ステロイド外用は短期的には表皮のコルチゾール産生を高めるようだ
今回記すことは、原典となる論文がありません。なぜなら、私が見つけたことだからです。
私が若く、大学にいて論文を書いてキャリアを重ねたい人だったら、ブログには書かずに雑誌に投稿するでしょう。しかし私は若くないし、論文の数やインパクトファクターを競う立場にもありません。若い方や大学などで真面目にこの問題に取り組んでいるかたがいると信じて、手っ取り早くブログで情報提供していきます。ご活用ください。
以前、自分の肘にデルモベートを一日2回×2週間外用して、表皮の萎縮を組織レベルで観察しました(→こちら)。そのときのパラフィンブロックを取り出して、抗コルチゾール抗体で染色してみました。
私が若く、大学にいて論文を書いてキャリアを重ねたい人だったら、ブログには書かずに雑誌に投稿するでしょう。しかし私は若くないし、論文の数やインパクトファクターを競う立場にもありません。若い方や大学などで真面目にこの問題に取り組んでいるかたがいると信じて、手っ取り早くブログで情報提供していきます。ご活用ください。
以前、自分の肘にデルモベートを一日2回×2週間外用して、表皮の萎縮を組織レベルで観察しました(→こちら)。そのときのパラフィンブロックを取り出して、抗コルチゾール抗体で染色してみました。
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左上が外用前、左下は2日後、右上は15日後(外用終了翌日)、右下は20日後(外用終了後一週間)です。表皮のコルチゾール産生は、ステロイドを外用することで、亢進するようです。
ちなみに、この抗体は、コルチゾールは染めますが、デルモベートには反応しないようです。もしもデルモベートが染まるなら、2日後の角層はべったりと茶色く染まっているはずだからです。
これは、表皮細胞はステロイド産生に関して正のフィードバック機構を有するということだと考えられます。考えてみるとありそうな話で、ストレスなどで血液中のコルチゾール濃度が高まったときに、表皮が自らに発破をかけてコルチゾールを産生して外的刺激に備えるということです。
私のステロイド依存の仮説は、長期連用すると、この正のフィードバック機構が壊れて、表皮が部分的にコルチゾールを産生しなくなってしまい、コルチゾールの自己産生低下に陥る、ということになります。短期でも表皮細胞のコルチゾール産生が低下するのではないかと考えて染色してみたのですが、予想とは異なった結果でした。しかしこれはこれで興味深いし、短期と長期は異なりますから、私の仮説と矛盾するものでもありません。
さて、表皮細胞のコルチゾール産生と分解の流れを、簡易にまとめると下図のようになります。コルチゾールはミトコンドリア内で合成されますが、原料となるコレステロールをミトコンドリア内に移動させる際のタンパク質としてStAR, MLN64があり、合成にあたる酵素にはCYP11A1などがあります。
ちなみに、この抗体は、コルチゾールは染めますが、デルモベートには反応しないようです。もしもデルモベートが染まるなら、2日後の角層はべったりと茶色く染まっているはずだからです。
これは、表皮細胞はステロイド産生に関して正のフィードバック機構を有するということだと考えられます。考えてみるとありそうな話で、ストレスなどで血液中のコルチゾール濃度が高まったときに、表皮が自らに発破をかけてコルチゾールを産生して外的刺激に備えるということです。
私のステロイド依存の仮説は、長期連用すると、この正のフィードバック機構が壊れて、表皮が部分的にコルチゾールを産生しなくなってしまい、コルチゾールの自己産生低下に陥る、ということになります。短期でも表皮細胞のコルチゾール産生が低下するのではないかと考えて染色してみたのですが、予想とは異なった結果でした。しかしこれはこれで興味深いし、短期と長期は異なりますから、私の仮説と矛盾するものでもありません。
さて、表皮細胞のコルチゾール産生と分解の流れを、簡易にまとめると下図のようになります。コルチゾールはミトコンドリア内で合成されますが、原料となるコレステロールをミトコンドリア内に移動させる際のタンパク質としてStAR, MLN64があり、合成にあたる酵素にはCYP11A1などがあります。
出来上がったコルチゾールを不活性化する酵素が11HSD2で、再活性化する酵素が11HSD1です。11HSD2によって不活性化された cortisoneは、表皮細胞外から出て、代謝されるか、別のステロイドを必要としてる細胞に再び入って11HSD1で再活性化されます。表皮の基底細 胞で11HSD2の発現が高く、その上層では11HSD1が高い(→こちら)のは、表皮においてコルチゾールの濃度勾配をつけて、下から上に分化(角化)させていくた めと考えられます。コルチゾールは表皮細胞の分化に働くからです。
そこで、抗コルチゾール抗体同様、抗StAR抗体、抗MLN64抗体、抗CYP11A1抗体、抗11HSD1抗体、抗11HSD2抗体でも、染色してみました。現在準備中ですが、抗GRα抗体、抗GRβ抗体、抗MR抗体でも染めてみる予定です。
抗StAR抗体
抗StAR抗体
抗MLN64抗体
抗CYP11A1抗体
ステロイド産生過程の酵素については、CYP11A1以外にも入手しうる限り染色してみましたが、ステロイド外用中に濃く染まるものはありませんでした。ステロイド外用後のコルチゾール産生の高まりは、MLN64の増加がかかわっていそうです。
抗11HSD1抗体
抗11HSD1抗体
抗11HSD2抗体
抗11HSD1抗体と抗11HSD2抗体との結果からは、前者は不変でしたが、後者がステロイド外用後から増加するようでした。かつ、この増加は、外用後ゆっくりと増加し、中止後もしばらく残っているようです。
また注目すべきことは、表皮内での染まりの分布です。外用前は11HSD2は基底層で良く染まっていたのですが、外用後は有棘層や顆粒層でも染まっています。
上記から、もしもステロイド外用剤長期連用によって、表皮のコルチゾール濃度が低下するとしたら、それは、
1 MLN64が上昇しなくなる
2 11HSD2が、とくに有棘層以上の分化した細胞で、亢進したままとなる
が考えられると思います。
このほかに、ステロイドの効きが悪くなる機序として、GRα、GRβ、MR各レセプターの変化があります。現在染色準備中の抗GRα抗体、抗GRβ抗体、抗MR抗体による染色結果待ちです。
私の皮膚でデータを集めた後、取りためてある患者の皮膚で染色して比較してみます。引き続き、生検にご協力いただける方を募集中です。とくに、現にステロイドを長期外用中の方、乳幼児の患者さん、お待ちしております。TEL052-264-0213までお電話ください。
(2016.10.26記)
また注目すべきことは、表皮内での染まりの分布です。外用前は11HSD2は基底層で良く染まっていたのですが、外用後は有棘層や顆粒層でも染まっています。
上記から、もしもステロイド外用剤長期連用によって、表皮のコルチゾール濃度が低下するとしたら、それは、
1 MLN64が上昇しなくなる
2 11HSD2が、とくに有棘層以上の分化した細胞で、亢進したままとなる
が考えられると思います。
このほかに、ステロイドの効きが悪くなる機序として、GRα、GRβ、MR各レセプターの変化があります。現在染色準備中の抗GRα抗体、抗GRβ抗体、抗MR抗体による染色結果待ちです。
私の皮膚でデータを集めた後、取りためてある患者の皮膚で染色して比較してみます。引き続き、生検にご協力いただける方を募集中です。とくに、現にステロイドを長期外用中の方、乳幼児の患者さん、お待ちしております。TEL052-264-0213までお電話ください。
(2016.10.26記)
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