表皮の変化が肉眼でわかるだろうか?
ステロイド外用剤には皮膚萎縮という副作用があります。皮膚は表皮と真皮とに分かれますが、外層の表皮というのは0.2mm程度と非常に薄いです。真皮の萎縮はある程度の凹凸として視診で確認できますが、表皮の萎縮というのは肉眼で判定できるのでしょうか?
前知識として、表皮の組織学的構造を解説します。表皮の厚さを規定するのは有棘層で、だいたい5~10層の細胞からなります。これが減少すると表皮の萎縮で増加すると肥厚です。その上に2~3層の顆粒層があります。これが減少・消失したり、さらにその上の角層に青染した核が残った状態(パラケラトーシスと言います)が出現すると、「角化不全」といって、機能不全の状態です。
前知識として、表皮の組織学的構造を解説します。表皮の厚さを規定するのは有棘層で、だいたい5~10層の細胞からなります。これが減少すると表皮の萎縮で増加すると肥厚です。その上に2~3層の顆粒層があります。これが減少・消失したり、さらにその上の角層に青染した核が残った状態(パラケラトーシスと言います)が出現すると、「角化不全」といって、機能不全の状態です。
そこで問題です。下の6枚の写真(別々の患者の肘の写真です)の中には、表皮萎縮が2人、角化不全の強い人が2人います。どれかわかりますか?
以下は解答です。ご自身で考えてみたいかたは、この先を読むのはしばらくお待ちください。
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6例の組織のHE染色(左)と抗コルチゾール抗体染色(右)を以下に示します。
上から1番目と2番目はステロイド外用中、下4例はステロイド不使用です。表皮の萎縮は1番と5番、表皮の肥厚は3,4,6番です。著明な角化不全は3番と4番で認めます。
患者は異なりますが、病期は、順を追っています。1番は、ステロイド使用中で、表皮は萎縮していますが、皮膚の外見は正常です。2番は、ステロイドでコントロールできなくなっていたところ(リバウンド)で、表皮のコルチゾール染色も明らかな部分欠損がみられます。3番・4番は、表皮の肥厚と不全角化が著明な状態で、リバウンド、およびそれが遷延している状態です。5番はステロイドからは脱しているが、後遺症なのか、元来表皮の薄いタイプなのか、おそらくちょっとした刺激で湿疹が出る方です。6番は表皮は肥厚しているが角化は正常です。何かアレルギー性の反応が長期間持続しているのでしょうから、悪化要因探しが大切です。
臨床像を左から右に並べると、ステロイド依存からの離脱の経過のようにみえます。6人とも別々の患者ではありますが。
表皮は薄く、その萎縮は肉眼でわかるはずがない、というのは正しいのですが、実際には、ある程度は病期で判別できるのかもしれません。
さて、この表皮の厚さや分化を制御する物質として、分子量10万くらいの中間分子量ヒアルロン酸と、100万以上の大分子量ヒアルロン酸があります。
患者は異なりますが、病期は、順を追っています。1番は、ステロイド使用中で、表皮は萎縮していますが、皮膚の外見は正常です。2番は、ステロイドでコントロールできなくなっていたところ(リバウンド)で、表皮のコルチゾール染色も明らかな部分欠損がみられます。3番・4番は、表皮の肥厚と不全角化が著明な状態で、リバウンド、およびそれが遷延している状態です。5番はステロイドからは脱しているが、後遺症なのか、元来表皮の薄いタイプなのか、おそらくちょっとした刺激で湿疹が出る方です。6番は表皮は肥厚しているが角化は正常です。何かアレルギー性の反応が長期間持続しているのでしょうから、悪化要因探しが大切です。
臨床像を左から右に並べると、ステロイド依存からの離脱の経過のようにみえます。6人とも別々の患者ではありますが。
表皮は薄く、その萎縮は肉眼でわかるはずがない、というのは正しいのですが、実際には、ある程度は病期で判別できるのかもしれません。
さて、この表皮の厚さや分化を制御する物質として、分子量10万くらいの中間分子量ヒアルロン酸と、100万以上の大分子量ヒアルロン酸があります。
(Bourguignon et al. J Dermatol Sci. 2013 Oct;72(1):32-44. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23790635 中の図を翻訳・改変)
ステロイド(コルチゾール)も表皮の厚さや分化を制御します。さらにもうひとつ、加齢によっても表皮細胞は萎縮します。
ステロイド(コルチゾール)も表皮の厚さや分化を制御します。さらにもうひとつ、加齢によっても表皮細胞は萎縮します。
この3つは絡み合っています。加齢は表皮のコルチゾール産生を低下させますが、それによって表皮の厚さが増すことはなく、むしろ萎縮します。また、ステロイド外用による表皮の萎縮に中間分子量ヒアルロン酸は拮抗します。
ですから、表皮の萎縮には中間分子量のヒアルロン酸、角化不全には、大分子量のヒアルロン酸を外用してやれば、ヒアルロン酸自身に表皮のコルチゾール産生を促す作用がなくても、ステロイド依存あるいはアトピー性皮膚炎によってバランスを失った表皮の助けになるはずです。
分子量10万付近のヒアルロン酸は外用液は市販されていないようなので、私が化粧品として製品化しました。
(注)中間分子量ヒアルロン酸は、私が製作販売している化粧品の主成分です。現在のところ、これを使用した化粧品 は日本では他にありません。製品名を明示すると、ブログ記事が薬事法第86条(未承認医薬品の広告禁止)に抵触するおそれがあるので、製品名を伏して一般 名である「中間分子量ヒアルロン酸」に置き換えて記事を書いています。関心のあるかたは、お手数ですが検索して探してください。
ですから、表皮の萎縮には中間分子量のヒアルロン酸、角化不全には、大分子量のヒアルロン酸を外用してやれば、ヒアルロン酸自身に表皮のコルチゾール産生を促す作用がなくても、ステロイド依存あるいはアトピー性皮膚炎によってバランスを失った表皮の助けになるはずです。
分子量10万付近のヒアルロン酸は外用液は市販されていないようなので、私が化粧品として製品化しました。
(注)中間分子量ヒアルロン酸は、私が製作販売している化粧品の主成分です。現在のところ、これを使用した化粧品 は日本では他にありません。製品名を明示すると、ブログ記事が薬事法第86条(未承認医薬品の広告禁止)に抵触するおそれがあるので、製品名を伏して一般 名である「中間分子量ヒアルロン酸」に置き換えて記事を書いています。関心のあるかたは、お手数ですが検索して探してください。
分子量100万以上のヒアルロン酸については、市販の化粧品材料として一般にあるのですが、濃度を開示した製品がありません。ヒアルロン酸というのは比較 的高価な材料なので、「ヒアルロン酸含有」と記されていても、実際にはぬるぬる感をグリセリンなどで補っている製品ばかりです。
そこで試験的に分子量200万のヒアルロン酸1%水溶液をも製品として製作してみました。使用した方の感想として、「200万のほうが合う」という方も多く、近日こちらも150mlの大容量を製作することとしました。
そこで試験的に分子量200万のヒアルロン酸1%水溶液をも製品として製作してみました。使用した方の感想として、「200万のほうが合う」という方も多く、近日こちらも150mlの大容量を製作することとしました。
いちばん確実なのは、皮膚を生検して、表皮の状態を確認したうえでヒアルロン酸を選択することです。上の6例であれば、皮膚萎縮のある1番と5番は中間分子量ヒアルロン酸化粧水、角化不全の著明な3番と4番が分子量200万の製品が向いているということになります。
これから購入する方は、中間分子量ヒアルロン酸化粧水と分子量200万の製品のどちらが合うか解りませんから、上記写真を参考にしながら(あくまで参考です)一つずつ試してみるといいと思います。両方を同時に使用しても構いません。
生検については、今のところ研究に御協力いただくという意味で、無料で受け付けております。症例を選んでいます(現にステロイド長期外用中の方、乳幼児は歓迎です)ので、TEL052-264-0213までお問い合わせください。
これから購入する方は、中間分子量ヒアルロン酸化粧水と分子量200万の製品のどちらが合うか解りませんから、上記写真を参考にしながら(あくまで参考です)一つずつ試してみるといいと思います。両方を同時に使用しても構いません。
生検については、今のところ研究に御協力いただくという意味で、無料で受け付けております。症例を選んでいます(現にステロイド長期外用中の方、乳幼児は歓迎です)ので、TEL052-264-0213までお問い合わせください。