2010年11月26日の朝日新聞の記事
11月25日の記事は→ こちら
ーーーーー(ここから引用)-----
【子どものアトピー:4 入院、薬漬けの不安再び】
次男(5)のアトピー性皮膚炎の治療に疲れ果てていた札幌市の女性(42)は2007年11月、すがる思いで、厚生労働省が市内で開いたシンポジウムを聴きに行った。
壇上では、国立成育医療センター(現国立成育医療研究センター)の専門医らが、アトピーや食物アレルギーの症状をコントロールするこつを話していた。
ステロイド剤や保湿剤による計画的な薬物治療、徹底的なスキンケア、ダニやホコリなど悪化要因への対策が、治療の柱になること。食事療法で食べ物を過剰に除去すると、成長の障害につながりかねないこと。
治療の羅針盤とするため学会が作った診療ガイドラインの存在を、初めて知った。
でも、薬物療法もダニ対策ももうやっている。「どう薬を使い、スキンケアをどうすればいいのか」。それが分からず、少し不満だった。
「医療や薬への不信を募らせず、ガイドラインを知って治療を選べば、子どもの症状も変わります」。シンポの最後に講演した患者団体「アレルギーを考える母の会」の園部(そのべ)まり子代表(56)が会場に呼びかけた。その声は力強く、表情は明るかった。
講演を終えた園部代表に、夫と駆け寄った。「とにかく話を聞いて欲しい。食事療法で、食べられるものがほとんどないんです」
行き過ぎた除去食療法で栄養が不足し、皮膚炎を悪化させたり、成長障害を起こしたり――。園部さんは、そんな子どもの相談例をたくさん耳にしていた。 講演していた同センターの大矢幸弘(おおやゆきひろ)アレルギー科医長への相談を勧められた。札幌から800キロ以上離れた東京での治療になるが、迷いはなかった。「すぐ行こう」。夫も賛成してくれた。食事療法の効果に、夫も疑問を感じていた。
2カ月後の08年1月、センターに入院。治療内容はこれまでと全然違っていた。
清潔な肌を保つため、1日に3回入浴し、ステロイドの塗り薬を皮膚が隠れるほど厚く塗り広げる。効果はすぐに表れ、皮膚は2、3日でつるつるになった。
ところが、かつて抱いていた罪悪感が女性の中でまたふくらみ、不安になった。「このままステロイド漬けになるのでは」。夜の病室でぐっすり眠る次男の顔を見ながら、ひとり、涙を流した。
ーーーーー(ここまで引用)-----
http://megalodon.jp/2010-1126-1214-17/www.asahi.com/health/ikiru/TKY201011260215.html
札幌で遠いけどどうなんだろ?と思いましたが、やっぱり成育医療センターで大矢先生でしたか。(大矢先生ではないか?という予想については→こちら)
ーーーーー
食事療法で食べ物を過剰に除去すると、成長の障害につながりかねないこと。
ーーーーー
たしかにそうですが、昨日も記しましたように、このお子さんは、そういう極度の除去食で栄養不良の状態にあったのでしょうか?もしそうならこの記事の時点でそう記されているはずです。自己流の厳格食はまずいですが、小児科の先生の下での食事性悪化因子の検索であれば、医師はそこは一番配慮しているはずです。
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行き過ぎた除去食療法で栄養が不足し、皮膚炎を悪化させたり、成長障害を起こしたり――。園部さんは、そんな子どもの相談例をたくさん耳にしていた。
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どうも嫌な書き方です。この子は成長障害おこしているわけではないのに、まったく別の事例を引用して、読者を意図的に混同させようとしているのではないかとすら疑えてしまいます。単に記者が純朴で、気がつかずに書いているだけかもしれませんが。
ーーーーー
患者団体「アレルギーを考える母の会」の園部(そのべ)まり子代表(56)
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この団体は存じ上げないのですが、元々食物アレルギーの方なのか、アトピー児の母の会の方なのかで、見方は変わってきます。あとで調べてみます。
食物アレルギー(アナフィラキシーショックなど)の方であれば、これは、アレルギー友の会の喘息の会員の方たちと同じで、ステロイドなど(アナフィラキシーの場合はアドレナリンなどですが)薬剤によって命を救われた方たちですから、アトピー性皮膚炎の患者がなぜステロイド、まして外用剤という、副作用の少なそうに思える薬剤を拒否するのかが、皆目見当がつかないことでしょう。
アトピー児の母の会のかたであれば、自分たちが苦労して頑張って、アトピー児を自然治癒まで持ち込んだ、その経験を伝えたいということかと思います。ただし、自然治癒し得た中には、ステロイド外用剤を使いながらの方たちも多いでしょう。そういった方たちが、自分の経験だけから他の患者に善意で働きかけるような場合には、自分が依存や離脱を経験していないですから、ステロイド外用剤の問題に無理解な場合もあります。なまじ「自分の子供の場合は」という経験に基づくので、頑固なこともあります。
これは一般論ですが、アトピーの患者の会というのは、母の会と本人(成人アトピー)の会との2系統があります。この二つは、あまり交わりすぎると互いによくない。
母親たちは、ステロイドを使うにしろ使わないにしろ、自責感にさいなまれます。それでどうしても負い目を取り戻そうとする。それは本人(成人アトピー)たちの目には、悲しい過干渉に映ります。母親が頑張れば頑張るほど、本人たちには、自分のせいで、母親が苦しがっているように見えます。放っておいてほしいのです。
だから、住み分けたほうがいい。二系統の患者会は別々であったほうがいいです。それぞれが、自分たちと同じ境遇、解りあえそうな仲間たちとだけ交流していたほうが精神衛生にいい。
食事対策のアトピー児母の会の歴史は、たぶん群馬大学小児科元教授の故松村先生にさかのぼります。厳しい食事制限によるアレルギー改善を試みたかたで、古くからの母の会のかたであれば、そのトラウマを背負っているかもしれません。自分たちが昔信じて過度に行いすぎた食事制限が、まだ日本のどこかで行われているのなら、救ってあげなければならない、そういう思いが強すぎる、という可能性もあります。
いろいろ書きましたが、そんない難しいことではありません。昨日から繰り返し記しておりますように、この患児が、栄養不良・成長障害になってしまっていたのか?によってこの記事の評価や意味が変わります。栄養が取れていれば、食事性の悪化因子探しは、べつに責められるいわれはありません。
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「とにかく話を聞いて欲しい。食事療法で、食べられるものがほとんどないんです」
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このフレーズから、故松村先生流の厳格食療法を連想してしまうのは、むりもないですが、医師がそう指示したのではなく、親御さんが単に、血液検査で陽性に出たものは全部避けなければならないと、思い込んでしまったという可能性のほうが高いと思います。
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食事療法の効果に、夫も疑問を感じていた。
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これは、正しい判断だと思います。昨日記したように、このお子さんは、食物アレルギーはあったようですが、アトピー性皮膚炎の悪化因子としての食事要因は無かった(あるいは小さかった)、ということだったのでしょう。
そこで、手詰まって、次にどうすべきかというと、ステロイドを使うにしろ使わないにしろ、治癒までには時間がかかるのだから、持久戦になりそうだと覚悟して、家族で体制を整える(不安に押しつぶされないように意識して明るく振舞う)ことだったんですけどね。
新聞記者のかたは、今回記事を書きながら、何を目指しているのだろうか?・・自分たちの記事が、結果的に患者を焦らせ、「アトピーがすぐに良くなる治療法」という青い鳥探しへと煽るだけの結果になってしまうことへの恐れは無いのだろうか?・・
患者の不安を、文章の力で、取り除いてあげてください。それは「アトピー性皮膚炎の治癒までには、時間がかかります、焦らないでください」という一言だけでいいんです。
「標準治療をすればもっと早く良くなります。このご両親が札幌でしていたことは全て無駄であるばかりか、子供に対する虐待ですらありました。それを指示していたのは地元の食事アレルギーの小児科の先生たちでした。」とは書かないでください。それは間違っています。
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ところが、かつて抱いていた罪悪感が女性の中でまたふくらみ、不安になった。「このままステロイド漬けになるのでは」。夜の病室でぐっすり眠る次男の顔を見ながら、ひとり、涙を流した。
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担当医が、
「ステロイドには依存性があります。しかし、あなたのお子さんの場合は、よくステロイド外用剤に反応することからも、使用歴・皮疹形態からも、ステロイド皮膚症に陥っているわけではありませんから、今回、ご両親の精神的立て直しの意味で、いったんステロイドで抑えても大丈夫です。気を取り直して、その後ステロイド外用剤を使う標準治療を選んでも、ステロイドを使いたくないという方のお子さんでも、どちらでも私たちは診ますから、最終的な自然治癒に向けて、長い道のりですが頑張ってください。」
と伝えたら、このお母さん、一番安心できたのではないかなあ。
2010.11.26
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【子どものアトピー:4 入院、薬漬けの不安再び】
次男(5)のアトピー性皮膚炎の治療に疲れ果てていた札幌市の女性(42)は2007年11月、すがる思いで、厚生労働省が市内で開いたシンポジウムを聴きに行った。
壇上では、国立成育医療センター(現国立成育医療研究センター)の専門医らが、アトピーや食物アレルギーの症状をコントロールするこつを話していた。
ステロイド剤や保湿剤による計画的な薬物治療、徹底的なスキンケア、ダニやホコリなど悪化要因への対策が、治療の柱になること。食事療法で食べ物を過剰に除去すると、成長の障害につながりかねないこと。
治療の羅針盤とするため学会が作った診療ガイドラインの存在を、初めて知った。
でも、薬物療法もダニ対策ももうやっている。「どう薬を使い、スキンケアをどうすればいいのか」。それが分からず、少し不満だった。
「医療や薬への不信を募らせず、ガイドラインを知って治療を選べば、子どもの症状も変わります」。シンポの最後に講演した患者団体「アレルギーを考える母の会」の園部(そのべ)まり子代表(56)が会場に呼びかけた。その声は力強く、表情は明るかった。
講演を終えた園部代表に、夫と駆け寄った。「とにかく話を聞いて欲しい。食事療法で、食べられるものがほとんどないんです」
行き過ぎた除去食療法で栄養が不足し、皮膚炎を悪化させたり、成長障害を起こしたり――。園部さんは、そんな子どもの相談例をたくさん耳にしていた。 講演していた同センターの大矢幸弘(おおやゆきひろ)アレルギー科医長への相談を勧められた。札幌から800キロ以上離れた東京での治療になるが、迷いはなかった。「すぐ行こう」。夫も賛成してくれた。食事療法の効果に、夫も疑問を感じていた。
2カ月後の08年1月、センターに入院。治療内容はこれまでと全然違っていた。
清潔な肌を保つため、1日に3回入浴し、ステロイドの塗り薬を皮膚が隠れるほど厚く塗り広げる。効果はすぐに表れ、皮膚は2、3日でつるつるになった。
ところが、かつて抱いていた罪悪感が女性の中でまたふくらみ、不安になった。「このままステロイド漬けになるのでは」。夜の病室でぐっすり眠る次男の顔を見ながら、ひとり、涙を流した。
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http://megalodon.jp/2010-1126-1214-17/www.asahi.com/health/ikiru/TKY201011260215.html
札幌で遠いけどどうなんだろ?と思いましたが、やっぱり成育医療センターで大矢先生でしたか。(大矢先生ではないか?という予想については→こちら)
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食事療法で食べ物を過剰に除去すると、成長の障害につながりかねないこと。
ーーーーー
たしかにそうですが、昨日も記しましたように、このお子さんは、そういう極度の除去食で栄養不良の状態にあったのでしょうか?もしそうならこの記事の時点でそう記されているはずです。自己流の厳格食はまずいですが、小児科の先生の下での食事性悪化因子の検索であれば、医師はそこは一番配慮しているはずです。
ーーーーー
行き過ぎた除去食療法で栄養が不足し、皮膚炎を悪化させたり、成長障害を起こしたり――。園部さんは、そんな子どもの相談例をたくさん耳にしていた。
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どうも嫌な書き方です。この子は成長障害おこしているわけではないのに、まったく別の事例を引用して、読者を意図的に混同させようとしているのではないかとすら疑えてしまいます。単に記者が純朴で、気がつかずに書いているだけかもしれませんが。
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患者団体「アレルギーを考える母の会」の園部(そのべ)まり子代表(56)
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この団体は存じ上げないのですが、元々食物アレルギーの方なのか、アトピー児の母の会の方なのかで、見方は変わってきます。あとで調べてみます。
食物アレルギー(アナフィラキシーショックなど)の方であれば、これは、アレルギー友の会の喘息の会員の方たちと同じで、ステロイドなど(アナフィラキシーの場合はアドレナリンなどですが)薬剤によって命を救われた方たちですから、アトピー性皮膚炎の患者がなぜステロイド、まして外用剤という、副作用の少なそうに思える薬剤を拒否するのかが、皆目見当がつかないことでしょう。
アトピー児の母の会のかたであれば、自分たちが苦労して頑張って、アトピー児を自然治癒まで持ち込んだ、その経験を伝えたいということかと思います。ただし、自然治癒し得た中には、ステロイド外用剤を使いながらの方たちも多いでしょう。そういった方たちが、自分の経験だけから他の患者に善意で働きかけるような場合には、自分が依存や離脱を経験していないですから、ステロイド外用剤の問題に無理解な場合もあります。なまじ「自分の子供の場合は」という経験に基づくので、頑固なこともあります。
これは一般論ですが、アトピーの患者の会というのは、母の会と本人(成人アトピー)の会との2系統があります。この二つは、あまり交わりすぎると互いによくない。
母親たちは、ステロイドを使うにしろ使わないにしろ、自責感にさいなまれます。それでどうしても負い目を取り戻そうとする。それは本人(成人アトピー)たちの目には、悲しい過干渉に映ります。母親が頑張れば頑張るほど、本人たちには、自分のせいで、母親が苦しがっているように見えます。放っておいてほしいのです。
だから、住み分けたほうがいい。二系統の患者会は別々であったほうがいいです。それぞれが、自分たちと同じ境遇、解りあえそうな仲間たちとだけ交流していたほうが精神衛生にいい。
食事対策のアトピー児母の会の歴史は、たぶん群馬大学小児科元教授の故松村先生にさかのぼります。厳しい食事制限によるアレルギー改善を試みたかたで、古くからの母の会のかたであれば、そのトラウマを背負っているかもしれません。自分たちが昔信じて過度に行いすぎた食事制限が、まだ日本のどこかで行われているのなら、救ってあげなければならない、そういう思いが強すぎる、という可能性もあります。
いろいろ書きましたが、そんない難しいことではありません。昨日から繰り返し記しておりますように、この患児が、栄養不良・成長障害になってしまっていたのか?によってこの記事の評価や意味が変わります。栄養が取れていれば、食事性の悪化因子探しは、べつに責められるいわれはありません。
ーーーーー
「とにかく話を聞いて欲しい。食事療法で、食べられるものがほとんどないんです」
ーーーーー
このフレーズから、故松村先生流の厳格食療法を連想してしまうのは、むりもないですが、医師がそう指示したのではなく、親御さんが単に、血液検査で陽性に出たものは全部避けなければならないと、思い込んでしまったという可能性のほうが高いと思います。
ーーーーー
食事療法の効果に、夫も疑問を感じていた。
ーーーーー
これは、正しい判断だと思います。昨日記したように、このお子さんは、食物アレルギーはあったようですが、アトピー性皮膚炎の悪化因子としての食事要因は無かった(あるいは小さかった)、ということだったのでしょう。
そこで、手詰まって、次にどうすべきかというと、ステロイドを使うにしろ使わないにしろ、治癒までには時間がかかるのだから、持久戦になりそうだと覚悟して、家族で体制を整える(不安に押しつぶされないように意識して明るく振舞う)ことだったんですけどね。
新聞記者のかたは、今回記事を書きながら、何を目指しているのだろうか?・・自分たちの記事が、結果的に患者を焦らせ、「アトピーがすぐに良くなる治療法」という青い鳥探しへと煽るだけの結果になってしまうことへの恐れは無いのだろうか?・・
患者の不安を、文章の力で、取り除いてあげてください。それは「アトピー性皮膚炎の治癒までには、時間がかかります、焦らないでください」という一言だけでいいんです。
「標準治療をすればもっと早く良くなります。このご両親が札幌でしていたことは全て無駄であるばかりか、子供に対する虐待ですらありました。それを指示していたのは地元の食事アレルギーの小児科の先生たちでした。」とは書かないでください。それは間違っています。
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ところが、かつて抱いていた罪悪感が女性の中でまたふくらみ、不安になった。「このままステロイド漬けになるのでは」。夜の病室でぐっすり眠る次男の顔を見ながら、ひとり、涙を流した。
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担当医が、
「ステロイドには依存性があります。しかし、あなたのお子さんの場合は、よくステロイド外用剤に反応することからも、使用歴・皮疹形態からも、ステロイド皮膚症に陥っているわけではありませんから、今回、ご両親の精神的立て直しの意味で、いったんステロイドで抑えても大丈夫です。気を取り直して、その後ステロイド外用剤を使う標準治療を選んでも、ステロイドを使いたくないという方のお子さんでも、どちらでも私たちは診ますから、最終的な自然治癒に向けて、長い道のりですが頑張ってください。」
と伝えたら、このお母さん、一番安心できたのではないかなあ。
2010.11.26