表皮細胞のステロイド産生を増やす方法(その2)
先回(→こちら)の続きです。
(4)レチノイド
レチノイドというのは、RAR/RXRという受容体に結合するビタミンA類似化合物の総称です。レチノイドにもまた、StARやCYP11A1に作用して、表皮細胞のステロイド産生を高める作用があります。
(4)レチノイド
レチノイドというのは、RAR/RXRという受容体に結合するビタミンA類似化合物の総称です。レチノイドにもまた、StARやCYP11A1に作用して、表皮細胞のステロイド産生を高める作用があります。
Up-regulation of steroid biosynthesis by retinoid signaling: Implications for aging. Mech Ageing Dev. 2015 Sep;150:74-82.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26303142
に実験結果があります。下図で9-cis RAがレチノイドです。(Bu)2cAMPは先回記したアクトシン軟膏の主成分です。興味深いことに、この2つの物質には強い相乗作用があるようです。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26303142
に実験結果があります。下図で9-cis RAがレチノイドです。(Bu)2cAMPは先回記したアクトシン軟膏の主成分です。興味深いことに、この2つの物質には強い相乗作用があるようです。
この論文には他にもStARに関して興味深いデータが記されています。下図は健常者皮膚と炎症性皮膚疾患(病名記載なし、たぶん乾癬やアトピー性皮膚炎など)とでStAR発現を比較したもの。皮膚疾患では低下しています。先々回(→こちら)紹介した論文データと一致していますね。
下は、年齢と表皮のStARとの関係。年をとると低下していきます。
炎症性皮膚疾患の患者でStARの発現は低く、すなわち表皮のステロイド産生能力は弱く、また加齢によっても低下します。高齢者の皮膚が痒くなりやすい原因の一つなのかもしれません。
レチノイドを含んだアンチエイジング化粧品というのは欧米では昔からあります。日本ではレチノイドは化粧品原料として認められていませんが、医師の処方の元に自費で購入できるものはあります。
レチノイドを含んだアンチエイジング化粧品というのは欧米では昔からあります。日本ではレチノイドは化粧品原料として認められていませんが、医師の処方の元に自費で購入できるものはあります。
しかしです。これをアトピー性皮膚炎の皮膚に外用するというのは、皮膚科医であれば誰もが、ためらい・戸惑いを感じると思います。
というのは、レチノイドには角質を剥がして薄くする作用があるからです。若返りに用いられる理由も、この作用によって古い角質を剥がし落として明るく小じわの少ない肌に仕上がるからです。濃度や頻度が強すぎると擦り切れたような赤みが出ます。アトピー性皮膚炎の肌に用いれば、角質バリアが弱くなってしまいそうです。
そこで、一番上の図の9-cis RAと(Bu)2cAMPについて、実験でどのくらいの濃度が用いられたのかを確認してみました。9-cis RAは10μM、(Bu)2cAMPは0.1mMでした。
分子量はそれぞれ300と491なので、重量%に換算すると、0.0003%と0.005%になります。非常に薄いです。
上のアンチエイジング化粧品に用いられているレチノイド(Tretinoin)の濃度は0.1%です。Tretinoin は9-cis RAとは異なるレチノイドですが、作用が同じと仮定して、300倍に希釈して用いればよいということになります。この濃度なら、ステロイド産生能は保たれて、なおかつ角質を薄くする作用は小さく無視できるのかもしれません。
アクトシン軟膏は3%ですから、これも600倍に希釈して使えそうです。要はこの2つの軟膏を白色ワセリンで300~600倍に混合すれば良いと言うことになります。
若返りのためには、角質が剥けるくらい高濃度が必要ですが、表皮のステロイド産生能を高めるためなら、はるかに低濃度で良いかもしれない、ということです。
より手軽に入手できそうなのが、ディフェリンというにきび用の外用剤です。
というのは、レチノイドには角質を剥がして薄くする作用があるからです。若返りに用いられる理由も、この作用によって古い角質を剥がし落として明るく小じわの少ない肌に仕上がるからです。濃度や頻度が強すぎると擦り切れたような赤みが出ます。アトピー性皮膚炎の肌に用いれば、角質バリアが弱くなってしまいそうです。
そこで、一番上の図の9-cis RAと(Bu)2cAMPについて、実験でどのくらいの濃度が用いられたのかを確認してみました。9-cis RAは10μM、(Bu)2cAMPは0.1mMでした。
分子量はそれぞれ300と491なので、重量%に換算すると、0.0003%と0.005%になります。非常に薄いです。
上のアンチエイジング化粧品に用いられているレチノイド(Tretinoin)の濃度は0.1%です。Tretinoin は9-cis RAとは異なるレチノイドですが、作用が同じと仮定して、300倍に希釈して用いればよいということになります。この濃度なら、ステロイド産生能は保たれて、なおかつ角質を薄くする作用は小さく無視できるのかもしれません。
アクトシン軟膏は3%ですから、これも600倍に希釈して使えそうです。要はこの2つの軟膏を白色ワセリンで300~600倍に混合すれば良いと言うことになります。
若返りのためには、角質が剥けるくらい高濃度が必要ですが、表皮のステロイド産生能を高めるためなら、はるかに低濃度で良いかもしれない、ということです。
より手軽に入手できそうなのが、ディフェリンというにきび用の外用剤です。
これもレチノイドの一種であるアダパレンが主成分ですから同じ効果が期待できます。
すなわち、
処方案1)
トレチノインクリーム(0.1%)1g
アクトシン軟膏(3%)0.5g
白色ワセリン 300g
処方案2)
ディフェリンゲル(0.1%)1g
アクトシン軟膏(3%)0.5g
白色ワセリン 300g
ここから少しずつ濃度を高めて、角質が剥がれて赤くならない程度に濃くしても良いのかもしれません。
ここまでは思考実験です。実際にこの考え方が正しいのかは、患者を募って確認する必要があります。
しかし、この臨床試験はむつかしいです。なぜなら、この軟膏は、表皮のステロイド産生を促して、長期的にアトピー性皮膚炎やステロイド依存を回復に導くかもしれませんが、即効的な抗炎症作用、すなわち湿疹を短期的に良くする作用については不明だからです。
クロフィブラートの時のように脱ステ後の患者を20人くらい募って、二重盲検で一年くらい外用してもらい、症状回復に有意差が出ればいいのですが、期間が長いので脱落者がかなり出そうな気がします。
表皮のステロイド産生能力の定量的な評価が出来ればいいのですが。皮膚を生検してコルチゾール産生にパッチ状の低下があるか無いかは解りますが、脱ステ後の患者の多くはパッチ状の低下からは脱するようなので、その後の回復状況を確認するには他の手段が必要です。
個人輸入や担当医にお願いするなどして、入手できないものでは無いでしょうから、試してみようという方は、自作してみてもいいと思います。ディフェリンゲルやアクトシン軟膏は、052-264-0213に電話の上クリニックにお越しいただければ、私が処方も出来ます。保険はききませんが、有効かどうか保証のある話じゃないので、診察料も利益も頂きません。問屋からの仕入れ実費でお分けします。その代わりに、その後の経過を教えて下さい。
外用剤を一切断つ「脱保湿」と相反しますので(注:脱保湿それ自体に表皮のステロイド産生促進作用があります→こちら)、脱保湿が辛くて合わなくて、ワセリンで保湿だけしているような方にいいのかもしれませんね。
また、ひょっとしたら、ステロイド外用剤に、微量のレチノイドやcAMPを混ぜておくと、依存を来たしにくいのかもしれません。
(H28.8.17記)
すなわち、
処方案1)
トレチノインクリーム(0.1%)1g
アクトシン軟膏(3%)0.5g
白色ワセリン 300g
処方案2)
ディフェリンゲル(0.1%)1g
アクトシン軟膏(3%)0.5g
白色ワセリン 300g
ここから少しずつ濃度を高めて、角質が剥がれて赤くならない程度に濃くしても良いのかもしれません。
ここまでは思考実験です。実際にこの考え方が正しいのかは、患者を募って確認する必要があります。
しかし、この臨床試験はむつかしいです。なぜなら、この軟膏は、表皮のステロイド産生を促して、長期的にアトピー性皮膚炎やステロイド依存を回復に導くかもしれませんが、即効的な抗炎症作用、すなわち湿疹を短期的に良くする作用については不明だからです。
クロフィブラートの時のように脱ステ後の患者を20人くらい募って、二重盲検で一年くらい外用してもらい、症状回復に有意差が出ればいいのですが、期間が長いので脱落者がかなり出そうな気がします。
表皮のステロイド産生能力の定量的な評価が出来ればいいのですが。皮膚を生検してコルチゾール産生にパッチ状の低下があるか無いかは解りますが、脱ステ後の患者の多くはパッチ状の低下からは脱するようなので、その後の回復状況を確認するには他の手段が必要です。
個人輸入や担当医にお願いするなどして、入手できないものでは無いでしょうから、試してみようという方は、自作してみてもいいと思います。ディフェリンゲルやアクトシン軟膏は、052-264-0213に電話の上クリニックにお越しいただければ、私が処方も出来ます。保険はききませんが、有効かどうか保証のある話じゃないので、診察料も利益も頂きません。問屋からの仕入れ実費でお分けします。その代わりに、その後の経過を教えて下さい。
外用剤を一切断つ「脱保湿」と相反しますので(注:脱保湿それ自体に表皮のステロイド産生促進作用があります→こちら)、脱保湿が辛くて合わなくて、ワセリンで保湿だけしているような方にいいのかもしれませんね。
また、ひょっとしたら、ステロイド外用剤に、微量のレチノイドやcAMPを混ぜておくと、依存を来たしにくいのかもしれません。
(H28.8.17記)
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