表皮細胞のステロイド産生を増やす方法(その1)
アトピー性皮膚炎では、表皮細胞自身が本来持つステロイド(コルチゾール)産生能力が低下しており、ステロイド外用剤を用いると、産生能力の獲得(自然治癒)が遅れるのではないか、といったことを記してきました。
それなら、表皮細胞のステロイド産生を増加させるような刺激を与えてやれば、アトピー性皮膚炎自体の治癒に結びつくはずです。
そのような刺激として、はっきり確認されているものは、紫外線、乾燥(→こちら)、そしておそらくタール系外用剤です。このほかに、理論的に、表皮のステロイド産生に働きそうなものはないか考えてみました。
(1) まずACTHです。下図のようにStAR、CYP11A1双方を増加させます。
それなら、表皮細胞のステロイド産生を増加させるような刺激を与えてやれば、アトピー性皮膚炎自体の治癒に結びつくはずです。
そのような刺激として、はっきり確認されているものは、紫外線、乾燥(→こちら)、そしておそらくタール系外用剤です。このほかに、理論的に、表皮のステロイド産生に働きそうなものはないか考えてみました。
(1) まずACTHです。下図のようにStAR、CYP11A1双方を増加させます。
参考までに実験で確認している論文と図を下に引用します。MetyraponeはCYP11A1の阻害剤です。
Cortisol synthesis in epidermis is induced by IL-1 and tissue injury. J Biol Chem. 2011 Mar 25;286(12):10265-75.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21239489
先回の記事(→こちら)で記したように、紫外線は真皮のCRHを上昇させ、表皮のACTHをも上昇させます。紫外線療法がリバウンドが無く、ステロイド外用剤依存の治療になりうる所以です。ここから考えると、ACTHの注射(製剤があります)というのは、ひょっとしたら、治療薬になるのかもしれません。既存の安価な薬であり、治験の費用を考えると、製薬企業が乗り出してくることはまずないでしょうが。
確認するためには、ステロイド依存の離脱患者に定期的にACTH注射を打って、回復が早くなるかを確認する臨床試験を、篤志の医師がするしかありません。
回復を確認するための皮膚のStAR免疫染色などが確立されていたほうがいいです。臨床経過だけでは判定が難しいでしょうからね。
(2) 次にcAMPです。cAMPはステロイド産生細胞において、StARを増加させます。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21239489
先回の記事(→こちら)で記したように、紫外線は真皮のCRHを上昇させ、表皮のACTHをも上昇させます。紫外線療法がリバウンドが無く、ステロイド外用剤依存の治療になりうる所以です。ここから考えると、ACTHの注射(製剤があります)というのは、ひょっとしたら、治療薬になるのかもしれません。既存の安価な薬であり、治験の費用を考えると、製薬企業が乗り出してくることはまずないでしょうが。
確認するためには、ステロイド依存の離脱患者に定期的にACTH注射を打って、回復が早くなるかを確認する臨床試験を、篤志の医師がするしかありません。
回復を確認するための皮膚のStAR免疫染色などが確立されていたほうがいいです。臨床経過だけでは判定が難しいでしょうからね。
(2) 次にcAMPです。cAMPはステロイド産生細胞において、StARを増加させます。
ただし、副腎や性腺細胞と異なり、あまり反応は鋭くはないようです。下の図で左3列は皮膚以外、右のHaCaTというのが皮膚由来の細胞なのですが、StARの増加は少ないです。しかし、反応していないわけではないので、候補の一つです。
Steroidogenesis in the skin: implications for local immune functions. J Steroid Biochem Mol Biol. 2013 Sep;137:107-23.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23435015
実はこのcAMP、PDE4という酵素で分解されます。そして、PDE4阻害剤というのは、まさに現在、アトピー性皮膚炎の新薬として開発中なのです(→こちら)。
ひょっとしたら、依存性がないどころか、ステロイド依存の治療薬をも兼ねるアトピー性皮膚炎の外用薬になるかもしれません。
また、このcAMPというのは既に製剤があります。アクトシンといいます。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23435015
実はこのcAMP、PDE4という酵素で分解されます。そして、PDE4阻害剤というのは、まさに現在、アトピー性皮膚炎の新薬として開発中なのです(→こちら)。
ひょっとしたら、依存性がないどころか、ステロイド依存の治療薬をも兼ねるアトピー性皮膚炎の外用薬になるかもしれません。
また、このcAMPというのは既に製剤があります。アクトシンといいます。
実際にcAMPを外用して、実験的アレルギー性皮膚炎に有効であったという論文もあります。
The stable cyclic adenosine monophosphate analogue, dibutyryl cyclo-adenosine monophosphate (bucladesine), is active in a model of acute skin inflammation. Arch Dermatol Res. 2012 May;304(4):313-7.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22302126
しかし残念なことに、この「アクトシン軟膏」は、皮膚潰瘍などの治療薬として設計されており、基剤がマクロゴールという吸水性軟膏なのです。アトピーの肌には合わないかもしれません。
注射剤から調整することも考えたのですが、加水分解性が高く、長持ちしないようで、経済的にも安価とはいえません。
(3) IL-1(インターロイキン1)もまた、CYP11A1を増加させて、表皮細胞のコルチゾール産生増強に働きます。
The stable cyclic adenosine monophosphate analogue, dibutyryl cyclo-adenosine monophosphate (bucladesine), is active in a model of acute skin inflammation. Arch Dermatol Res. 2012 May;304(4):313-7.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22302126
しかし残念なことに、この「アクトシン軟膏」は、皮膚潰瘍などの治療薬として設計されており、基剤がマクロゴールという吸水性軟膏なのです。アトピーの肌には合わないかもしれません。
注射剤から調整することも考えたのですが、加水分解性が高く、長持ちしないようで、経済的にも安価とはいえません。
(3) IL-1(インターロイキン1)もまた、CYP11A1を増加させて、表皮細胞のコルチゾール産生増強に働きます。
Cortisol synthesis in epidermis is induced by IL-1 and tissue injury. J Biol Chem. 2011 Mar 25;286(12):10265-75.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21239489
IL-1というのは、単球・マクロファージや好中球など、多くの炎症性細胞によって産生されます。合目的的な反応で、炎症が生じていることを感知して、これを抑えようと、表皮がコルチゾールを産生するわけです。
ここでもう一段突っ込んで考えてみると、炎症というのは、それ自体表皮のステロイド産生に働くと言う意味で、アトピー性皮膚炎の自然治癒に働くものなのかもしれません。
カポジ水痘様発疹症に罹った後、一過性にアトピーの症状が軽快した経験のある方いると思います。また、乳幼児の感染症罹患率は下がってきており、それとともに、アトピー性皮膚炎の自然治癒が遅れているのかもしれません。
だからといって、積極的に感染症に罹患することもないですが、離脱後に繰り返されるリバウンドや感染症は、それ自体が皮膚の回復に関係してくれている可能性があると考えれば、泣きっ面に蜂の涙も、少しは早く止まるかもしれませんね。
(H28.8.13記)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21239489
IL-1というのは、単球・マクロファージや好中球など、多くの炎症性細胞によって産生されます。合目的的な反応で、炎症が生じていることを感知して、これを抑えようと、表皮がコルチゾールを産生するわけです。
ここでもう一段突っ込んで考えてみると、炎症というのは、それ自体表皮のステロイド産生に働くと言う意味で、アトピー性皮膚炎の自然治癒に働くものなのかもしれません。
カポジ水痘様発疹症に罹った後、一過性にアトピーの症状が軽快した経験のある方いると思います。また、乳幼児の感染症罹患率は下がってきており、それとともに、アトピー性皮膚炎の自然治癒が遅れているのかもしれません。
だからといって、積極的に感染症に罹患することもないですが、離脱後に繰り返されるリバウンドや感染症は、それ自体が皮膚の回復に関係してくれている可能性があると考えれば、泣きっ面に蜂の涙も、少しは早く止まるかもしれませんね。
(H28.8.13記)
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