読売新聞の2010年12月16日の記事
12月14・15日の記事については→こちら。
ーーーーー(ここから引用)-----
【アトピー性皮膚炎(3)薬への誤解 医療側にも 】
北海道釧路市に住む主婦(42)の長男(12)は、1歳のころアトピー性皮膚炎を発症。ステロイド(副腎皮質ホルモン)の塗り薬を使い、症状は落ち着いていた。ところが、4歳の時に「ステロイドを使うと一生やめられなくなる」との知人の言葉にショックを受け、母親は「脱ステロイド療法」にのめり込んでいった。
脱ステロイドをうたった皮膚科では、違う塗り薬や漢方の飲み薬を出された。保湿剤も「症状を悪化させる」と、使わないよう指導された。長男の肌は乾燥し、肘や膝の関節がひび割れて体を動かすたびに痛みを訴えた。かゆみで夜も眠れず、布団のシーツは全身をかきむしった血で染まった。
「精神状態を安定させる」と、お香や体のつぼを刺激する金属製のローラーの購入を勧められ、1日に何度も試したが症状は変わらず、3か月でやめた。アトピーの原因除去をうたう別の病院では、粉薬と茶のセット2か月分約5万円を2年間支払い続けた。
主婦は2007年、札幌市内で行われていたシンポジウムに出席していた国立成育医療研究センター(東京都世田谷区)の医師に、すがるような思いで相談。長男は同センターに約1か月入院し、強めのステロイドの塗り薬を使って、症状はようやく治まった。今は中程度のステロイドを週2回塗っている。
同シンポにも参加していた東京都立小児総合医療センター(東京都府中市)アレルギー科医長の赤沢晃さんは、患者団体などの要望を受け、各地の講演や相談会などに出向く。「地方では医療機関の選択の余地も限られている。適切な治療を知って受診する手助けをしたい」との思いからだ。
「ステロイドを使うと皮膚が黒くなると薬局で言われた」「地元で信頼できる病院はどこか」――。
2010年11月、釧路市で開かれたアレルギー患者の相談会でも、患者や保護者から悩みが相次いだ。 赤沢さんは「ステロイドの塗り薬で、皮膚の色素が抜けて一時的に白くなることはありますが、2~3年で元に戻ります」と説明。皮膚が黒くなるという不安についても、「アトピー性皮膚炎そのものの悪化によって皮膚に色素が沈着することはありますが、ステロイドの副作用ではありません」と話した。
患者側の悩みを聞くにつれ、医療側にも、ステロイドへの誤解が根強いことを痛感する。「適切な治療を患者と医師が一緒に考えていくことが必要」と話す。 (2010年12月16日 読売新聞)
ーーーーー(ここまで引用)-----
http://megalodon.jp/2010-1216-1148-15/www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=34496
「2007年、札幌市内で行われていたシンポジウム」
このシンポジウムは、朝日新聞の「子どものアトピー」連載で紹介されたものと同じだと思われます。(→こちら) このシンポジウムの背景についてはこちら→「アレルギーの電話相談やHP作成にはずいぶんお金がかかるらしい(1)、(2)、(3)」
要は、アレルギー関連で製薬企業から研究費を集める財団があって、また、厚労省からの科研費の配分の力関係も加わって、シンポジウムや電話相談、HP整備など、対患者へのサービスの充実に力が入れられている、その一環であるわけです。
それ自体は結構なことだと思います。科研費がHPの整備だけの目的で法外な支給がなされるようなことがなく、ステロイド外用剤の依存性・抵抗性についても、無視せずに、しっかり議論してくれれば、ですが。
しかし、なぜ、新聞という大きなマスコミ媒体が、朝日も読売もそろいに揃って、こういう大本営発表のような奇麗ごとを、無批判に信用して、ろくろく調べもせず、記事に書いてしまうのだろう?・・学問というか、医療の世界にこもっていたお医者さんたちが、いよいよ社会的行動をはじめた、そういう美談に見えるのだろうか?
「患者団体などの要望を受け」
「患者団体」について。読売の昨日の記事、ネット上では、
記事中で紹介されている横浜市の女性(27)が相談した患者団体は、NPO法人・アレルギーを考える母の会(横浜市)です。1999年にアレルギー疾患を抱える母親が集まり発足。専門医を交えた講演会や、相談会などを行っています として、「アレルギーを考える母の会」が紹介されています。朝日新聞の記事でも、この会が紹介されていました。この会の平成21年度の事業報告書はこちらです。http://cgi.city.yokohama.lg.jp/shimin/npo-kensaku/upload/ji2290.pdf
平成21年の1年間の講演会収入が500円×205人と500円×21人で、冊子実費が500円×268冊、800円×556冊、1100円×24冊なので、講演会というよりは、冊子販売のほうが多そうです。 賛助会員や寄付金として50万円、80万円程度集まっていますが、収入源は主に各種助成金のようで(計212万円)、それも使い切れなかった分は年度末で返金もされているようで、財政からみると、健全で成功している部類のNPOだと私は思います。
この会の特徴は、なんといっても、定款
http://cgi.city.yokohama.lg.jp/shimin/npo-kensaku/upload/te2290.pdf
の、この部分だと思います。
ーーーーー(ここから引用)-----
(1)正会員 会員は日本アレルギー学会、日本小児アレルギー学会などアレルギー疾患関連学会がEBM(根拠に基づく医療)に基づいて作成した各種「治療・管理ガイドライン」による医療について、自ら理解を深め、啓発活動に取り組む個人 ですから、この会の会員は、「ガイドラインを守る者」であって、これを批判したり考えたりする者ではないわけです。 名称は「アレルギーを考える母の会」なんですが、定款には、入会条件として、アレルギー児の母であることも、「考える」ことも、記されていません。
ーーーーー(ここまで引用)-----
たぶんですが、これは「アレルギーを考える母を集めて説得して、ガイドラインを普及させる会」なんだと思います。 「ガイドラインを普及させる有志の会」のほうが、名称として適切なのではないかなあ。
ガイドラインが正しければ、この会はきっと有意義な活躍をすることでしょう。ガイドラインが正しければ、ですけどね。
「2010年11月、釧路市で開かれたアレルギー患者の相談会」
これは、ネットで調べる限り、「釧路アトピッ子の会」が活躍されたようです。
「母の会」の会報http://www.hahanokai.org/chotchat24u.pdfを見ると、
ーーーーー(ここから引用)-----
アレルギーを考える母の会は(2007年)6月27日、アレルギー患者会4団体とともに、公明党浜四津代表代行、同党アレルギー疾患対策プロジェクトチーム仲立ちのもと、柳沢厚労相に対して、「標榜診療科の見直し」を患者の立場で行うよう求めました。
ーーーーー(ここまで引用)-----
とあり、写真には、
ーーーーー(ここから引用)-----
母の会の他に、釧路アトピッ子の会、国立病院機構相模原病院アレルギーの会、アラジーポット、エパレクの4団体。患者会がまとまって大臣に要望するのは初めて。
ーーーーー(ここまで引用)-----
とあります。「釧路アトピッ子の会」と「母の会」は、親しそうです。
釧路アトピッ子の会は http://www.chiiki-dukuri-hyakka.or.jp/cgi-bin/profile/data.cgi?number=4888にありますように、平成10年発足の、草の根的な純粋な患者会のようで、
↓見ますと、
http://blog.livedoor.jp/gekko946/archives/cat_50025997.html
http://blog.livedoor.jp/gekko946/archives/51529672.html
http://blog.livedoor.jp/gekko946/archives/51536469.html
公明党の市議の先生の理解を得て、赤澤晃先生は2005年から釧路で定期的に講演や相談会をなさっておいでのようです。 さらに、
2007年11月07日 小児アレルギー外来を新設/市立釧路総合病院
http://www.news-kushiro.jp/news/20071107/200711073.html
とか、地方の医療崩壊が進む中、頑張っておられます。・・ステロイド外用剤依存の問題がなければ、わたしも心からエールを送りたいところなんですけどね。
「母の会」は、「ガイドラインを推進する有志の会」だと思われますが、たぶんそこに寄ってきた草の根患者会である「釧路アトピッ子の会」が、たまたま地元の公明党の代議士さんとの連携がよくて、公明党といえば、アレルギー対策を政策の柱に掲げてるところですから、赤澤先生も、良いことであるし、釧路は遠いけど一肌脱ごう、ということでまとまったんじゃないでしょうか。
良い話だと思いますよ。ただ一点、ステロイド外用剤による依存・抵抗性の問題が無視されてさえいなければ。
2011.11.16
ーーーーー(ここから引用)-----
【アトピー性皮膚炎(3)薬への誤解 医療側にも 】
北海道釧路市に住む主婦(42)の長男(12)は、1歳のころアトピー性皮膚炎を発症。ステロイド(副腎皮質ホルモン)の塗り薬を使い、症状は落ち着いていた。ところが、4歳の時に「ステロイドを使うと一生やめられなくなる」との知人の言葉にショックを受け、母親は「脱ステロイド療法」にのめり込んでいった。
脱ステロイドをうたった皮膚科では、違う塗り薬や漢方の飲み薬を出された。保湿剤も「症状を悪化させる」と、使わないよう指導された。長男の肌は乾燥し、肘や膝の関節がひび割れて体を動かすたびに痛みを訴えた。かゆみで夜も眠れず、布団のシーツは全身をかきむしった血で染まった。
「精神状態を安定させる」と、お香や体のつぼを刺激する金属製のローラーの購入を勧められ、1日に何度も試したが症状は変わらず、3か月でやめた。アトピーの原因除去をうたう別の病院では、粉薬と茶のセット2か月分約5万円を2年間支払い続けた。
主婦は2007年、札幌市内で行われていたシンポジウムに出席していた国立成育医療研究センター(東京都世田谷区)の医師に、すがるような思いで相談。長男は同センターに約1か月入院し、強めのステロイドの塗り薬を使って、症状はようやく治まった。今は中程度のステロイドを週2回塗っている。
同シンポにも参加していた東京都立小児総合医療センター(東京都府中市)アレルギー科医長の赤沢晃さんは、患者団体などの要望を受け、各地の講演や相談会などに出向く。「地方では医療機関の選択の余地も限られている。適切な治療を知って受診する手助けをしたい」との思いからだ。
「ステロイドを使うと皮膚が黒くなると薬局で言われた」「地元で信頼できる病院はどこか」――。
2010年11月、釧路市で開かれたアレルギー患者の相談会でも、患者や保護者から悩みが相次いだ。 赤沢さんは「ステロイドの塗り薬で、皮膚の色素が抜けて一時的に白くなることはありますが、2~3年で元に戻ります」と説明。皮膚が黒くなるという不安についても、「アトピー性皮膚炎そのものの悪化によって皮膚に色素が沈着することはありますが、ステロイドの副作用ではありません」と話した。
患者側の悩みを聞くにつれ、医療側にも、ステロイドへの誤解が根強いことを痛感する。「適切な治療を患者と医師が一緒に考えていくことが必要」と話す。 (2010年12月16日 読売新聞)
ーーーーー(ここまで引用)-----
http://megalodon.jp/2010-1216-1148-15/www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=34496
「2007年、札幌市内で行われていたシンポジウム」
このシンポジウムは、朝日新聞の「子どものアトピー」連載で紹介されたものと同じだと思われます。(→こちら) このシンポジウムの背景についてはこちら→「アレルギーの電話相談やHP作成にはずいぶんお金がかかるらしい(1)、(2)、(3)」
要は、アレルギー関連で製薬企業から研究費を集める財団があって、また、厚労省からの科研費の配分の力関係も加わって、シンポジウムや電話相談、HP整備など、対患者へのサービスの充実に力が入れられている、その一環であるわけです。
それ自体は結構なことだと思います。科研費がHPの整備だけの目的で法外な支給がなされるようなことがなく、ステロイド外用剤の依存性・抵抗性についても、無視せずに、しっかり議論してくれれば、ですが。
しかし、なぜ、新聞という大きなマスコミ媒体が、朝日も読売もそろいに揃って、こういう大本営発表のような奇麗ごとを、無批判に信用して、ろくろく調べもせず、記事に書いてしまうのだろう?・・学問というか、医療の世界にこもっていたお医者さんたちが、いよいよ社会的行動をはじめた、そういう美談に見えるのだろうか?
「患者団体などの要望を受け」
「患者団体」について。読売の昨日の記事、ネット上では、
記事中で紹介されている横浜市の女性(27)が相談した患者団体は、NPO法人・アレルギーを考える母の会(横浜市)です。1999年にアレルギー疾患を抱える母親が集まり発足。専門医を交えた講演会や、相談会などを行っています として、「アレルギーを考える母の会」が紹介されています。朝日新聞の記事でも、この会が紹介されていました。この会の平成21年度の事業報告書はこちらです。http://cgi.city.yokohama.lg.jp/shimin/npo-kensaku/upload/ji2290.pdf
平成21年の1年間の講演会収入が500円×205人と500円×21人で、冊子実費が500円×268冊、800円×556冊、1100円×24冊なので、講演会というよりは、冊子販売のほうが多そうです。 賛助会員や寄付金として50万円、80万円程度集まっていますが、収入源は主に各種助成金のようで(計212万円)、それも使い切れなかった分は年度末で返金もされているようで、財政からみると、健全で成功している部類のNPOだと私は思います。
この会の特徴は、なんといっても、定款
http://cgi.city.yokohama.lg.jp/shimin/npo-kensaku/upload/te2290.pdf
の、この部分だと思います。
ーーーーー(ここから引用)-----
(1)正会員 会員は日本アレルギー学会、日本小児アレルギー学会などアレルギー疾患関連学会がEBM(根拠に基づく医療)に基づいて作成した各種「治療・管理ガイドライン」による医療について、自ら理解を深め、啓発活動に取り組む個人 ですから、この会の会員は、「ガイドラインを守る者」であって、これを批判したり考えたりする者ではないわけです。 名称は「アレルギーを考える母の会」なんですが、定款には、入会条件として、アレルギー児の母であることも、「考える」ことも、記されていません。
ーーーーー(ここまで引用)-----
たぶんですが、これは「アレルギーを考える母を集めて説得して、ガイドラインを普及させる会」なんだと思います。 「ガイドラインを普及させる有志の会」のほうが、名称として適切なのではないかなあ。
ガイドラインが正しければ、この会はきっと有意義な活躍をすることでしょう。ガイドラインが正しければ、ですけどね。
「2010年11月、釧路市で開かれたアレルギー患者の相談会」
これは、ネットで調べる限り、「釧路アトピッ子の会」が活躍されたようです。
「母の会」の会報http://www.hahanokai.org/chotchat24u.pdfを見ると、
ーーーーー(ここから引用)-----
アレルギーを考える母の会は(2007年)6月27日、アレルギー患者会4団体とともに、公明党浜四津代表代行、同党アレルギー疾患対策プロジェクトチーム仲立ちのもと、柳沢厚労相に対して、「標榜診療科の見直し」を患者の立場で行うよう求めました。
ーーーーー(ここまで引用)-----
とあり、写真には、
ーーーーー(ここから引用)-----
母の会の他に、釧路アトピッ子の会、国立病院機構相模原病院アレルギーの会、アラジーポット、エパレクの4団体。患者会がまとまって大臣に要望するのは初めて。
ーーーーー(ここまで引用)-----
とあります。「釧路アトピッ子の会」と「母の会」は、親しそうです。
釧路アトピッ子の会は http://www.chiiki-dukuri-hyakka.or.jp/cgi-bin/profile/data.cgi?number=4888にありますように、平成10年発足の、草の根的な純粋な患者会のようで、
↓見ますと、
http://blog.livedoor.jp/gekko946/archives/cat_50025997.html
http://blog.livedoor.jp/gekko946/archives/51529672.html
http://blog.livedoor.jp/gekko946/archives/51536469.html
公明党の市議の先生の理解を得て、赤澤晃先生は2005年から釧路で定期的に講演や相談会をなさっておいでのようです。 さらに、
2007年11月07日 小児アレルギー外来を新設/市立釧路総合病院
http://www.news-kushiro.jp/news/20071107/200711073.html
とか、地方の医療崩壊が進む中、頑張っておられます。・・ステロイド外用剤依存の問題がなければ、わたしも心からエールを送りたいところなんですけどね。
「母の会」は、「ガイドラインを推進する有志の会」だと思われますが、たぶんそこに寄ってきた草の根患者会である「釧路アトピッ子の会」が、たまたま地元の公明党の代議士さんとの連携がよくて、公明党といえば、アレルギー対策を政策の柱に掲げてるところですから、赤澤先生も、良いことであるし、釧路は遠いけど一肌脱ごう、ということでまとまったんじゃないでしょうか。
良い話だと思いますよ。ただ一点、ステロイド外用剤による依存・抵抗性の問題が無視されてさえいなければ。
2011.11.16