「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2018」でステロイド外用剤依存“steroid addiction”が言及されました
日本皮膚科学会雑誌2018年12月号に「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2018」が掲載されました。https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/atopic_GL2018.pdf
でダウンロードできるので、ご確認ください。
まず興味深い点は、これまで日本には日本皮膚科学会のガイドラインと日本アレルギー学会のガイドラインの二つが存在し、前者は皮膚科診療を専門とする医師、後者はそれ以外を対象としていたのですが、この二つが一つになったという点です。出来た当初からさほど違いの無い内容でしたから、すっきりして良かったと思います。
さて、私の最大の関心事である「ステロイド外用剤依存」とその治療について言及されたかですが、2458ページに「主として成人が顔面や陰部などにステロイド 外用薬を長期間使用した例で,ステロイド外用薬を突然中止すると,紅斑や潮紅,浮腫,丘疹や膿疱などが出現,悪化することがある(96).このような状況が疑われる場合は,皮膚科専門医に紹介することが望ましい.」とあり、引用文献の96はというと、 Hajar T, Lesham YA, Hanifin JM, et al: A systematic review of topical corticosteroid withdrawal(“steroid addiction”) in patients with atopic dermatitis and other dermatoses, J Am Acad Dermatol , 2015; 72: 541―549.です。
とりあえず“steroid addiction”(ステロイド外用剤依存)については文献を引用する形で記載されました。
治療は、ステロイド外用剤中止しかないのですが、そこは明記せずに「皮膚科専門医に紹介」となっています。果たして「皮膚科専門医」はステロイド外用剤離脱、すなわちリバウンドのコントロールの臨床に習熟しているでしょうか?長年にわたって脱ステというものを黙殺してきた学会が、いきなり「皮膚科専門医」に脱ステという大きな荷物を「はい、あとは頼むね」と背負わせたようなものです。これから、脱ステの具体的なノウハウが、学会等でまともに議論されることを祈ります。
2472ページの「入院治療の適応」の記載は、このガイドラインの混迷を現しています。ステロイド外用剤依存状態の患者こそが離脱に当たってのリバウンドの一定期間、入院治療が必要となるべきなのに、ここでは「外用しても改善しないと経験的に誤解している,外用療法の意義や方法の理解不足,ステロイド忌避など」しかあげていません。
ステロイド忌避患者には「教育」目的で入院を勧めるけれども、離脱が必要なステロイド依存患者は「皮膚科専門医への紹介」で済ませています。そもそも二つのガイドラインが統合されて、皮膚科診療を専門とする医師もまた参照するガイドラインになったのですから「皮膚科専門医への紹介」という文言自体がおかしいですね。
(2018.11.27記)
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