1991年の台湾での脱ステロイド研究
http://www.med.ncku.edu.tw/derm/eng5.php
National Cheng Kung University(國立成功大學)皮膚科の許漢銘(Sheu Hamm-Ming)医師(現在も現役の教授のようです)
この方が、1991年にステロイド外用剤長期連用の皮膚への影響について、2つの論文を書いていました。
Modulation of epidermal terminal differentiation in patients after long-term topical corticosteroids.(1991)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/1761793
Alterations in water content of the stratum corneum following long-term topical corticosteroids. (1991)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/1681017
Pubmedでこの先生の名前で検索すると95の論文がヒットし、その多くはアトピーやステロイド外用剤以外の皮膚科学研究に関するものです。したがって上記2論文は、許先生が若い頃の研究テーマであったのでしょう。
対象となった患者は下表の通りです。GroupAはステロイド中止に当たってリバウンド現象を起こした患者、GroupBは起こさなかった患者です。
この方が、1991年にステロイド外用剤長期連用の皮膚への影響について、2つの論文を書いていました。
Modulation of epidermal terminal differentiation in patients after long-term topical corticosteroids.(1991)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/1761793
Alterations in water content of the stratum corneum following long-term topical corticosteroids. (1991)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/1681017
Pubmedでこの先生の名前で検索すると95の論文がヒットし、その多くはアトピーやステロイド外用剤以外の皮膚科学研究に関するものです。したがって上記2論文は、許先生が若い頃の研究テーマであったのでしょう。
対象となった患者は下表の通りです。GroupAはステロイド中止に当たってリバウンド現象を起こした患者、GroupBは起こさなかった患者です。
部位は圧倒的に顔面が多いのですが、腕や足も1例づつみられます。
それぞれについて、皮膚の生検を行い、組織学的に比較したところ、GroupAでは顆粒層の消失など不全角化が著明で、GroupBではそれほどでもなかった、という結果でした。
これは、先回、私が気が付いてブログ記事にしたのと全く同じ内容です。
それぞれについて、皮膚の生検を行い、組織学的に比較したところ、GroupAでは顆粒層の消失など不全角化が著明で、GroupBではそれほどでもなかった、という結果でした。
これは、先回、私が気が付いてブログ記事にしたのと全く同じ内容です。
許先生は、このほかに、角質細胞間脂質やプロフィラグリン/フィラグリン、インボルクリンなどを染色して、いずれも健常者>GroupB>GroupAのように低下していることを示しています。
すなわち、ステロイド外用によって、表皮の顆粒細胞以降への分化が妨げられ、その程度が限界を超えると、リバウンドを起こすに至る、という解釈です。
許先生が1999年に中国語の皮膚科雑誌にまとめた論文
(皮質類固醇外用劑之副作用(2)--戒斷皮膚炎及臨床上治療之經驗=Side Effects of Topical Corticosteroids(Ⅱ)--Withdrawal Dermatitis and Its Management 許漢銘 ; 李玉雲 ; 蔡瑞真 中華皮膚科醫學雜誌17:4 民88.12 頁300-315)
に、許先生のイメージするステロイド依存のメカニズムを記した図がありました。台湾では離脱皮膚炎を「戒断皮膚炎」、リバウンドを「反弾現象」というみたいですね。大陸側の中国では「反跳現象」と記されるようなので、用語が少し異なるみたいです。
許先生が1999年に中国語の皮膚科雑誌にまとめた論文
(皮質類固醇外用劑之副作用(2)--戒斷皮膚炎及臨床上治療之經驗=Side Effects of Topical Corticosteroids(Ⅱ)--Withdrawal Dermatitis and Its Management 許漢銘 ; 李玉雲 ; 蔡瑞真 中華皮膚科醫學雜誌17:4 民88.12 頁300-315)
に、許先生のイメージするステロイド依存のメカニズムを記した図がありました。台湾では離脱皮膚炎を「戒断皮膚炎」、リバウンドを「反弾現象」というみたいですね。大陸側の中国では「反跳現象」と記されるようなので、用語が少し異なるみたいです。
先回のブログ記事を書いたときには、「依存患者では、重度では表皮細胞のステロイド産生そのものが部分的に消失するようだが、軽度~中程度では、不全角化がそのサインのようだ。しかし、結論を急ぐ前にもっと症例を集めて確認しなければならないな。」と考えたのですが、許先生がすでに論文を書いてくれていたので、次のステップに進めます。次のステップと言うのは、「どうしたらこの不全角化を改善できるか?防止できるか?」です。
これは実は答えは出ています。
過去記事(→こちら)を読み返して頂きたいのですが、PPARαリガンドであるクロフィブラート(clofibrate)をステロイドとともに外用すると、ステロイドによって低下したフィラグリンやインボルクリンが回復しています。
クロフィブラート軟膏の試用試験の結果の印象は、「この軟膏は効く人と効かない人がいる」でした。その理由として、「クロフィブラートはTSLPが関与する表皮性の炎症には有効だが、免疫すなわちリンパ球に作用して抑える力はないからだろう」、と考えていたのですが、今回の視点からは、「クロフィブラートが有効なのは、不全角化の強い人で、これを改善することによるのかもしれない」という見方が加わりました。
まるでクロフィブラートの宣伝をしているようですが、決してその意図ではなく、フィラグリンの低下や不全角化を改善するにはどうしたらいいのだろう?と考えて、自ずから導かれた結論です。フィラグリンを増加させる方法(外用剤)はほかにもありますし(→こちら)、クロフィブラートがベストであると決まったわけではありません。
また、以前私が試作した分子量200万付近のヒアルロン酸化粧水にも、フィラグリンを増やす効果があります(→こちら)し、現在販売中の中間分子量ヒアルロン酸化粧水にもその作用が確認されています(→こちら)。
しかしながら、許先生が報告したような顔面の紅斑に対して、クロフィブラート軟膏やヒアルロン酸、あるいはローズマリー油などは、おそらくは外用しようとしても、このような患者たちの皮膚はいかなる外用をも刺激に感じてしまうため、続けられないことが多いと思います。実際、中間分子量ヒアルロン酸化粧水の使用アンケートにおいても、顔の酒さ様皮膚炎に対しては評価が低かったです(→こちら)。
しかし、刺激感をクリアすれば、これらの外用自体は、有効に働いてくれるはずです。その補助手段として、ステロイドの全身投与(内服や注射など)を一時的に用いるというアイデアも可能です(→こちら)。
もちろん、一切何もつけずに時間の経過による回復を待つ、というのも選択肢の一つです。前から繰り返し記していることですが、これら選択肢から何を選ぶかは、まったく本人次第であるわけです。
引き続き、皮膚のコルチゾール染色にご協力いただける、長期ステロイド外用中の方、もしくは離脱して間もない方を募集しています。TEL052-264-0213までお願いします。お礼にクロフィブラート軟膏(30gくらい小さなもの)および中間分子量ヒアルロン酸化粧水30mlを差し上げています。よろしくお願いいたします。
(2015.8.28記)
これは実は答えは出ています。
過去記事(→こちら)を読み返して頂きたいのですが、PPARαリガンドであるクロフィブラート(clofibrate)をステロイドとともに外用すると、ステロイドによって低下したフィラグリンやインボルクリンが回復しています。
クロフィブラート軟膏の試用試験の結果の印象は、「この軟膏は効く人と効かない人がいる」でした。その理由として、「クロフィブラートはTSLPが関与する表皮性の炎症には有効だが、免疫すなわちリンパ球に作用して抑える力はないからだろう」、と考えていたのですが、今回の視点からは、「クロフィブラートが有効なのは、不全角化の強い人で、これを改善することによるのかもしれない」という見方が加わりました。
まるでクロフィブラートの宣伝をしているようですが、決してその意図ではなく、フィラグリンの低下や不全角化を改善するにはどうしたらいいのだろう?と考えて、自ずから導かれた結論です。フィラグリンを増加させる方法(外用剤)はほかにもありますし(→こちら)、クロフィブラートがベストであると決まったわけではありません。
また、以前私が試作した分子量200万付近のヒアルロン酸化粧水にも、フィラグリンを増やす効果があります(→こちら)し、現在販売中の中間分子量ヒアルロン酸化粧水にもその作用が確認されています(→こちら)。
しかしながら、許先生が報告したような顔面の紅斑に対して、クロフィブラート軟膏やヒアルロン酸、あるいはローズマリー油などは、おそらくは外用しようとしても、このような患者たちの皮膚はいかなる外用をも刺激に感じてしまうため、続けられないことが多いと思います。実際、中間分子量ヒアルロン酸化粧水の使用アンケートにおいても、顔の酒さ様皮膚炎に対しては評価が低かったです(→こちら)。
しかし、刺激感をクリアすれば、これらの外用自体は、有効に働いてくれるはずです。その補助手段として、ステロイドの全身投与(内服や注射など)を一時的に用いるというアイデアも可能です(→こちら)。
もちろん、一切何もつけずに時間の経過による回復を待つ、というのも選択肢の一つです。前から繰り返し記していることですが、これら選択肢から何を選ぶかは、まったく本人次第であるわけです。
引き続き、皮膚のコルチゾール染色にご協力いただける、長期ステロイド外用中の方、もしくは離脱して間もない方を募集しています。TEL052-264-0213までお願いします。お礼にクロフィブラート軟膏(30gくらい小さなもの)および中間分子量ヒアルロン酸化粧水30mlを差し上げています。よろしくお願いいたします。
(2015.8.28記)