温泉治療と海水浴治療について
先回、日本オムバスという、温泉水宅配のアトピービジネスについて、記しました。
悪徳商法というよりは、ぼったくり系のビジネスですが、1990年頃から、アトピー性皮膚炎のステロイド皮膚症の問題に気付いて社会に訴えてきたという良い面もあるという指摘をしました。しかし温泉治療そのものについては、日本オムバスの独自の療法ではありません。温泉療法の歴史は古く、また世界的に存在します。
海水浴についても、同様のことが言えます。古くは、皮膚病といえば、温泉か海水浴くらいしかありませんでした。
わたしは1959年生まれですが、夏にあせもが出来ると、父親のオート三輪に乗せられて近場の海水浴場に連れて行かれたものです。皮膚科で開業している医院というのが、まだ珍しかった時代です。
日本と世界の、温泉治療と海水浴治療の取り組みを、いくつか、過去に放映されたテレビ番組からピックアップしてみましょう。
悪徳商法というよりは、ぼったくり系のビジネスですが、1990年頃から、アトピー性皮膚炎のステロイド皮膚症の問題に気付いて社会に訴えてきたという良い面もあるという指摘をしました。しかし温泉治療そのものについては、日本オムバスの独自の療法ではありません。温泉療法の歴史は古く、また世界的に存在します。
海水浴についても、同様のことが言えます。古くは、皮膚病といえば、温泉か海水浴くらいしかありませんでした。
わたしは1959年生まれですが、夏にあせもが出来ると、父親のオート三輪に乗せられて近場の海水浴場に連れて行かれたものです。皮膚科で開業している医院というのが、まだ珍しかった時代です。
日本と世界の、温泉治療と海水浴治療の取り組みを、いくつか、過去に放映されたテレビ番組からピックアップしてみましょう。
(画像または→ここをクリックすると動画が始まります)
野口順一先生は、大正14年(1924年)の生まれですから今年87才になります。経歴は、
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昭和24年、東北大学医学部卒業。昭和26年、東北大学大学院入学。
昭和30年、同大学院卒業後、東北大学医学部皮膚科講師、東北大学鳴子分院講師を経て、昭和37年から岩手県立中央病院皮膚科長を勤めた。
平成2年3月、同病院を定年退職。同年4月から盛岡市上田病院副院長。
ーーーーー
です。昭和30年代から、一貫してステロイドを用いない皮膚病治療を、温泉水を活用して行ってきました。著書に絶版ですが「アトピー性皮膚炎の温泉・水治療法―ステロイド皮膚症からの離脱」(1995年)があります。
こういう皮膚科医もいるんです。
※追記:現在は上田病院は存在せず、野口先生は別の病院(考仁病院)で外来のみをなさっています。
野口順一先生は、大正14年(1924年)の生まれですから今年87才になります。経歴は、
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昭和24年、東北大学医学部卒業。昭和26年、東北大学大学院入学。
昭和30年、同大学院卒業後、東北大学医学部皮膚科講師、東北大学鳴子分院講師を経て、昭和37年から岩手県立中央病院皮膚科長を勤めた。
平成2年3月、同病院を定年退職。同年4月から盛岡市上田病院副院長。
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です。昭和30年代から、一貫してステロイドを用いない皮膚病治療を、温泉水を活用して行ってきました。著書に絶版ですが「アトピー性皮膚炎の温泉・水治療法―ステロイド皮膚症からの離脱」(1995年)があります。
こういう皮膚科医もいるんです。
※追記:現在は上田病院は存在せず、野口先生は別の病院(考仁病院)で外来のみをなさっています。
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こちらは、海水浴治療を積極的に行っていた飯倉洋治先生です。現成育医療センターの大矢先生の元上司です。ステロイド皮膚症に理解があったかどうかは不明ですが、海水浴の効能はよく認識しておられました。この番組は1992年のものですが、こののち沖縄でイルカと遊ぶ療法も取り入れていたと聞きます(海に入るのを嫌がる子供をイルカと遊ぶことで誘導するらしい)。
※追記:飯倉洋治先生は1996年に昭和大教授に着任されたのち2003年に逝去されました。
私自身は、温泉治療も、海水浴治療も、自分で患者に施したことはないですが、患者が自分で試みた経過を追ったというのは、何例もあります。海水浴治療はすぐに結果が出ます。たぶん、皮表の黄色ブドウ球菌など、感染症対策になるのと、紫外線治療も関係しているのでしょう。
温泉湯治のほうはすぐには結果が出ません。のみならず、海水浴と違って、共同浴場の場合、細菌やウイルスの感染症が問題となります。お湯に漬かっている間は楽になることが多いので、リバウンド期にも向きます。保湿効果かな?と思います。
野口先生の温泉治療は、通常の湯治とは異なる方式のようですから、私にはちょっとコメントできないですが、番組内でおっしゃっていることは実に納得がいくもので、皮膚科の大先輩に、こういう方がいらっしゃるというのは、嬉しい限りです。
「ステロイド依存症」というのは、野口先生の口から普通に出てくることを考えても、認識している皮膚科臨床医は少なくはないのだと思います。
こちらは、海水浴治療を積極的に行っていた飯倉洋治先生です。現成育医療センターの大矢先生の元上司です。ステロイド皮膚症に理解があったかどうかは不明ですが、海水浴の効能はよく認識しておられました。この番組は1992年のものですが、こののち沖縄でイルカと遊ぶ療法も取り入れていたと聞きます(海に入るのを嫌がる子供をイルカと遊ぶことで誘導するらしい)。
※追記:飯倉洋治先生は1996年に昭和大教授に着任されたのち2003年に逝去されました。
私自身は、温泉治療も、海水浴治療も、自分で患者に施したことはないですが、患者が自分で試みた経過を追ったというのは、何例もあります。海水浴治療はすぐに結果が出ます。たぶん、皮表の黄色ブドウ球菌など、感染症対策になるのと、紫外線治療も関係しているのでしょう。
温泉湯治のほうはすぐには結果が出ません。のみならず、海水浴と違って、共同浴場の場合、細菌やウイルスの感染症が問題となります。お湯に漬かっている間は楽になることが多いので、リバウンド期にも向きます。保湿効果かな?と思います。
野口先生の温泉治療は、通常の湯治とは異なる方式のようですから、私にはちょっとコメントできないですが、番組内でおっしゃっていることは実に納得がいくもので、皮膚科の大先輩に、こういう方がいらっしゃるというのは、嬉しい限りです。
「ステロイド依存症」というのは、野口先生の口から普通に出てくることを考えても、認識している皮膚科臨床医は少なくはないのだと思います。
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次にフランスのアベンヌの温泉治療です。化粧品にアベンヌウォーターという製品がありますが、そのアベンヌです。温泉治療が日本独自のものではないことがわかります。
次に、イスラエルの死海での治療です。
次にフランスのアベンヌの温泉治療です。化粧品にアベンヌウォーターという製品がありますが、そのアベンヌです。温泉治療が日本独自のものではないことがわかります。
次に、イスラエルの死海での治療です。
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こういった自然環境を利用した皮膚病治療というのは、探してみると、昔から各地にいろいろあるわけです。
アトピー性皮膚炎の最良の治療法は、気候やライフスタイルだと思います(「規則正しい生活習慣」とかとは、別レベルの話です)。
昔、ネットの掲示板が流行り始めたばかりのころに、私は昔から実名でときどき患者のホームページの掲示板に皮膚科医としての意見を書き込んでいたのですが、もし自分がアトピー性皮膚炎であったら、どうするか?との問いに、
「自分なら、世界中旅行してみる。そして、自分に合った土地を探して、生活の基盤をそこで見つけるように、人生設計する。」と答えたところ、ある患者のひんしゅくを買ったことがありました。
その患者の主張は、短時間飛行機に乗るのさえ乾燥するのでためらわれる、お金もかかるしそんな夢みたいな非現実的なことを言われたって、患者としては傷付くだけだ、というものでした。
わからなくもないし、また最近は、昔に比べると日本の景気も悪くなって、生きていくだけで大変な状況ですが、今でもわたしは、正解はそこなんじゃないか、と思っています。
ぶっちゃけ、何かちょこちょこっと塗ったり飲んだり、短期間温泉に漬かってみたり、そんなことで「治る」ような病気じゃない、ってことです。そういったことを短期的に試みて良くなる、自分に向いていることが確認できたならば、次はそれをヒントに、人生設計自体を大きく変える作業に取り組むしかないのだと思います。極端な話をすれば、海水浴で良くなるタイプなら、海女さんになるのが一番いい(冗談書いてません、本気です)。
自然治癒傾向のある疾患だからこそ、その波に乗る最初のステップが一番肝心です。
2011.11.09
こういった自然環境を利用した皮膚病治療というのは、探してみると、昔から各地にいろいろあるわけです。
アトピー性皮膚炎の最良の治療法は、気候やライフスタイルだと思います(「規則正しい生活習慣」とかとは、別レベルの話です)。
昔、ネットの掲示板が流行り始めたばかりのころに、私は昔から実名でときどき患者のホームページの掲示板に皮膚科医としての意見を書き込んでいたのですが、もし自分がアトピー性皮膚炎であったら、どうするか?との問いに、
「自分なら、世界中旅行してみる。そして、自分に合った土地を探して、生活の基盤をそこで見つけるように、人生設計する。」と答えたところ、ある患者のひんしゅくを買ったことがありました。
その患者の主張は、短時間飛行機に乗るのさえ乾燥するのでためらわれる、お金もかかるしそんな夢みたいな非現実的なことを言われたって、患者としては傷付くだけだ、というものでした。
わからなくもないし、また最近は、昔に比べると日本の景気も悪くなって、生きていくだけで大変な状況ですが、今でもわたしは、正解はそこなんじゃないか、と思っています。
ぶっちゃけ、何かちょこちょこっと塗ったり飲んだり、短期間温泉に漬かってみたり、そんなことで「治る」ような病気じゃない、ってことです。そういったことを短期的に試みて良くなる、自分に向いていることが確認できたならば、次はそれをヒントに、人生設計自体を大きく変える作業に取り組むしかないのだと思います。極端な話をすれば、海水浴で良くなるタイプなら、海女さんになるのが一番いい(冗談書いてません、本気です)。
自然治癒傾向のある疾患だからこそ、その波に乗る最初のステップが一番肝心です。
2011.11.09