ケース1のその後
ケース1についての以前の記事は→こちらとこちらとこちら
ケース1は、依存・リバウンドではなく、環境系の悪化因子が疑われた症例です。クロフィブラート外用が奏効しますが、中止すると3日で再燃するので、悪化因子探しと排除が必要と考えられました。クロフィブラート外用剤の長期試用にエントリーして1ヶ月あまりが経ちました。
彼から電話があり、名古屋市に申し込んでいたダニアレルゲン調査の結果が出たので、持参したいとのこと。それで来て頂いて撮影した写真が下図です。これまでの写真は→こちら。
ケース1は、依存・リバウンドではなく、環境系の悪化因子が疑われた症例です。クロフィブラート外用が奏効しますが、中止すると3日で再燃するので、悪化因子探しと排除が必要と考えられました。クロフィブラート外用剤の長期試用にエントリーして1ヶ月あまりが経ちました。
彼から電話があり、名古屋市に申し込んでいたダニアレルゲン調査の結果が出たので、持参したいとのこと。それで来て頂いて撮影した写真が下図です。これまでの写真は→こちら。
まだ湿疹が出てはいるものの、初診時ほどの酷さではありません。
しかし、特筆すべきは、2週間ほど前から、クロフィブラートの外用は中止しているという点です。
その直前に、環境悪化因子の一つとして疑われた飼い猫(二匹)を、同じ家の中ではあるが、使用していない部屋が一つあったので、そこに閉じ込めて外に出さないようにしました。
その後、彼自身の判断で、湿疹が、かなり良くなってきたので、クロフィブラートも薬であるし、あまり長く使い続けないほうが良いと考えたのでしょう、中止したそうです。
すると、先回は、クロフィブラートに反応はするものの、中止すると2~3日で再燃しましたが、今回は再燃しませんでした。
彼は現在、ステロイド外用剤の再使用について悩んでいます。「依存・リバウンドではないのなら、ステロイドを使っても良いはずだし、むしろ、それで早く良くなってしまうならば、積極的に利用したい。」こう、考えたようです。
ここでの彼の選択肢は3つあります。
1) 薬を何も使わず、アレルゲン排除だけで、このまま様子をみる。
2) ステロイド外用剤で、回復をショートカットする。
3) クロフィブラート外用剤を用いる。
です。
どれも間違いではないのですが、これは私からのお願いですが、3)のクロフィブラート外用剤を用いる、を続けてください。
薬を使うなら使うで、もっとも効果の大きいもの(ステロイド)にしたいし、使わないなら一切使わない、にしたい、という彼の希望もわからなくはないです。
私自身は、このままクロフィブラートだけでどのくらいまで良くなるか?に大きな関心を抱いていますし、このブログ記事を読んでいる他の患者や医師たちもそうでしょう。一定のところで頭打ちになって、その先はステロイドのような強い(あるいは免疫系抑制効果のある)薬剤でなければ駄目なのか、クロフィブラートだけで完全寛解まで持ち込めるのか?です。
ケース1の方にとっても、その点をを見極めておくことは、今後のために、大いに意味があります。また、現在ステロイド依存・リバウンドの状態には無いといっても、将来ステロイドを使いすぎて依存に陥らないという保証はありません。クロフィブラートで抑えられる限りはクロフィブラートで抑えたほうが賢明です。
ということで、再びクロフィブラート外用を再開していただくことにしました。
今回、おそらく、対策が奏効し、環境悪化因子が解除されて、クロフィブラート中止後も悪化が起きていないと考えられます。悪化因子としては、猫の可能性が大きいと推理しますが、ひょっとしてダニかもしれないので、名古屋市の調査を申し込むように勧めました。以下、彼が今回持ってきてくれた、調査結果を紹介します。
しかし、特筆すべきは、2週間ほど前から、クロフィブラートの外用は中止しているという点です。
その直前に、環境悪化因子の一つとして疑われた飼い猫(二匹)を、同じ家の中ではあるが、使用していない部屋が一つあったので、そこに閉じ込めて外に出さないようにしました。
その後、彼自身の判断で、湿疹が、かなり良くなってきたので、クロフィブラートも薬であるし、あまり長く使い続けないほうが良いと考えたのでしょう、中止したそうです。
すると、先回は、クロフィブラートに反応はするものの、中止すると2~3日で再燃しましたが、今回は再燃しませんでした。
彼は現在、ステロイド外用剤の再使用について悩んでいます。「依存・リバウンドではないのなら、ステロイドを使っても良いはずだし、むしろ、それで早く良くなってしまうならば、積極的に利用したい。」こう、考えたようです。
ここでの彼の選択肢は3つあります。
1) 薬を何も使わず、アレルゲン排除だけで、このまま様子をみる。
2) ステロイド外用剤で、回復をショートカットする。
3) クロフィブラート外用剤を用いる。
です。
どれも間違いではないのですが、これは私からのお願いですが、3)のクロフィブラート外用剤を用いる、を続けてください。
薬を使うなら使うで、もっとも効果の大きいもの(ステロイド)にしたいし、使わないなら一切使わない、にしたい、という彼の希望もわからなくはないです。
私自身は、このままクロフィブラートだけでどのくらいまで良くなるか?に大きな関心を抱いていますし、このブログ記事を読んでいる他の患者や医師たちもそうでしょう。一定のところで頭打ちになって、その先はステロイドのような強い(あるいは免疫系抑制効果のある)薬剤でなければ駄目なのか、クロフィブラートだけで完全寛解まで持ち込めるのか?です。
ケース1の方にとっても、その点をを見極めておくことは、今後のために、大いに意味があります。また、現在ステロイド依存・リバウンドの状態には無いといっても、将来ステロイドを使いすぎて依存に陥らないという保証はありません。クロフィブラートで抑えられる限りはクロフィブラートで抑えたほうが賢明です。
ということで、再びクロフィブラート外用を再開していただくことにしました。
今回、おそらく、対策が奏効し、環境悪化因子が解除されて、クロフィブラート中止後も悪化が起きていないと考えられます。悪化因子としては、猫の可能性が大きいと推理しますが、ひょっとしてダニかもしれないので、名古屋市の調査を申し込むように勧めました。以下、彼が今回持ってきてくれた、調査結果を紹介します。
ダニは、猫と違って、いるのかいないのか?どこにいるのか?が解りませんから、可視化のためには、こういった調査が有用です。自治体によって行っているところと、行っていないところがあります。保健所などに問い合わせてみてください。
名古屋市が、上記のような詳細な調査を行ってくれるのは、もう10年以上前、私を含めた多くの仲間たち(それぞれが各方面の専門家たちです)が、ボランティアで環境調査のために患者宅を訪問し、家の構造から温湿度特性、なぜその家のその部分にダニが発生しやすいのか?などを徹底調査するということを繰り返したからです。当時の名古屋市生活衛生センターの方々とは、毎月、前月に調査した患者宅について、症例検討しました(患者のではなく、患者の住んでいる家についての症例検討です)。
今の生活衛生センターの方々は、代替わりして(昔、中心となって私たちと一緒に活動していた方は、既に定年退職されたようです)、私たちの活動は知らないかもしれませんが、環境調査が今も引き継がれていることを知って少し嬉しいです。
行政サービスですから、住民の活用が少なければ、縮小閉鎖されます。名古屋市の住民であれば無料ですので、疑わしいかたは、一度、調査を受けてみてください。
名古屋市は、たぶん全国で一番詳しく家庭のダニ調査をしてくれる自治体で、データも蓄積しているはずです。
報告書はとても解りやすく書かれているので、私の補足の余地も無いのですが、せっかくなので一言コメントします。
ダニのアレルゲン量と、生体数とを、別個に測定していますが、これはその家の「住まい方」を把握するためです。アレルゲンというのは、糞や屍骸にも含まれます。アレルゲン量が多くて生体数が少なければ、これは掃除が不足ということだし、アレルゲン量の割りに生体数が多ければ、掃除は一生懸命しているのに、ダニが成育しやすい環境であるために掃除が追いつかない、といったことを読み取ります。
「だから、ダニ調査には、アレルゲン量と生体数、両方の調査が必要だ。」といったことを、昔私たちは、口泡飛ばして毎月毎月議論したものです。
さて、ケース1の方の、ダニの数値は低かったですから、やはり猫が疑わしいです。一部屋に閉じ込めるという対策で、効果あるだろうか?と、その案の連絡を受けたときは心配しましたが、幸い奏効しているようです。
依存・リバウンドが絡んでいない、環境系悪化因子によるアトピー性皮膚炎というのは、悪化要因を探して排除できると、本当に鮮やかに問題解決します。ケース1の方は、まだ湿疹が残っていますので、本当は猫をもっと遠ざけると、さらに良くなる可能性があります。しかし、前にも書きましたが、こういうことを話して、ペットを処分してくれる患者は一人も居なかったですね。ペットも高齢のようだし、いずれはいなくなるだろうから、現在の対処でよろしいのではないでしょうか。
2012.10.11
名古屋市が、上記のような詳細な調査を行ってくれるのは、もう10年以上前、私を含めた多くの仲間たち(それぞれが各方面の専門家たちです)が、ボランティアで環境調査のために患者宅を訪問し、家の構造から温湿度特性、なぜその家のその部分にダニが発生しやすいのか?などを徹底調査するということを繰り返したからです。当時の名古屋市生活衛生センターの方々とは、毎月、前月に調査した患者宅について、症例検討しました(患者のではなく、患者の住んでいる家についての症例検討です)。
今の生活衛生センターの方々は、代替わりして(昔、中心となって私たちと一緒に活動していた方は、既に定年退職されたようです)、私たちの活動は知らないかもしれませんが、環境調査が今も引き継がれていることを知って少し嬉しいです。
行政サービスですから、住民の活用が少なければ、縮小閉鎖されます。名古屋市の住民であれば無料ですので、疑わしいかたは、一度、調査を受けてみてください。
名古屋市は、たぶん全国で一番詳しく家庭のダニ調査をしてくれる自治体で、データも蓄積しているはずです。
報告書はとても解りやすく書かれているので、私の補足の余地も無いのですが、せっかくなので一言コメントします。
ダニのアレルゲン量と、生体数とを、別個に測定していますが、これはその家の「住まい方」を把握するためです。アレルゲンというのは、糞や屍骸にも含まれます。アレルゲン量が多くて生体数が少なければ、これは掃除が不足ということだし、アレルゲン量の割りに生体数が多ければ、掃除は一生懸命しているのに、ダニが成育しやすい環境であるために掃除が追いつかない、といったことを読み取ります。
「だから、ダニ調査には、アレルゲン量と生体数、両方の調査が必要だ。」といったことを、昔私たちは、口泡飛ばして毎月毎月議論したものです。
さて、ケース1の方の、ダニの数値は低かったですから、やはり猫が疑わしいです。一部屋に閉じ込めるという対策で、効果あるだろうか?と、その案の連絡を受けたときは心配しましたが、幸い奏効しているようです。
依存・リバウンドが絡んでいない、環境系悪化因子によるアトピー性皮膚炎というのは、悪化要因を探して排除できると、本当に鮮やかに問題解決します。ケース1の方は、まだ湿疹が残っていますので、本当は猫をもっと遠ざけると、さらに良くなる可能性があります。しかし、前にも書きましたが、こういうことを話して、ペットを処分してくれる患者は一人も居なかったですね。ペットも高齢のようだし、いずれはいなくなるだろうから、現在の対処でよろしいのではないでしょうか。
2012.10.11