UVBは表皮のステロイド産生を増加させる
先回、表皮のステロイド産生が、「ステロイド依存」を考えるにあたっての一つの鍵ではなかろうか?という記事を書きました(→こちら)。
ステロイドを外用することは、表皮自身のステロイド産生能力を抑えてしまうため、ちょうど内服ステロイドの長期連用によって萎縮してしまった副腎がすぐには回復しないように、ステロイド外用剤の長期連用後の表皮もまた、自力でステロイド産生ができなくなっていてしまっているのではないか?ということです。
正常な表皮が自分でステロイドを産生しているという事実からは、いろいろな推察が可能です。たとえば、離脱後のリバウンドあるいは過敏性の亢進ですが、これは、正常な表皮は自らステロイドを産生することで、外的刺激に対する炎症反応を抑えており、ステロイド離脱後、ステロイドを自力で産生できない表皮では、この抑制能力が無くなってしまったため炎症が起こりやすくなってしまっているという解釈が可能です。つじつまが合います。
さて、表皮のステロイド産生能力が低下してしまうことが、ステロイド依存の鍵であるなら、表皮のステロイド産生を増やすものは何だろうか?それこそが、依存からの早期脱却の手段ではなかろうか、ということになります。
その観点から文献を探してみました。
Cutaneous hypothalamic-pituitary-adrenal axis homolog: regulation by ultraviolet radiation. Skobowiat C,et al Am J Physiol Endocrinol Metab. 2011 Sep;301(3):E484-93.
(http://ajpendo.physiology.org/cgi/pmidlookup?view=long&pmid=21673307 に全文が無料公開されています)
一言で要約すると、UVB照射が表皮のステロイド産生能を増加させる、という内容の論文です。
論文中の図を一部引用します。
ステロイドを外用することは、表皮自身のステロイド産生能力を抑えてしまうため、ちょうど内服ステロイドの長期連用によって萎縮してしまった副腎がすぐには回復しないように、ステロイド外用剤の長期連用後の表皮もまた、自力でステロイド産生ができなくなっていてしまっているのではないか?ということです。
正常な表皮が自分でステロイドを産生しているという事実からは、いろいろな推察が可能です。たとえば、離脱後のリバウンドあるいは過敏性の亢進ですが、これは、正常な表皮は自らステロイドを産生することで、外的刺激に対する炎症反応を抑えており、ステロイド離脱後、ステロイドを自力で産生できない表皮では、この抑制能力が無くなってしまったため炎症が起こりやすくなってしまっているという解釈が可能です。つじつまが合います。
さて、表皮のステロイド産生能力が低下してしまうことが、ステロイド依存の鍵であるなら、表皮のステロイド産生を増やすものは何だろうか?それこそが、依存からの早期脱却の手段ではなかろうか、ということになります。
その観点から文献を探してみました。
Cutaneous hypothalamic-pituitary-adrenal axis homolog: regulation by ultraviolet radiation. Skobowiat C,et al Am J Physiol Endocrinol Metab. 2011 Sep;301(3):E484-93.
(http://ajpendo.physiology.org/cgi/pmidlookup?view=long&pmid=21673307 に全文が無料公開されています)
一言で要約すると、UVB照射が表皮のステロイド産生能を増加させる、という内容の論文です。
論文中の図を一部引用します。
左列はUVA、右列はUVBを照射した結果で、横軸は照射エネルギー、縦軸は上からCRH(corticotropin-releasing hormone:副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン)、ACTH(adrenocorticotropic hormone:副腎皮質刺激ホルモン)、およびコルチゾールです。UVA照射によっては表皮はこれらのホルモンを産生しませんが、UVBを照射すると、これらのホルモンはdose-dependent に誘導されるようです。
(注)CRH産生のUVAとUVBのコントロール(照射量0)の数値が20と10未満で揃わないのは、多分ですが、検体として用いた皮膚片のdonorが違うからだと思います。UVAとUVBとでは、異なる日に異なる人の皮膚片を用いて行われた実験だと解釈されます。
非常に興味深いことは、表皮細胞が、CRH,ACTH,コルチゾール、すべてのホルモンを同時産生するという事実です。教科書的には、CRHというのは視床下部から放出されて、脳下垂体前葉がこれに反応してACTHを産生し、副腎皮質がACTHに反応してコルチゾールを産生するのですが、表皮というのは、一人三役でこれら全部の産生をこなしているようです。
合目的的な観点からは、UVAというのは、皮膚のメラノサイトに働いてメラニンを増加させますが、炎症は惹起しません。一方、UVBはエネルギーが大きく、それ自体、皮膚にダメージを与えて赤く腫れ上がらせ、炎症を惹起します。これに即応するために、表皮はステロイドを産生する必要があるということなのでしょう。
いずれにせよ、この論文は、ナローバンドUVB照射が、ステロイド離脱に有用かもしれない、ということを示唆してくれます。南の島での海水浴治療も同様です。
そのほか一般的に、下垂体―副腎系を刺激する、すなわち「ストレス」のようなものが、離脱にあたっては、表皮のステロイド産生能回復を促すという観点からは、良いのかもしれません。
ここで気をつけるべきことは、「精神的ストレス」ではなく「皮膚へのストレス」であろうという点です。精神的ストレスは、視床下部―下垂体―副腎系(hypothalamo-pituitary-adrenal axis:HPA axisという)の活性化を促し、血中コルチゾールを増加させます。血中コルチゾールが増加すれば、表皮自身がステロイドを作る必要性は薄れるかもしれません。ですから、精神的ストレスは極力少なく、皮膚へのストレスは大きく、ということになります。UVB照射というのは、まさにそういう刺激の一つであるのでしょう。
「脱保湿」もまた、UVB照射と同様、表皮細胞のコルチゾール産生を促すという意味でのストレスとして機能しているのかもしれません。仮説を基にさらにその上に仮説を立てるような話で恐縮ですが、あくまで、考えるヒントですのでご承知おきください。将来的に脱保湿の有用性のメカニズムが、そのような観点から解明される可能性は十分にあると私は思います。
2013.11.26
(注)CRH産生のUVAとUVBのコントロール(照射量0)の数値が20と10未満で揃わないのは、多分ですが、検体として用いた皮膚片のdonorが違うからだと思います。UVAとUVBとでは、異なる日に異なる人の皮膚片を用いて行われた実験だと解釈されます。
非常に興味深いことは、表皮細胞が、CRH,ACTH,コルチゾール、すべてのホルモンを同時産生するという事実です。教科書的には、CRHというのは視床下部から放出されて、脳下垂体前葉がこれに反応してACTHを産生し、副腎皮質がACTHに反応してコルチゾールを産生するのですが、表皮というのは、一人三役でこれら全部の産生をこなしているようです。
合目的的な観点からは、UVAというのは、皮膚のメラノサイトに働いてメラニンを増加させますが、炎症は惹起しません。一方、UVBはエネルギーが大きく、それ自体、皮膚にダメージを与えて赤く腫れ上がらせ、炎症を惹起します。これに即応するために、表皮はステロイドを産生する必要があるということなのでしょう。
いずれにせよ、この論文は、ナローバンドUVB照射が、ステロイド離脱に有用かもしれない、ということを示唆してくれます。南の島での海水浴治療も同様です。
そのほか一般的に、下垂体―副腎系を刺激する、すなわち「ストレス」のようなものが、離脱にあたっては、表皮のステロイド産生能回復を促すという観点からは、良いのかもしれません。
ここで気をつけるべきことは、「精神的ストレス」ではなく「皮膚へのストレス」であろうという点です。精神的ストレスは、視床下部―下垂体―副腎系(hypothalamo-pituitary-adrenal axis:HPA axisという)の活性化を促し、血中コルチゾールを増加させます。血中コルチゾールが増加すれば、表皮自身がステロイドを作る必要性は薄れるかもしれません。ですから、精神的ストレスは極力少なく、皮膚へのストレスは大きく、ということになります。UVB照射というのは、まさにそういう刺激の一つであるのでしょう。
「脱保湿」もまた、UVB照射と同様、表皮細胞のコルチゾール産生を促すという意味でのストレスとして機能しているのかもしれません。仮説を基にさらにその上に仮説を立てるような話で恐縮ですが、あくまで、考えるヒントですのでご承知おきください。将来的に脱保湿の有用性のメカニズムが、そのような観点から解明される可能性は十分にあると私は思います。
2013.11.26
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