化学物質過敏症について
久しぶりのブログ記事更新になります。
化学物質過敏症と、アトピー性皮膚炎のステロイド依存問題とは、まったく異なる話なのですが、底流あるいは構造に似ている部分があると思ったので、記しておきます。
「NATROMの日記」というブログ(http://natrom.hatenablog.com/entry/20180807/p1)があって、筆者は内科のお医者さんとプロフにあるのですが、化学物質過敏症という疾患の存在に懐疑的です。医学論文を検索したり、ネットで情報収集もしておられ、私も同じ医師ですから姿勢は理解できます。真面目な方なのでしょう。しかし、現場を見てきた者から言わせていただくと、痛い。
私が化学物質過敏症問題に関わったのは、シックハウス症候群が問題となった1990年代でした。
その前に日本で化学物質過敏症が問題となったのは、1970年頃の「佐久病」でした。石川哲先生の回想に書かれています。当時、農薬をヘリコプターで空中散布するということが行われていて、石川先生によれば、新しい農薬が出来るたびに、佐久の地域でまず実験的に散布されたのだそうです(ご本人から直接聞きました)。(http://comic-soon.shogakukan.co.jp/blog/interview/kabin-no-tsuma-interview-1/)
何が言いたいかというと、化学物質過敏症というのは、地震や天災の如く、ある日突然、文明のひずみのような形で顕在化するということです。そして、農薬の空中散布の中止や、輸入構造合板の問題(後の資料お読みください)の解決とともに沈静化します。沈静化した後の、いわば「平時」に、「化学物質過敏症?なんだその疾患?」と疑問を持って、文献を調べてもなかなか理解できないと思います。
しかし、またいつか化学薬品の大量暴露という偶発的な事故というか社会現象は起きるでしょう。そのときに「化学物質過敏症」問題は再燃します。
アトピー性皮膚炎のステロイド依存症問題にもそのような面があります。1980年前後の日本でのステロイド外用剤の過剰処方・濫用は、当時を知る者であれば否定できないでしょう。しかし、当然のことながら、医学論文を検索しても、そんな社会の現場的な話は記録されていません。しかし、私がアトピー性皮膚炎の診療に当たっていた1990年代、ほとんどの患者が多かれ少なかれステロイド依存症に陥っていました。
現在では、ひょっとしたら、ステロイド依存症患者を診る機会は少ないのかもしれません。しかし、当たり前ですが、「平時」の現在でも化学物質過敏症と考えざるを得ない患者は存在しますし、ステロイド依存に陥る患者もいるでしょう。やっかいなのは、両方とも、決め手となる検査が無い点です。
決め手となる検査がありませんから、思い込みで、自分は化学物質過敏症だ、ステロイド依存だ、と勘違いする患者の比率も「平時」には増えます。こういった方々を対象とする商売も生じるでしょう。それを問題視する姿勢は、まったく関わろうとしないよりは評価できますが、しかし、化学物質過敏症やステロイド依存など存在しない、あるいは、このような疾患について語るのは社会を不安にするからタブーだ、としてしまう姿勢は、どう考えてもおかしいです。
以下は、以前一般向けの本(→こちら)に、解説として私が記した文章です。化学物質過敏症がどういったものかの理解の助けになると思います。
(H30.9.6記)
化学物質過敏症と、アトピー性皮膚炎のステロイド依存問題とは、まったく異なる話なのですが、底流あるいは構造に似ている部分があると思ったので、記しておきます。
「NATROMの日記」というブログ(http://natrom.hatenablog.com/entry/20180807/p1)があって、筆者は内科のお医者さんとプロフにあるのですが、化学物質過敏症という疾患の存在に懐疑的です。医学論文を検索したり、ネットで情報収集もしておられ、私も同じ医師ですから姿勢は理解できます。真面目な方なのでしょう。しかし、現場を見てきた者から言わせていただくと、痛い。
私が化学物質過敏症問題に関わったのは、シックハウス症候群が問題となった1990年代でした。
その前に日本で化学物質過敏症が問題となったのは、1970年頃の「佐久病」でした。石川哲先生の回想に書かれています。当時、農薬をヘリコプターで空中散布するということが行われていて、石川先生によれば、新しい農薬が出来るたびに、佐久の地域でまず実験的に散布されたのだそうです(ご本人から直接聞きました)。(http://comic-soon.shogakukan.co.jp/blog/interview/kabin-no-tsuma-interview-1/)
何が言いたいかというと、化学物質過敏症というのは、地震や天災の如く、ある日突然、文明のひずみのような形で顕在化するということです。そして、農薬の空中散布の中止や、輸入構造合板の問題(後の資料お読みください)の解決とともに沈静化します。沈静化した後の、いわば「平時」に、「化学物質過敏症?なんだその疾患?」と疑問を持って、文献を調べてもなかなか理解できないと思います。
しかし、またいつか化学薬品の大量暴露という偶発的な事故というか社会現象は起きるでしょう。そのときに「化学物質過敏症」問題は再燃します。
アトピー性皮膚炎のステロイド依存症問題にもそのような面があります。1980年前後の日本でのステロイド外用剤の過剰処方・濫用は、当時を知る者であれば否定できないでしょう。しかし、当然のことながら、医学論文を検索しても、そんな社会の現場的な話は記録されていません。しかし、私がアトピー性皮膚炎の診療に当たっていた1990年代、ほとんどの患者が多かれ少なかれステロイド依存症に陥っていました。
現在では、ひょっとしたら、ステロイド依存症患者を診る機会は少ないのかもしれません。しかし、当たり前ですが、「平時」の現在でも化学物質過敏症と考えざるを得ない患者は存在しますし、ステロイド依存に陥る患者もいるでしょう。やっかいなのは、両方とも、決め手となる検査が無い点です。
決め手となる検査がありませんから、思い込みで、自分は化学物質過敏症だ、ステロイド依存だ、と勘違いする患者の比率も「平時」には増えます。こういった方々を対象とする商売も生じるでしょう。それを問題視する姿勢は、まったく関わろうとしないよりは評価できますが、しかし、化学物質過敏症やステロイド依存など存在しない、あるいは、このような疾患について語るのは社会を不安にするからタブーだ、としてしまう姿勢は、どう考えてもおかしいです。
以下は、以前一般向けの本(→こちら)に、解説として私が記した文章です。化学物質過敏症がどういったものかの理解の助けになると思います。
(H30.9.6記)
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