NFκBデコイ軟膏「近日いよいよ商品化」
NF-κBデコイ軟膏については、以前拙ブログで取り上げました(→こちら)。ステロイド外用剤と比べると、リバウンドがない(=依存性がない)というメリットがあります。
開発者は、現在奈良で小児科を開業している中邨先生のようです。
開発者は、現在奈良で小児科を開業している中邨先生のようです。
中邨先生の論文(Prevention and regression of atopic dermatitis by ointment containing NF-kB decoy oligodeoxynucleotides in NC/Nga atopic mouse model Gene therapy: 2002( 9), No18, P 1221-1229
http://www.nature.com/gt/journal/v9/n18/full/3301724a.html)中の図。右(d)がNF-kB decoyにより治療されたネズミ。
この先生のHPに下記文章がUPされていました(→こちら)。
ーーーーー(ここから引用)-----
アトピー遺伝子治療薬(NFκBデコイ軟膏) 平成23年7月7日更新
私が阪大大学院生時代に開発しました、アトピー遺伝子治療薬が、臨床治験を無事終え、近日いよいよ商品化されることになりました。
この薬は、かゆみが速効でとれ、itch-scratch cycleを遮断します。
既存のステロイド軟膏のようなリバウンドもありません。
ーーーーー(ここまで引用)-----
また、開発者ならではの、興味深いコメントも記されています。
ーーーーー(ここから引用)-----
NF-κBは炎症を引き起こす主役とお考えください。デコイ(decoy)はオトリという意味で、NF-κBを半分程度抑制します。全部抑制しますとステロイド剤のようにさまざまな副作用を生じますので、半分程度といったところがミソです。デコイが血中に入りますとDNA分解酵素の働きですぐに分解されますので、肝臓を傷めることはありません。
私が研究開発したNF-κBデコイ軟膏は、白色ワセリンを基剤として、少し乳化剤を加えてNF-κBデコイを綺麗に混ぜてあります。NF-κBデコイは毛穴を通って、真皮に到達します。顔面には毛穴が多いので、一番効果が出るのです。真皮にはアトピーの原因である肥満細胞が住んでおり、痒みの元になる物質をたくさん胃袋に蓄えているのです。ゴミ処理人(スカベンジャー)ともいえる肥満細胞が、ゴミのようなDNA(NF-κBデコイ)を喜んで食べるのです。リンパ球にはそういった貪食作用がないために、NF-κBデコイによって免疫抑制がかからず、プロトピック軟膏のような副作用は出ないのです。肥満細胞にまんまと食べられたNF-κBデコイは、肥満細胞の細胞死(アポトーシス)を促し、痒みが速効で消えるという仕組みです。
アメリカニューヨークのアレルギー学会(AAAAI)で発表したときは、口演直後から1分間座長と聴衆から拍手喝采(スタンディング オベーション)をいただきました。ぜひ臨床応用までもって いってほしいとも頼まれました。もうすぐ日本の皆様からも納得して受け入れていただけることを確信しています。
ーーーーー(ここまで引用)-----
http://homepage3.nifty.com/nakamura-syounika/1_1.htm
ところで、デコイ軟膏には、NFκBデコイのほかに、STAT6 デコイというのもあります。こちらは、東京医科歯科大学の横関先生が研究中で、
ーーーーー(ここから引用)-----
アトピー性皮膚炎を対象にしたデコイとしては、NFκBのデコイが臨床試験入りしているが、STAT6デコイは、ステロイドやNFκBデコイが効かないような重症の患者への治療薬とすることを目指している。
ーーーーー)ここまで引用)-----
http://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/hotnews/archives/404661.html
とのことです。横関先生の論文は
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19292714
にあり、リバウンドの有無については検討されていませんが、上記中邨先生のコメントから推測すると、デコイ一般にリバウンドを来たしにくいのかなあ?と想像します。
STAT6デコイ軟膏は、商品化はまだ決まってないと思います。
NF-κBデコイ軟膏は、アトピー性皮膚炎の顔面病変が適応のようですから、プロトピック軟膏が対抗馬となります。
プロトピック軟膏はアステラス製薬が販売しており、の売り上げは、2011年3月期で、162億円(日本国内29、米州71、欧州52、アジア9)でした。
http://www.astellas.com/jp/ir/finance/sale_products.html
一方、NF-κBデコイ軟膏は、大阪大学臨床遺伝子治療学の森下竜一教授が創業した、アンジェスMGというベンチャー企業(http://www.anges-mg.com/)が、臨床化を目指してきました。
アンジェスMGの、平成22年前半の中間報告書p6を見ますと、
http://www.anges-mg.com/ir/pdf/2010_12_chukan.pdf
流動資産(主に現金および預金)が、平成21年12月で59億円あったのが、平成22年6月で51億円と減っています。事業収益は、製品売り上げ高7千万円、研究開発事業収益が4億円ほどで、経常損失が8億6千万円ですから、このままだと、あと数年で資産を食い潰してしまう運命にあります。
平成15年の事業報告書
http://www.anges-mg.com/ir/pdf/5ki_houkoku.pdf
では、流動資産は105億円ありましたから、7年間で54億円減っています。ベンチャー創薬企業ですから、開発投資先行にはなるわけですが、すごいなあ・・。
このまま、資産が無くなってしまったら、創業者の森下先生は、結果的に100億円以上の出資を募って、溶かして消してしまったことになります。
平成22年6月の中間報告書のp3にNF-κBデコイ軟膏の進捗状況が記されています。この時点で、日本では第二相の終わり、欧米では前臨床の最中のようでした。
http://www.anges-mg.com/ir/pdf/2010_12_chukan.pdf
その後、平成22年12月に、アンジェスMGから、「塩野義製薬と、本薬のアトピー性皮膚炎適応に関する共同開発及び全世界における独占的な販売権許諾に合意致しました」という発表がありました。
http://www.anges-mg.com/news/pdf/101227.pdf
シオノギ製薬がどんな会社かみてみましょう。
シオノギ製薬の平成23年3月期決算短信
http://www.shionogi.co.jp/ir/materials/detail/ren11_05.pdf
によれば、この企業の売上高は2820億円であることがわかります。
プロトピック軟膏の国内売上が29億円ですから、これが全部NF-κBデコイ軟膏に置き換わったとしても、シオノギの業績がすごく伸びるわけではなさそうです。
しかしシオノギにとっては、NF-κBデコイ軟膏はとても魅力的なのだろうと推測します。それはなぜかというと、シオノギは国内市場依存度が高いからです(輸出/海外子会社の売上が374億円)。
日本は国民皆保険で診療報酬点数の伸びが見込めないことを考えると、海外に展開していかなければなりません。NF-κBデコイ軟膏の、全世界における独占的な販売権許諾を得るということは、その足掛かりになります。
http://www.shionogi.co.jp/ir/materials/detail/hos11_05.pdf
アンジェスの事業収益増加、シオノギの海外戦略の、二つのニーズがうまく組み合わさって、中邨先生のHPの「近日いよいよ商品化」となったのでしょう。
シオノギの売上高2785億円のうち売上原価は762億円とあります
http://www.shionogi.co.jp/ir/materials/detail/ren11_05.pdf
から、原価率は27%ほどです。国内29億円のプロトピック市場が全部NF-κBデコイ軟膏に移行したとして、仮にアンジェスの取り分が27%だと、8億円弱ですから、なんとかアンジェスも次の製品上市までは、研究開発を続けられそうです。さらに、シオノギがうまく海外市場開拓に成功してくれれば、162億円の27%=43億円になります。夢が膨らみます。
「近日いよいよ商品化」の近日がいつか?ですが、シオノギ製薬に電話して聞いてみましたが、「未発売の薬については、それが本当に発売されるかどうかも含めて、お知らせするときには一斉にお知らせする。その前に特定の人にお知らせすることは出来ないし、社員も知らない。ごく一部の人しか知らない。」だそうです。新聞またはHP上のリリースを待つしか無いようです。
※追記 平成23年8月8日のアンジェスの四半期決算短信http://www.anges-mg.com/ir/pdf/110808_1.pdf の10pには、「日本:第Ⅱ相、塩野義製薬と開発戦略を協議中」とありました。どうやら、中邨先生の「近日いよいよ商品化」というメッセージは、「第Ⅱ相の結果が良かったので、シオノギ製薬という第Ⅲ相をいっしょにやってくれるパートナーが見つかって、商品化への道筋がつきました。」ということだったみたいですね。第Ⅱ相は、少数の患者で有効性を確認する試験で、第Ⅲ相は、多施設で多数の患者を対象に盲検化して行われます。大手製薬メーカーと共同でなければ難しいということなのでしょう。
ちなみにプロトピック軟膏の場合は、1996年から第Ⅲ相に入り97年に薬価収載申請、99年6月に承認、同年11月19日に薬価収載され、11月24日から使用可能となっています。まだ3年くらいかかるかも・・しかし第Ⅲ相が始まるということは、治験に参加する門戸は開くわけだから、早く試してみたいひとは、アンジェスのHPで第Ⅲ相開始がアナウンスされたあとに、近くの大学病院などに問い合わせてみるといいかもしれません
患者団体などが「ステロイド外用剤の依存性・リバウンドを認めよ」といった署名を厚労省に提出することがありますが、そういった声が大きくマスコミでも取り上げられれば、厚労省も少しは急ぐのでしょうけどね。「ステロイドは安全、アトピーは標準治療で良くなります」というプロパガンダの下では、急げというほうが無理筋です。今後、そういった署名や活動がまたあったら、協力してあげてください。
さて、ここからが今回のブログ記事のメインになります。
アンジェスMG、および、シオノギ製薬の関係者のかたに、お願いします。NF-κBデコイ軟膏の売りは、なんといっても、リバウンドを起こさない(=依存性が無い)ことが、動物実験で証明されているという点です。ここを是非強く強調して上市してほしい。
プロトピック軟膏のときには、この点、というか、「ステロイド外用剤に依存性は無い」という間違った見解に、頑固な皮膚科教授らが固執したために、「ステロイドが安全なのに、なぜ、発癌性が疑われるプロトピック軟膏が必要なのだ?」という疑念を抱かれ、出鼻をくじかれました。あれで、ずいぶん、プロトピック軟膏の売上が鈍ったはずです。
NF-κBデコイ軟膏上市の暁には、ぜひ、「NF-κBデコイ軟膏には、ステロイド外用剤でみられるような、リバウンド現象がありません」と、堂々とプロモーションしてください。御社のためにも、患者の利益にもなる話です。
日本の国民医療費は、増加していますが、その本質は、薬剤費の伸びです。
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000qbvu-att/2r9852000000qs0f.pdf
医師の診療報酬点数(取り分)は下がっています。
これはやむを得ないこととしても、その薬剤費はというと、大手製薬企業の売上へとなります。そして大手製薬企業には外国企業がずらりと並びます。
結果的に、日本の国民医療費は、外国企業へと流出してしまっています。
シオノギもアンジェスMGも、日本国内企業です。どうせ薬剤費に流れるなら、国内企業へと流れてほしいものです。そして、できれば、海外へと売り込んでいってほしいと、日本人の1人として、応援します。
それにしても、ひとつの薬剤が世に出るまでには、本当に大変なストーリーがあるものです。ステロイド外用剤にしても、短期的に依存を来たさないように上手に使えば、とても有用なのだから、我々臨床医も患者も、創薬者の努力を無駄にしないよう、慎重に活用していかなければなりません。
2011.07.25
http://www.nature.com/gt/journal/v9/n18/full/3301724a.html)中の図。右(d)がNF-kB decoyにより治療されたネズミ。
この先生のHPに下記文章がUPされていました(→こちら)。
ーーーーー(ここから引用)-----
アトピー遺伝子治療薬(NFκBデコイ軟膏) 平成23年7月7日更新
私が阪大大学院生時代に開発しました、アトピー遺伝子治療薬が、臨床治験を無事終え、近日いよいよ商品化されることになりました。
この薬は、かゆみが速効でとれ、itch-scratch cycleを遮断します。
既存のステロイド軟膏のようなリバウンドもありません。
ーーーーー(ここまで引用)-----
また、開発者ならではの、興味深いコメントも記されています。
ーーーーー(ここから引用)-----
NF-κBは炎症を引き起こす主役とお考えください。デコイ(decoy)はオトリという意味で、NF-κBを半分程度抑制します。全部抑制しますとステロイド剤のようにさまざまな副作用を生じますので、半分程度といったところがミソです。デコイが血中に入りますとDNA分解酵素の働きですぐに分解されますので、肝臓を傷めることはありません。
私が研究開発したNF-κBデコイ軟膏は、白色ワセリンを基剤として、少し乳化剤を加えてNF-κBデコイを綺麗に混ぜてあります。NF-κBデコイは毛穴を通って、真皮に到達します。顔面には毛穴が多いので、一番効果が出るのです。真皮にはアトピーの原因である肥満細胞が住んでおり、痒みの元になる物質をたくさん胃袋に蓄えているのです。ゴミ処理人(スカベンジャー)ともいえる肥満細胞が、ゴミのようなDNA(NF-κBデコイ)を喜んで食べるのです。リンパ球にはそういった貪食作用がないために、NF-κBデコイによって免疫抑制がかからず、プロトピック軟膏のような副作用は出ないのです。肥満細胞にまんまと食べられたNF-κBデコイは、肥満細胞の細胞死(アポトーシス)を促し、痒みが速効で消えるという仕組みです。
アメリカニューヨークのアレルギー学会(AAAAI)で発表したときは、口演直後から1分間座長と聴衆から拍手喝采(スタンディング オベーション)をいただきました。ぜひ臨床応用までもって いってほしいとも頼まれました。もうすぐ日本の皆様からも納得して受け入れていただけることを確信しています。
ーーーーー(ここまで引用)-----
http://homepage3.nifty.com/nakamura-syounika/1_1.htm
ところで、デコイ軟膏には、NFκBデコイのほかに、STAT6 デコイというのもあります。こちらは、東京医科歯科大学の横関先生が研究中で、
ーーーーー(ここから引用)-----
アトピー性皮膚炎を対象にしたデコイとしては、NFκBのデコイが臨床試験入りしているが、STAT6デコイは、ステロイドやNFκBデコイが効かないような重症の患者への治療薬とすることを目指している。
ーーーーー)ここまで引用)-----
http://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/hotnews/archives/404661.html
とのことです。横関先生の論文は
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19292714
にあり、リバウンドの有無については検討されていませんが、上記中邨先生のコメントから推測すると、デコイ一般にリバウンドを来たしにくいのかなあ?と想像します。
STAT6デコイ軟膏は、商品化はまだ決まってないと思います。
NF-κBデコイ軟膏は、アトピー性皮膚炎の顔面病変が適応のようですから、プロトピック軟膏が対抗馬となります。
プロトピック軟膏はアステラス製薬が販売しており、の売り上げは、2011年3月期で、162億円(日本国内29、米州71、欧州52、アジア9)でした。
http://www.astellas.com/jp/ir/finance/sale_products.html
一方、NF-κBデコイ軟膏は、大阪大学臨床遺伝子治療学の森下竜一教授が創業した、アンジェスMGというベンチャー企業(http://www.anges-mg.com/)が、臨床化を目指してきました。
アンジェスMGの、平成22年前半の中間報告書p6を見ますと、
http://www.anges-mg.com/ir/pdf/2010_12_chukan.pdf
流動資産(主に現金および預金)が、平成21年12月で59億円あったのが、平成22年6月で51億円と減っています。事業収益は、製品売り上げ高7千万円、研究開発事業収益が4億円ほどで、経常損失が8億6千万円ですから、このままだと、あと数年で資産を食い潰してしまう運命にあります。
平成15年の事業報告書
http://www.anges-mg.com/ir/pdf/5ki_houkoku.pdf
では、流動資産は105億円ありましたから、7年間で54億円減っています。ベンチャー創薬企業ですから、開発投資先行にはなるわけですが、すごいなあ・・。
このまま、資産が無くなってしまったら、創業者の森下先生は、結果的に100億円以上の出資を募って、溶かして消してしまったことになります。
平成22年6月の中間報告書のp3にNF-κBデコイ軟膏の進捗状況が記されています。この時点で、日本では第二相の終わり、欧米では前臨床の最中のようでした。
http://www.anges-mg.com/ir/pdf/2010_12_chukan.pdf
その後、平成22年12月に、アンジェスMGから、「塩野義製薬と、本薬のアトピー性皮膚炎適応に関する共同開発及び全世界における独占的な販売権許諾に合意致しました」という発表がありました。
http://www.anges-mg.com/news/pdf/101227.pdf
シオノギ製薬がどんな会社かみてみましょう。
シオノギ製薬の平成23年3月期決算短信
http://www.shionogi.co.jp/ir/materials/detail/ren11_05.pdf
によれば、この企業の売上高は2820億円であることがわかります。
プロトピック軟膏の国内売上が29億円ですから、これが全部NF-κBデコイ軟膏に置き換わったとしても、シオノギの業績がすごく伸びるわけではなさそうです。
しかしシオノギにとっては、NF-κBデコイ軟膏はとても魅力的なのだろうと推測します。それはなぜかというと、シオノギは国内市場依存度が高いからです(輸出/海外子会社の売上が374億円)。
日本は国民皆保険で診療報酬点数の伸びが見込めないことを考えると、海外に展開していかなければなりません。NF-κBデコイ軟膏の、全世界における独占的な販売権許諾を得るということは、その足掛かりになります。
http://www.shionogi.co.jp/ir/materials/detail/hos11_05.pdf
アンジェスの事業収益増加、シオノギの海外戦略の、二つのニーズがうまく組み合わさって、中邨先生のHPの「近日いよいよ商品化」となったのでしょう。
シオノギの売上高2785億円のうち売上原価は762億円とあります
http://www.shionogi.co.jp/ir/materials/detail/ren11_05.pdf
から、原価率は27%ほどです。国内29億円のプロトピック市場が全部NF-κBデコイ軟膏に移行したとして、仮にアンジェスの取り分が27%だと、8億円弱ですから、なんとかアンジェスも次の製品上市までは、研究開発を続けられそうです。さらに、シオノギがうまく海外市場開拓に成功してくれれば、162億円の27%=43億円になります。夢が膨らみます。
「近日いよいよ商品化」の近日がいつか?ですが、シオノギ製薬に電話して聞いてみましたが、「未発売の薬については、それが本当に発売されるかどうかも含めて、お知らせするときには一斉にお知らせする。その前に特定の人にお知らせすることは出来ないし、社員も知らない。ごく一部の人しか知らない。」だそうです。新聞またはHP上のリリースを待つしか無いようです。
※追記 平成23年8月8日のアンジェスの四半期決算短信http://www.anges-mg.com/ir/pdf/110808_1.pdf の10pには、「日本:第Ⅱ相、塩野義製薬と開発戦略を協議中」とありました。どうやら、中邨先生の「近日いよいよ商品化」というメッセージは、「第Ⅱ相の結果が良かったので、シオノギ製薬という第Ⅲ相をいっしょにやってくれるパートナーが見つかって、商品化への道筋がつきました。」ということだったみたいですね。第Ⅱ相は、少数の患者で有効性を確認する試験で、第Ⅲ相は、多施設で多数の患者を対象に盲検化して行われます。大手製薬メーカーと共同でなければ難しいということなのでしょう。
ちなみにプロトピック軟膏の場合は、1996年から第Ⅲ相に入り97年に薬価収載申請、99年6月に承認、同年11月19日に薬価収載され、11月24日から使用可能となっています。まだ3年くらいかかるかも・・しかし第Ⅲ相が始まるということは、治験に参加する門戸は開くわけだから、早く試してみたいひとは、アンジェスのHPで第Ⅲ相開始がアナウンスされたあとに、近くの大学病院などに問い合わせてみるといいかもしれません
患者団体などが「ステロイド外用剤の依存性・リバウンドを認めよ」といった署名を厚労省に提出することがありますが、そういった声が大きくマスコミでも取り上げられれば、厚労省も少しは急ぐのでしょうけどね。「ステロイドは安全、アトピーは標準治療で良くなります」というプロパガンダの下では、急げというほうが無理筋です。今後、そういった署名や活動がまたあったら、協力してあげてください。
さて、ここからが今回のブログ記事のメインになります。
アンジェスMG、および、シオノギ製薬の関係者のかたに、お願いします。NF-κBデコイ軟膏の売りは、なんといっても、リバウンドを起こさない(=依存性が無い)ことが、動物実験で証明されているという点です。ここを是非強く強調して上市してほしい。
プロトピック軟膏のときには、この点、というか、「ステロイド外用剤に依存性は無い」という間違った見解に、頑固な皮膚科教授らが固執したために、「ステロイドが安全なのに、なぜ、発癌性が疑われるプロトピック軟膏が必要なのだ?」という疑念を抱かれ、出鼻をくじかれました。あれで、ずいぶん、プロトピック軟膏の売上が鈍ったはずです。
NF-κBデコイ軟膏上市の暁には、ぜひ、「NF-κBデコイ軟膏には、ステロイド外用剤でみられるような、リバウンド現象がありません」と、堂々とプロモーションしてください。御社のためにも、患者の利益にもなる話です。
日本の国民医療費は、増加していますが、その本質は、薬剤費の伸びです。
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000qbvu-att/2r9852000000qs0f.pdf
医師の診療報酬点数(取り分)は下がっています。
これはやむを得ないこととしても、その薬剤費はというと、大手製薬企業の売上へとなります。そして大手製薬企業には外国企業がずらりと並びます。
結果的に、日本の国民医療費は、外国企業へと流出してしまっています。
シオノギもアンジェスMGも、日本国内企業です。どうせ薬剤費に流れるなら、国内企業へと流れてほしいものです。そして、できれば、海外へと売り込んでいってほしいと、日本人の1人として、応援します。
それにしても、ひとつの薬剤が世に出るまでには、本当に大変なストーリーがあるものです。ステロイド外用剤にしても、短期的に依存を来たさないように上手に使えば、とても有用なのだから、我々臨床医も患者も、創薬者の努力を無駄にしないよう、慎重に活用していかなければなりません。
2011.07.25