皮膚のコルチゾール染色・その3
先回の記事(→こちら)の続きです。あらたに3人の方の協力が得られました。ありがとうございます。
最初の方は、20才頃に脱ステして以後20年間ステロイドを使用していない方です。
幼児期には湿疹があったが落ち着き、中学生までは湿疹が無かったそうです。室内犬を飼うようになって湿疹が出始め、以後5~6年のステロイド外用歴があります。「犬を飼わなければよかったのかもしれない」とおっしゃっていました。・・私もそう思います。
肘窩に強い古典的アトピー性皮膚炎の皮疹で、コルチゾール染色でも均一に染まっています。先回の記事の3人の方々と同じで、依存からは解除されていると思います。
最初の方は、20才頃に脱ステして以後20年間ステロイドを使用していない方です。
幼児期には湿疹があったが落ち着き、中学生までは湿疹が無かったそうです。室内犬を飼うようになって湿疹が出始め、以後5~6年のステロイド外用歴があります。「犬を飼わなければよかったのかもしれない」とおっしゃっていました。・・私もそう思います。
肘窩に強い古典的アトピー性皮膚炎の皮疹で、コルチゾール染色でも均一に染まっています。先回の記事の3人の方々と同じで、依存からは解除されていると思います。
次は、ステロイド外用中の方です。効きが悪くなってきたとのことです。
臨床像は、一見してリバウンドです。脱ステロイドに携わったことのある皮膚科医なら誰もがうなずくでしょう。肘窩に留まらず、全体に浸潤性の紅斑が拡大しつつあります。
染色してみると、表皮のコルチゾール産生に抜けがあるのがわかります。表皮細胞は基底層から分裂して上方(外方)に分化していきますが、その基底層の細胞がところどころコルチゾールを作っておらず、ちょうど成層圏に出来たオゾンホールのようです。
臨床像は、一見してリバウンドです。脱ステロイドに携わったことのある皮膚科医なら誰もがうなずくでしょう。肘窩に留まらず、全体に浸潤性の紅斑が拡大しつつあります。
染色してみると、表皮のコルチゾール産生に抜けがあるのがわかります。表皮細胞は基底層から分裂して上方(外方)に分化していきますが、その基底層の細胞がところどころコルチゾールを作っておらず、ちょうど成層圏に出来たオゾンホールのようです。
次は2才9カ月のお子さんです。1才6ヶ月までステロイド使用していました。
幼児で生検させていただける機会は多くないと思うので貴重です。この方も、前の方と同じく、表皮のコルチゾール産生にパッチ状の「抜け」があります。
幼児で生検させていただける機会は多くないと思うので貴重です。この方も、前の方と同じく、表皮のコルチゾール産生にパッチ状の「抜け」があります。
現時点での仮説ですが、乳幼児は、もともと表皮のステロイド(コルチゾール)産生能力が弱いのではないかと思います。成長とともに外界の乾燥によってコルチゾール産生能を後天的に獲得するのでしょう。だから、脱保湿が有効ということになります(→こちら)。
3番目の幼児の皮疹は、決して依存・リバウンドではありません。典型的な乳児湿疹です。
2番目の方の、ステロイド外用を続けて依存に陥った、または陥りかけている状態の皮膚は、乳幼児の未熟でコルチゾール産生能の低い皮膚に似ています。ステロイドの連用によって、表皮のステロイド自己産生が低下したと考えられます。
私は、繰り返し、患者の皆様に向けて発信しますが、ステロイド依存は現実に存在しますが、全てのアトピー患者がステロイドを止めるべきだとまでは考えません。もしも最初の20年間ステロイドを中止している方が、現在なお続いている湿疹を、中学から数年間使っていたステロイドのせいだと考えたとしたら間違っていると思いますし、この方の場合、間歇的に依存に陥らない程度のステロイドの使用は、むしろメリットがあるかもしれません。(もちろん、医師を含めて他人が強要するような筋合いのことではありません。ステロイドを使わない方が、悪化因子に気が付きやすく、潜伏化・重症化させにくいというメリットもまた確かにあります)。
3番目の幼児の方に対しては、ステロイドは表皮のステロイド産生に関する成熟を妨げる可能性があるので、使わない方がいいと考えます。しかし、これもまた、あくまで私の仮説であって、絶対正しいわけでもないので、親御さんの判断に委ねるしかありません。ただし、もし私がこの子の親であったら、絶対にステロイドは使いません。これははっきりと断言できます。
余談になりますが、私は昔から、患者に「こうしなさい」という指示を、余程の場合以外は、およそしない皮膚科医でした。ステロイドを止めよとも使えとも言わない。もし、私に会う機会があって、私にどうしても判断を聞きたい場合には、「仮に先生が私だったら、どうしますか?」と聞いてみてください。それなら、即座に答えられます。自分に置き換えての決断なら容易です。
優柔不断なのではないです。患者を取り巻く状況すべてを把握しているわけではないので、「先生、どうしたらいいでしょう?」という問いには、「自分で考えて決めなさい」としか、答えられないのです。
その代わり、患者が選択したあとは、その自己決定に敬意を表して、私に出来る限りのサポートをする、そういう皮膚科医でした。
ここを見ている患者の皆様に再びお願いですが、ステロイド使用中、または中止して間もない方、および乳幼児の親御さんで皮膚の検査に協力してもいいという方、ぜひ052-264-0213までお電話の上、当院までお越しください。お礼にヒアルプロテクト30mlおよびクロフィブラート軟膏(30gくらいのサンプルサイズ)差し上げております。
上記仮説は、まだ仮説の域を出ません。今後症例数が集まって、違っていたと判明することは有り得ます。とにかく、症例を集めてみなければ真偽は判りません。もし、仮説が正しければ、ステロイド外用剤の真の適正使用法の確立に寄与できると考えます。
(2015/7/26記)
3番目の幼児の皮疹は、決して依存・リバウンドではありません。典型的な乳児湿疹です。
2番目の方の、ステロイド外用を続けて依存に陥った、または陥りかけている状態の皮膚は、乳幼児の未熟でコルチゾール産生能の低い皮膚に似ています。ステロイドの連用によって、表皮のステロイド自己産生が低下したと考えられます。
私は、繰り返し、患者の皆様に向けて発信しますが、ステロイド依存は現実に存在しますが、全てのアトピー患者がステロイドを止めるべきだとまでは考えません。もしも最初の20年間ステロイドを中止している方が、現在なお続いている湿疹を、中学から数年間使っていたステロイドのせいだと考えたとしたら間違っていると思いますし、この方の場合、間歇的に依存に陥らない程度のステロイドの使用は、むしろメリットがあるかもしれません。(もちろん、医師を含めて他人が強要するような筋合いのことではありません。ステロイドを使わない方が、悪化因子に気が付きやすく、潜伏化・重症化させにくいというメリットもまた確かにあります)。
3番目の幼児の方に対しては、ステロイドは表皮のステロイド産生に関する成熟を妨げる可能性があるので、使わない方がいいと考えます。しかし、これもまた、あくまで私の仮説であって、絶対正しいわけでもないので、親御さんの判断に委ねるしかありません。ただし、もし私がこの子の親であったら、絶対にステロイドは使いません。これははっきりと断言できます。
余談になりますが、私は昔から、患者に「こうしなさい」という指示を、余程の場合以外は、およそしない皮膚科医でした。ステロイドを止めよとも使えとも言わない。もし、私に会う機会があって、私にどうしても判断を聞きたい場合には、「仮に先生が私だったら、どうしますか?」と聞いてみてください。それなら、即座に答えられます。自分に置き換えての決断なら容易です。
優柔不断なのではないです。患者を取り巻く状況すべてを把握しているわけではないので、「先生、どうしたらいいでしょう?」という問いには、「自分で考えて決めなさい」としか、答えられないのです。
その代わり、患者が選択したあとは、その自己決定に敬意を表して、私に出来る限りのサポートをする、そういう皮膚科医でした。
ここを見ている患者の皆様に再びお願いですが、ステロイド使用中、または中止して間もない方、および乳幼児の親御さんで皮膚の検査に協力してもいいという方、ぜひ052-264-0213までお電話の上、当院までお越しください。お礼にヒアルプロテクト30mlおよびクロフィブラート軟膏(30gくらいのサンプルサイズ)差し上げております。
上記仮説は、まだ仮説の域を出ません。今後症例数が集まって、違っていたと判明することは有り得ます。とにかく、症例を集めてみなければ真偽は判りません。もし、仮説が正しければ、ステロイド外用剤の真の適正使用法の確立に寄与できると考えます。
(2015/7/26記)
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