5%デクスパンテノール外用剤は1%ヒドロコーチゾン軟膏と同等の効果がある
Comparative trial of 5% dexpanthenol in water-in-oil formulation with 1% hydrocortisone ointment in the treatment of childhood atopic dermatitis: a pilot study.
Udompataikul M et. al. J Drugs Dermatol. 2012 Mar;11(3):366-74.
デクスパンテノールは別名パンテノール、プロビタミンB5といい、化粧品成分やサプリメントとして用いられているものです。
これを5%の外用剤にして、アトピー性皮膚炎の小児に、弱いステロイド外用剤である1%ハイドロコーチゾン軟膏と左右塗り分けで比較したところ、左右差を認めなかった、すなわち、「5%デクスパンテノール外用剤は1%ヒドロコーチゾン軟膏と同等の効果がある」と結論付けた、タイ発の論文です。
Udompataikul M et. al. J Drugs Dermatol. 2012 Mar;11(3):366-74.
デクスパンテノールは別名パンテノール、プロビタミンB5といい、化粧品成分やサプリメントとして用いられているものです。
これを5%の外用剤にして、アトピー性皮膚炎の小児に、弱いステロイド外用剤である1%ハイドロコーチゾン軟膏と左右塗り分けで比較したところ、左右差を認めなかった、すなわち、「5%デクスパンテノール外用剤は1%ヒドロコーチゾン軟膏と同等の効果がある」と結論付けた、タイ発の論文です。
上段は5%デクスパンテノール、下段は1%ハイドロコーチゾン軟膏です。
研究手法が左右塗り分けであり、アトピー性皮膚炎というのは、左右の片方がよくなると反対側も影響を受ける傾向があることは、臨床的に経験するので、その意味で厳密とはいえないような気もしますが、デクスパンテノールは、皮膚のTEWLを改善したり、繊維芽細胞に作用して創傷治癒を早めたりということが、別のいくつもの論文で確認されているので、まあ、信用していいデータ(情報)かな?と思います。
試験には5%デクスパンテノールを含むBepanthenというバイエル薬品の製品が使われています。
研究手法が左右塗り分けであり、アトピー性皮膚炎というのは、左右の片方がよくなると反対側も影響を受ける傾向があることは、臨床的に経験するので、その意味で厳密とはいえないような気もしますが、デクスパンテノールは、皮膚のTEWLを改善したり、繊維芽細胞に作用して創傷治癒を早めたりということが、別のいくつもの論文で確認されているので、まあ、信用していいデータ(情報)かな?と思います。
試験には5%デクスパンテノールを含むBepanthenというバイエル薬品の製品が使われています。
バイエル薬品のHPは→こちら
赤ちゃんのおむつかぶれなどに有効ということのようです。
これ、日本では、海外からの個人輸入では入手可能ですが、一般に市販はできません。なぜかというと、デクスパンテノールは医薬品として「パントテン酸欠乏症の予防および治療」の効能効果で認可されているために、化粧品成分としては規制がかかっているからです。
これ、日本では、海外からの個人輸入では入手可能ですが、一般に市販はできません。なぜかというと、デクスパンテノールは医薬品として「パントテン酸欠乏症の予防および治療」の効能効果で認可されているために、化粧品成分としては規制がかかっているからです。
医薬品として認可された成分は、これを注射から外用に適応を変えて製剤化するにも、安全性試験など、多額の費用がかかります。一方、効能効果をうたわず、化粧品として流通させるなら、企業の費用は少なくて済みます。しかし、すでに医薬品として認可された成分は、薬事法上、原則、化粧品の成分として用いることが出来ません。
例外として、薬事法の条文が出来る以前から使用されていた成分については、ひき続き一定の含有量において使用が認められています。デクスパンテノール(D-パントテニルアルコール)は、そのひとつです(「化粧品に配合可能な医薬品の成分について」→こちら)
100g中3g(3%)までは使用可能ですが、5%のBepanthenは、これを超えるので、日本で販売は不可です。
バイエル薬品が、日本向けに3%の製剤を作ってくれれば、よいのですが、そうするかしないかは、企業判断なので、いかんともしがたいです。
一方、「手作り化粧品」としては、デクスパンテノールは数百円でネット通販で買えますから、これを購入して自己責任(といってもリスクはほとんどないです。日本で3%の規制があるのは、それを超える濃度で問題が生じたからではなく、それ以前の製品に3%を超えるものがなかったからというだけの理由でしょうから)で、5%の外用剤を作って、自分で用いることは可能です。デクスパンテノール(D-パントテニルアルコール)の通販サイトは、たとえば→こちら。
または、Bepanthenを海外個人輸入することもできます(たとえば→こちら)。
もし、あなたがお医者さんであれば、上記のパントール注射薬を問屋から取り寄せて、自分であるいは調剤薬局にお願いして軟膏に練って、自費診療で処方することもできるでしょう。
お医者さんでも、患者本人(あるいは親)でも、このようにステロイド外用剤を極力使わず、科学的にそれと同等の対症療法(外用剤)を探して用いることは、可能なわけです。なぜそれがなされないかというと、「ステロイド外用剤には依存性がない」という、臨床的事実とは異なった見解が、いまだに続いているからです。
ステロイド外用剤の依存性という臨床的事実を素直に認めて、なるべくこれに頼らないような方策を探ることが、こういったalternativeな外用剤に、患者も医者も取り組む動機となります。そうでなければ、今回紹介したタイの論文にしたって、「5%デクスパンテノール外用剤は1%ヒドロコーチゾン軟膏と同等の効果がある、それなら、1%ヒドロコーチゾン軟膏を使えばいいじゃん」で終わってしまいますからね。
たぶん、歴史的にも、非常に多くの物質が、皮膚炎における抗炎症効果が確認され、しかし「ステロイド外用剤より弱いあるいは同等ですね。それなら、費用をかけて開発する意味も市場性もないですね。」で、頓挫してきているのでしょう。
「厚労省は、デクスパンテノールの化粧品での含有量を3%と決めて安全性を確保している。それなのに5%の海外製品や自作を勧めるのはけしからん。日本皮膚科学会のガイドラインでステロイド外用剤に依存性は認められていないのだから、乳幼児は弱いステロイド外用剤で湿疹を抑えればいい。」という意見は、科学的と言えるだろうか?わたしは、そうは感じません。
こういった意見は、単に世の中には誰かが決めたルールがあり、人はルールに従うべきだといっているだけのことであって、そのルールの根拠を深く考えてはいません。それでも、それで全てがうまく行っているなら、とくに疑問を抱く必要もないのですが、問題は、ステロイド外用剤依存例というのは現実に存在する、という事実です。現行のルールではうまく行っていないということです。 その場合はルールがおかしいのであって、修正が必要です。
具体的には、ステロイド外用剤の依存性を認めて、5%デクスパンテノール含有のスキンケア製品の日本での市販を認めればいいだけのことですが、たったそれだけのことが、なかなかままならないんですよね。
※1%ヒドロコーチゾン外用剤は日本にはありませんが米国のステロイドのランクでいうと「Class7 Least Potent」一番弱いものに当たります。
※「デクスパンテノール外用剤に依存性などの副作用は無いのか?」という質問がありましたが、それは私にはわかりません。しかし、5%外用剤がおむつかぶれの市販薬として市場に出てかなり経っており、消費者側から問題提起の声も上がっていないようですから、よほど大丈夫と考えてよいと思います。以前にも記しましたが、そもそも依存性を起こす薬剤というのは、そんなに滅多には無いので。
2012.12.16
例外として、薬事法の条文が出来る以前から使用されていた成分については、ひき続き一定の含有量において使用が認められています。デクスパンテノール(D-パントテニルアルコール)は、そのひとつです(「化粧品に配合可能な医薬品の成分について」→こちら)
100g中3g(3%)までは使用可能ですが、5%のBepanthenは、これを超えるので、日本で販売は不可です。
バイエル薬品が、日本向けに3%の製剤を作ってくれれば、よいのですが、そうするかしないかは、企業判断なので、いかんともしがたいです。
一方、「手作り化粧品」としては、デクスパンテノールは数百円でネット通販で買えますから、これを購入して自己責任(といってもリスクはほとんどないです。日本で3%の規制があるのは、それを超える濃度で問題が生じたからではなく、それ以前の製品に3%を超えるものがなかったからというだけの理由でしょうから)で、5%の外用剤を作って、自分で用いることは可能です。デクスパンテノール(D-パントテニルアルコール)の通販サイトは、たとえば→こちら。
または、Bepanthenを海外個人輸入することもできます(たとえば→こちら)。
もし、あなたがお医者さんであれば、上記のパントール注射薬を問屋から取り寄せて、自分であるいは調剤薬局にお願いして軟膏に練って、自費診療で処方することもできるでしょう。
お医者さんでも、患者本人(あるいは親)でも、このようにステロイド外用剤を極力使わず、科学的にそれと同等の対症療法(外用剤)を探して用いることは、可能なわけです。なぜそれがなされないかというと、「ステロイド外用剤には依存性がない」という、臨床的事実とは異なった見解が、いまだに続いているからです。
ステロイド外用剤の依存性という臨床的事実を素直に認めて、なるべくこれに頼らないような方策を探ることが、こういったalternativeな外用剤に、患者も医者も取り組む動機となります。そうでなければ、今回紹介したタイの論文にしたって、「5%デクスパンテノール外用剤は1%ヒドロコーチゾン軟膏と同等の効果がある、それなら、1%ヒドロコーチゾン軟膏を使えばいいじゃん」で終わってしまいますからね。
たぶん、歴史的にも、非常に多くの物質が、皮膚炎における抗炎症効果が確認され、しかし「ステロイド外用剤より弱いあるいは同等ですね。それなら、費用をかけて開発する意味も市場性もないですね。」で、頓挫してきているのでしょう。
「厚労省は、デクスパンテノールの化粧品での含有量を3%と決めて安全性を確保している。それなのに5%の海外製品や自作を勧めるのはけしからん。日本皮膚科学会のガイドラインでステロイド外用剤に依存性は認められていないのだから、乳幼児は弱いステロイド外用剤で湿疹を抑えればいい。」という意見は、科学的と言えるだろうか?わたしは、そうは感じません。
こういった意見は、単に世の中には誰かが決めたルールがあり、人はルールに従うべきだといっているだけのことであって、そのルールの根拠を深く考えてはいません。それでも、それで全てがうまく行っているなら、とくに疑問を抱く必要もないのですが、問題は、ステロイド外用剤依存例というのは現実に存在する、という事実です。現行のルールではうまく行っていないということです。 その場合はルールがおかしいのであって、修正が必要です。
具体的には、ステロイド外用剤の依存性を認めて、5%デクスパンテノール含有のスキンケア製品の日本での市販を認めればいいだけのことですが、たったそれだけのことが、なかなかままならないんですよね。
※1%ヒドロコーチゾン外用剤は日本にはありませんが米国のステロイドのランクでいうと「Class7 Least Potent」一番弱いものに当たります。
※「デクスパンテノール外用剤に依存性などの副作用は無いのか?」という質問がありましたが、それは私にはわかりません。しかし、5%外用剤がおむつかぶれの市販薬として市場に出てかなり経っており、消費者側から問題提起の声も上がっていないようですから、よほど大丈夫と考えてよいと思います。以前にも記しましたが、そもそも依存性を起こす薬剤というのは、そんなに滅多には無いので。
2012.12.16