GRα、GRβ、MCRの染色結果
私の肘に一日2回×2週間(14d)stongestのステロイド外用剤であるデルモベート軟膏を外用した前後の表皮の免疫染色結果の続報です。
ステロイドのレセプターであるGRα、GRβ、MCR(→こちら)を染めてみました。
まずGRα。GRαはステロイドと結合してDNAに作用します。
全経過を通じてあまり変化はありませんでした。
ステロイドのレセプターであるGRα、GRβ、MCR(→こちら)を染めてみました。
まずGRα。GRαはステロイドと結合してDNAに作用します。
全経過を通じてあまり変化はありませんでした。
次にGRβです。GRβはステロイドに結合はしますが、DNAには作用しません。いわばステロイドを無効化する受容体です。
外用すると、やや発現が低下するようです。外用中止後もしばらく低下は続きます。
GRβはステロイドを無効化しますから、ステロイド抵抗性と関係があるのではないかと考えられていますが、この結果からは、ステロイド外用の効果を増幅する仕掛けのように見えます。ステロイド濃度が低いうちはしっかり門を閉ざしておいて、濃度が上昇してきたら開門する、って感じです。めりはり付けてるんでしょうかね。
外用すると、やや発現が低下するようです。外用中止後もしばらく低下は続きます。
GRβはステロイドを無効化しますから、ステロイド抵抗性と関係があるのではないかと考えられていますが、この結果からは、ステロイド外用の効果を増幅する仕掛けのように見えます。ステロイド濃度が低いうちはしっかり門を閉ざしておいて、濃度が上昇してきたら開門する、って感じです。めりはり付けてるんでしょうかね。
次にMCRです。ステロイド外用と共にゆっくりと増加します。外用中止後にむしろ増えています。MCRはステロイドの補助的な受容体のような働きをしており、これが増えると言うことは、ステロイドの効果が増強されるということです。
すなわち、GRα、GRβ、MCRの三つのレセプターの観点からは、ステロイド外用によって、ステロイドの効果が増強される仕組みが表皮にはあるということです。そしてそれは外用中止後もしばらく続きます。
次に、実際の患者さんの表皮を染めてみます。前回と同じく、遷延するリバウンド→2年後の軽快時、の2回生検した方と、ステロイド長期連用中→離脱後のリバウンドの2回生検した方です。
まずは「リバウンド→軽快」の方です。上列がリバウンド中、下列が軽快時です。
次に、実際の患者さんの表皮を染めてみます。前回と同じく、遷延するリバウンド→2年後の軽快時、の2回生検した方と、ステロイド長期連用中→離脱後のリバウンドの2回生検した方です。
まずは「リバウンド→軽快」の方です。上列がリバウンド中、下列が軽快時です。
GRαは基底層で濃いです。軽快時には若干薄くなっています。GRβは軽快時には、著明に発現亢進しています。MCRは逆に軽快時には、発現低下するようです。
GRβとMCRで、上の私の結果とまったく逆のことが起きています。ということはGRβの低下とMCRの亢進がリバウンドの特徴なのかもしれません。
読んでてチンプンカンプン、訳わからないという方も多いかもしれません。私も全容を見通して解説しているわけではないですから、解り難くて当然です。
下は、前回示した概念図です。デルモベートを外用すると、表皮のステロイド(Cortisol)産生は高まり(正のフィードバック)、それはMLN64の増加がかかわっていそうだということ、その一方でコルチゾールの不活性化に働く11HSD2も高まり、それは外用中止後もしばらく続くこと、を示しました。
GRβとMCRで、上の私の結果とまったく逆のことが起きています。ということはGRβの低下とMCRの亢進がリバウンドの特徴なのかもしれません。
読んでてチンプンカンプン、訳わからないという方も多いかもしれません。私も全容を見通して解説しているわけではないですから、解り難くて当然です。
下は、前回示した概念図です。デルモベートを外用すると、表皮のステロイド(Cortisol)産生は高まり(正のフィードバック)、それはMLN64の増加がかかわっていそうだということ、その一方でコルチゾールの不活性化に働く11HSD2も高まり、それは外用中止後もしばらく続くこと、を示しました。
また、「ステロイド離脱のあとのリバウンドには、表皮基底層のHSD2の亢進、すなわち基底層でのコルチゾールの不活化が関係していそうだ」ということも示しました(→こちら)。
今回、これに「GRβの低下とMCRの亢進がリバウンドの特徴かもしれない」という知見が加わりました。
ただし、「GRβの低下とMCRの亢進」は基底層ではなく、もう少し上です。なおかつ、「GRβの低下」と「MCRの亢進」部位は一致しません。前者はまんべんなく、後者は有棘層の真ん中あたりです。
基底層に注目するなら、GRαの亢進のほうが重要なのかもしれません。「リバウンド時には、基底層のHSD2およびGRαが亢進している」ということになります。
次に、ステロイド長期連用中→離脱後のリバウンドの2回生検した方です。離脱前の生検は、無疹部(図の上段)と皮疹部(図の中段)の2ヶ所で行いました。約一ヵ月後、離脱中の紅斑からの生検が図の下段です。
今回、これに「GRβの低下とMCRの亢進がリバウンドの特徴かもしれない」という知見が加わりました。
ただし、「GRβの低下とMCRの亢進」は基底層ではなく、もう少し上です。なおかつ、「GRβの低下」と「MCRの亢進」部位は一致しません。前者はまんべんなく、後者は有棘層の真ん中あたりです。
基底層に注目するなら、GRαの亢進のほうが重要なのかもしれません。「リバウンド時には、基底層のHSD2およびGRαが亢進している」ということになります。
次に、ステロイド長期連用中→離脱後のリバウンドの2回生検した方です。離脱前の生検は、無疹部(図の上段)と皮疹部(図の中段)の2ヶ所で行いました。約一ヵ月後、離脱中の紅斑からの生検が図の下段です。
GRαは三つとも基底層に強く、変動はさほどありません。GFβは、ステロイド外用で抑えられていた無疹部では発現が強く、抑えられなかった皮疹部では低下、離脱後は再び少し濃く染まっています。ステロイド外用中は若干薄くなるはずなのに、無疹部で濃く染まっているようですが、元々のステロイドを外用する前の表皮では、もっと濃く染まっていたと考えることが出来ます。外用中止前の皮疹部よりも、中止後は薄くなっていますから、離脱によって皮膚は改善しつつあるのかもしれません。MCRは3枚とも染まっていますが、離脱後は離脱前よりも、少しだけ弱いようにも見えます。
もう一度まとめますと、リバウンド時に見られるステロイド関連の免疫組織学的特長としては、
1)基底層のHSD2の亢進
2)表皮全層のGRβの低下
3)有棘層の真ん中あたりのMCRの亢進
が考えられます。
無理にこじつけて意味をもたせると、「外用ステロイドの(分裂増殖の盛んな)基底層への影響排除のためにHSD2が亢進する。ステロイド外用中止してもHSD2の亢進はすぐには止まらないため、表皮はステロイド不足に陥る。これを補うべく、GRβの低下はもとより、補助的レセプターであるMCRまでもが活性化されて不足なステロイドの最大活用がはかられる」といった感じでしょうか?
次回は、ほかの患者さんたちの表皮を染めたものを観察して、仮説に矛盾が無いかを検証します。
それにしても、上記のお二人の方の生検は、病期の異なる二点で採取していたので、大変役に立ちました。本稿をご覧の方で、これから離脱に臨むという方、あるいは以前生検させていたいた時とは、病期(離脱前、リバウンド、軽快)が異なるという方、052-264-0213にお電話のうえ、皮膚の生検にご協力いただけますと助かります。費用はかかりません。どうかよろしくお願いいたします。
(H28/11/22記)
もう一度まとめますと、リバウンド時に見られるステロイド関連の免疫組織学的特長としては、
1)基底層のHSD2の亢進
2)表皮全層のGRβの低下
3)有棘層の真ん中あたりのMCRの亢進
が考えられます。
無理にこじつけて意味をもたせると、「外用ステロイドの(分裂増殖の盛んな)基底層への影響排除のためにHSD2が亢進する。ステロイド外用中止してもHSD2の亢進はすぐには止まらないため、表皮はステロイド不足に陥る。これを補うべく、GRβの低下はもとより、補助的レセプターであるMCRまでもが活性化されて不足なステロイドの最大活用がはかられる」といった感じでしょうか?
次回は、ほかの患者さんたちの表皮を染めたものを観察して、仮説に矛盾が無いかを検証します。
それにしても、上記のお二人の方の生検は、病期の異なる二点で採取していたので、大変役に立ちました。本稿をご覧の方で、これから離脱に臨むという方、あるいは以前生検させていたいた時とは、病期(離脱前、リバウンド、軽快)が異なるという方、052-264-0213にお電話のうえ、皮膚の生検にご協力いただけますと助かります。費用はかかりません。どうかよろしくお願いいたします。
(H28/11/22記)
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