酒さ成立のメカニズムには、表皮バリア破壊のアルゴリズムが組み込まれている
プロトピック軟膏は、ステロイドと違って表皮を萎縮させないし、血管収縮も起こしません。
それにもかかわらず、酒さを起こしてくることがあるし、また中止後にリバウンドを起こす例もあるようです。
もっとも、文献(症例報告)を調べた印象では、ステロイドよりもリバウンドを起こす頻度は若干少ないように感じます。
たとえば、Tacrolimus-induced rosacea-like dermatitis: a clinical analysis of 16 cases associated with tacrolimus ointment application. Teraki Y et al. Dermatology. 2012;224(4):309-14
では下のような集計となっています(Table1=TIRDはプロトピック単独、Table2=STRDはステロイドに引き続きプロトピック使用して酒さを発症した患者それぞれ8名づつの詳細)
それにもかかわらず、酒さを起こしてくることがあるし、また中止後にリバウンドを起こす例もあるようです。
もっとも、文献(症例報告)を調べた印象では、ステロイドよりもリバウンドを起こす頻度は若干少ないように感じます。
たとえば、Tacrolimus-induced rosacea-like dermatitis: a clinical analysis of 16 cases associated with tacrolimus ointment application. Teraki Y et al. Dermatology. 2012;224(4):309-14
では下のような集計となっています(Table1=TIRDはプロトピック単独、Table2=STRDはステロイドに引き続きプロトピック使用して酒さを発症した患者それぞれ8名づつの詳細)
Flare-up of skin lesionsすなわちプロトピック中止後にリバウンドを生じた例数は、TIRDが8名中2名、STRDが8名中5名です。
この論文中には、他にステロイド(単独)酒さの集計もあり、「22名中10名でリバウンドがみられた」とあります。
特記すべきは、ステロイドにしろ、プロトピックにしろ、酒さを起こしてきたからといって、中止するとリバウンドが必発というわけではないという点です。約半数は、中止によってすんなりとリバウンドも無く酒さが消えてしまいます。
酒さ=リバウンド(依存)ではないということです。
これをどう頭の中で整理して理解すればいいか?ですが、現時点での説明としては、先回の記事で引用したDr.Rossoの表(→こちら)と、表皮バリア破壊仮説のDr.Corkのイラスト(→こちら)をつなげて考えるのがよさそうです。
この論文中には、他にステロイド(単独)酒さの集計もあり、「22名中10名でリバウンドがみられた」とあります。
特記すべきは、ステロイドにしろ、プロトピックにしろ、酒さを起こしてきたからといって、中止するとリバウンドが必発というわけではないという点です。約半数は、中止によってすんなりとリバウンドも無く酒さが消えてしまいます。
酒さ=リバウンド(依存)ではないということです。
これをどう頭の中で整理して理解すればいいか?ですが、現時点での説明としては、先回の記事で引用したDr.Rossoの表(→こちら)と、表皮バリア破壊仮説のDr.Corkのイラスト(→こちら)をつなげて考えるのがよさそうです。
先回解説したように、「酒さの本質は、TLR(Toll様レセプター)の活性化にともなうLL-37の産生亢進である」と、考えられますが、TLRの活性化はKLK-5の発現をも同時に増強します。
ステロイドが加わると、この経路のブレーキが外れてLL-37 もKLK-5も著増します。KLK5は直接、あるいはKLK7の活性化を介して間接的にも、コルネオデスモゾーム破壊=表皮バリア破壊をきたします。
すなわち、酒さ成立のメカニズムには、表皮バリア破壊のアルゴリズムが組み込まれているのです。(だから酒さは灼熱感や易刺激性を伴うのでしょうね)
プロトピックで酒さが生じる本当のメカニズムはまだ不明ですが、Dr.Rossoの表が酒さの本質を示しているならば、プロトピックにおけるメカニズムがどのようなものであれ、酒さが成立した時点で、一部の症例では表皮バリア破壊が起こり、断薬にともないリバウンドが生じると考えられます。
まとめると、下のようなイメージです。
ステロイドが加わると、この経路のブレーキが外れてLL-37 もKLK-5も著増します。KLK5は直接、あるいはKLK7の活性化を介して間接的にも、コルネオデスモゾーム破壊=表皮バリア破壊をきたします。
すなわち、酒さ成立のメカニズムには、表皮バリア破壊のアルゴリズムが組み込まれているのです。(だから酒さは灼熱感や易刺激性を伴うのでしょうね)
プロトピックで酒さが生じる本当のメカニズムはまだ不明ですが、Dr.Rossoの表が酒さの本質を示しているならば、プロトピックにおけるメカニズムがどのようなものであれ、酒さが成立した時点で、一部の症例では表皮バリア破壊が起こり、断薬にともないリバウンドが生じると考えられます。
まとめると、下のようなイメージです。
血管新生や、丘疹・膿疱は、臨床像や病理組織で確認が容易ですから、気がつきやすいですが、これとは別に、表皮バリア破壊を伴う酒さとそうでない酒さがあるということでしょう。すなわちリバウンドを起こす酒さと起こさない酒さです。
別のまとめ方をすると、ステロイドを外用した顔面は、酒さが絡むことによって、以下の4パターンに分かれます。
別のまとめ方をすると、ステロイドを外用した顔面は、酒さが絡むことによって、以下の4パターンに分かれます。
一方、プロトピックの場合は、薬剤そのものには、表皮バリア破壊作用がありませんから、
の3パターンのみとなります。
酒さを発症してきたときのみ、その一部で表皮バリア破壊が起きるということですね。
ステロイドの場合は、酒さを起こしていなくても、依存(リバウンド)は起こりえます。そこが違います。
顔面以外の皮膚では、酒さは通常起きませんから、プロトピックによる依存・リバウンドも起きないはずです。・・そう考えると、プロトピックというのは、実は顔面以外にこそ適応があるのかもしれませんね。
「プロトピックによるリバウンド」があるにはあるが、ステロイドよりは例数が少ない印象なのは、上記のような理由によるのだろう、と現時点では私は考えます。
さて、それでヒアルプロテクトですよ(^^;。
酒さを発症してきたときのみ、その一部で表皮バリア破壊が起きるということですね。
ステロイドの場合は、酒さを起こしていなくても、依存(リバウンド)は起こりえます。そこが違います。
顔面以外の皮膚では、酒さは通常起きませんから、プロトピックによる依存・リバウンドも起きないはずです。・・そう考えると、プロトピックというのは、実は顔面以外にこそ適応があるのかもしれませんね。
「プロトピックによるリバウンド」があるにはあるが、ステロイドよりは例数が少ない印象なのは、上記のような理由によるのだろう、と現時点では私は考えます。
さて、それでヒアルプロテクトですよ(^^;。
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いや、冗談めかして書きましたが、かなり真面目です。
☆ーーーーー☆ーーーーー☆ーーーーー☆ーーーーー☆
おまけですが、酒さの文献を調べていて、紅斑・毛細血管拡張型で、丘疹・膿疱を伴わないタイプでは、レーザー(またはIPL)治療が有効だというものがけっこうありました。
いや、冗談めかして書きましたが、かなり真面目です。
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おまけですが、酒さの文献を調べていて、紅斑・毛細血管拡張型で、丘疹・膿疱を伴わないタイプでは、レーザー(またはIPL)治療が有効だというものがけっこうありました。
(Comparative efficacy of nonpurpuragenic pulsed dye laser and intense pulsed light for erythematotelangiectatic rosacea. Neuhaus IM et al.Dermatol Surg. 2009 Jun;35(6):920-8.)
上(C,D)は色素レーザー(PDL)、下(E,F)はフラッシュランプ(IPL)で治療したbefore/afterです。
私のクリニックには、こういう血管系のレーザーは無いですから出来ませんが、酒さ(様皮膚炎)で、丘疹や膿疱はあまり無い、いわゆる赤ら顔で、ステロイドやプロトピックを止めて一年以上たっても一向に改善しないという方は、一度近くの形成外科などで相談してみるといいかもです。
また、この論文、興味深いデータも示しています。
上(C,D)は色素レーザー(PDL)、下(E,F)はフラッシュランプ(IPL)で治療したbefore/afterです。
私のクリニックには、こういう血管系のレーザーは無いですから出来ませんが、酒さ(様皮膚炎)で、丘疹や膿疱はあまり無い、いわゆる赤ら顔で、ステロイドやプロトピックを止めて一年以上たっても一向に改善しないという方は、一度近くの形成外科などで相談してみるといいかもです。
また、この論文、興味深いデータも示しています。
こういったレーザーで治療すると、Erythema(紅斑)やFlushing(潮紅)は改善しますが、Dryness(乾燥)Burning(灼熱感)Itching(痒み Swelling(腫脹)Sensitivity(被刺激性)はそれほどは改善しない、ということのようです。メカニカルな治療で血管(赤み)を潰しても、バリアの破壊などはそのままで、灼熱感や敏感肌は残る、ということですね。
2013.04.12
2013.04.12