クロフィブラート軟膏のパイロットスタディ・補足1
佐賀大学のペリオスチンの経路の発見に触発されて思い立ったクロフィブラート軟膏の試用ですが、7月1日に募集をはじめて、7月8日現在でまだ2人しか応募がありません。
決して患者側に悪い話ではなく、もっと応募があると思ったのですが、見込みが外れました。
せっかく応募していただいたお二人の方には大変申し訳ないのですが、もう少し数が集まるまでお待ちください。
もしこのまま数が集まらず、10組のペアが成立しなければ、残念ですが中止も有り得ます。すみません。
その一方で、海外の患者から、参加できないか?という連絡もいただきました。
それで、海外の患者用に、簡易版をつくりました。解説をYouTubeにUPしましたので、ご参照ください。
決して患者側に悪い話ではなく、もっと応募があると思ったのですが、見込みが外れました。
せっかく応募していただいたお二人の方には大変申し訳ないのですが、もう少し数が集まるまでお待ちください。
もしこのまま数が集まらず、10組のペアが成立しなければ、残念ですが中止も有り得ます。すみません。
その一方で、海外の患者から、参加できないか?という連絡もいただきました。
それで、海外の患者用に、簡易版をつくりました。解説をYouTubeにUPしましたので、ご参照ください。
英語版 (画像または→こちらをクリック)
日本語版 (画像または→こちらをクリック)
「日本の国内でも、この簡易版はできないのか?」という質問は、当然あろうかと思いますが、日本国内の患者にこれをしようとすると、医師法20条の「無診察治療の禁止」が問題になります。皮膚炎は写真である程度判別がつきますから、写真を送れば診察したことにならないか?という声もあるでしょうが、たぶんアウトです。クロフィブラートは医師の処方が必要な医薬品なので、これを軟膏に練ったものを外用薬として処方するには、実際に対面での診察が、不可欠でしょう。
しかし、海外の患者となると、話は変わってきます。この場合、私は単に医薬品を海外に送付するだけであって、日本国内で無診察治療をしたということにはなりません。医薬品が国外に出た後は、日本の国内法が及ばないからです。その先は患者が居住している国の法律によります。
法律逃れということではなく、医師は、国内に居る患者に対しては、無診察で薬のみを郵送することは禁止されているが、海外に薬を郵送するのは可だ、という話です。法律が守るべきは日本国内における医療秩序ですから、全然おかしな話ではありません。
ただし、先方の国の法律によっては、送付できないことがあります。たとえば、ロシアでは、2年ほど前から一切の医薬品の海外からの郵送(個人輸入)が禁止になりました。たぶん独占輸入権を持つ貿易会社の権益保護のためだと思います。日本からの医薬品の送付(輸出)自体は禁止ではありません。日本の税関はパスするのですが、ロシアの税関で留められます。ロシアに限らず一般的に、輸出国の規制は甘く、輸入国の規制は厳しいです。
ですので、海外の方は、その国の医薬品の輸入や使用に関する法律をよくご確認の上、YouTubeにUPされているメールアドレスへお申込みください。EMSの各国受け入れ情報は→こちら。
送料はこちらで負担します。薬剤の費用もかかりませんから、患者側負担は0です。
(7月11日追記)
申込みは、7月11日現在で5人になりました。
内訳は、46才女、34才男、25才男、27才男、25才男です。 25才の男性お二人でペアが成立したので、最初の一組の治験を開始します。
コメント欄を通じての問い合わせはいくつか頂いており、個別の返信はしない方針なので、以下にまとめます。
1) ステロイド使用中の患者は、今回の対象ではありません。また、白色ワセリンが合わない、塗れないといったタイプの方も、今回の対象ではありません。
ⅰ.ステロイドの外用は、PPARαの発現を亢進させるので、クロフィブラート(PPARα)を外用しても、効果が期待できないのと、ⅱ.PPARαは強い皮膚炎を抑える力は無いが、軽度な皮膚炎は抑える、という動物実験の結果によります。
ですから、ステロイドをまったく使用していない(中止してから十分な期間が経過している)方で、乾燥性の(白色ワセリンが外用できる程度の)湿疹が残っており、しかしステロイドは使いたくない、という方が、よい適応です。
まずは、そのような方を対象として、クロフィブラート軟膏にある程度の効果があることを確認し、次のステップとして、リバウンドを起こさないステロイドからの離脱のために用いることは出来ないか?を検討できればと考えています。
具体的には、ⅲ.ステロイド→PPARα→中止と段階を踏むと、リバウンドを生じない、という動物実験結果があるので、ステロイド使用中だが離脱希望の患者を対象として、あるいは、ステロイドから離脱してリバウンドを起こした患者にいったんステロイドを再使用して抑えたあとクロフィブラート軟膏に変更することによって、クロフィブラート軟膏の離脱時の有用性が確認できるとよいと考えています。
もし確認できれば、ステロイド外用剤をより安全に使えることになるので、ステロイド使用患者、非使用患者、双方にとって福音です。
しかし、そのためには、離脱直後の患者において、ダブルブラインドテストを行う必要があり、入院設備のある病院レベルで無ければ無理です。私個人では対応しきれません。
しかし、誰も何もしなければ、話は進みませんから、今回私は、自分が対応できる限りで、リスクの少ない対象を選んで、まずは薬効の確認をしようと考えたわけです。
以上が、今回、対象を「ステロイドを使用しておらず、白色ワセリンが外用できる程度の患者」に限った理由です。
2) 交通費の支給はありません。また、遠方の患者の場合には、万が一何かトラブルが生じた際に、診察のためにお越しいただくのが時間的・経済的に困難なことが多いと思います。この点、十分に余裕のある方であれば問題ありませんが、そうでない場合は、無理して申込まないほうが賢明と存じます。たとえ、症例が集まりにくくても、それは仕方の無いことです。
3) 年齢制限について、当初「15才から30才まで」と区切りましたが、途中から「15才以上で、ただしペアが成立したら連絡します」と変更しました。「30才以上は不可」のままと誤解されているかたがいらっしゃるようなので、ご注意ください。
4) この研究は、考えられうる限り安全なものです。「クロフィブラート軟膏によって湿疹がかえって悪化する」という事態は、実のところ想定していません。もしそういうことが想定されるならば、入院設備を持たない一開業医に過ぎない私は、このような研究を試みません。
仮に起きるとしたら、接触皮膚炎(かぶれ)くらいかなあ?と考えます。接触皮膚炎の場合は、通常その外用薬を中止後、数日から2週間くらいで、とくにステロイドを用いなくても、自然に元に復します。逆に、それ以上湿疹の悪化が遷延した場合には、それは、元々の湿疹がたまたま何か他の理由で悪化している(クロフィブラートとは別の悪化因子があり、それから解除されていない)、と判断するのが合理的です。
ただし、複数の患者で同じようにクロフィブラート軟膏使用後悪化した、という事態が生じれば、その場合は、何か未知のクロフィブラートによる悪化メカニズムがあると判断することになるでしょう。
万が一、そういった事態が生じた場合には、元に復するまでは、経過観察をかねて、無料で診察します(といっても、おそらくは何も処方せずに、治まるまで経過を見守るだけということになるでしょうが。もちろん希望があれば、抗ヒスタミン剤やステロイド外用剤などは無料で処方します)。ただし、その間の休業補償などの類はご容赦ください。
クロフィブラートは、高脂血症の内服薬であり、通常1日3~6カプセル服用します。クロフィブラート軟膏は白色ワセリン100gに1カプセルを混ぜたものであり、お渡しするのは2週間分で約30gです(0.3カプセル相当)。ですから、外用によって血中濃度はほとんど上がりませんし、その意味で、内服の場合に生じうる副作用は考慮しなくてもよいと私は考えます。しかし、この点がどうしても納得いかず不安な方は、やはり申込みは控えたほうがよいでしょう。
5) クロフィブラートで湿疹が治まったとして、これを止めたあとはどうなるのか?という点に関しては、ⅰ)前よりもよい状態が続く、ⅱ)前と同じレベルに戻る、ⅲ)前よりも悪化する、の3通りがありえますが、ⅲ)はまさにリバウンドであり、ステロイド外用剤ではこれがありえるから問題なのですが、他の薬剤では通常生じないことです。ほとんどの薬剤ではⅰまたはⅱです。ですから、クロフィブラートの場合にもⅰまたはⅱを私は想定します。
6) 「脱保湿」中の患者でも、参加は可能です。期間は4週間ですから、この間に限り白色ワセリンまたはこれを基剤としたクロフィブラート軟膏を試用して、終了後はまた元のやりかた(脱軟膏)に戻ればいいです。
7) 漢方薬など、現在行っている治療は、そのまま続行で構いません。むしろ、変更しないほうが望ましいです。
2012.07.09
「日本の国内でも、この簡易版はできないのか?」という質問は、当然あろうかと思いますが、日本国内の患者にこれをしようとすると、医師法20条の「無診察治療の禁止」が問題になります。皮膚炎は写真である程度判別がつきますから、写真を送れば診察したことにならないか?という声もあるでしょうが、たぶんアウトです。クロフィブラートは医師の処方が必要な医薬品なので、これを軟膏に練ったものを外用薬として処方するには、実際に対面での診察が、不可欠でしょう。
しかし、海外の患者となると、話は変わってきます。この場合、私は単に医薬品を海外に送付するだけであって、日本国内で無診察治療をしたということにはなりません。医薬品が国外に出た後は、日本の国内法が及ばないからです。その先は患者が居住している国の法律によります。
法律逃れということではなく、医師は、国内に居る患者に対しては、無診察で薬のみを郵送することは禁止されているが、海外に薬を郵送するのは可だ、という話です。法律が守るべきは日本国内における医療秩序ですから、全然おかしな話ではありません。
ただし、先方の国の法律によっては、送付できないことがあります。たとえば、ロシアでは、2年ほど前から一切の医薬品の海外からの郵送(個人輸入)が禁止になりました。たぶん独占輸入権を持つ貿易会社の権益保護のためだと思います。日本からの医薬品の送付(輸出)自体は禁止ではありません。日本の税関はパスするのですが、ロシアの税関で留められます。ロシアに限らず一般的に、輸出国の規制は甘く、輸入国の規制は厳しいです。
ですので、海外の方は、その国の医薬品の輸入や使用に関する法律をよくご確認の上、YouTubeにUPされているメールアドレスへお申込みください。EMSの各国受け入れ情報は→こちら。
送料はこちらで負担します。薬剤の費用もかかりませんから、患者側負担は0です。
(7月11日追記)
申込みは、7月11日現在で5人になりました。
内訳は、46才女、34才男、25才男、27才男、25才男です。 25才の男性お二人でペアが成立したので、最初の一組の治験を開始します。
コメント欄を通じての問い合わせはいくつか頂いており、個別の返信はしない方針なので、以下にまとめます。
1) ステロイド使用中の患者は、今回の対象ではありません。また、白色ワセリンが合わない、塗れないといったタイプの方も、今回の対象ではありません。
ⅰ.ステロイドの外用は、PPARαの発現を亢進させるので、クロフィブラート(PPARα)を外用しても、効果が期待できないのと、ⅱ.PPARαは強い皮膚炎を抑える力は無いが、軽度な皮膚炎は抑える、という動物実験の結果によります。
ですから、ステロイドをまったく使用していない(中止してから十分な期間が経過している)方で、乾燥性の(白色ワセリンが外用できる程度の)湿疹が残っており、しかしステロイドは使いたくない、という方が、よい適応です。
まずは、そのような方を対象として、クロフィブラート軟膏にある程度の効果があることを確認し、次のステップとして、リバウンドを起こさないステロイドからの離脱のために用いることは出来ないか?を検討できればと考えています。
具体的には、ⅲ.ステロイド→PPARα→中止と段階を踏むと、リバウンドを生じない、という動物実験結果があるので、ステロイド使用中だが離脱希望の患者を対象として、あるいは、ステロイドから離脱してリバウンドを起こした患者にいったんステロイドを再使用して抑えたあとクロフィブラート軟膏に変更することによって、クロフィブラート軟膏の離脱時の有用性が確認できるとよいと考えています。
もし確認できれば、ステロイド外用剤をより安全に使えることになるので、ステロイド使用患者、非使用患者、双方にとって福音です。
しかし、そのためには、離脱直後の患者において、ダブルブラインドテストを行う必要があり、入院設備のある病院レベルで無ければ無理です。私個人では対応しきれません。
しかし、誰も何もしなければ、話は進みませんから、今回私は、自分が対応できる限りで、リスクの少ない対象を選んで、まずは薬効の確認をしようと考えたわけです。
以上が、今回、対象を「ステロイドを使用しておらず、白色ワセリンが外用できる程度の患者」に限った理由です。
2) 交通費の支給はありません。また、遠方の患者の場合には、万が一何かトラブルが生じた際に、診察のためにお越しいただくのが時間的・経済的に困難なことが多いと思います。この点、十分に余裕のある方であれば問題ありませんが、そうでない場合は、無理して申込まないほうが賢明と存じます。たとえ、症例が集まりにくくても、それは仕方の無いことです。
3) 年齢制限について、当初「15才から30才まで」と区切りましたが、途中から「15才以上で、ただしペアが成立したら連絡します」と変更しました。「30才以上は不可」のままと誤解されているかたがいらっしゃるようなので、ご注意ください。
4) この研究は、考えられうる限り安全なものです。「クロフィブラート軟膏によって湿疹がかえって悪化する」という事態は、実のところ想定していません。もしそういうことが想定されるならば、入院設備を持たない一開業医に過ぎない私は、このような研究を試みません。
仮に起きるとしたら、接触皮膚炎(かぶれ)くらいかなあ?と考えます。接触皮膚炎の場合は、通常その外用薬を中止後、数日から2週間くらいで、とくにステロイドを用いなくても、自然に元に復します。逆に、それ以上湿疹の悪化が遷延した場合には、それは、元々の湿疹がたまたま何か他の理由で悪化している(クロフィブラートとは別の悪化因子があり、それから解除されていない)、と判断するのが合理的です。
ただし、複数の患者で同じようにクロフィブラート軟膏使用後悪化した、という事態が生じれば、その場合は、何か未知のクロフィブラートによる悪化メカニズムがあると判断することになるでしょう。
万が一、そういった事態が生じた場合には、元に復するまでは、経過観察をかねて、無料で診察します(といっても、おそらくは何も処方せずに、治まるまで経過を見守るだけということになるでしょうが。もちろん希望があれば、抗ヒスタミン剤やステロイド外用剤などは無料で処方します)。ただし、その間の休業補償などの類はご容赦ください。
クロフィブラートは、高脂血症の内服薬であり、通常1日3~6カプセル服用します。クロフィブラート軟膏は白色ワセリン100gに1カプセルを混ぜたものであり、お渡しするのは2週間分で約30gです(0.3カプセル相当)。ですから、外用によって血中濃度はほとんど上がりませんし、その意味で、内服の場合に生じうる副作用は考慮しなくてもよいと私は考えます。しかし、この点がどうしても納得いかず不安な方は、やはり申込みは控えたほうがよいでしょう。
5) クロフィブラートで湿疹が治まったとして、これを止めたあとはどうなるのか?という点に関しては、ⅰ)前よりもよい状態が続く、ⅱ)前と同じレベルに戻る、ⅲ)前よりも悪化する、の3通りがありえますが、ⅲ)はまさにリバウンドであり、ステロイド外用剤ではこれがありえるから問題なのですが、他の薬剤では通常生じないことです。ほとんどの薬剤ではⅰまたはⅱです。ですから、クロフィブラートの場合にもⅰまたはⅱを私は想定します。
6) 「脱保湿」中の患者でも、参加は可能です。期間は4週間ですから、この間に限り白色ワセリンまたはこれを基剤としたクロフィブラート軟膏を試用して、終了後はまた元のやりかた(脱軟膏)に戻ればいいです。
7) 漢方薬など、現在行っている治療は、そのまま続行で構いません。むしろ、変更しないほうが望ましいです。
2012.07.09