インタール(クロモグリク酸)の外用も効くかもしれない
先回、アイピーディの外用について記しました(→こちら)。
インタールというのは、喘息の吸入や幼児の食物アレルギーに用いられる抗ヒスタミン薬で、アイピーディの仲間といっていいです。
インタールというのは、喘息の吸入や幼児の食物アレルギーに用いられる抗ヒスタミン薬で、アイピーディの仲間といっていいです。
インタールの外用は、効くかもしれない、というよりも、効くみたいです。イギリスでTHORNTON & ROSS LIMITEDという会社がスポンサーとなってPhaseⅢの臨床試験まで済ませているようで、Altodermという商品名で2007年にヨーロッパおよび北米での商標登録もしています。
(http://www.trademarkia.com/altoderm-77125715.html)
アメリカでは、Manhattan Pharmaceuticalsという製薬会社が2007年にT&R社からライセンスを取得して(→こちら)、2008年にFDAの臨床試験の申請を行っています。
ただし、その後4年になりますが、まだT&R社の製品リストには上がってきてないようです。どうかなあ、発売されるのかなあ・・。
論文を読む限り、とくに副作用は出ていないようだし、結局これも、ステロイド外用剤と比べた時の効果と、実際に販売した場合の適正価格を考えると、収益性がどうなんだ、って、社内的な議論になっているのではないだろうか(杞憂だといいのですが)。
さて、このインタールのアトピー性皮膚炎への外用効果ですが、日本では、現在豊中市で開業していらっしゃる長野拓三先生が、1987年に「アレルギーの臨床」という雑誌にケースレポートとして報告されたのが最初のようです。
次いで、先回アイピーディの記事でも紹介した木俣先生が、45名の3才以下の中程度~重度のアトピー児45名に、二重盲験試験を行って、皮疹の改善および痒み・睡眠障害についての1~2週後からの有意差を確認しています(Topical cromolyn (disodium cromoglycate) solution in the treatment of young children with atopic dermatitis. Clinical & Experimental Allergy.20, Issue 3, pages 281–283, May 1990)。
世界的には、イギリスで1977年にHaiderという小児科の先生が、21人のアトピー児に対して、二重盲験試験で効果を確認したのが最初のようです(Treatment of atopic eczema in children: clinical trial of 10% sodium cromoglycate ointment. Br Med J. 1977 Jun 18;:1570-2.)。その流れでイギリスのT&R社が商品化しようとしているのでしょう。
木俣先生の論文は、Dr. Haiderの追試といっていい内容です。Dr. Haiderの論文は、1977当時のものとしては、非常によくデザインされており、なるほど、木俣先生が関心を抱いて追試してみようという気になったのはわかります。
ただし、Dr. Haiderは、10%を用いていて「4%では効かないようだ」と記しており、木俣先生は1%の吸入液を外用に用いての結果です。上のAltodermは4%です。この点は意見が分かれます。
Dr. Haiderは、“More recently encouraging results were reported after a small group of patients with chronic atopic eczema, who had failed to benefit from conventional treatment including local corticosteroids, were treated with an ointment containing 5 to 15% SCG in white soft paraffin. I decided to conduct a larger controlled study, and report here the results.” (さらに最近勇気付けられる報告があった。それは、ステロイド外用剤など従来の方法で効果のないアトピー性皮膚炎患者が、5~15%のクロモグリク酸ナトリウム外用で治療できたというものだ。私は、それでより多くの患者で比較研究を行ってみようという気になった。)と記しています。ステロイド外用剤が効かない、すなわち依存例・抵抗例を前にして、試しにクロモグリク酸をやってみたら有効だったので、二重盲験をしようと思い立ったということですね。「ステロイド外用剤に依存性はない。全ての患者は塗り方や強さを変えることでコントロール可能だ。」と主張する立場からは、Dr.Haiderの発想は生まれません。
木俣先生もまた。”It is worth noting that cromolyn solution was effective even in some subjects in whom topical corticosteroids worsened the dermatitis.”(特記すべきは、クロモグリク酸液は、ステロイド外用剤によって皮膚炎が悪化してしまっている症例においても有効であったという点だ)と記しています。
木俣先生が論文を記した1990年は、淀川キリスト教病院の玉置先生が「脱ステロイド療法」を始めた年で、それ以前には1987年に原重正先生の「脱ステロイド療法」がありましたが(→こちら)、よく引き合いに出される「久米宏のニュースセンター」の放映(1992年)よりも前です。
このころ、一部の医師たちが、ステロイドで良くならない患者がいることに気が付き、問題に取り組み始めていたわけです。
木俣先生は、Dr.Haiderの論文を読んで、ここに解決のヒントがあるかもしれない、と考えたのでしょう。
もし、ステロイド外用剤治療に疑問を抱かなければ、誰もDr.Haiderの論文に関心を持ちません。というか、Dr.Haider自身、この試験を行おうとはしなかったでしょう。
2005年のT&R社がスポンサーとなっている論文(Efficacy and acceptability of a new topical skin lotion of sodium cromoglicate (Altoderm) in atopic dermatitis in children aged 2-12 years: a double-blind, randomized, placebo-controlled trial.. Stainer R et al. Br J Dermatol. 2005 Feb;152(2):334-41.)においても、「ステロイド外用剤の使用頻度が減少した」ことを有用性の一つに挙げています。
しかし、それをメリットだと主張するためには、ステロイド外用剤の長期使用に問題があることを訴えなければなりません。果たしてAltodermは発売されるでしょうか、どうでしょうか・・。
仮に欧米でAltodermが発売されたとして、日本に導入されるのは、はてさて、いつになることやら。
市販のインタールは、一番濃いもので細粒の10%ですから、Dr.Haiderの論文の10%軟膏は原末が入手できないと作成できません。吸入用カプセル20㎎という製品がありますが、
アメリカでは、Manhattan Pharmaceuticalsという製薬会社が2007年にT&R社からライセンスを取得して(→こちら)、2008年にFDAの臨床試験の申請を行っています。
ただし、その後4年になりますが、まだT&R社の製品リストには上がってきてないようです。どうかなあ、発売されるのかなあ・・。
論文を読む限り、とくに副作用は出ていないようだし、結局これも、ステロイド外用剤と比べた時の効果と、実際に販売した場合の適正価格を考えると、収益性がどうなんだ、って、社内的な議論になっているのではないだろうか(杞憂だといいのですが)。
さて、このインタールのアトピー性皮膚炎への外用効果ですが、日本では、現在豊中市で開業していらっしゃる長野拓三先生が、1987年に「アレルギーの臨床」という雑誌にケースレポートとして報告されたのが最初のようです。
次いで、先回アイピーディの記事でも紹介した木俣先生が、45名の3才以下の中程度~重度のアトピー児45名に、二重盲験試験を行って、皮疹の改善および痒み・睡眠障害についての1~2週後からの有意差を確認しています(Topical cromolyn (disodium cromoglycate) solution in the treatment of young children with atopic dermatitis. Clinical & Experimental Allergy.20, Issue 3, pages 281–283, May 1990)。
世界的には、イギリスで1977年にHaiderという小児科の先生が、21人のアトピー児に対して、二重盲験試験で効果を確認したのが最初のようです(Treatment of atopic eczema in children: clinical trial of 10% sodium cromoglycate ointment. Br Med J. 1977 Jun 18;:1570-2.)。その流れでイギリスのT&R社が商品化しようとしているのでしょう。
木俣先生の論文は、Dr. Haiderの追試といっていい内容です。Dr. Haiderの論文は、1977当時のものとしては、非常によくデザインされており、なるほど、木俣先生が関心を抱いて追試してみようという気になったのはわかります。
ただし、Dr. Haiderは、10%を用いていて「4%では効かないようだ」と記しており、木俣先生は1%の吸入液を外用に用いての結果です。上のAltodermは4%です。この点は意見が分かれます。
Dr. Haiderは、“More recently encouraging results were reported after a small group of patients with chronic atopic eczema, who had failed to benefit from conventional treatment including local corticosteroids, were treated with an ointment containing 5 to 15% SCG in white soft paraffin. I decided to conduct a larger controlled study, and report here the results.” (さらに最近勇気付けられる報告があった。それは、ステロイド外用剤など従来の方法で効果のないアトピー性皮膚炎患者が、5~15%のクロモグリク酸ナトリウム外用で治療できたというものだ。私は、それでより多くの患者で比較研究を行ってみようという気になった。)と記しています。ステロイド外用剤が効かない、すなわち依存例・抵抗例を前にして、試しにクロモグリク酸をやってみたら有効だったので、二重盲験をしようと思い立ったということですね。「ステロイド外用剤に依存性はない。全ての患者は塗り方や強さを変えることでコントロール可能だ。」と主張する立場からは、Dr.Haiderの発想は生まれません。
木俣先生もまた。”It is worth noting that cromolyn solution was effective even in some subjects in whom topical corticosteroids worsened the dermatitis.”(特記すべきは、クロモグリク酸液は、ステロイド外用剤によって皮膚炎が悪化してしまっている症例においても有効であったという点だ)と記しています。
木俣先生が論文を記した1990年は、淀川キリスト教病院の玉置先生が「脱ステロイド療法」を始めた年で、それ以前には1987年に原重正先生の「脱ステロイド療法」がありましたが(→こちら)、よく引き合いに出される「久米宏のニュースセンター」の放映(1992年)よりも前です。
このころ、一部の医師たちが、ステロイドで良くならない患者がいることに気が付き、問題に取り組み始めていたわけです。
木俣先生は、Dr.Haiderの論文を読んで、ここに解決のヒントがあるかもしれない、と考えたのでしょう。
もし、ステロイド外用剤治療に疑問を抱かなければ、誰もDr.Haiderの論文に関心を持ちません。というか、Dr.Haider自身、この試験を行おうとはしなかったでしょう。
2005年のT&R社がスポンサーとなっている論文(Efficacy and acceptability of a new topical skin lotion of sodium cromoglicate (Altoderm) in atopic dermatitis in children aged 2-12 years: a double-blind, randomized, placebo-controlled trial.. Stainer R et al. Br J Dermatol. 2005 Feb;152(2):334-41.)においても、「ステロイド外用剤の使用頻度が減少した」ことを有用性の一つに挙げています。
しかし、それをメリットだと主張するためには、ステロイド外用剤の長期使用に問題があることを訴えなければなりません。果たしてAltodermは発売されるでしょうか、どうでしょうか・・。
仮に欧米でAltodermが発売されたとして、日本に導入されるのは、はてさて、いつになることやら。
市販のインタールは、一番濃いもので細粒の10%ですから、Dr.Haiderの論文の10%軟膏は原末が入手できないと作成できません。吸入用カプセル20㎎という製品がありますが、
これの内容(粉末)が何%なのか不明です。とりあえずこれを問屋から購入して、内容量計ってみます。
もし、ある程度高濃度の軟膏が作成できそうなら、クロフィブラートのノンリスポンダーの方には、アイピーディ軟膏の次のオプションとなりますし、論文のデータから、痒みや睡眠障害に効果がありそうなので、クロフィブラートリスポンダーの方も併用してみてもいいかもしれません。
追記)上記の吸入用カプセル製剤は、内容を計ったらちょうど20mgなので原末のようです。ですから、これから10%軟膏は作製可能です。
実際に白色ワセリンと練ってみました。なじみもよく、白いクリーム状になります。
もし、ある程度高濃度の軟膏が作成できそうなら、クロフィブラートのノンリスポンダーの方には、アイピーディ軟膏の次のオプションとなりますし、論文のデータから、痒みや睡眠障害に効果がありそうなので、クロフィブラートリスポンダーの方も併用してみてもいいかもしれません。
追記)上記の吸入用カプセル製剤は、内容を計ったらちょうど20mgなので原末のようです。ですから、これから10%軟膏は作製可能です。
実際に白色ワセリンと練ってみました。なじみもよく、白いクリーム状になります。
しかし・・
1カプセルが20mgということは、10%の軟膏仮に20g作ろうとすると、100カプセル要ります。このカプセルの問屋からの仕入れ値が100カプセルで3872円ですから、とんでもなく高くつきます。それに見合った効果があればいいのですが・・。
写真は10カプセルで2gを試作したところです。これで薬剤だけで387円ということです。うーん、全身に使うには向かないかもしれません。
2012.10.29
1カプセルが20mgということは、10%の軟膏仮に20g作ろうとすると、100カプセル要ります。このカプセルの問屋からの仕入れ値が100カプセルで3872円ですから、とんでもなく高くつきます。それに見合った効果があればいいのですが・・。
写真は10カプセルで2gを試作したところです。これで薬剤だけで387円ということです。うーん、全身に使うには向かないかもしれません。
2012.10.29