ケース15から20のまとめ
ケース19まで4週間の試験が終了しました。統計上、クロフィブラートによる重症度・患者VAS・TARC値が、対照群に比して有意に低下するという結果は、中間報告と変わりません。
より鮮明になってきたことは、クロフィブラートというのは、効く人(リスポンダー)と効かない人(ノンリスポンダー)とが、はっきり分かれるようだ、という点です。ステロイド依存・リバウンド例であるのか、そうでない古典的なアトピー性皮膚炎であるのか、とは相関がなさそうです。
ケース15
ステロイド使用期間:3年
止めてからの期間:2年5ヶ月
診断(経過および皮疹から):アトピー性皮膚炎(非依存)
試験に用いた外用剤 0→2週:クロフィブラートエマルジョン、2→4週:クロフィブラートエマルジョン
重症度(日皮会分類による) 0週:11 2週:11
患者VAS 0週:30 2週:15
TARC 0週:<125 2週:187
IgE 0週:52902週:6150
判定 ノンリスポンダー
より鮮明になってきたことは、クロフィブラートというのは、効く人(リスポンダー)と効かない人(ノンリスポンダー)とが、はっきり分かれるようだ、という点です。ステロイド依存・リバウンド例であるのか、そうでない古典的なアトピー性皮膚炎であるのか、とは相関がなさそうです。
ケース15
ステロイド使用期間:3年
止めてからの期間:2年5ヶ月
診断(経過および皮疹から):アトピー性皮膚炎(非依存)
試験に用いた外用剤 0→2週:クロフィブラートエマルジョン、2→4週:クロフィブラートエマルジョン
重症度(日皮会分類による) 0週:11 2週:11
患者VAS 0週:30 2週:15
TARC 0週:<125 2週:187
IgE 0週:52902週:6150
判定 ノンリスポンダー
この方は、最初ワセリン基剤で試験を開始したのですが、「赤み・プツプツが出てきた」とのことだったので、来院していただいて、パッチテストを行いました。結果は陰性であったので、ワセリン基剤の使い心地の原因かもしれないと考え、エマルジョンで二重盲験試験を再開しました。
0→2→4週と、やや悪化傾向です。これは皮疹から考えてアトピー性皮膚炎そのものの変動で、言わば「基線のぶれ」と考えられます。とにかく、クロフィブラートは効果が無さそうです。本人のVAS上は30→15ですが、これは主観的なバイアスでしょう。
この方の場合、悪化要因は、環境系にあるようで、実家に帰ったり、キャンプに数日行くだけでもよくなるようです。現在は職場が埃っぽく、それを苦にしています。
2週間休薬して、そのあと、名古屋在住の方なので、AVANDIA軟膏試用を含め、どうフォローしていくか、検討中です。
ケース16
ステロイド使用期間:40年
止めてからの期間:5ヶ月
診断(経過および皮疹から):依存・リバウンド
試験に用いた外用剤 0→2週:クロフィブラート、2→4週:クロフィブラート
重症度(日皮会分類による) 0週:17、2週:11
患者VAS 0週:30 2週:25
TARC 0週:252 2週:147
IgE 0週:501 2週:521
判定 リスポンダー
0→2→4週と、やや悪化傾向です。これは皮疹から考えてアトピー性皮膚炎そのものの変動で、言わば「基線のぶれ」と考えられます。とにかく、クロフィブラートは効果が無さそうです。本人のVAS上は30→15ですが、これは主観的なバイアスでしょう。
この方の場合、悪化要因は、環境系にあるようで、実家に帰ったり、キャンプに数日行くだけでもよくなるようです。現在は職場が埃っぽく、それを苦にしています。
2週間休薬して、そのあと、名古屋在住の方なので、AVANDIA軟膏試用を含め、どうフォローしていくか、検討中です。
ケース16
ステロイド使用期間:40年
止めてからの期間:5ヶ月
診断(経過および皮疹から):依存・リバウンド
試験に用いた外用剤 0→2週:クロフィブラート、2→4週:クロフィブラート
重症度(日皮会分類による) 0週:17、2週:11
患者VAS 0週:30 2週:25
TARC 0週:252 2週:147
IgE 0週:501 2週:521
判定 リスポンダー
この方は、以前紹介した、目周りのたるみ取り手術の方です(→こちら)。
クロフィブラートレスポンダーと判定しました。40年間のステロイド使用歴でしたが、予想外にリバウンドは軽くおさまっているようです。依存やリバウンドの知識はありながらもなかなか踏み切れなかった方のようですから、少しずつ減らしていたのかもしれません。
リバウンド→回復の中での試験ですから、クロフィブラートが効いたのではなく、自然に良くなる波に乗っていただけという可能性はあります。現在2週間の休薬中で、再燃の有無を確認しています。再燃があれば、クロフィブラート再開して長期試用してもらい、再燃が無ければ、そのまま経過観察で可です。
食物に反応するタイプのようで、とくにお米がだめで一年前から止めているそうです。ステロイドの外用を続けながらも、悪化要因探しをして対策を試みていたのが、リバウンドが軽く経過している理由である可能性は大いにあります。彼女によれば「食物による波はあるが、クロフィブラート外用は、それを全体として底下げしてくれる感じ」だそうです。
ケース 17
ステロイド使用期間:3年
止めてからの期間:1年8ヶ月
診断(経過および皮疹から):依存・リバウンド
試験に用いた外用剤 0→2週:白色ワセリン、2→4週:クロフィブラート
重症度(日皮会分類による) 0週:12 2週:11
患者VAS 0週:50 2週:44
TARC 0週:217 2週:<125
IgE 0週:746 2週:722
クロフィブラートレスポンダーと判定しました。40年間のステロイド使用歴でしたが、予想外にリバウンドは軽くおさまっているようです。依存やリバウンドの知識はありながらもなかなか踏み切れなかった方のようですから、少しずつ減らしていたのかもしれません。
リバウンド→回復の中での試験ですから、クロフィブラートが効いたのではなく、自然に良くなる波に乗っていただけという可能性はあります。現在2週間の休薬中で、再燃の有無を確認しています。再燃があれば、クロフィブラート再開して長期試用してもらい、再燃が無ければ、そのまま経過観察で可です。
食物に反応するタイプのようで、とくにお米がだめで一年前から止めているそうです。ステロイドの外用を続けながらも、悪化要因探しをして対策を試みていたのが、リバウンドが軽く経過している理由である可能性は大いにあります。彼女によれば「食物による波はあるが、クロフィブラート外用は、それを全体として底下げしてくれる感じ」だそうです。
ケース 17
ステロイド使用期間:3年
止めてからの期間:1年8ヶ月
診断(経過および皮疹から):依存・リバウンド
試験に用いた外用剤 0→2週:白色ワセリン、2→4週:クロフィブラート
重症度(日皮会分類による) 0週:12 2週:11
患者VAS 0週:50 2週:44
TARC 0週:217 2週:<125
IgE 0週:746 2週:722
手湿疹から全身のリバウンドを生じて、その後アトピー性皮膚炎様となった方です(→こちら)。もともと微妙な皮疹なのですが、白色ワセリン外用にて顔の赤みや体の粃糠疹などが改善しています。白色ワセリン(試験薬)とクロフィブラート軟膏の違いについては、「クロフィブラート軟膏のほうが少し痒みを感じた」そうです。しかし明らかなかぶれはなさそうです。
ケース16の方と同じく、依存・リバウンドからの回復期に一致したことによる改善かもしれません。2週間休薬して様子見です。このままよくなってしまえば、それで良いと思います。
ケース18
ステロイド使用期間:6年
止めてからの期間:13年
診断(経過および皮疹から):アトピー性皮膚炎(現在は非依存例)
試験に用いた外用剤 0→2週:クロフィブラート軟膏、2→4週:クロフィブラート軟膏
重症度(日皮会分類による) 0週:32 2週:27
患者VAS 0週:35 2週:32
TARC 0週:443 2週:161
IgE 0週:11500 2週:11500
判定 リスポンダー
ケース16の方と同じく、依存・リバウンドからの回復期に一致したことによる改善かもしれません。2週間休薬して様子見です。このままよくなってしまえば、それで良いと思います。
ケース18
ステロイド使用期間:6年
止めてからの期間:13年
診断(経過および皮疹から):アトピー性皮膚炎(現在は非依存例)
試験に用いた外用剤 0→2週:クロフィブラート軟膏、2→4週:クロフィブラート軟膏
重症度(日皮会分類による) 0週:32 2週:27
患者VAS 0週:35 2週:32
TARC 0週:443 2週:161
IgE 0週:11500 2週:11500
判定 リスポンダー
この方の顔面の経過はケース13の方(→こちら)に似ています。全体的な赤み・落屑が2週目でとれてきて、4週目には部分的・パッチ状に健常色の皮膚が出てきています。たぶん、ステロイドを外用すれば、2~3日で達する経過でしょうが、クロフィブラートはそれを4週間かけてやっている、という感じです。
この方は、実は、13年前、私が国立名古屋病院に在籍していたころに、入院して離脱した患者です。外来通院はしてなかったと思うので、離脱後の経過はフォローしてなかったのですが(患者同士の結婚式に呼ばれたときにお会いしたりはしました)、現在はすっかり古典的なアトピー性皮膚炎に戻っています。2年に一回ほど再燃を繰り返すようで、何か悪化要因があるはずなのですが、とりあえずクロフィブラートのリスポンダーなので、2週間の休薬ののち、長期試用に入ります。
ケース19
ステロイド使用期間:10年以上
止めてからの期間:16年
診断(経過および皮疹から):アトピー性皮膚炎
試験に用いた外用剤 0→2週:クロフィブラート、2→4週:クロフィブラート
重症度(日皮会分類による) 0週:12 2週:8
患者VAS 0週:50 2週:50
TARC 0週:204 2週:215
IgE 0週:16900 2週:18700
判定 リスポンダー
この方は、実は、13年前、私が国立名古屋病院に在籍していたころに、入院して離脱した患者です。外来通院はしてなかったと思うので、離脱後の経過はフォローしてなかったのですが(患者同士の結婚式に呼ばれたときにお会いしたりはしました)、現在はすっかり古典的なアトピー性皮膚炎に戻っています。2年に一回ほど再燃を繰り返すようで、何か悪化要因があるはずなのですが、とりあえずクロフィブラートのリスポンダーなので、2週間の休薬ののち、長期試用に入ります。
ケース19
ステロイド使用期間:10年以上
止めてからの期間:16年
診断(経過および皮疹から):アトピー性皮膚炎
試験に用いた外用剤 0→2週:クロフィブラート、2→4週:クロフィブラート
重症度(日皮会分類による) 0週:12 2週:8
患者VAS 0週:50 2週:50
TARC 0週:204 2週:215
IgE 0週:16900 2週:18700
判定 リスポンダー
この方は、遠方の方なのですが、最初いらしてから数日後に「外用していたところが赤くなってきた」と電話が入りました。近い方ならば来ていただいてケース15の方と同様、パッチテストで確認するところなのですが、遠方なので、オープンパッチテストと言って、上腕の内側あたりの皮疹の出ていない部に、外用してもらって、赤みが再現するかどうかを確認してもらうことにしました。発赤は再現されなかったので、外用再開し、2週間後に来院されました。
皮疹は顔面が主で、そこでは、上記拡大写真のように、落屑が軽減し、炎症(赤み)も僅かですが減っています(鼻の下付近の赤みを見ると判る)。一方、肘の皮疹は、少し赤みが出ています。これは、かぶれ=接触皮膚炎ではなく、アトピー性皮膚炎の活発化の皮疹です。かぶれであれば、もっと激しく出ます。
このあと、この方は、2→4週のスケジュールとして、クロフィブラート外用剤(基剤はご自身でこれなら合うといわれたスクワレンオイル)を使用したのですが、5日目に再び「(肘の部分が)赤くなってきた」と中止されました。
おそらく、これは、アトピー性皮膚炎の基線的変動なのだろうと判断します。そこには、もちろん、目には見えない悪化因子、環境や食物などが関わってのことです。
とりあえず、この方には、上腕の無疹部に、連続して一週間ほど、クロフィブラートを続けて塗ってみてください、とお願いしました。それで赤くならなければ、肘の赤みはクロフィブラートのせいではありません。
せっかくリスポンダーかもしれないですから、ここで終わるのは惜しいです。
ケース13の方もそうなのですが、一般に女性、とくに顔に強く皮疹が出ているタイプでは、自分の経過の客観視が難しい印象があります。これは、インテリジェンスとは全く別で、現にケース13の方も19の方も、話していれば解りますが、理解力は高いです。
私は、クロフィブラートが合わない・向かないあるいは効かないと判断したら、決してそれ以上強要はしませんので、もう少しお付き合いください。ひょっとしたら長い顔面の湿疹から抜け出すブレークスルーになるかもしれません。
ケース20の方(→こちら)は、居所を変えて、環境の影響を確認中のようで、コメント欄を通じて経過メールを拝読していますが、5月から使用したステロイドのリバウンドの影響も否定はできませんが、やはり自宅は何かありそうです。クロフィブラートを使うにしても、まずは皮疹がある程度安定する居所を確保することが先決と考えます。二重盲験試験のエンロールからは外しましたので、どうしてもということであれば、二重盲験ではなくいきなりクロフィブラート外用をトライしてみてもいけなくはないのですが(マウスの実験ではクロフィブラートはアレルギー性接触皮膚炎をやや抑えています)、将来のために、何とか原因的な対策をもう一工夫してみてください。仮にクロフィブラートが効いてその間は多少おさまっても、また同じことを繰り返しそうな気がします。
2012.10.22
皮疹は顔面が主で、そこでは、上記拡大写真のように、落屑が軽減し、炎症(赤み)も僅かですが減っています(鼻の下付近の赤みを見ると判る)。一方、肘の皮疹は、少し赤みが出ています。これは、かぶれ=接触皮膚炎ではなく、アトピー性皮膚炎の活発化の皮疹です。かぶれであれば、もっと激しく出ます。
このあと、この方は、2→4週のスケジュールとして、クロフィブラート外用剤(基剤はご自身でこれなら合うといわれたスクワレンオイル)を使用したのですが、5日目に再び「(肘の部分が)赤くなってきた」と中止されました。
おそらく、これは、アトピー性皮膚炎の基線的変動なのだろうと判断します。そこには、もちろん、目には見えない悪化因子、環境や食物などが関わってのことです。
とりあえず、この方には、上腕の無疹部に、連続して一週間ほど、クロフィブラートを続けて塗ってみてください、とお願いしました。それで赤くならなければ、肘の赤みはクロフィブラートのせいではありません。
せっかくリスポンダーかもしれないですから、ここで終わるのは惜しいです。
ケース13の方もそうなのですが、一般に女性、とくに顔に強く皮疹が出ているタイプでは、自分の経過の客観視が難しい印象があります。これは、インテリジェンスとは全く別で、現にケース13の方も19の方も、話していれば解りますが、理解力は高いです。
私は、クロフィブラートが合わない・向かないあるいは効かないと判断したら、決してそれ以上強要はしませんので、もう少しお付き合いください。ひょっとしたら長い顔面の湿疹から抜け出すブレークスルーになるかもしれません。
ケース20の方(→こちら)は、居所を変えて、環境の影響を確認中のようで、コメント欄を通じて経過メールを拝読していますが、5月から使用したステロイドのリバウンドの影響も否定はできませんが、やはり自宅は何かありそうです。クロフィブラートを使うにしても、まずは皮疹がある程度安定する居所を確保することが先決と考えます。二重盲験試験のエンロールからは外しましたので、どうしてもということであれば、二重盲験ではなくいきなりクロフィブラート外用をトライしてみてもいけなくはないのですが(マウスの実験ではクロフィブラートはアレルギー性接触皮膚炎をやや抑えています)、将来のために、何とか原因的な対策をもう一工夫してみてください。仮にクロフィブラートが効いてその間は多少おさまっても、また同じことを繰り返しそうな気がします。
2012.10.22