90年代のマスコミによる「ステロイドバッシング」とはどんなものだったのか?(1)
「医薬経済」というサイトに2009年6月付けで、金沢大学の竹原和彦先生の講演内容がレポートされています。
ーーーーー(ここから引用)-----
アトピー性皮膚炎の原因は全て食事にある、という考えから提唱された「厳格食事療法」。これは80年代半ばに広まりました。これはアレルゲンになる、これは大丈夫、といった具合で厳格に守れば水しか飲めないのでは? というくらいのものでした。
90年代前半にはステロイドバッシングが本格化しました。その嚆矢となったTV番組の特集で、番組の最後に司会者はこう言ったものです。
「ステロイドは大変な薬です。最後の最後まで使わないでください」と。
これで次の日から、「ステロイドは使わないでくれ」という患者が殺到しました。これ以降も新聞などで“薬害”として一方的に報道され、患者サイドに“ステロイドアレルギー”が起きてしまったかのようになったのです。
アトピー性皮膚炎医療の混乱とは、つまるところ「患者サイドに芽生えた根強いステロイド不信」につきるといえよう。では、いかにしてステロイド不信が発生したのだろうか? 一つのキッカケとしては、80年代になり安易なステロイド製剤の使用による副作用(酒さ様皮膚炎など)の増加が問題視され、これによる訴訟が提起されたことが挙げられる。92年にはテレビ朝日のニュース・ステーションによるステロイド薬害特集が組まれ、バッシング報道はピークに達した。
ステロイド不信は、80年代には「ステロイドは副作用があるから怖い」。90年代になってからは「ステロイド薬害で廃人になってしまう」という形で表出しました。こうした不信感を背景に、90年代半ばには「ステロイドを使うとアトピー性皮膚炎が悪化する」という見方や、「ステロイドを使うことでアトピー性皮膚炎を発症する(ステロイド誘発性アトピー性皮膚炎)」といった考え方が出てきました。こうした考え方が出てきたのは、古今東西でもこの時期の日本だけです。また、こうした意見は全て医学的論文には発表されず、新聞に掲載されていました。
ーーーーー(ここまで引用)-----
http://www.risfax.co.jp/didi/didi.php?id=75
竹原先生による、なぜアトピー性皮膚炎患者に「ステロイド不信」が芽生えたか、の考察です。アトピー治療やステロイドのことをよく知らない人が読むと、「なるほど」と説得されてしまう構築の話なのでしょう。
しかし、90年代、まさに脱ステロイドの現場にいた私などが読むと、竹原先生の「思い込み」や「妄想」といっても言い過ぎではないほどの、事実とは離れたいくつものイメージを組み合わせた、マンガのような「お話」と感じてしまいます。
竹原先生に、こういう創作の傾向があることは、先に示した、玉置先生の1996年の講演に対する質疑(→ここ)をお読みいただければ、納得いただけると思います。「ステロイドは悪魔の薬」というイメージも、実は竹原先生がご自身で広めたようなものだと私は思います(→ここ)。
厳格食事療法に問題はあるかもしれませんが、「厳格に守れば水しか飲めない」というほどのものではないでしょう。「ステロイドは大変な薬です。最後の最後まで使わないでください」というのは、それほど間違ったコメントなのだろうか?ステロイド依存の始まりが、ほんの軽度の皮膚炎にステロイドを外用したことだった、という例もあるのを考慮すると、私は一つの意見として尊重すべきと感じます。
「ステロイド薬害で廃人になってしまう」って誰が言ったんだろう?「ステロイドを使うとアトピー性皮膚炎が悪化する」、「ステロイドを使うことでアトピー性皮膚炎を発症する(ステロイド誘発性アトピー性皮膚炎)」なんて、聞いたことがありません。
さて、今日、問題提起したいのは、90年代前半に本格化したと竹原先生がいう、「ステロイドバッシング」です。脱ステロイド療法は、明らかに竹原先生や川島先生らにより、「バッシング」を受けてきたと言えますが、それに先立つ「ステロイドパッシング」は、本当にあったのでしょうか?仮にあったとしたら、どのような内容のものだったのでしょうか?
わたしは、「ステロイド外用剤には、長期間連用することで、依存をきたし、リバウンドなくしては離脱できないような状況に陥ることがある」、と一貫して警告してきたわけですが、これを「ステロイドバッシング」だとは、わたしは認識していません。単に医学的事実だからです。これを「ステロイドバッシング」と言われたのではたまりません。バッシング(bashing)とは、「過剰または根拠のない非難」を言います。
それでは、ほかの先生がたは、あるいは、マスコミは、90年代にステロイド外用剤について、いったいどんな「バッシング」を発してきたのでしょうか?
非常に残念なのは、竹原先生が必ず引用する1992年のニュースステーションの特集が、どうしても入手できなくて手元に無いことです。1992年当時というのは、テレビ番組を録画するというのは今のようには一般的ではなく、とくにニュース番組の中での特集ですから、ほとんどの人は見流してしまったでしょう。もし、どなたかお手持ちでしたら、是非お貸しください。
そのような、今となってはどこにも残っていない番組が、20年後の今まで続く、ステロイド不信の引き金だ、という風に「お話を作る」のは、竹原先生一流の眉唾のように感じられてなりません。ぜひ、ニュースステーションの内容がどんなものであったのか、確認してみたいものです。
90年代後半からのアトピーやステロイドに関するテレビ番組や特集については、私はこまめに録画していました。 その中から、95年2月放映のNHKクローズアップ現代、「混乱するアトピー治療―戸惑う患者・医師の模索」を紹介します。なぜこの番組を選んだかというと、先日紹介した、淀川キリスト教病院の玉置先生が取材に応じているからです。
こちらの番組になります(→ここ) 。NHKでは、過去の番組の再放映リクエストを募集しているようなので(→ここ)、是非リクエストしてください。
韓国の動画投稿サイトで、全編を視聴することができるようです(→ここ、注:私が投稿したものではありません)
国谷キャスターの横で解説しているのは、当時東京医科歯科大学皮膚科教授の西岡清先生です。
ーーーーー(ここから引用)-----
アトピー性皮膚炎の原因は全て食事にある、という考えから提唱された「厳格食事療法」。これは80年代半ばに広まりました。これはアレルゲンになる、これは大丈夫、といった具合で厳格に守れば水しか飲めないのでは? というくらいのものでした。
90年代前半にはステロイドバッシングが本格化しました。その嚆矢となったTV番組の特集で、番組の最後に司会者はこう言ったものです。
「ステロイドは大変な薬です。最後の最後まで使わないでください」と。
これで次の日から、「ステロイドは使わないでくれ」という患者が殺到しました。これ以降も新聞などで“薬害”として一方的に報道され、患者サイドに“ステロイドアレルギー”が起きてしまったかのようになったのです。
アトピー性皮膚炎医療の混乱とは、つまるところ「患者サイドに芽生えた根強いステロイド不信」につきるといえよう。では、いかにしてステロイド不信が発生したのだろうか? 一つのキッカケとしては、80年代になり安易なステロイド製剤の使用による副作用(酒さ様皮膚炎など)の増加が問題視され、これによる訴訟が提起されたことが挙げられる。92年にはテレビ朝日のニュース・ステーションによるステロイド薬害特集が組まれ、バッシング報道はピークに達した。
ステロイド不信は、80年代には「ステロイドは副作用があるから怖い」。90年代になってからは「ステロイド薬害で廃人になってしまう」という形で表出しました。こうした不信感を背景に、90年代半ばには「ステロイドを使うとアトピー性皮膚炎が悪化する」という見方や、「ステロイドを使うことでアトピー性皮膚炎を発症する(ステロイド誘発性アトピー性皮膚炎)」といった考え方が出てきました。こうした考え方が出てきたのは、古今東西でもこの時期の日本だけです。また、こうした意見は全て医学的論文には発表されず、新聞に掲載されていました。
ーーーーー(ここまで引用)-----
http://www.risfax.co.jp/didi/didi.php?id=75
竹原先生による、なぜアトピー性皮膚炎患者に「ステロイド不信」が芽生えたか、の考察です。アトピー治療やステロイドのことをよく知らない人が読むと、「なるほど」と説得されてしまう構築の話なのでしょう。
しかし、90年代、まさに脱ステロイドの現場にいた私などが読むと、竹原先生の「思い込み」や「妄想」といっても言い過ぎではないほどの、事実とは離れたいくつものイメージを組み合わせた、マンガのような「お話」と感じてしまいます。
竹原先生に、こういう創作の傾向があることは、先に示した、玉置先生の1996年の講演に対する質疑(→ここ)をお読みいただければ、納得いただけると思います。「ステロイドは悪魔の薬」というイメージも、実は竹原先生がご自身で広めたようなものだと私は思います(→ここ)。
厳格食事療法に問題はあるかもしれませんが、「厳格に守れば水しか飲めない」というほどのものではないでしょう。「ステロイドは大変な薬です。最後の最後まで使わないでください」というのは、それほど間違ったコメントなのだろうか?ステロイド依存の始まりが、ほんの軽度の皮膚炎にステロイドを外用したことだった、という例もあるのを考慮すると、私は一つの意見として尊重すべきと感じます。
「ステロイド薬害で廃人になってしまう」って誰が言ったんだろう?「ステロイドを使うとアトピー性皮膚炎が悪化する」、「ステロイドを使うことでアトピー性皮膚炎を発症する(ステロイド誘発性アトピー性皮膚炎)」なんて、聞いたことがありません。
さて、今日、問題提起したいのは、90年代前半に本格化したと竹原先生がいう、「ステロイドバッシング」です。脱ステロイド療法は、明らかに竹原先生や川島先生らにより、「バッシング」を受けてきたと言えますが、それに先立つ「ステロイドパッシング」は、本当にあったのでしょうか?仮にあったとしたら、どのような内容のものだったのでしょうか?
わたしは、「ステロイド外用剤には、長期間連用することで、依存をきたし、リバウンドなくしては離脱できないような状況に陥ることがある」、と一貫して警告してきたわけですが、これを「ステロイドバッシング」だとは、わたしは認識していません。単に医学的事実だからです。これを「ステロイドバッシング」と言われたのではたまりません。バッシング(bashing)とは、「過剰または根拠のない非難」を言います。
それでは、ほかの先生がたは、あるいは、マスコミは、90年代にステロイド外用剤について、いったいどんな「バッシング」を発してきたのでしょうか?
非常に残念なのは、竹原先生が必ず引用する1992年のニュースステーションの特集が、どうしても入手できなくて手元に無いことです。1992年当時というのは、テレビ番組を録画するというのは今のようには一般的ではなく、とくにニュース番組の中での特集ですから、ほとんどの人は見流してしまったでしょう。もし、どなたかお手持ちでしたら、是非お貸しください。
そのような、今となってはどこにも残っていない番組が、20年後の今まで続く、ステロイド不信の引き金だ、という風に「お話を作る」のは、竹原先生一流の眉唾のように感じられてなりません。ぜひ、ニュースステーションの内容がどんなものであったのか、確認してみたいものです。
90年代後半からのアトピーやステロイドに関するテレビ番組や特集については、私はこまめに録画していました。 その中から、95年2月放映のNHKクローズアップ現代、「混乱するアトピー治療―戸惑う患者・医師の模索」を紹介します。なぜこの番組を選んだかというと、先日紹介した、淀川キリスト教病院の玉置先生が取材に応じているからです。
こちらの番組になります(→ここ) 。NHKでは、過去の番組の再放映リクエストを募集しているようなので(→ここ)、是非リクエストしてください。
韓国の動画投稿サイトで、全編を視聴することができるようです(→ここ、注:私が投稿したものではありません)
国谷キャスターの横で解説しているのは、当時東京医科歯科大学皮膚科教授の西岡清先生です。
このかたは、成人アトピーが増加してきていることをいち早く警鐘された方で、脱ステロイドにも一定の理解を示し、またご自身の教室でも脱ステロイド療法を行い、その経過を日皮会誌に報告しています。
大阪羽曳野病院の青木敏之先生(当時)です。
大阪羽曳野病院の青木敏之先生(当時)です。
古くからの蕁麻疹やアトピー性皮膚炎の臨床研究者で、とくに疫学・統計にはお強いです。・・こういう先生がたを差し置いて、それまで強皮症が専門であった竹原先生が、「アトピー性皮膚炎は作られた難病である。」と、アトピービジネス論のような薄っぺらな「お話」をネタに、一方的に脱ステロイド系の皮膚科医のバッシングを始めたのは、いま思い出しても本当に腹が立ちます。
青木先生のお話(動画の15分頃から)は、興味深いので、文字起こしします。
ーーーーー(ここから引用)-----
この病院(羽曳野病院)では、もうひとつ別の調査も行っています。湿疹が出た赤ちゃんに対し、薬などの治療はほとんど行わず、その後の経過を調べるというものです。この写真の赤ちゃんは、生後3ヶ月ごろ、激しい湿疹が出ましたが、薬はまったく使われませんでした。しかしその後、湿疹は次第に消え、8ヶ月を過ぎるとほとんど無くなりました。病院の調査によると、同じように自然に治っていく赤ちゃんは、これまで30例報告されています。
「特段のことをしなくてもですね。えー乳児のアトピー性皮膚炎というのは、自然に良くなっていくのが多いわけですね。特に4ヶ月頃の赤ちゃんを見ますと、一才までにもうほとんど良くなるというデータが出ておりますからね。ですから、それと(厳格食など、乳児に対して、何か治療をして有効であったという報告は)間違っておる可能性があるわけですね。
ーーーーー(ここまで引用)-----
青木先生のお話(動画の15分頃から)は、興味深いので、文字起こしします。
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この病院(羽曳野病院)では、もうひとつ別の調査も行っています。湿疹が出た赤ちゃんに対し、薬などの治療はほとんど行わず、その後の経過を調べるというものです。この写真の赤ちゃんは、生後3ヶ月ごろ、激しい湿疹が出ましたが、薬はまったく使われませんでした。しかしその後、湿疹は次第に消え、8ヶ月を過ぎるとほとんど無くなりました。病院の調査によると、同じように自然に治っていく赤ちゃんは、これまで30例報告されています。
「特段のことをしなくてもですね。えー乳児のアトピー性皮膚炎というのは、自然に良くなっていくのが多いわけですね。特に4ヶ月頃の赤ちゃんを見ますと、一才までにもうほとんど良くなるというデータが出ておりますからね。ですから、それと(厳格食など、乳児に対して、何か治療をして有効であったという報告は)間違っておる可能性があるわけですね。
ーーーーー(ここまで引用)-----
乳児期の「ステロイド忌避」が、親として決して間違った対処法ではない、ということを、おっしゃっているわけです。
さて、18分30秒あたりから、ステロイド軟膏の話になります。文字起こししておきます。
ーーーーー(ここから引用)-----
アトピー性皮膚炎の治療にもっとも多く使われているのが、ステロイドの入った軟膏です。ステロイドは皮膚の炎症を抑える働きがあり、現在およそ50種類が使われています。左側が、炎症を起こしているときの写真、右側がステロイドで治療したあとの写真です。3日から10日ほどで炎症は治まります。しかし、ステロイドを長い間塗り続けていると、皮膚が赤く腫れあがるなど、副作用が出る場合があります。
ーーーーー(ここまで引用)-----
短期的には有効性が高いが、長期的には副作用が出る場合があると、実に簡潔にステロイド外用剤を解説しています。「バッシング」とは言えません。
次いで、淀川キリスト教病院の入院治療の様子が写されます。
さて、18分30秒あたりから、ステロイド軟膏の話になります。文字起こししておきます。
ーーーーー(ここから引用)-----
アトピー性皮膚炎の治療にもっとも多く使われているのが、ステロイドの入った軟膏です。ステロイドは皮膚の炎症を抑える働きがあり、現在およそ50種類が使われています。左側が、炎症を起こしているときの写真、右側がステロイドで治療したあとの写真です。3日から10日ほどで炎症は治まります。しかし、ステロイドを長い間塗り続けていると、皮膚が赤く腫れあがるなど、副作用が出る場合があります。
ーーーーー(ここまで引用)-----
短期的には有効性が高いが、長期的には副作用が出る場合があると、実に簡潔にステロイド外用剤を解説しています。「バッシング」とは言えません。
次いで、淀川キリスト教病院の入院治療の様子が写されます。
ーーーーー(ここから引用)-----
大阪にあるこの病院では、ステロイドの副作用に苦しむ患者の治療にあたっています。ステロイドは、長く使っているうちに、だんだんと効き目が悪くなってきます。そのため塗る量を増やしたり、より強い薬を使わないと、炎症を抑えきれなくなります。それを繰り返した結果、副作用を起こしてしまうのです。
「薬を、どんどん出すんですね。もう、大学病院ですから、3時間ぐらい並んで、待って、で、診察かな?と思ったら、体を、一応脱いで、で、見ているか見てないか解らへん状態で、もうこれはこの薬塗って、で、どんどん薬は増えていく一方で、薬もきつくなってくるし。」
「ただもう、薬出すだけですねん。ステロイドを出すだけ。その先生自体はステロイドの副作用をご存知だったかどうか知りませんけど。ただ、それの繰り返しでずっと、十何年間やってきて。」
「使うたほうがええか、使わんほうがええかいうのは難しい・・」
玉置医師は、副作用に悩む患者に、ステロイドをなるべく使わない治療を目指しています。しかし、急に止めてしまうと、こんどは逆に体中に激しい炎症が起きてしまいます。
ステロイド軟膏には、本来ヒトが副腎皮質で作るホルモンが含まれています。ステロイド軟膏を長く塗り続けると、副腎皮質からのホルモンの分泌が次第に低下してしまいます。その状態でステロイド軟膏を急に止めると、体内の副腎皮質ホルモンが欠乏してしまうため、激しい炎症が起こるのです。これは、リバウンドと呼ばれる症状です。
玉置医師は、リバウンドによる炎症を最小限に食い止めるため、患者を入院させ、医師の目が行き届く状況で治療しています。治療の中心は、徹底した皮膚の手入れと、規則正しい生活習慣の指導です。人間に本来備わっている、自然な治癒力による回復を目指しています。
「自然に治る病気を、ステロイドが、治りにくくしている、ていう風な背景があるんではないかと、僕は思ってるんで、だから、ステロイドは炎症(を抑える)の力が非常に強いですから、病気を抑えるだけではなくて、まあ、治ろうとする力も抑えてるんではないかと、で、ステロイドを取り除くことによって、まあ、症状が悪くなりますけど、その、治ろうとする力がまた復活して来るんではないかという風に思います。」
ステロイド軟膏についてのアンケート調査(大阪府保険医師会)の結果です。症状や炎症の場所などによって、必要な場合には使うという医師も含め、大半の医師は治療に欠かせないと考えているということがわかります。
ーーーーー(ここまで引用)-----
リバウンドを、副腎皮質不全の結果ととらえている点は、今振り返ると、医学的に誤っています。しかし、当時は、まだステロイド外用剤による表皮バリア破壊の意義は認識されておらず、リバウンドには副腎皮質不全が関係してるのではないか?と模索の段階でした。また、ナレーションは、「長く使っているうちに、だんだんと効き目が悪くなってきます。」と断定的な言い方をしていますが、これは、全部の患者で経験されることではありません。依存や抵抗性に陥らずに過ごす患者のほうがむしろ多いです。しかし、95年当時、淀川キリスト教病院に集まっていた患者のほとんどは依存例や抵抗性例であったと想像します。なぜなら、私のところ(国立名古屋病院)も同じ状況だったからです。
ナレーターは、「玉置医師は、副作用に悩む患者に、ステロイドをなるべく使わない治療を目指しています。」と言っています。決して、「アトピー性皮膚炎の全例でステロイドを止めるべきです」などとは言っていません(竹原先生の思い込みは→ここ)。
ほかにもいくつか、当時のアトピーのステロイド問題を取り上げたテレビ番組の録画が手元にありますが、だいたい似たようなものです。治療現場の混乱や、ステロイド依存例・抵抗性例が存在することと、これに一部の皮膚科医が注目して脱ステロイド治療を行っていることを報じてはいますが、「マスコミがステロイドパッシングを行った」と言える様なものは存在しません。
竹原先生の「アトピービジネス論」は、「お話」として、わかりやすくて面白いので、ついつい検証することなく、納得してしまいがちですが、どうか、眉に唾つけて接してください。
「1990年代に、マスコミが大々的にステロイドバッシングを行った。その結果患者がアトピービジネスに走った。これに口実を与えたのは脱ステロイドを行っていた一部の皮膚科医である」という竹原先生の主張は間違っています。大部分のマスコミは普通に現場を取材して情報発信していただけで「ステロイドバッシング」など行っていませんでした。竹原先生らは、そういう嘘のイメージを社会に流すことによって、私たち脱ステロイドを行う皮膚科医を「バッシング(=過剰または根拠のない非難)」し、依存や抵抗性に陥った患者の行き場所を奪いました。
青木先生のコメント中の「乳児のアトピー性皮膚炎というのは、自然に良くなっていくのが多いわけです」という当たり前の事実を、社会は忘れてしまいました。そして、ステロイド忌避を選ぶ親を虐待視します。
いま、脱ステロイドせざるを得なくなった、またはステロイド忌避を選んだ患者が街へ出れば、皮疹を見た一般のひとたちが、「あれは、アトピービジネスに洗脳された可哀想な患者だ」といった目で見るでしょう。そのような社会的状況は、竹原先生の妄想のような「アトピービジネス論」という「お話」によって生まれたのです。
「脱ステロイドだ、ステロイド忌避のメリットだ、って言うけど、現実の社会で受け入れられて働いて食べていくためには、ステロイド使うしかないじゃないか。」と言いたい人も多いでしょう。そういう社会は、竹原先生が「アトピービジネス論」を発信することによって構築したのです。少なくとも、1990年代は、社会はアトピーに対して、難治なケースがあり治療法の選択肢も様々だという点で、もっと理解がありました。
追記) ニューステーションのVTRが見つかりました。別記事にキャプチャ画像と全内容の文字起こしをまとめてあります(→こちら)。
久米氏の番組の最後の発言は、「ちょこっとだけ使うんだったらいいですけど、習慣性を帯びると非常に危険だということです。」でした。「これでステロイド外用剤は最後の最後、ギリギリになるまで使ってはいけない薬だということがよくお分かりになったと思います。」ではありませんでした。
竹原氏は嘘をついたか、あるいは大きな勘違いを社会に情報発信したということです。
2011.11.04
大阪にあるこの病院では、ステロイドの副作用に苦しむ患者の治療にあたっています。ステロイドは、長く使っているうちに、だんだんと効き目が悪くなってきます。そのため塗る量を増やしたり、より強い薬を使わないと、炎症を抑えきれなくなります。それを繰り返した結果、副作用を起こしてしまうのです。
「薬を、どんどん出すんですね。もう、大学病院ですから、3時間ぐらい並んで、待って、で、診察かな?と思ったら、体を、一応脱いで、で、見ているか見てないか解らへん状態で、もうこれはこの薬塗って、で、どんどん薬は増えていく一方で、薬もきつくなってくるし。」
「ただもう、薬出すだけですねん。ステロイドを出すだけ。その先生自体はステロイドの副作用をご存知だったかどうか知りませんけど。ただ、それの繰り返しでずっと、十何年間やってきて。」
「使うたほうがええか、使わんほうがええかいうのは難しい・・」
玉置医師は、副作用に悩む患者に、ステロイドをなるべく使わない治療を目指しています。しかし、急に止めてしまうと、こんどは逆に体中に激しい炎症が起きてしまいます。
ステロイド軟膏には、本来ヒトが副腎皮質で作るホルモンが含まれています。ステロイド軟膏を長く塗り続けると、副腎皮質からのホルモンの分泌が次第に低下してしまいます。その状態でステロイド軟膏を急に止めると、体内の副腎皮質ホルモンが欠乏してしまうため、激しい炎症が起こるのです。これは、リバウンドと呼ばれる症状です。
玉置医師は、リバウンドによる炎症を最小限に食い止めるため、患者を入院させ、医師の目が行き届く状況で治療しています。治療の中心は、徹底した皮膚の手入れと、規則正しい生活習慣の指導です。人間に本来備わっている、自然な治癒力による回復を目指しています。
「自然に治る病気を、ステロイドが、治りにくくしている、ていう風な背景があるんではないかと、僕は思ってるんで、だから、ステロイドは炎症(を抑える)の力が非常に強いですから、病気を抑えるだけではなくて、まあ、治ろうとする力も抑えてるんではないかと、で、ステロイドを取り除くことによって、まあ、症状が悪くなりますけど、その、治ろうとする力がまた復活して来るんではないかという風に思います。」
ステロイド軟膏についてのアンケート調査(大阪府保険医師会)の結果です。症状や炎症の場所などによって、必要な場合には使うという医師も含め、大半の医師は治療に欠かせないと考えているということがわかります。
ーーーーー(ここまで引用)-----
リバウンドを、副腎皮質不全の結果ととらえている点は、今振り返ると、医学的に誤っています。しかし、当時は、まだステロイド外用剤による表皮バリア破壊の意義は認識されておらず、リバウンドには副腎皮質不全が関係してるのではないか?と模索の段階でした。また、ナレーションは、「長く使っているうちに、だんだんと効き目が悪くなってきます。」と断定的な言い方をしていますが、これは、全部の患者で経験されることではありません。依存や抵抗性に陥らずに過ごす患者のほうがむしろ多いです。しかし、95年当時、淀川キリスト教病院に集まっていた患者のほとんどは依存例や抵抗性例であったと想像します。なぜなら、私のところ(国立名古屋病院)も同じ状況だったからです。
ナレーターは、「玉置医師は、副作用に悩む患者に、ステロイドをなるべく使わない治療を目指しています。」と言っています。決して、「アトピー性皮膚炎の全例でステロイドを止めるべきです」などとは言っていません(竹原先生の思い込みは→ここ)。
ほかにもいくつか、当時のアトピーのステロイド問題を取り上げたテレビ番組の録画が手元にありますが、だいたい似たようなものです。治療現場の混乱や、ステロイド依存例・抵抗性例が存在することと、これに一部の皮膚科医が注目して脱ステロイド治療を行っていることを報じてはいますが、「マスコミがステロイドパッシングを行った」と言える様なものは存在しません。
竹原先生の「アトピービジネス論」は、「お話」として、わかりやすくて面白いので、ついつい検証することなく、納得してしまいがちですが、どうか、眉に唾つけて接してください。
「1990年代に、マスコミが大々的にステロイドバッシングを行った。その結果患者がアトピービジネスに走った。これに口実を与えたのは脱ステロイドを行っていた一部の皮膚科医である」という竹原先生の主張は間違っています。大部分のマスコミは普通に現場を取材して情報発信していただけで「ステロイドバッシング」など行っていませんでした。竹原先生らは、そういう嘘のイメージを社会に流すことによって、私たち脱ステロイドを行う皮膚科医を「バッシング(=過剰または根拠のない非難)」し、依存や抵抗性に陥った患者の行き場所を奪いました。
青木先生のコメント中の「乳児のアトピー性皮膚炎というのは、自然に良くなっていくのが多いわけです」という当たり前の事実を、社会は忘れてしまいました。そして、ステロイド忌避を選ぶ親を虐待視します。
いま、脱ステロイドせざるを得なくなった、またはステロイド忌避を選んだ患者が街へ出れば、皮疹を見た一般のひとたちが、「あれは、アトピービジネスに洗脳された可哀想な患者だ」といった目で見るでしょう。そのような社会的状況は、竹原先生の妄想のような「アトピービジネス論」という「お話」によって生まれたのです。
「脱ステロイドだ、ステロイド忌避のメリットだ、って言うけど、現実の社会で受け入れられて働いて食べていくためには、ステロイド使うしかないじゃないか。」と言いたい人も多いでしょう。そういう社会は、竹原先生が「アトピービジネス論」を発信することによって構築したのです。少なくとも、1990年代は、社会はアトピーに対して、難治なケースがあり治療法の選択肢も様々だという点で、もっと理解がありました。
追記) ニューステーションのVTRが見つかりました。別記事にキャプチャ画像と全内容の文字起こしをまとめてあります(→こちら)。
久米氏の番組の最後の発言は、「ちょこっとだけ使うんだったらいいですけど、習慣性を帯びると非常に危険だということです。」でした。「これでステロイド外用剤は最後の最後、ギリギリになるまで使ってはいけない薬だということがよくお分かりになったと思います。」ではありませんでした。
竹原氏は嘘をついたか、あるいは大きな勘違いを社会に情報発信したということです。
2011.11.04