表皮のステロイド合成の鍵は、上流にあるのかもしれない(その2)
On the role of skin in the regulation of local and systemic steroidogenic activities. Slominski AT, Manna PR, Tuckey RC. Steroids. 2015 Nov;103:72-88.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25988614
どうも、表皮のステロイド合成を律しているのは、CYP11A1などの合成酵素ではなく、原料であるコレステロールを、ミトコンドリア内に取り込む働きをするStAR (Steroidogenic Acute Regulatory Protein)およびMLN64という蛋白質のようです。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25988614
どうも、表皮のステロイド合成を律しているのは、CYP11A1などの合成酵素ではなく、原料であるコレステロールを、ミトコンドリア内に取り込む働きをするStAR (Steroidogenic Acute Regulatory Protein)およびMLN64という蛋白質のようです。
コルチゾールの合成は、原料のコレステロールをミトコンドリアに取り込むところから始まります。そのあと、CYP11A1ほかの合成酵素によって修飾されていくのですが、生成物の量は、酵素のほかに、原料であるコレステロールの量によっても規定されます。すなわち、コレステロールをミトコンドリア内に取り込むStARやMLN64という蛋白質が関係するようです。
アトピー性皮膚炎の皮膚において、StARやMLN64の量が低下していれば、コルチゾール産生能が低下していることの裏づけになります。この点を検討した論文は無いか探したら、ありました。
Steroid synthesis by primary human keratinocytes; implications for skin disease. Hannen RF, Michael AE, Jaulim A, Bhogal R, Burrin JM, Philpott MP. Biochem Biophys Res Commun. 2011 Jan 7;404(1):62-7.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21094146
アトピー性皮膚炎の皮膚において、StARやMLN64の量が低下していれば、コルチゾール産生能が低下していることの裏づけになります。この点を検討した論文は無いか探したら、ありました。
Steroid synthesis by primary human keratinocytes; implications for skin disease. Hannen RF, Michael AE, Jaulim A, Bhogal R, Burrin JM, Philpott MP. Biochem Biophys Res Commun. 2011 Jan 7;404(1):62-7.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21094146
青はわかりやすいように細胞核を染めたもので、StAR,MLN64に相当するのは緑の部分です。上段は正常表皮で、StARは表皮基底細胞でよく染まっています。MLN64はそれ以降の分化した細胞で染まるようです。中段はアトピー性皮膚炎の無疹部、下段は病変部ですが、StARの染色が明らかに低下しています。
私は、表皮細胞内のコルチゾールそのものを染色して、乳児のアトピー性皮膚炎や、ステロイド依存状態にある患者の皮膚で、低下していることを報告しましたが、StARで染色すると、もっとはっきりとした結果が得られるかもしれません。また、健常人にステロイドを外用したときに、コルチゾールを染色してもあまり変化は認めなかったのですが(表皮萎縮は生じます)、StARの染色は鋭敏に低下するかもしれません。早速計画してみようと思います。
Slominski先生の論文には、紫外線による表皮のステロイド産生増強に関して、興味深い画像もありました。
私は、表皮細胞内のコルチゾールそのものを染色して、乳児のアトピー性皮膚炎や、ステロイド依存状態にある患者の皮膚で、低下していることを報告しましたが、StARで染色すると、もっとはっきりとした結果が得られるかもしれません。また、健常人にステロイドを外用したときに、コルチゾールを染色してもあまり変化は認めなかったのですが(表皮萎縮は生じます)、StARの染色は鋭敏に低下するかもしれません。早速計画してみようと思います。
Slominski先生の論文には、紫外線による表皮のステロイド産生増強に関して、興味深い画像もありました。
CRHというのは、Corticotropin Releasing Hormonで、教科書的には、脳の視床下部で産生されて下垂体を刺激しACTH(副腎皮質刺激ホルモン)の産生を促すものです。
このCRHが、皮膚に紫外線(UVA, UVB,UVCのいずれの波長でも)を当てると、真皮部分で産生されるようです(赤色がCRHが染色された部分です)。
またACTHが表皮で産生増強しています。ACTHはさらに上記のStARの産生に働きます。
すなわち、視床下部-下垂体-副腎系(hypothalamo-pituitary-adrenal axis)に相当する経路が、皮膚の真皮(繊維芽細胞?)と表皮とで形成されているということです。
なるほど、紫外線治療がアトピー性皮膚炎やステロイド依存からの離脱に有効なわけです。
また、ちょっと面白かったのは、最後のほうで、”UVR addiction”(紫外線依存)について触れている点です。アトピー性皮膚炎の紫外線治療に依存性があるという話ではなくて、スポーツジムなどに置いてある日焼けマシーンに習慣性・嗜癖性があるということです(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19152511)。
たしかに、紫外線が皮膚によるステロイド全般の産生を促せば、筋肉増強剤で知られる蛋白同化ステロイドの産生も促すでしょう。そういえば、ボディビルの選手は皆黒々と日焼けマシーンで焼いています。あれは、見た目を逞しく見せるのと同時に、皮膚による蛋白同化ホルモンの産生によって、筋肉増強にも働いているのかもしれませんね。
このCRHが、皮膚に紫外線(UVA, UVB,UVCのいずれの波長でも)を当てると、真皮部分で産生されるようです(赤色がCRHが染色された部分です)。
またACTHが表皮で産生増強しています。ACTHはさらに上記のStARの産生に働きます。
すなわち、視床下部-下垂体-副腎系(hypothalamo-pituitary-adrenal axis)に相当する経路が、皮膚の真皮(繊維芽細胞?)と表皮とで形成されているということです。
なるほど、紫外線治療がアトピー性皮膚炎やステロイド依存からの離脱に有効なわけです。
また、ちょっと面白かったのは、最後のほうで、”UVR addiction”(紫外線依存)について触れている点です。アトピー性皮膚炎の紫外線治療に依存性があるという話ではなくて、スポーツジムなどに置いてある日焼けマシーンに習慣性・嗜癖性があるということです(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19152511)。
たしかに、紫外線が皮膚によるステロイド全般の産生を促せば、筋肉増強剤で知られる蛋白同化ステロイドの産生も促すでしょう。そういえば、ボディビルの選手は皆黒々と日焼けマシーンで焼いています。あれは、見た目を逞しく見せるのと同時に、皮膚による蛋白同化ホルモンの産生によって、筋肉増強にも働いているのかもしれませんね。
私が作製した中間分子量ヒアルロン酸化粧水「ヒアルプロテクト」のショップはこちら(下の画像をクリック)