。アトピーは、5年半もかけて闘病するような「難病」ではないことを、同じ境遇にいる人たちに伝えたかった。本を調べ、東京都内に拠点を置く患者会の一つ、NPO法人・日本アレルギー友の会に連絡した。事務局長の丸山恵理(まるやま・えり)さん(50)に面会して闘病体験を話すと、すぐ療養相談員に採用された。
相談員を始めた当初、自分の体験を伝えようと、力が入ることもあった。だが、最近は聞き役に徹している。「そうですね。つらいですね」と耳を傾けることで、患者の気持ちが少し和らぐ気がする。
もう一つ、できるだけイベントに参加して、きれいになった自分の肌を見てもらうようにしている。いくつも言葉を重ねるより、それが一番「届く」と感じている。 肌のケアは今も日課だ。状態がいいときは、市販のローションなどで保湿する。少し乾燥するときは保湿剤の白色ワセリンを、炎症が出そうな時は、弱めのステロイドの塗り薬やタクロリムス軟膏(なんこう)を使う。手荒れがひどければ、白い綿の手袋をはめて外出する。 毎日のケアは「みんなが毎日歯磨きをするのと一緒」だ。最近は、肌の状態を見て自分で判断し、炎症が起こる前にふさわしい処置を選べるようになった。
闘病中もずっと近くにいてくれた大学時代の同級生(31)と、09年に結婚した。今は夫と愛犬と一つ屋根の下で暮らす。
10月31日、友の会が主催するアトピー性皮膚炎の講演会が都内であった。荻野さんは司会進行役をした。グレーのスーツ姿で、数十人の参加者に向け、20代の青春時代を暗く過ごした自分の体験を紹介。「同じ患者だから分かることがあると思います。電話を下さい」と、力を込めて言った。(鈴木彩子)
ーーーーー(ここまで引用)-----
http://megalodon.jp/2010-1113-1506-08/www.asahi.com/health/ikiru/TKY201011130193.html
「悔やみながら生きるのはやめよう」 これは、とても良い言葉だと思います。アトピーのステロイド離脱、ステロイド再使用、それら一つ一つの出来事は、患者にそれまで信じていたものを崩れさせ、他者不信、あるいは自己懐疑・否定、そういったネガティブな気持ちへと追い込みやすいです。それを乗り越えた患者さんが、まだそういう境地に至っていない方々に、心の置き様のコツのようなものを伝えることは、とても有意義です。これは、ステロイドの是非とか、その患者がステロイドを使用しているとか使用していないとかの話とは全くの別の次元です。そのような気持ちに辿り着いた患者さんは幸せです。心からエールを送りたいと思います。
振り返ってみれば、高2の頃、バレエをやっていたくらいでしたから、顔の湿疹や赤みはとても気になったことでしょう。思春期です。もっときれいにしようと、ステロイド外用剤で抑えたかった気持ちは罪ではありません。大学4年の冬に、離脱を決意して訪ねた漢方の先生は「いつかは解らないけど必ず治る」と言ってくれました。その言葉がなければ5年半という長い間、頑張れ切れなかったでしょう。そのあとに巡り会った逓信病院の江藤先生は、入院の手配をして、看護婦さんたちは毎日毎日、リント布に亜鉛華軟膏を塗って、談笑して勇気付けながら手当てをしてくれました。 そのときどきで、この患者さんは一生懸命に考えて、素晴らしい方々に巡り合って、今があるのです。何一つ無駄なことなどありませんでした。
ーーーーー
アトピーは、5年半もかけて闘病するような「難病」ではない
ーーーーー
ここは少し疑問を感じます。昨日記しましたように、5年半という長い離脱の苦しみがあったからこそ、今があるからです。「悔やみながら生きるのはやめよう」という言葉が、この5年半のことは忘れてしまおう、という否定的な意味であるならば、それは彼女のためにも、いま、まさに「5年半」の真っただ中にいて苦しみながら自分の道を模索している他の患者たちのためにもよくない。残酷に響くかもしれない言葉です。
ーーーーー
東京都内に拠点を置く患者会の一つ、NPO法人・日本アレルギー友の会
ーーーーー
ホームページはこちらです。http://www.allergy.gr.jp/
患者会というのは、日本中にたくさんあります。それぞれに色々な経緯をもって生まれてきていますし、核となる方が変わるとまったく異なるポリシーの会となることも多いです。いわゆるアトピービジネスのネットワークの一環として存在する大仕掛けなものもあれば、まったくの草の根の、それこそときどき数人で集まってお茶をする程度の規模のものまであります。 こういった「患者会」を知るには、まず、その組織がどのような構成になっているかを知っておく必要があります。日本アレルギー友の会ですが、まず気になったのは、ホームページの充実ぶりです。お金がかかってそうだ、ってことです。会報も定期的に発行しているようですし、会員からの会費だけでまかなわれているとしたら赤字ではないでしょうか?NPO法人格は取得しているようです。「サポート企業募集」のページがありました。
http://www.allergy.gr.jp/about/supporter.html
サポート企業一覧
NPO法人日本アレルギー友の会は、下記の企業のご支援を得て運営をしております。
製薬企業がずらりと並びます。プロトピック軟膏を発売しているアステラス製薬も協賛しているようです。べつに、企業が、こういった患者会の活動を支援するのを、咎めるつもりはありません。しかし、こういった企業からの協賛を取り付けた患者会は、当然ですが、運営方針として、その企業の薬に関する負の情報は発信しにくくなるでしょう。
「スタッフ・顧問からみなさまへ」のページを見ると(http://www.allergy.gr.jp/about/message.html )、常任顧問として、逓信病院の江藤先生が名を連ねています。これは不思議なことではありません。朝日新聞の記事の患者さんは、逓信病院に入院したときに、きっとこの会の冊子を手にとられて励まされたのでしょう。偶然ではないと思います。 患者会と言うのは、医者や製薬会社が旗を振って出来上がるものではありません。おそらく日本アレルギー友の会も、最初は、まったくの草の根の数名からの会だったのではないでしょうか。しかし、組織というのは、活動を維持しよう、広げようとすれば、それなりのお金がかかります。ここで、患者会としての純粋性を保つという意味で手弁当のボランティアだけで頑張りぬくグループもいれば、お医者さんを通じて製薬会社などから協賛を集め、それで活動を広げていこうという戦略に出るグループもいます。日本アレルギー友の会は後者だということでしょう。
江藤先生が顧問として名を連ねていらっしゃるのは、立派なことだと思います。おそらくボランティアかそれに近いものでしょう。「顧問料があるのではないか」と邪推する方もいらっしゃるかもしれませんが、医者というのは、こんなところで顧問料を稼ぐよりも、はるかに効率の良い稼ぎ場所があります。江藤先生なりの患者教育・指導への熱い思いのほうが大きいのでしょう。ただし、それは、「患者はステロイド外用剤を怖がるべきではない」という思いでしょうが。
まあ、ぶっちゃけて言いますと、患者のステロイド恐怖を取り除くため、すなわちステロイド依存の問題が大きく騒がれることのないように、製薬企業から集めた協賛金で、朝日新聞の記事で今回紹介された患者さんのような純朴なかたがたを神輿にかついで、皮膚科の世界の平穏に寄与しよう、って会に、わたしには見えます。
もっとも患者さんたちには、それなりの意義はあります。ステロイドを使わずに頑張る患者会というのは、草の根的にあちこちにありますが、そういうところは、ステロイド外用剤を使って日々の生活を乗り切っている患者さんたちは、参加しにくいです。自分がステロイドを使っていることに対して罪悪感を感じてしまうらしいです。そういう方たちだって、仲間はほしいし、自分のような道もある、と主張し、認めて欲しいです。その方たちにとっては、有難い存在だと思います。
ただ、
ーーーーー
アトピーは、5年半もかけて闘病するような「難病」ではない
ーーーーー
これは、止めて欲しいです。ステロイド離脱を頑張っている方たちが強く傷つきますし、ただでさえ厄介な家族や職場など周囲の無理解を増やします。ステロイド使用しているひとが、「あなたはまだステロイドを使っているから治ったとは言えない」と言われるのと同じくらい傷つくでしょう。
ステロイド使用している患者も、使用していない患者も、それぞれの事情や考え方があるのだから、互いに相手が傷つくようなことを言うのは避けましょう。相手の存在自体がストレスであるのなら、ひっそりと住み分ければいいだけのことです。
もっとも「アトピーは、5年半もかけて闘病するような「難病」ではない」というのは、本当に彼女の言葉なのかは、疑問です。朝日新聞の記事は、しょせん取材した記者の文章です。実は、患者である彼女の言葉ではなく、記者の思い・願いではないではないだろうか?「読者広場」に、担当した記者のメッセージがあります。
ーーーーー
≪担当した鈴木彩子記者から≫
「患者を生きる」は今週から新シリーズ「皮膚」が始まりました。 第一週目は、20代のころに重いアトピー性皮膚炎に悩んだ女性の体験を紹介します。
アトピー性皮膚炎は、幼少時の病気というイメージが強いかも知れませんが、実は大人で悩んでいる人も少なくありません。 国の推計では、全国に35万人近くいる患者さんのうち、10才未満が全体の3割、10代はやや少なく、20代が2割を占めるそうです。30代、40代以上の患者さんもたくさんいらっしゃいます。こういった傾向は、今に始まったことではなく、まだステロイドの塗り薬が開発されていなかった何十年も前から指摘されていたのだそうです。アトピーの治療、というといろいろな疑問がわいてくると思います。
アトピーは治るの?正しい治療って何?ステロイドは怖くない?毒がたまるってきいたけど本当?などなど。
インターネット上には様々な情報が氾濫していますし、筆者も、こういった疑問を抱いていた一人です。 取材を終えて今思うことは、「適切な治療は、きれいな肌を取り戻すいちばんの近道」ということです。
連載では、現在の医学で分かっている情報を、できるだけ正確にお伝えしていきたいと思っています。皆様の体験もお寄せ下さい。お待ちしております。
ーーーーー
「筆者も、こういった疑問を抱いていた一人です」。この一文が目を引きます。この記者さん、身近にアトピーのお子さんとかいらっしゃるのではないだろうか?その子が、何年も地獄のような苦しみを味わうなんて想像したくない。その思いが「アトピーは、5年半もかけて闘病するような「難病」ではない」っていう表現になって表れてるんじゃないでしょうか。・・考え過ぎかも。違ってたら御免なさい。連絡いただければ訂正します。
朝日の文章は取材記事ですが、記事中の患者さんの自筆の文章がこちらにあります。
http://www.allergy.gr.jp/topics/experience/articles/2010/article2010091209.html
その中で、
ーーーーー
これぞ脱ステ成功!
ーーーーー
これこそが偽りの無い彼女の気持ちだと思います。なんか、すごく微笑ましいです。まさに患者の生の声、って感じです。
ステロイドを最後の駄目押しとして8日間、再使用はしたけれど、結果的には5年半かけて、あなたは脱ステに本当に成功したんです。あなたの5年半は決して無駄ではない、脱ステのお手本のような話です。よく頑張りました。えらかった、えらかった(^^)。
表題の、
ーーーーー
「ステロイドは怖くない・・・」を伝えていきたくて
ーーーーー
の気持ちも、私なりにわかるような気がします。自分が脱ステに成功できたから「ステロイドは怖くない」なんでしょう。もうステロイド依存の情報に怯えながら恐る恐るステロイドに頼らなくてもいい。脱ステできたという成功体験あっての「ステロイドは怖くない」です、彼女の場合は。
それで、朝日新聞の今回の連載なんですが・・朝日新聞だってよくよく考えてみれば営利企業です。広告収入で食べてます。製薬会社は大きなスポンサーです。 朝日新聞が、日本アレルギー友の会とつるんで今回の記事になったとは、決して思いませんが、それにしても、ステロイド依存という、皮膚科学会内でも十分に意見統一されていない問題には会社としては触れにくいかもしれません。 そうなると、この鈴木彩子さんという記者さん個人の、ジャーナリスト魂に訴えるしかないんですけどね。最近は、新聞やテレビもネットに押されて広告取りにくくて経営圧迫されて、そういう魂持った記者さん少なくなってきてますからね。明日の最終回、もう原稿仕上がってるんでしょうが、どうなりますことやら・・。
2010.11.13
ーーーーー(ここから引用)-----
【皮膚 大人のアトピー:5 悩む人のため闘病経験生かす】
重症のアトピー性皮膚炎で入院治療を受けた荻野美和子さん(31)は、8日間で快適な肌を取り戻した。その後も月1回、定期的に通院した。強い症状は治まり、「新しい自分」になった気がしていた。
2007年1月、あらためて就職活動を始めようと、就職支援塾に通い始めた。就職難の中で勝ち取った内定を辞退し、アトピーに悩んでふさぎ込んだ5年半を取り戻したかった。でも、過去を振り返るうち、アトピーが切っても切り離せない存在だと気づいた。「悔やみながら生きるのはやめよう」 経験を生かそうと思った。アトピーは、5年半もかけて闘病するような「難病」ではないことを、同じ境遇にいる人たちに伝えたかった。本を調べ、東京都内に拠点を置く患者会の一つ、NPO法人・日本アレルギー友の会に連絡した。事務局長の丸山恵理(まるやま・えり)さん(50)に面会して闘病体験を話すと、すぐ療養相談員に採用された。
相談員を始めた当初、自分の体験を伝えようと、力が入ることもあった。だが、最近は聞き役に徹している。「そうですね。つらいですね」と耳を傾けることで、患者の気持ちが少し和らぐ気がする。
もう一つ、できるだけイベントに参加して、きれいになった自分の肌を見てもらうようにしている。いくつも言葉を重ねるより、それが一番「届く」と感じている。 肌のケアは今も日課だ。状態がいいときは、市販のローションなどで保湿する。少し乾燥するときは保湿剤の白色ワセリンを、炎症が出そうな時は、弱めのステロイドの塗り薬やタクロリムス軟膏(なんこう)を使う。手荒れがひどければ、白い綿の手袋をはめて外出する。 毎日のケアは「みんなが毎日歯磨きをするのと一緒」だ。最近は、肌の状態を見て自分で判断し、炎症が起こる前にふさわしい処置を選べるようになった。
闘病中もずっと近くにいてくれた大学時代の同級生(31)と、09年に結婚した。今は夫と愛犬と一つ屋根の下で暮らす。
10月31日、友の会が主催するアトピー性皮膚炎の講演会が都内であった。荻野さんは司会進行役をした。グレーのスーツ姿で、数十人の参加者に向け、20代の青春時代を暗く過ごした自分の体験を紹介。「同じ患者だから分かることがあると思います。電話を下さい」と、力を込めて言った。(鈴木彩子)
ーーーーー(ここまで引用)-----
http://megalodon.jp/2010-1113-1506-08/www.asahi.com/health/ikiru/TKY201011130193.html
「悔やみながら生きるのはやめよう」 これは、とても良い言葉だと思います。アトピーのステロイド離脱、ステロイド再使用、それら一つ一つの出来事は、患者にそれまで信じていたものを崩れさせ、他者不信、あるいは自己懐疑・否定、そういったネガティブな気持ちへと追い込みやすいです。それを乗り越えた患者さんが、まだそういう境地に至っていない方々に、心の置き様のコツのようなものを伝えることは、とても有意義です。これは、ステロイドの是非とか、その患者がステロイドを使用しているとか使用していないとかの話とは全くの別の次元です。そのような気持ちに辿り着いた患者さんは幸せです。心からエールを送りたいと思います。
振り返ってみれば、高2の頃、バレエをやっていたくらいでしたから、顔の湿疹や赤みはとても気になったことでしょう。思春期です。もっときれいにしようと、ステロイド外用剤で抑えたかった気持ちは罪ではありません。大学4年の冬に、離脱を決意して訪ねた漢方の先生は「いつかは解らないけど必ず治る」と言ってくれました。その言葉がなければ5年半という長い間、頑張れ切れなかったでしょう。そのあとに巡り会った逓信病院の江藤先生は、入院の手配をして、看護婦さんたちは毎日毎日、リント布に亜鉛華軟膏を塗って、談笑して勇気付けながら手当てをしてくれました。 そのときどきで、この患者さんは一生懸命に考えて、素晴らしい方々に巡り合って、今があるのです。何一つ無駄なことなどありませんでした。
ーーーーー
アトピーは、5年半もかけて闘病するような「難病」ではない
ーーーーー
ここは少し疑問を感じます。昨日記しましたように、5年半という長い離脱の苦しみがあったからこそ、今があるからです。「悔やみながら生きるのはやめよう」という言葉が、この5年半のことは忘れてしまおう、という否定的な意味であるならば、それは彼女のためにも、いま、まさに「5年半」の真っただ中にいて苦しみながら自分の道を模索している他の患者たちのためにもよくない。残酷に響くかもしれない言葉です。
ーーーーー
東京都内に拠点を置く患者会の一つ、NPO法人・日本アレルギー友の会
ーーーーー
ホームページはこちらです。http://www.allergy.gr.jp/
患者会というのは、日本中にたくさんあります。それぞれに色々な経緯をもって生まれてきていますし、核となる方が変わるとまったく異なるポリシーの会となることも多いです。いわゆるアトピービジネスのネットワークの一環として存在する大仕掛けなものもあれば、まったくの草の根の、それこそときどき数人で集まってお茶をする程度の規模のものまであります。 こういった「患者会」を知るには、まず、その組織がどのような構成になっているかを知っておく必要があります。日本アレルギー友の会ですが、まず気になったのは、ホームページの充実ぶりです。お金がかかってそうだ、ってことです。会報も定期的に発行しているようですし、会員からの会費だけでまかなわれているとしたら赤字ではないでしょうか?NPO法人格は取得しているようです。「サポート企業募集」のページがありました。
http://www.allergy.gr.jp/about/supporter.html
サポート企業一覧
NPO法人日本アレルギー友の会は、下記の企業のご支援を得て運営をしております。
- アクセーヌ株式会社
- アステラス製薬株式会社
- アストラゼネカ株式会社
- アボットジャパン株式会社
- エーザイ株式会社
- NI帝人商事株式会社
- 株式会社カービックジャパン
- 花王株式会社
- グラクソ・スミスクライン株式会社
- シェリング・プラウ株式会社
- 株式会社資生堂
- ダイワボウノイ株式会社
- 株式会社タケウチ
- 田辺三菱製薬株式会社
- 帝人ファーマ株式会社
- 鳥居薬品株式会社
- ノバルティスファーマ株式会社
- パリ・ジャパン株式会社
- 万有製薬株式会社
- マルホ株式会社
- ヤサカ産業株式会社
製薬企業がずらりと並びます。プロトピック軟膏を発売しているアステラス製薬も協賛しているようです。べつに、企業が、こういった患者会の活動を支援するのを、咎めるつもりはありません。しかし、こういった企業からの協賛を取り付けた患者会は、当然ですが、運営方針として、その企業の薬に関する負の情報は発信しにくくなるでしょう。
「スタッフ・顧問からみなさまへ」のページを見ると(http://www.allergy.gr.jp/about/message.html )、常任顧問として、逓信病院の江藤先生が名を連ねています。これは不思議なことではありません。朝日新聞の記事の患者さんは、逓信病院に入院したときに、きっとこの会の冊子を手にとられて励まされたのでしょう。偶然ではないと思います。 患者会と言うのは、医者や製薬会社が旗を振って出来上がるものではありません。おそらく日本アレルギー友の会も、最初は、まったくの草の根の数名からの会だったのではないでしょうか。しかし、組織というのは、活動を維持しよう、広げようとすれば、それなりのお金がかかります。ここで、患者会としての純粋性を保つという意味で手弁当のボランティアだけで頑張りぬくグループもいれば、お医者さんを通じて製薬会社などから協賛を集め、それで活動を広げていこうという戦略に出るグループもいます。日本アレルギー友の会は後者だということでしょう。
江藤先生が顧問として名を連ねていらっしゃるのは、立派なことだと思います。おそらくボランティアかそれに近いものでしょう。「顧問料があるのではないか」と邪推する方もいらっしゃるかもしれませんが、医者というのは、こんなところで顧問料を稼ぐよりも、はるかに効率の良い稼ぎ場所があります。江藤先生なりの患者教育・指導への熱い思いのほうが大きいのでしょう。ただし、それは、「患者はステロイド外用剤を怖がるべきではない」という思いでしょうが。
まあ、ぶっちゃけて言いますと、患者のステロイド恐怖を取り除くため、すなわちステロイド依存の問題が大きく騒がれることのないように、製薬企業から集めた協賛金で、朝日新聞の記事で今回紹介された患者さんのような純朴なかたがたを神輿にかついで、皮膚科の世界の平穏に寄与しよう、って会に、わたしには見えます。
もっとも患者さんたちには、それなりの意義はあります。ステロイドを使わずに頑張る患者会というのは、草の根的にあちこちにありますが、そういうところは、ステロイド外用剤を使って日々の生活を乗り切っている患者さんたちは、参加しにくいです。自分がステロイドを使っていることに対して罪悪感を感じてしまうらしいです。そういう方たちだって、仲間はほしいし、自分のような道もある、と主張し、認めて欲しいです。その方たちにとっては、有難い存在だと思います。
ただ、
ーーーーー
アトピーは、5年半もかけて闘病するような「難病」ではない
ーーーーー
これは、止めて欲しいです。ステロイド離脱を頑張っている方たちが強く傷つきますし、ただでさえ厄介な家族や職場など周囲の無理解を増やします。ステロイド使用しているひとが、「あなたはまだステロイドを使っているから治ったとは言えない」と言われるのと同じくらい傷つくでしょう。
ステロイド使用している患者も、使用していない患者も、それぞれの事情や考え方があるのだから、互いに相手が傷つくようなことを言うのは避けましょう。相手の存在自体がストレスであるのなら、ひっそりと住み分ければいいだけのことです。
もっとも「アトピーは、5年半もかけて闘病するような「難病」ではない」というのは、本当に彼女の言葉なのかは、疑問です。朝日新聞の記事は、しょせん取材した記者の文章です。実は、患者である彼女の言葉ではなく、記者の思い・願いではないではないだろうか?「読者広場」に、担当した記者のメッセージがあります。
ーーーーー
≪担当した鈴木彩子記者から≫
「患者を生きる」は今週から新シリーズ「皮膚」が始まりました。 第一週目は、20代のころに重いアトピー性皮膚炎に悩んだ女性の体験を紹介します。
アトピー性皮膚炎は、幼少時の病気というイメージが強いかも知れませんが、実は大人で悩んでいる人も少なくありません。 国の推計では、全国に35万人近くいる患者さんのうち、10才未満が全体の3割、10代はやや少なく、20代が2割を占めるそうです。30代、40代以上の患者さんもたくさんいらっしゃいます。こういった傾向は、今に始まったことではなく、まだステロイドの塗り薬が開発されていなかった何十年も前から指摘されていたのだそうです。アトピーの治療、というといろいろな疑問がわいてくると思います。
アトピーは治るの?正しい治療って何?ステロイドは怖くない?毒がたまるってきいたけど本当?などなど。
インターネット上には様々な情報が氾濫していますし、筆者も、こういった疑問を抱いていた一人です。 取材を終えて今思うことは、「適切な治療は、きれいな肌を取り戻すいちばんの近道」ということです。
連載では、現在の医学で分かっている情報を、できるだけ正確にお伝えしていきたいと思っています。皆様の体験もお寄せ下さい。お待ちしております。
ーーーーー
「筆者も、こういった疑問を抱いていた一人です」。この一文が目を引きます。この記者さん、身近にアトピーのお子さんとかいらっしゃるのではないだろうか?その子が、何年も地獄のような苦しみを味わうなんて想像したくない。その思いが「アトピーは、5年半もかけて闘病するような「難病」ではない」っていう表現になって表れてるんじゃないでしょうか。・・考え過ぎかも。違ってたら御免なさい。連絡いただければ訂正します。
朝日の文章は取材記事ですが、記事中の患者さんの自筆の文章がこちらにあります。
http://www.allergy.gr.jp/topics/experience/articles/2010/article2010091209.html
その中で、
ーーーーー
これぞ脱ステ成功!
ーーーーー
これこそが偽りの無い彼女の気持ちだと思います。なんか、すごく微笑ましいです。まさに患者の生の声、って感じです。
ステロイドを最後の駄目押しとして8日間、再使用はしたけれど、結果的には5年半かけて、あなたは脱ステに本当に成功したんです。あなたの5年半は決して無駄ではない、脱ステのお手本のような話です。よく頑張りました。えらかった、えらかった(^^)。
表題の、
ーーーーー
「ステロイドは怖くない・・・」を伝えていきたくて
ーーーーー
の気持ちも、私なりにわかるような気がします。自分が脱ステに成功できたから「ステロイドは怖くない」なんでしょう。もうステロイド依存の情報に怯えながら恐る恐るステロイドに頼らなくてもいい。脱ステできたという成功体験あっての「ステロイドは怖くない」です、彼女の場合は。
それで、朝日新聞の今回の連載なんですが・・朝日新聞だってよくよく考えてみれば営利企業です。広告収入で食べてます。製薬会社は大きなスポンサーです。 朝日新聞が、日本アレルギー友の会とつるんで今回の記事になったとは、決して思いませんが、それにしても、ステロイド依存という、皮膚科学会内でも十分に意見統一されていない問題には会社としては触れにくいかもしれません。 そうなると、この鈴木彩子さんという記者さん個人の、ジャーナリスト魂に訴えるしかないんですけどね。最近は、新聞やテレビもネットに押されて広告取りにくくて経営圧迫されて、そういう魂持った記者さん少なくなってきてますからね。明日の最終回、もう原稿仕上がってるんでしょうが、どうなりますことやら・・。
2010.11.13