ビタミンD外用はステロイド外用剤の副作用を軽減する
Topical calcitriol restores the impairment of epidermal permeability and antimicrobial barriers induced by corticosteroids. S.P. Hong, British Journal of Dermatology, 2010 162, pp1251–1260
論文を読む前に、予備知識を少し解説しておきましょう。
まずビタミンDですが、良く知られているように、栄養として摂取されたビタミンDの前駆物質から、皮膚・肝臓・腎臓の3箇所で代謝されて、活性化します。
論文を読む前に、予備知識を少し解説しておきましょう。
まずビタミンDですが、良く知られているように、栄養として摂取されたビタミンDの前駆物質から、皮膚・肝臓・腎臓の3箇所で代謝されて、活性化します。
(こちらのアニメーションが解り易いのでご参照ください。http://courses.washington.edu/bonephys/Gallery/vitd.swf)
最後のステップである、1α位のOH化は、腎臓がメインですが、最近、表皮細胞にもこの機能があることがわかってきました。表皮もまた、活性型ビタミンDの最終的な産生の場だということです。そして、表皮の活性型ビタミンDが増えると、それ自体がビタミンDレセプターを誘導したり、さらなる活性型ビタミンD産生に必要な酵素を誘導するというUpregulate機構があるようです。
従って、少量のビタミンDを外用してやると、それがきっかけとなって、増幅された効果が表皮にもたらされます。
このビタミンDの表皮への効果ですが、二つあります。
1)傷害された表皮バリア機構の修復
2)抗菌ペプチド(ディフェンシンやカテリシジン)の産生
です。
抗菌ペプチドと言うのは、これまた、最近解明されてきた話ですが、細菌などの微生物に対して抗菌作用を発揮する蛋白質の一種です。たとえばディフェンシンは、細菌の細胞膜にくっついてここに小孔を開けて破壊します。免疫グロブリンや細胞性免疫と異なり、非特異的(注:どんな微生物に対してもという意味)に働きます。
たとえば、皮膚に紫外線(UVB)が当たりますと、紫外線には、免疫抑制作用がありますが(紫外線で傷害を受けた皮膚を異物と認識した炎症が起きないようにという生体の合目的的反応です)、その一方で活性化ビタミンDが増加します。すると表皮細胞の抗菌ペプチドの産生が増えるので、結果的に紫外線による特異的免疫の抑制による易感染性を補う、といった働きをするわけです。
最近、ナローバンドUVB療法が、アトピー性皮膚炎の診療に、一般的に用いられてきていますが、ステロイド外用剤にUVB療法を併用することは、ちょうど活性型ビタミンDを少量外用するのに似た副作用防止効果が期待できるのかもしれません。UVBによってもビタミンDが増加するからです。
最後のステップである、1α位のOH化は、腎臓がメインですが、最近、表皮細胞にもこの機能があることがわかってきました。表皮もまた、活性型ビタミンDの最終的な産生の場だということです。そして、表皮の活性型ビタミンDが増えると、それ自体がビタミンDレセプターを誘導したり、さらなる活性型ビタミンD産生に必要な酵素を誘導するというUpregulate機構があるようです。
従って、少量のビタミンDを外用してやると、それがきっかけとなって、増幅された効果が表皮にもたらされます。
このビタミンDの表皮への効果ですが、二つあります。
1)傷害された表皮バリア機構の修復
2)抗菌ペプチド(ディフェンシンやカテリシジン)の産生
です。
抗菌ペプチドと言うのは、これまた、最近解明されてきた話ですが、細菌などの微生物に対して抗菌作用を発揮する蛋白質の一種です。たとえばディフェンシンは、細菌の細胞膜にくっついてここに小孔を開けて破壊します。免疫グロブリンや細胞性免疫と異なり、非特異的(注:どんな微生物に対してもという意味)に働きます。
たとえば、皮膚に紫外線(UVB)が当たりますと、紫外線には、免疫抑制作用がありますが(紫外線で傷害を受けた皮膚を異物と認識した炎症が起きないようにという生体の合目的的反応です)、その一方で活性化ビタミンDが増加します。すると表皮細胞の抗菌ペプチドの産生が増えるので、結果的に紫外線による特異的免疫の抑制による易感染性を補う、といった働きをするわけです。
最近、ナローバンドUVB療法が、アトピー性皮膚炎の診療に、一般的に用いられてきていますが、ステロイド外用剤にUVB療法を併用することは、ちょうど活性型ビタミンDを少量外用するのに似た副作用防止効果が期待できるのかもしれません。UVBによってもビタミンDが増加するからです。
Sunlight, Vitamin D, and the Innate Immune Defenses of the Human Skin.. M Zasloff, J Invest Dermatol. 2005 Nov;125(5):1072-4
注)LL37はカテリシジンのことです。
さて、韓国のHong先生の表題の論文ですが、このような最近の知見を元に、ステロイド外用剤を使用した際の副作用を、少量の活性型ビタミンDの外用を併用することで、防止あるいは軽減できるのではないか?というアイデアの検証です。
マウスを用いた実験です。プロピオン酸クロベタゾール(デルモベート)を1日2回×3.5日(計7回)外用し、活性型ビタミンD(1α,25(OH)2VitaminD3)3μg/mlを、ステロイド外用20分後に追加外用した群と、そうでない群とで比較しています。
まず、表皮バリア破壊から。ステロイド外用剤による表皮バリア破壊の定量的評価にTEWL(経皮的水分喪失量)を用いることは、何回も記しているので解説略します。
注)LL37はカテリシジンのことです。
さて、韓国のHong先生の表題の論文ですが、このような最近の知見を元に、ステロイド外用剤を使用した際の副作用を、少量の活性型ビタミンDの外用を併用することで、防止あるいは軽減できるのではないか?というアイデアの検証です。
マウスを用いた実験です。プロピオン酸クロベタゾール(デルモベート)を1日2回×3.5日(計7回)外用し、活性型ビタミンD(1α,25(OH)2VitaminD3)3μg/mlを、ステロイド外用20分後に追加外用した群と、そうでない群とで比較しています。
まず、表皮バリア破壊から。ステロイド外用剤による表皮バリア破壊の定量的評価にTEWL(経皮的水分喪失量)を用いることは、何回も記しているので解説略します。
はじめに、ステロイド(またはステロイド+ビタミンD)を外用していた皮膚を、セロハンテープを貼っては剥がすというstrippingで、表皮バリアが破壊された状態にします。上図左は、この状態のTEWL(Basal TEWL)を比較したもので、両者に差はありません。次に、3時間、6時間経ってから再びTEWLを測ります(上図右)、ビタミンD(Calcitrol)を外用した群では、TEWLの回復が良いことが示されました。
次に表皮の脂質についてです。ステロイド外用剤は、角層の細胞間脂質やラメラ構造物を減少させることが知られています。
下図は、脂質合成に必要な酵素(FAS, HMG-CoA, SPT)のRNAレベルでの発現です。これも差がありました。
次に表皮の脂質についてです。ステロイド外用剤は、角層の細胞間脂質やラメラ構造物を減少させることが知られています。
下図は、脂質合成に必要な酵素(FAS, HMG-CoA, SPT)のRNAレベルでの発現です。これも差がありました。
ラメラ構造脂質は、表皮の顆粒層で産生されて、角層間に放出されますが、このラメラ構造顆粒の数も、ビタミンD外用群のほうが、多かったです。
次に、抗菌ペプチドの発現です。ステロイド外用剤には、ディフェンシンやカテリシジンといった、抗菌ぺプチドの産生をdownregulateして減少させる副作用があることがわかっています(ステロイド外用剤を使用して皮膚を一見きれいにしても、表在性感染症にはかかりやすい理由のひとつ)。
mBD3はディフェンシン、CRAMPはカテリシジンです。Caicitriol(活性型ビタミンD)併用したほう(左列)のほうが、よく発現しています(発現が強いところが茶色が濃い)。
mBD3はディフェンシン、CRAMPはカテリシジンです。Caicitriol(活性型ビタミンD)併用したほう(左列)のほうが、よく発現しています(発現が強いところが茶色が濃い)。
活性化ビタミンDの外用で、初めに記したビタミンD系のUpregulateが起きているかの確認もされています。
VDRはビタミンDレセプター、1α-Hydroxylaseは、ビタミンDを最終的に活性型にするための酵素です。(a) (b) は、Calcitriol(活性型ビタミンD)を加えない場合の、基剤のみとステロイド単独外用の比較(有意差なし)、(c) (d) は、ステロイド単独とビタミンD併用との比較です。ビタミンDを外用した場合のみ、ビタミンDレセプター、1α-HydroxylaseのmRNAが誘導されています。
以上ですが、この論文は、ステロイド外用剤にビタミンD外用を併用することの有用性を評価する過程で、結果的に、短期使用によるステロイド外用剤のもたらす問題点を整理したものにもなっています。
この論文を「ステロイド外用剤は、短期使用でも副作用が多い。やはり安易に使うべきでない。」と主張する材料にすることもできるでしょうが、それは私の意図ではありません。依存性や抵抗性というやっかいな副作用が克服できるなら、ステロイド外用剤はとても有用であるからです。そして依存性はまさに表皮バリア破壊、抵抗性は黄色ブドウ球菌の感染が関係しており、ビタミンD併用で克服できるなら本当に素晴らしいことです。
わたしは、以前にも本ブログに記しましたが、「薬というものは使わないほうがいい」といった自然回帰的な思考の持ち主では決してありません。もしそうなら、いまの仕事(美容外科)に転職などしないでしょう。美容外科は反自然の最たる仕事です。
医者になって最初の2年は内科で研修し、その後皮膚科に移りました。皮膚科のほうが「目に見える」世界を扱っていて、即物的で解りやすかったからです。美容外科はさらにわかりやすい。自分の仕事の結果が短期間で目に見えて現れます。
わたしが、皮膚科医をしていたときに、ステロイド外用剤の依存性やリバウンドといった問題点をほかの皮膚科医たちに訴えたのは、まさに、この論文の研究のような、ステロイド外用剤の副作用を克服するために皆で力を合わせよう、そのためにはまず、問題を正しく認識しよう、ということでした。また、当時はこの論文のような研究は皆無だったので、とにかく依存に陥らないためには、なるべく使わないようにしていくしか手がありませんでした。やみくもに「クスリ反対!」と叫んでいたのではありません。
しかし、日本では、そんなやっかいな副作用の話は、見て見ぬ振りをしよう、マスコミが脅したせいにしよう、という流れになってしまいました。一方お隣、韓国では、最近、先日紹介したマルチラメラエマルジョン(MLE)の論文(→こちら)もそうでしたが、副作用を克服するための工夫に皮膚科医たちが知恵を絞っているようです。
日本人として悔しいです。まさに、わたしが、昔、頭に思い描いていた理想的な展開が、韓国で始まっているように見えます。韓国の状況がうらやましいです。
できることなら、いまからでも、日本の皮膚科医たちが、この問題を正視し、克服へと皆で協力していったら良いのになあと思います。そのための基礎として、本ブログに記しているような、私を含めた「脱ステロイド医」たちが経験的に蓄積してきた、知恵や知識が活用されればと、心から願います。
Hong先生らの研究によって、いずれ韓国かどこかの製薬会社から、ビタミンD入りの副作用の少ないステロイド外用剤が発売されるのだろうなあ・・。
【追記】 この韓国の論文に出てくる「活性型ビタミンD(1α,25(OH)2VitaminD3)3μg/ml」は、日本にも相当する製剤があります。ボンアルファ軟膏(ローション)(http://www.e-pharma.jp/allHtml/2691/2691700M1053.htm)といって、濃度も2μg/gとほぼ同じです。動物実験の論文が2010年に出たばかりなので、臨床応用は時期尚早のようにも思われるかもしれませんが、ボンアルファ軟膏(ローション)自体は、古くからある乾癬治療の薬で、皮膚科医であれば使い慣れているものです。ステロイド外用中のかたは、副作用防止の意味で、試みてもいいかもしれません(少なくとも、私や私の家族がステロイド外用中であれば、併用してみます)。
問題は、入手方法と価格です。アトピー性皮膚炎に健康保険適応はありませんから(注:ビタミンDはステロイド外用剤の副作用予防になるのであって、アトピーに効くのではありません。)、自費診療になります。ところが、日本では混合診療禁止というルールがあって、同一クリニックで、ステロイド剤その他を保険診療、ボンアルファを自費診療でそれぞれ処方、ということは不可です。窮余の一策ですが、ステロイド外用剤を貰っているところとは別のクリニックで、ボンアルファ軟膏のみを自費で処方してもらうことは可能かもしれません。わたしのこのブログ記事を持って行って読んでもらって事情を説明するといいでしょう。しかし、まだ新しい考えなので、予期できない問題が生じて責任が生じては困ると、協力していただけない先生も、もちろん多いと思います。運がよければ協力してくれる先生に当たるでしょう。
価格は、さっきうちと取引のある卸さんに問い合わせたら、10g入り10本の納入価が12000円くらいなので、仕入れ6割として、販価10gが2000円くらいが相場でしょうか。全身にステロイド外用している人にとっては、やはり自費診療では、入手できたとしても、かなりきつい出費になると思います。なにか、ほかに良い方法があるといいんですけどね・・。
ナローバンドUVB療法は、アトピー性皮膚炎に保険適応があるはずですから、これを、仮にアトピーにはあまり効かないと感じても、副作用軽減の目的で受けておくのは、意味があるかもしれません。ただし、毎日というわけにはいかないだろうし、ナローバンドUVBによるステロイド外用剤副作用抑制効果についての、今回のHong先生の論文のようなデータはありませんから、逆に「気休め」になりすぎて、ステロイド過剰使用になってしまっても本末転倒ですけどね。
【追々記】 ビタミンDのサプリメントを服用することで、アトピー性皮膚炎の皮疹部の抗菌ペプチドの発現が増えた、という論文がありました。
Administration of oral vitamin D induces cathelicidin production in atopic individuals. TR Hata, J Allergy Clin Immunol. 2008 October; 122(4): 829–831.
14名のアトピー患者と14名の健常者とに、ビタミンDを4000単位21日間服用させて、皮膚を生検して確認したものです。
以上ですが、この論文は、ステロイド外用剤にビタミンD外用を併用することの有用性を評価する過程で、結果的に、短期使用によるステロイド外用剤のもたらす問題点を整理したものにもなっています。
この論文を「ステロイド外用剤は、短期使用でも副作用が多い。やはり安易に使うべきでない。」と主張する材料にすることもできるでしょうが、それは私の意図ではありません。依存性や抵抗性というやっかいな副作用が克服できるなら、ステロイド外用剤はとても有用であるからです。そして依存性はまさに表皮バリア破壊、抵抗性は黄色ブドウ球菌の感染が関係しており、ビタミンD併用で克服できるなら本当に素晴らしいことです。
わたしは、以前にも本ブログに記しましたが、「薬というものは使わないほうがいい」といった自然回帰的な思考の持ち主では決してありません。もしそうなら、いまの仕事(美容外科)に転職などしないでしょう。美容外科は反自然の最たる仕事です。
医者になって最初の2年は内科で研修し、その後皮膚科に移りました。皮膚科のほうが「目に見える」世界を扱っていて、即物的で解りやすかったからです。美容外科はさらにわかりやすい。自分の仕事の結果が短期間で目に見えて現れます。
わたしが、皮膚科医をしていたときに、ステロイド外用剤の依存性やリバウンドといった問題点をほかの皮膚科医たちに訴えたのは、まさに、この論文の研究のような、ステロイド外用剤の副作用を克服するために皆で力を合わせよう、そのためにはまず、問題を正しく認識しよう、ということでした。また、当時はこの論文のような研究は皆無だったので、とにかく依存に陥らないためには、なるべく使わないようにしていくしか手がありませんでした。やみくもに「クスリ反対!」と叫んでいたのではありません。
しかし、日本では、そんなやっかいな副作用の話は、見て見ぬ振りをしよう、マスコミが脅したせいにしよう、という流れになってしまいました。一方お隣、韓国では、最近、先日紹介したマルチラメラエマルジョン(MLE)の論文(→こちら)もそうでしたが、副作用を克服するための工夫に皮膚科医たちが知恵を絞っているようです。
日本人として悔しいです。まさに、わたしが、昔、頭に思い描いていた理想的な展開が、韓国で始まっているように見えます。韓国の状況がうらやましいです。
できることなら、いまからでも、日本の皮膚科医たちが、この問題を正視し、克服へと皆で協力していったら良いのになあと思います。そのための基礎として、本ブログに記しているような、私を含めた「脱ステロイド医」たちが経験的に蓄積してきた、知恵や知識が活用されればと、心から願います。
Hong先生らの研究によって、いずれ韓国かどこかの製薬会社から、ビタミンD入りの副作用の少ないステロイド外用剤が発売されるのだろうなあ・・。
【追記】 この韓国の論文に出てくる「活性型ビタミンD(1α,25(OH)2VitaminD3)3μg/ml」は、日本にも相当する製剤があります。ボンアルファ軟膏(ローション)(http://www.e-pharma.jp/allHtml/2691/2691700M1053.htm)といって、濃度も2μg/gとほぼ同じです。動物実験の論文が2010年に出たばかりなので、臨床応用は時期尚早のようにも思われるかもしれませんが、ボンアルファ軟膏(ローション)自体は、古くからある乾癬治療の薬で、皮膚科医であれば使い慣れているものです。ステロイド外用中のかたは、副作用防止の意味で、試みてもいいかもしれません(少なくとも、私や私の家族がステロイド外用中であれば、併用してみます)。
問題は、入手方法と価格です。アトピー性皮膚炎に健康保険適応はありませんから(注:ビタミンDはステロイド外用剤の副作用予防になるのであって、アトピーに効くのではありません。)、自費診療になります。ところが、日本では混合診療禁止というルールがあって、同一クリニックで、ステロイド剤その他を保険診療、ボンアルファを自費診療でそれぞれ処方、ということは不可です。窮余の一策ですが、ステロイド外用剤を貰っているところとは別のクリニックで、ボンアルファ軟膏のみを自費で処方してもらうことは可能かもしれません。わたしのこのブログ記事を持って行って読んでもらって事情を説明するといいでしょう。しかし、まだ新しい考えなので、予期できない問題が生じて責任が生じては困ると、協力していただけない先生も、もちろん多いと思います。運がよければ協力してくれる先生に当たるでしょう。
価格は、さっきうちと取引のある卸さんに問い合わせたら、10g入り10本の納入価が12000円くらいなので、仕入れ6割として、販価10gが2000円くらいが相場でしょうか。全身にステロイド外用している人にとっては、やはり自費診療では、入手できたとしても、かなりきつい出費になると思います。なにか、ほかに良い方法があるといいんですけどね・・。
ナローバンドUVB療法は、アトピー性皮膚炎に保険適応があるはずですから、これを、仮にアトピーにはあまり効かないと感じても、副作用軽減の目的で受けておくのは、意味があるかもしれません。ただし、毎日というわけにはいかないだろうし、ナローバンドUVBによるステロイド外用剤副作用抑制効果についての、今回のHong先生の論文のようなデータはありませんから、逆に「気休め」になりすぎて、ステロイド過剰使用になってしまっても本末転倒ですけどね。
【追々記】 ビタミンDのサプリメントを服用することで、アトピー性皮膚炎の皮疹部の抗菌ペプチドの発現が増えた、という論文がありました。
Administration of oral vitamin D induces cathelicidin production in atopic individuals. TR Hata, J Allergy Clin Immunol. 2008 October; 122(4): 829–831.
14名のアトピー患者と14名の健常者とに、ビタミンDを4000単位21日間服用させて、皮膚を生検して確認したものです。
CAMPはカテリシジンのことで、アトピー患者(AD)の皮疹部(lesional)でのみ、ビタミンD服用前後で有意差が出ています。論文中にステロイド外用剤の使用の有無は記されていませんが、無疹部(non-lesional)では差が出ていませんから、ステロイドによる副作用が改善したことを示しているのかもしれません。
成人男性のビタミンD所要量が200単位/日くらいですから、4000単位というとやや多めで、血中カルシウム濃度の定期的チェックは必要だと思われますが、通常市販されているビタミンDのサプリメントの量としては、1錠4000単位は普通であり、入手はしやすいし、価格も手が届きそうです。血中カルシウムの検査程度なら、健康保険でもカバーされるでしょう。
Hong先生のビタミンD外用剤についての検証ほどには、詰められていませんので、ぜひ、どなたかが検証して論文にしてくださると良いと思うのですが・・。
追記:ビタミンDについては、こちら(→ここ)に追加記事があります。上記のように表皮バリア保護に働きステロイドの副作用軽減に働く一方、アトピー性皮膚炎から喘息への転換(アレルギーマーチ)や、リバウンドの程度に関与している疑いもあるので、①喘息の家族歴や合併症がある場合、②リバウンドの最中には、使用しないほうが無難かもしれません。
皮膚炎以外にアレルギー素因がない、すなわち、表皮バリアが生来的に弱くて皮膚炎を起こしているようなタイプで、ステロイドと併用するとリバウンド(依存)予防に有用だろうと考えます。
2011.07.20
成人男性のビタミンD所要量が200単位/日くらいですから、4000単位というとやや多めで、血中カルシウム濃度の定期的チェックは必要だと思われますが、通常市販されているビタミンDのサプリメントの量としては、1錠4000単位は普通であり、入手はしやすいし、価格も手が届きそうです。血中カルシウムの検査程度なら、健康保険でもカバーされるでしょう。
Hong先生のビタミンD外用剤についての検証ほどには、詰められていませんので、ぜひ、どなたかが検証して論文にしてくださると良いと思うのですが・・。
追記:ビタミンDについては、こちら(→ここ)に追加記事があります。上記のように表皮バリア保護に働きステロイドの副作用軽減に働く一方、アトピー性皮膚炎から喘息への転換(アレルギーマーチ)や、リバウンドの程度に関与している疑いもあるので、①喘息の家族歴や合併症がある場合、②リバウンドの最中には、使用しないほうが無難かもしれません。
皮膚炎以外にアレルギー素因がない、すなわち、表皮バリアが生来的に弱くて皮膚炎を起こしているようなタイプで、ステロイドと併用するとリバウンド(依存)予防に有用だろうと考えます。
2011.07.20