理研のJAK1変異マウスは、ステロイド外用剤による表皮バリア破壊のモデルなのかもしれない(その2)
その1(→こちら)の続きです。
理研のJAK1変異マウスには、もう一つの意味があります。そしてそれは朗報かもしれません。今日はそのことを書きます。
JAK1が亢進して、アトピー性皮膚炎様症状を起こすのなら、これを抑える薬剤というのはないだろうか?実はあります。そして市販もされています。「ゼルヤンツ」と言うリウマチのお薬です。
理研のJAK1変異マウスには、もう一つの意味があります。そしてそれは朗報かもしれません。今日はそのことを書きます。
JAK1が亢進して、アトピー性皮膚炎様症状を起こすのなら、これを抑える薬剤というのはないだろうか?実はあります。そして市販もされています。「ゼルヤンツ」と言うリウマチのお薬です。
そして、文献検索してみると、2013年にマウスの動物実験で(→こちら)、2015年には6人のアトピー性皮膚炎患者に実際に試用した結果が報告されています(→こちら)。そしてその成績はかなり良いものでした。
2015年の論文は内服でしたが、外用による実験も、既にファイザー製薬によって2013-2015年にかけて行われています(→こちら)。近いうちに論文として公表されるのかもしれません。
さて、ここからが本論なんですが、なぜゼルヤンツがアトピー性皮膚炎に有効か?というメカニズムについて、これまでは、JAK1が抑えられることによって、Th2活性化へのシグナルが弱くなるからだろうと考えられていました。下図のようです。
2015年の論文は内服でしたが、外用による実験も、既にファイザー製薬によって2013-2015年にかけて行われています(→こちら)。近いうちに論文として公表されるのかもしれません。
さて、ここからが本論なんですが、なぜゼルヤンツがアトピー性皮膚炎に有効か?というメカニズムについて、これまでは、JAK1が抑えられることによって、Th2活性化へのシグナルが弱くなるからだろうと考えられていました。下図のようです。
アトピー性皮膚炎では、とくにリバウンド期に、Th2系のサイトカインが暴走状態になります(→こちら)。
ところが、今回理研で開発されたマウスでは、リンパ球などの免疫系ではなく、表皮のみにJAK1変異の結果が生じて、アトピー性皮膚炎様の症状が出ているようです。ということは、ひょっとしたら、ゼルヤンツの作用点も、Th1/Th2バランスの是正ではなく、表皮バリア破壊に働くプロテアーゼを抑えるところにあるのかもしれません。
もしそうであるならば、ゼルヤンツはTh2抑制とともに、表皮バリア破壊をも修復方向にもっていく、アトピー性皮膚炎には理想的な薬剤である可能性があります。
まとめると、
ところが、今回理研で開発されたマウスでは、リンパ球などの免疫系ではなく、表皮のみにJAK1変異の結果が生じて、アトピー性皮膚炎様の症状が出ているようです。ということは、ひょっとしたら、ゼルヤンツの作用点も、Th1/Th2バランスの是正ではなく、表皮バリア破壊に働くプロテアーゼを抑えるところにあるのかもしれません。
もしそうであるならば、ゼルヤンツはTh2抑制とともに、表皮バリア破壊をも修復方向にもっていく、アトピー性皮膚炎には理想的な薬剤である可能性があります。
まとめると、
ということになります。
アトピー性皮膚炎の治療薬であると同時に、ステロイド離脱後のリバウンドの治療薬そのものとも言えます。
問題は、このゼルヤンツ、非常に高価なお薬です。アトピー性皮膚炎への保険適応はないので、自費で購入するとなると、クリニックの問屋からの仕入れ価格で、28錠(一日2回として14日分)で7万円以上します・・。ただ、最近は日本も貧富差拡大してきたというか、お金の問題ではない、一か月20万円弱の薬代など、本当にこの辛い症状が治まるならば、惜しくはない、という方も、少数ながらいらっしゃるだろうとは思います。
もう一点、気になるのは、ゼルヤンツはアトピー性皮膚炎に効能は通っていませんから、万が一何か副作用が生じた場合に、医薬品副作用救済機構への申し立てができないという点です。まあ、これは納得するだけの話なので、クリアできる方も多いでしょうが、費用の点は、つらいです。
正直なところ、私もこの薬の効果が、とくに激しいリバウンドの軽減に役立つのかを確認してみたい気はあります。もし、高い薬代を払っても、ゼルヤンツを服用してみたい、という方がいらっしゃったらご連絡ください。
・・あまりいい予測ではないのですが、これからアトピー性皮膚炎やリバウンドに対して、自然治癒傾向を悪用した、まがい物のナントカ療法ではなく、本当に有効な薬剤が開発されるのかもしれません。しかし、それは開発した製薬会社の利益にかなった、非常に高価なものになるでしょう。
だから、なるべくお金がかからず、本来の自然治癒傾向に沿う形のソフトランディング、要はステロイド外用剤の長期連用でこじらせないこと、というのは、大切なことです。本来は、医師がその方向で指導していくべきものだと思います。
私は、そういう医師にはなれませんでした・・。ただ、こうやって情報をまとめて発信することは、苦にならないので、真に現場で患者に寄り添うことのできる医師たちへの支援のつもりで、このブログを書いています。
少数ではあるけれども、そういう臨床を続けることに生きがいや使命感を感じる医師は存在する、そのことはよく知っています。
暗い未来と明るい未来の二つの話を書きました。暗いとは、本当に有効な新薬というのは出現するかもしれないが、少なくとも特許が切れるまでの間は、限られた富者しか使えないだろうということ。明るいとは、お金がかからないように自然緩解まで、ステロイド依存に陥らないように保険診療の範囲内で寄り添ってくれる医師は必ずいる、ということです。
(H28/4/29記)
アトピー性皮膚炎の治療薬であると同時に、ステロイド離脱後のリバウンドの治療薬そのものとも言えます。
問題は、このゼルヤンツ、非常に高価なお薬です。アトピー性皮膚炎への保険適応はないので、自費で購入するとなると、クリニックの問屋からの仕入れ価格で、28錠(一日2回として14日分)で7万円以上します・・。ただ、最近は日本も貧富差拡大してきたというか、お金の問題ではない、一か月20万円弱の薬代など、本当にこの辛い症状が治まるならば、惜しくはない、という方も、少数ながらいらっしゃるだろうとは思います。
もう一点、気になるのは、ゼルヤンツはアトピー性皮膚炎に効能は通っていませんから、万が一何か副作用が生じた場合に、医薬品副作用救済機構への申し立てができないという点です。まあ、これは納得するだけの話なので、クリアできる方も多いでしょうが、費用の点は、つらいです。
正直なところ、私もこの薬の効果が、とくに激しいリバウンドの軽減に役立つのかを確認してみたい気はあります。もし、高い薬代を払っても、ゼルヤンツを服用してみたい、という方がいらっしゃったらご連絡ください。
・・あまりいい予測ではないのですが、これからアトピー性皮膚炎やリバウンドに対して、自然治癒傾向を悪用した、まがい物のナントカ療法ではなく、本当に有効な薬剤が開発されるのかもしれません。しかし、それは開発した製薬会社の利益にかなった、非常に高価なものになるでしょう。
だから、なるべくお金がかからず、本来の自然治癒傾向に沿う形のソフトランディング、要はステロイド外用剤の長期連用でこじらせないこと、というのは、大切なことです。本来は、医師がその方向で指導していくべきものだと思います。
私は、そういう医師にはなれませんでした・・。ただ、こうやって情報をまとめて発信することは、苦にならないので、真に現場で患者に寄り添うことのできる医師たちへの支援のつもりで、このブログを書いています。
少数ではあるけれども、そういう臨床を続けることに生きがいや使命感を感じる医師は存在する、そのことはよく知っています。
暗い未来と明るい未来の二つの話を書きました。暗いとは、本当に有効な新薬というのは出現するかもしれないが、少なくとも特許が切れるまでの間は、限られた富者しか使えないだろうということ。明るいとは、お金がかからないように自然緩解まで、ステロイド依存に陥らないように保険診療の範囲内で寄り添ってくれる医師は必ずいる、ということです。
(H28/4/29記)
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