アトピー性皮膚炎のステロイド外用剤離脱
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2010年11月25日の朝日新聞の記事

11月24日の記事はこちら

ーーーーー(ここから引用)-----
【子どものアトピー:3 増える除去食、絞れない原因】

 札幌市の女性(42)は06年7月、「食物アレルギーの名医」と口コミで評判だった市内の小児科を受診した。食事療法で次男(5)のアトピー性皮膚炎を治すつもりだった。
 実際、食べ物がアトピーを悪化させることはある。ただ、まず皮膚の炎症を抑えてからでないと、食べ物が関係しているのかどうか、判断できない。でも女性は「食事をがんばれば、きっと治る」と信じていた。  
 米と小麦の除去から始まった。オートミールやアワに加え、制限のない魚や果物を中心に次男用の食事作りに工夫を重ねた。ステロイド剤はまもなく処方されなくなった。症状は改善せず、全身の赤みが再発した。  
 07年3月、制限のないキウイを食べた次男の口が腫れ呼吸困難に陥った。食物アレルギーによるアナフィラキシーショックだった。  
  「米と小麦以外にも原因の食事があるかもしれない。もっと徹底して制限しないと」。そんな思いが強まった。自宅を念入りに掃除し始めたのもこのころだ。  5月には、別の小児科クリニックを知人に紹介された。受診すると、医師から一枚の紙を渡された。  
 アレルギーの原因と疑った卵、乳製品、エビ、タコ、貝類を食べないとの指導に加え、腸内環境を乱す砂糖や酸化した油、スナック菓子、果物も避けるように、とあった。  
  「こんなにたくさん?」。最初は驚いたが、「がまんしていればよくなる」と言い聞かせた。しかし、血液検査で反応が出た食材が次々と追加され、除去食は増え続けた。  
 指示を受けて毎食の献立に使った食材を食事日誌に記録した。アトピーの症状と関係ありそうな食べ物があればしばらく食べるのをやめ、影響がないか確認しながら、再び食べ始めるというやり方だった。  
 皮膚をどうケアすべきかについて医師の指導はなく、自由診療の別の病院から郵送される、「成分不明」の塗り薬を使った。  
 食事日誌とのにらみあいが続いた。しかし、症状は一進一退で、原因となる食材が絞り切れない。首筋や口の周りの赤み、ひじやひざのかき崩しはたびたび再発した。  
 コンニャク、マグロ、牛肉や鶏肉……。制限する食材は増える一方だった。買い物先のスーパーで突然顔がはれてから、原因物質を吸い込んだのかと思い、外出も控えた。何が原因なのか。考える気力もうせていた。
ーーーーー(ここまで引用)-----

 http://megalodon.jp/2010-1125-2355-49/www.asahi.com/health/ikiru/TKY201011250167.html

 札幌というのは、行政が、食物アレルギー対策に力を入れている街です。なぜかというと、札幌市立小学校の男子児童が1988年、給食のそばを食べてアレルギーで死亡した事故があったからです。 

 
それは、たとえば、札幌市子ども未来局作成の「保育所における食物アレルギーのある児童への対応マニュアル」(http://www.city.sapporo.jp/kodomo/kosodate/L4_01.htmlの下のほうにpdfファイルであります)を見てもわかります。他の自治体で、保育所入所にあたって、これだけ食物アレルギーに気をつかっているところは無いのではないでしょうか?おそらくこの患児の親御さんも、そういう札幌の街という環境の影響もあって、アトピー→アレルギー→食物と発想したのかなあ、と思います。  
 

 とりあえず結論から書いてしまうと、この患児は、食物アレルギーは有していたが、アトピー性皮膚炎の悪化因子としての意味は、食物には無かった、ということです。あくまでこの患者さんの場合は、ですよ。 
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 キウイを食べた次男の口が腫れ呼吸困難に陥った。食物アレルギーによるアナフィラキシーショックだった。
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これは、食物アレルギーです。 
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米と小麦の除去から始まった。オートミールやアワに加え、制限のない魚や果物を中心に次男用の食事作りに工夫を重ねた。ステロイド剤はまもなく処方されなくなった。 症状は改善せず、全身の赤みが再発した。 

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 これは、米や小麦が、この子の
アトピー性皮膚炎の悪化因子ではなかった、あるいは、仮に悪化因子であったとしても、何か他の因子の影響のほうが大きく、米や小麦は、食事対策を続けるほど大きな意味のある因子ではなかった、ことを意味しています。 

 食物アレルギーとアトピー性皮膚炎が重なることは、よくあります。食物アレルギーでも、発赤などの皮膚症状が出て、アトピーが一過性に悪化したように見えるので、混乱するかたは多いです。  

  いきなり米と小麦の除去というのは、酷だと思われる方も多いでしょう。わたしもそう感じます。たぶん、血液検査か皮膚テストで米と小麦で陽性だったのでしょうか?   

 アトピー性皮膚炎での、食物性悪化因子検索の手順としての定石は、 

1)食べると悪化するもの。

2)血液検査や皮膚テストで陽性に出たもの。

3)好きで毎日食べているもの。(毎日食べていると悪化因子であっても自覚がないことがあるので。「覆面アレルゲン」と呼ばれます)   


 の順に、除去→負荷で調べていくということなので、この子の場合、1)に該当するものがなく、2)または3)として「米・小麦」ということだったのかもしれません。このへんは、食物アレルギーの先生の考え方にもよります。 
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「米と小麦以外にも原因の食事があるかもしれない。もっと徹底して制限しないと」 

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子どもがアナフィラキシー起こして、よほど怖かったんでしょうね・・。

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5月には、別の小児科クリニックを知人に紹介された。受診すると、医師から一枚の紙を渡された。  アレルギーの原因と疑った卵、乳製品、エビ、タコ、貝類を食べないとの指導に加え、腸内環境を乱す砂糖や酸化した油、スナック菓子、果物も避けるように、とあった。  「こんなにたくさん?」。最初は驚いたが、「がまんしていればよくなる」と言い聞かせた。しかし、血液検査で反応が出た食材が次々と追加され、除去食は増え続けた。 

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 上にも書きましたが、食物アレルギーの先生にはいろんなやり方があります。最初に「こういった食材がアレルギーの原因となり得ます」という意味で、一覧の紙を渡す先生もいるでしょう。しかし、それらを全部止めなさい、という意味では通常ないと思いますが・・。そんな先生いるのかなあ?

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 腸内環境を乱す砂糖や酸化した油、スナック菓子、果物も避けるように 
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 うーん、本当にこんな、素人が適当に「アトピーってこういうのやめれば治るんじゃねーの?」って思いつきのようなことが、書いてあったんだろうか?記者が患者の親から聞いた間接情報だし、ちょっとコメント保留します。
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 血液検査で反応が出た食材が次々と追加され、除去食は増え続けた。 

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 当たり前ですが、除去―負荷試験または食事日記から、これは血液検査で陽性には出てるけど、アトピーの悪化因子としてはシロ、と判定された食材(例えば米と小麦)は、
その後は食べてもいいと指導受けるはずです。この子の場合、明らかな食事性悪化因子は見つかっていないから「増え続ける」はずはないと思うのですが。 

 2ヶ所の医院とも、小児科の先生ですから、栄養・発育はちゃんと診ていると思います。記事は、アトピー性皮膚炎の行過ぎた食事制限を批判するニュアンスのようですが、そんなにひどい診療内容であったとは、わたしには思えません。

 とにかく2ヶ所の食物アレルギーの先生のところに行って、アトピー性皮膚炎は良くなりませんでした。それは、繰り返しになりますが、この児の皮膚炎の原因と言うか要因が、食物ではなかったという、ただそれだけのことです。 
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 皮膚をどうケアすべきかについて医師の指導はなく、自由診療の別の病院から郵送される、「成分不明」の塗り薬を使った。 

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 これは、逆読みすると、「成分のはっきりした塗り薬を、皮膚をどうケアすべきか指導してくれる医師のもとで使いましょう」ってことになりますか・・。
 
 成分不明の軟膏塗るのは言語道断ですが、大人のアトピーのところでも書きましたが、皮膚科医が1FTUの塗り方を重々しくパフォーマンスしたって、治るわけじゃないですからね。
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 皮膚をどうケアすべきかについて医師の指導はなく

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 てか、1FTUのパフォーマンスじゃなくて、「ステロイド塗りすぎると依存になりますよ」っていう最低限の指導
してくれよ。  


 昨日、成育医療センターの先生が登場するのかなあ、と書きましたが、考えてみれば、舞台は札幌ですね。すると、札幌の「標準治療」の先生が登場するんでしょうか?

 食事性悪化因子の検索っていうのは、診断と治療が、一体になっているわけです。やってみなければ、シロともクロともいえないし、やってみるのは、それ相応に労力・負担がかかります(注:血液検査は手がかりに過ぎない。除去と負荷で確認されるまでは確定しない。)が。 やってみて外れたら、今回の記事みたいに、悪者扱いされちゃうわけです。  わたし、食物アレルギー系の先生と、親しいわけでは決して無いんですが、ちょっと可哀想に感じます。まあ、これくらいじゃ、彼ら彼女ら、こたえないでしょうけどね。芯の通ったひとたち多いから。   

 どうも記者の林義則さんの頭の中には、厳格食で育てられて栄養失調になったアレルギー児の話とかが刷り込まれていて、「徹底的な食事指導は悪」という先入観があるんじゃないかという気がします。このケースがそういう問題となるかは、実際に患児が栄養失調や発育遅滞に陥ったか?によります。小児科の先生がやっている食事性悪化因子検索で、それが徹底的でステロイドを用いないから悪、食事性因子が見つからなくて結果的に親御さんが大変なだけだったから悪、とは言えません。
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食事日誌とのにらみあいが続いた。しかし、症状は一進一退で、原因となる食材が絞り切れない。首筋や口の周りの赤み、ひじやひざのかき崩しはたびたび再発した。
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この子の場合は、食事じゃなくて違う悪化因子に左右されているのでしょう。症状の一進一退っていうのは、何か原因があるはずです。
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 買い物先のスーパーで突然顔がはれてから、原因物質を吸い込んだのかと思い、外出も控えた。何が原因なのか。考える気力もうせていた。  

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 そんなこと言わずに、考えてください
。親なのだから。 疲弊せず、そして、子どもの前では明るく強く振舞って下さい。 

 こういうエピソードの一つ一つがヒントですから、少なくとも記録しておくといいです。あとで振り返って気がつくかもしれません。 

  医者に丸投げして、「信頼できる」お医者さんに軟膏の塗り方を手取り足取り教えてもらうでは解決しないです。ステロイドを塗れば、すべてが解決したかのように見えますが、それは一時しのぎです。 

 たしかに、悪化因子探しっていうのは、むつかしいし、判ったとしても対策取りつらいこともあります。5月に悪化するアトピー児の原因が、大好きなペットの猫の抜け毛らしいと判ったときとか。 

 しかし、これは、ちょうどコンピューターのプログラムのバグのようなもので、肝心のそこのとこ一箇所修正すればうまく働くものを、そこに気がつかなくて、ほかのあらゆるところをチェックして何も効果が出ないから、プログラムのバグ探しなんて意味がない、って言ってるみたいなところがあります。 

 プログラムとの違いは、アトピーの場合、原因わからなくても、年単位で自然治癒に向かう傾向があるってことですが。 

 しかし、たとえ難しくても、バグ探し放棄して、ステロイドで抑えれば、依存・リバウンドへの道にもつながってますからね。 

 疲弊しすぎないように自己管理しながら、冷静に親としての知恵でもって、子供を観察し続けてください。 

 結局のところ、医者はあなたの子供の親じゃないです。医者の知識や経験を活用して、生活環境からその子の悪化要因を見つけて排除してあげられるのは、あなたしかいないんです。 

 そういう意味で、医者を頼ってはいけません。 

  信頼できるお医者さんのところに通って、すべての判断を任せて言うことを聞いていても、アトピーの場合はうまくいくとは限りません。お医者さんはあなたの子供がどんな家に住んでどんな暮らし方してるのかさえ知らないでしょう?  

 そこが、ほかの病気とは異なるところです。ほかの多くの病気は薬物療法や手術が主ですから、お医者さんの指示が絶対でお医者さんまかせでいいんですけどね。

2010.11.25
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