IgE産生系への用心
Manifestation of Atopic Eczema in Children after Heart Transplantation in the First Year of LifeVolker Niemeier et al. Pediatric Dermatology Vol. 22 No. 2 102–108, 2005
少し基本的なところを整理しておきたいと思います。まず、薬剤の名前ですが、シクロスポリンは内服薬で、商品名ではサンディミュン、ネオーラルです。タクロリムスは外用剤で、商品名がプロトピックです。タクロリムスは開発時にはFK506と呼ばれていました。 これらは、内服と外用の違いはありますが、作用点は似ています。
少し基本的なところを整理しておきたいと思います。まず、薬剤の名前ですが、シクロスポリンは内服薬で、商品名ではサンディミュン、ネオーラルです。タクロリムスは外用剤で、商品名がプロトピックです。タクロリムスは開発時にはFK506と呼ばれていました。 これらは、内服と外用の違いはありますが、作用点は似ています。
上図のように、CaN(カルシニューリン)という分子に対し、拮抗薬として作用します。ステロイドとは異なる機序です。ですので、シクロスポリンとタクロリムスとは、内服と外用の違いはありますが、基本的に似たものだと考えていいと思います。
さて、表題の論文ですが、心臓移植後の乳幼児のアトピー性皮膚炎発症率について調べたものです。心臓移植後には、拒絶反応を抑えるため、シクロスポリンなどの免疫抑制剤を継続して服用する必要があります。
下表で、Group1はHTX(心臓移植)を、生後1才未満で受けた(それ以降免疫抑制剤開始)群、Group2は1才以降で受けた群、Group3は心臓移植以外の心臓手術を受けた群(免疫抑制剤服用なし)です。
Group1では、アトピー性皮膚炎(AE)が27例中11例で、確定診断されましたが、Group2,3では、いずれも7例中0で、発症者はいませんでした。
さて、表題の論文ですが、心臓移植後の乳幼児のアトピー性皮膚炎発症率について調べたものです。心臓移植後には、拒絶反応を抑えるため、シクロスポリンなどの免疫抑制剤を継続して服用する必要があります。
下表で、Group1はHTX(心臓移植)を、生後1才未満で受けた(それ以降免疫抑制剤開始)群、Group2は1才以降で受けた群、Group3は心臓移植以外の心臓手術を受けた群(免疫抑制剤服用なし)です。
Group1では、アトピー性皮膚炎(AE)が27例中11例で、確定診断されましたが、Group2,3では、いずれも7例中0で、発症者はいませんでした。
前章で記したように、シクロスポリンには、一定の条件で、IgE産生を亢進させる作用があります。Group1,2,3のIgEを測定すると、下表のように、1>2>3でした。
ここから言えるのは、シクロスポリンが乳幼児期に投与されると、アトピー性皮膚炎の発症率が上がるのかもしれない、ということです。 もうひとつ論文を挙げます。遺伝性の自己免疫性腸炎を、シクロスポリンとタクロリムスで治療したところ、IgEが著増したという一例報告です。
Extremely high serum level of IgE during immunosuppressive therapy: paradoxical effect of cyclosporine A and tacrolimus.Kawamura N, Furuta H, Tame A et al. Int Arch Allergy Immunol 1997; 112 : 422–424.
下表のように、シクロスポリン(CsA)による治療からタクロリムス(FK506)による治療に変わったあとで、IgEが著増しています。IgGや好酸球(Eosino)には変化がありません。
Extremely high serum level of IgE during immunosuppressive therapy: paradoxical effect of cyclosporine A and tacrolimus.Kawamura N, Furuta H, Tame A et al. Int Arch Allergy Immunol 1997; 112 : 422–424.
下表のように、シクロスポリン(CsA)による治療からタクロリムス(FK506)による治療に変わったあとで、IgEが著増しています。IgGや好酸球(Eosino)には変化がありません。
下グラフは、血漿中のタクロリムス量とIgE値が相関している様子です。
タクロリムスもシクロスポリンも作用点は同じですから、血中濃度がある値になると、IgE産生を亢進させるという働きは、タクロリムスにもやはりありそうです。
これらの情報から、得られる教訓を下にまとめます。
1)シクロスポリンを内服する場合は、IgEを定期的に測定して、上昇する場合にはシクロスポリン治療は向かないと考えて、その場合にはシクロスポリンによるリバウンドを覚悟してでも、中断したほうがいいと思います。
2)タクロリムスにもシクロスポリン同様に、血中濃度によってはIgEを増加させる作用があるようですが、外用剤であるプロトピックは血中濃度が高まるほどには通常用いられないので、用量を守れば、タクロリムス自身によるリバウンドの可能性は少ないのではないかと思います。特に一才未満の乳児に使用する場合は、血中濃度が高まることの無いよう、気をつけなければならないでしょう。
2009.10.22
これらの情報から、得られる教訓を下にまとめます。
1)シクロスポリンを内服する場合は、IgEを定期的に測定して、上昇する場合にはシクロスポリン治療は向かないと考えて、その場合にはシクロスポリンによるリバウンドを覚悟してでも、中断したほうがいいと思います。
2)タクロリムスにもシクロスポリン同様に、血中濃度によってはIgEを増加させる作用があるようですが、外用剤であるプロトピックは血中濃度が高まるほどには通常用いられないので、用量を守れば、タクロリムス自身によるリバウンドの可能性は少ないのではないかと思います。特に一才未満の乳児に使用する場合は、血中濃度が高まることの無いよう、気をつけなければならないでしょう。
2009.10.22