赤ちゃんを洗いすぎていませんか?
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乳児のアトピー性皮膚炎、洗いすぎが原因か
ウォール・ストリート・ジャーナル 11月6日(木)9時27分配信
乳児のアトピー性皮膚炎の原因をめぐる新たな所見を受け、一部の科学者は調査に乗り出している。親による乳児の皮膚の手入れ方法がこの皮膚炎の引き金となる可能性が示唆されたためだ。
最新の複数の調査結果によると、アトピー性皮膚炎を引き起こす可能性があるのは、乳児の入浴頻度、せっけんやシャンプーの含有成分、入浴後に適切に皮膚を保湿しているかなどの要因だ。研究者は乳児の入浴は週に2~3回で十分 で、多くの場合は洗いすぎかもしれないと指摘する。アトピー性 皮膚炎になると、皮膚が乾燥し、かゆみを伴う炎症を引き起こす。
科学者が確信を強めているのは、入浴や汚染物質、室内暖房などの環境要因が、皮膚内の水分を保持しアレルギー誘発物質や細菌を排除するといった皮膚本来の能力を妨害する可能性がある点だ。これにより皮膚の最外層のバリアが弱まり、外部からの刺激物質が皮膚に浸透することで免疫系反応を引き起こす。一部のアトピー性皮膚炎患者については遺伝子変異が皮膚のバリア機能を損なう可能性があることも判明した。
アトピー性皮膚炎は長い間、アレルギー反応で起こると考えられていた。おそらく子供が食べたものや接触したものが、皮膚の炎症につながったという考えだ。ただ専門家は何十年もの間アレルギーをアトピー性皮膚炎の主犯と据えていた研究からは、ほとんど効果的な予防戦略を打ち出せなかった。
オレゴン健康科学大学の皮膚科教授、エリック・シンプソン氏は「アトピー 性皮膚炎の原因について理解が深まるにつれ、乳児の皮膚のケアの仕方にカギがあるとの見方が強くなっている」と語る。「私たちが良かれと思って赤ちゃんにしていることがアトピー性皮膚炎を引き起こしているのではないだろうか」と問う。
このアトピー性皮膚炎は通常、乳児の顔や頭部に、小児の場合は肘の内側やひざの裏にも現れる。処方薬の軟こうはかゆみや赤みを緩和するが、治癒はしない。
アトピー性皮膚炎は通常、乳児の肌がまだ発達段階にある1歳半を迎える前に発症する。数カ月、あるいは数年にわたり症状が出たり治まったりを繰り返し、たいてい青年期頃には消失するが、成人になっても続くケースもある。
By Dana Wechsler Linden
http://news.yahoo.co.jp/pickup/6137601
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ステロイドに関する話ではないのですが、ちょっと興味深いです。
それは先回記した「赤ちゃんに毎日保湿剤 アトピー減」(→こちら)に似た話であるからです。
保湿剤の話と同じく、発症要因に関することであって、発症後の治療として入浴回数の制限が有効かどうかは、別の話である点にも御留意ください。
原文のウォール・ストリート・ジャーナルの記事は下記サイトで読めます。
http://online.wsj.com/articles/are-you-bathing-your-baby-too-much-1415031555
乳児のアトピー性皮膚炎、洗いすぎが原因か
ウォール・ストリート・ジャーナル 11月6日(木)9時27分配信
乳児のアトピー性皮膚炎の原因をめぐる新たな所見を受け、一部の科学者は調査に乗り出している。親による乳児の皮膚の手入れ方法がこの皮膚炎の引き金となる可能性が示唆されたためだ。
最新の複数の調査結果によると、アトピー性皮膚炎を引き起こす可能性があるのは、乳児の入浴頻度、せっけんやシャンプーの含有成分、入浴後に適切に皮膚を保湿しているかなどの要因だ。研究者は乳児の入浴は週に2~3回で十分 で、多くの場合は洗いすぎかもしれないと指摘する。アトピー性 皮膚炎になると、皮膚が乾燥し、かゆみを伴う炎症を引き起こす。
科学者が確信を強めているのは、入浴や汚染物質、室内暖房などの環境要因が、皮膚内の水分を保持しアレルギー誘発物質や細菌を排除するといった皮膚本来の能力を妨害する可能性がある点だ。これにより皮膚の最外層のバリアが弱まり、外部からの刺激物質が皮膚に浸透することで免疫系反応を引き起こす。一部のアトピー性皮膚炎患者については遺伝子変異が皮膚のバリア機能を損なう可能性があることも判明した。
アトピー性皮膚炎は長い間、アレルギー反応で起こると考えられていた。おそらく子供が食べたものや接触したものが、皮膚の炎症につながったという考えだ。ただ専門家は何十年もの間アレルギーをアトピー性皮膚炎の主犯と据えていた研究からは、ほとんど効果的な予防戦略を打ち出せなかった。
オレゴン健康科学大学の皮膚科教授、エリック・シンプソン氏は「アトピー 性皮膚炎の原因について理解が深まるにつれ、乳児の皮膚のケアの仕方にカギがあるとの見方が強くなっている」と語る。「私たちが良かれと思って赤ちゃんにしていることがアトピー性皮膚炎を引き起こしているのではないだろうか」と問う。
このアトピー性皮膚炎は通常、乳児の顔や頭部に、小児の場合は肘の内側やひざの裏にも現れる。処方薬の軟こうはかゆみや赤みを緩和するが、治癒はしない。
アトピー性皮膚炎は通常、乳児の肌がまだ発達段階にある1歳半を迎える前に発症する。数カ月、あるいは数年にわたり症状が出たり治まったりを繰り返し、たいてい青年期頃には消失するが、成人になっても続くケースもある。
By Dana Wechsler Linden
http://news.yahoo.co.jp/pickup/6137601
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ステロイドに関する話ではないのですが、ちょっと興味深いです。
それは先回記した「赤ちゃんに毎日保湿剤 アトピー減」(→こちら)に似た話であるからです。
保湿剤の話と同じく、発症要因に関することであって、発症後の治療として入浴回数の制限が有効かどうかは、別の話である点にも御留意ください。
原文のウォール・ストリート・ジャーナルの記事は下記サイトで読めます。
http://online.wsj.com/articles/are-you-bathing-your-baby-too-much-1415031555
これを読むと、原文の中の重要な情報が日本語訳にする段階で省かれていることが解ります。
まず、シンプソン医師がどうして登場するかと言うと、彼が最近重要な論文を発表したからのようです。
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In a recent study, Dr. Simpson and a team of investigators from the U.K. looked at whether protecting the skin barrier of infants with a moisturizer could help prevent eczema. They divided 124 newborns at high risk for eczema because of family history into two groups. Parents of the first group were instructed to apply a fragrance-free moisturizer all over their babies’ body once a day. In the other group, parents were asked not to use moisturizer. When the babies were 6 months old, the incidence of eczema in the moisturized group was about half that of the controls, or 22% versus 43%.
(最近の研究でDr.Simpsonと英国の研究者チームとは、乳児への保湿剤の使用が表皮バリアを守ることによってアトピー性皮膚炎の発症を防止するかどうかについて調べた。家族にアトピー性皮膚炎がいる高リスクの124人の新生児を二つのグループに分け、一方のグループの親には無香料の保湿剤を体全体に一日一回外用するよう指示し、もう一方には保湿剤を使わないよう指示した。6ヶ月経った時点で、前者のアトピー性皮膚炎発症率は後者に比べて約半分、すなわち22%と43%であった)。
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これはまったくのところ、以前紹介した国立成育医療研究センターが報告した結果と同じです(→こちら)。
原文記事には、このあとに
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Another small study in the same issue, by a group of Japanese researchers, also found a greatly reduced rate of eczema among babies whose parents applied daily moisturizer.
(同じ号に、日本の研究者たちによる、保湿剤を毎日赤ちゃんに外用することでアトピー性皮膚炎の発症率を低下させたという、小さな研究も掲載されている)
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と、成育医療センターの報告にも言及されています。Simpsonの報告と成育医療センターの報告とは、同じ雑誌の同じ号に掲載されたのでした(→こちら)。
Simpsonの研究は、「英国の研究者チーム」と共同で行われました。この中には、Dr.Corkが入っています(論文の共著者になっている)。Corkといえば、このブログではおなじみの、ステロイド外用剤依存の警告論者です(→こちらとこちら)。
またSimpsonの教室のボスはDr.Hanifinです。日本語訳のニュースではSimpsonは「教授」となっていますが、これは誤訳で実際は准教授です。教授はHanifinです。この教室はステロイド外用剤依存についてのレビューを学会報告しています(→こちら)。
「2014版AADアトピー性皮膚炎ガイドラインの内輪話」という記事(→こちら)の冒頭で、ガイドラインを改訂するにあたって、ステロイド外用剤依存のほかに、「入浴回数は毎日がいいのか少ないほうがいいのか」についても議論が交わされたと紹介しましたが、これは今回のニュースから想像すると、Simpson, Hanifin, Corkらによる問題提起でしょう。おそらくはステロイド外用剤依存についても同様です。
また、原文には、
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Dr. Simpson says he is planning, with funding from the National Institutes of Health, a large, multicenter trial to test whether the early results hold up. He will include a few other skin-care practices he expects could help prevent eczema, including bathing the infant no more than two or three times a week and using only small amounts of mild, fragrance-free cleansers.
(Dr.Simpsonは国立健康研究所(NIH)の資金協力を得て、大規模な多施設研究で今回の結果を検証する計画を立てている。彼はアトピー性皮膚炎の発症を防止することが期待される他の二~三のスキンケア方法についても検討する予定であり、それには週二~三回以下の入浴と、無香料の洗剤をほんの少量以上用いないという方法も含まれる)
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とあります。ですから、実はこのニュースの表題は、「乳児のアトピー性皮膚炎、洗いすぎが原因か」でも“Are You Bathing Your Baby Too Much?(赤ちゃんを洗いすぎていませんか?)”でもなく、「アトピー性皮膚炎の発症は保湿剤の毎日の外用で抑えられる」であるべきです。赤ちゃんを洗いすぎることが、保湿剤を毎日外用しないのと同じく、アトピー性皮膚炎発症リスクを高めるかどうかは、まだこれからの話です。原文においては、表題はともかく内容を読めばそのことが解りますが、日本語訳にしたときにこのあたりの情報を省いてしまったために解らなくなってしまいました。日本語訳されたニュースは鵜呑みにせず、できるだけ原文ニュースで確認したほうが良い、という教訓ですね。
“We’ve become more aware how important the skin barrier is,” says Megha Tollefson, one of the authors for the academy of a coming clinical report on eczema.
(「我々は皮膚バリアの重要性を再認識した」と、近く発足するアトピー性皮膚炎の臨床報告の学会の発起人の一人であるMegha Tollefsonは語る)
ともありますので、そのような新しい学会が出来るのでしょうか?ニュースと言うのは、断片的ですが、いろいろな情報を与えてくれます。
また、この記事がウォール・ストリート・ジャーナルに掲載されているという点も、興味深いです。乳幼児向けスキンケア用品のマーケットの動向を暗示するようでもあるからです。これを読んで「保湿剤の売れ行きが伸びて、乳幼児向けの石鹸シャンプーは鈍るだろう」と考えた投資家もいるかもしれませんね。
まず、シンプソン医師がどうして登場するかと言うと、彼が最近重要な論文を発表したからのようです。
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In a recent study, Dr. Simpson and a team of investigators from the U.K. looked at whether protecting the skin barrier of infants with a moisturizer could help prevent eczema. They divided 124 newborns at high risk for eczema because of family history into two groups. Parents of the first group were instructed to apply a fragrance-free moisturizer all over their babies’ body once a day. In the other group, parents were asked not to use moisturizer. When the babies were 6 months old, the incidence of eczema in the moisturized group was about half that of the controls, or 22% versus 43%.
(最近の研究でDr.Simpsonと英国の研究者チームとは、乳児への保湿剤の使用が表皮バリアを守ることによってアトピー性皮膚炎の発症を防止するかどうかについて調べた。家族にアトピー性皮膚炎がいる高リスクの124人の新生児を二つのグループに分け、一方のグループの親には無香料の保湿剤を体全体に一日一回外用するよう指示し、もう一方には保湿剤を使わないよう指示した。6ヶ月経った時点で、前者のアトピー性皮膚炎発症率は後者に比べて約半分、すなわち22%と43%であった)。
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これはまったくのところ、以前紹介した国立成育医療研究センターが報告した結果と同じです(→こちら)。
原文記事には、このあとに
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Another small study in the same issue, by a group of Japanese researchers, also found a greatly reduced rate of eczema among babies whose parents applied daily moisturizer.
(同じ号に、日本の研究者たちによる、保湿剤を毎日赤ちゃんに外用することでアトピー性皮膚炎の発症率を低下させたという、小さな研究も掲載されている)
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と、成育医療センターの報告にも言及されています。Simpsonの報告と成育医療センターの報告とは、同じ雑誌の同じ号に掲載されたのでした(→こちら)。
Simpsonの研究は、「英国の研究者チーム」と共同で行われました。この中には、Dr.Corkが入っています(論文の共著者になっている)。Corkといえば、このブログではおなじみの、ステロイド外用剤依存の警告論者です(→こちらとこちら)。
またSimpsonの教室のボスはDr.Hanifinです。日本語訳のニュースではSimpsonは「教授」となっていますが、これは誤訳で実際は准教授です。教授はHanifinです。この教室はステロイド外用剤依存についてのレビューを学会報告しています(→こちら)。
「2014版AADアトピー性皮膚炎ガイドラインの内輪話」という記事(→こちら)の冒頭で、ガイドラインを改訂するにあたって、ステロイド外用剤依存のほかに、「入浴回数は毎日がいいのか少ないほうがいいのか」についても議論が交わされたと紹介しましたが、これは今回のニュースから想像すると、Simpson, Hanifin, Corkらによる問題提起でしょう。おそらくはステロイド外用剤依存についても同様です。
また、原文には、
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Dr. Simpson says he is planning, with funding from the National Institutes of Health, a large, multicenter trial to test whether the early results hold up. He will include a few other skin-care practices he expects could help prevent eczema, including bathing the infant no more than two or three times a week and using only small amounts of mild, fragrance-free cleansers.
(Dr.Simpsonは国立健康研究所(NIH)の資金協力を得て、大規模な多施設研究で今回の結果を検証する計画を立てている。彼はアトピー性皮膚炎の発症を防止することが期待される他の二~三のスキンケア方法についても検討する予定であり、それには週二~三回以下の入浴と、無香料の洗剤をほんの少量以上用いないという方法も含まれる)
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とあります。ですから、実はこのニュースの表題は、「乳児のアトピー性皮膚炎、洗いすぎが原因か」でも“Are You Bathing Your Baby Too Much?(赤ちゃんを洗いすぎていませんか?)”でもなく、「アトピー性皮膚炎の発症は保湿剤の毎日の外用で抑えられる」であるべきです。赤ちゃんを洗いすぎることが、保湿剤を毎日外用しないのと同じく、アトピー性皮膚炎発症リスクを高めるかどうかは、まだこれからの話です。原文においては、表題はともかく内容を読めばそのことが解りますが、日本語訳にしたときにこのあたりの情報を省いてしまったために解らなくなってしまいました。日本語訳されたニュースは鵜呑みにせず、できるだけ原文ニュースで確認したほうが良い、という教訓ですね。
“We’ve become more aware how important the skin barrier is,” says Megha Tollefson, one of the authors for the academy of a coming clinical report on eczema.
(「我々は皮膚バリアの重要性を再認識した」と、近く発足するアトピー性皮膚炎の臨床報告の学会の発起人の一人であるMegha Tollefsonは語る)
ともありますので、そのような新しい学会が出来るのでしょうか?ニュースと言うのは、断片的ですが、いろいろな情報を与えてくれます。
また、この記事がウォール・ストリート・ジャーナルに掲載されているという点も、興味深いです。乳幼児向けスキンケア用品のマーケットの動向を暗示するようでもあるからです。これを読んで「保湿剤の売れ行きが伸びて、乳幼児向けの石鹸シャンプーは鈍るだろう」と考えた投資家もいるかもしれませんね。
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