アトピー性皮膚炎の乳幼児の脱水症について
アトピー性皮膚炎の患児は、皮膚からの浸出液や不感蒸泄(水分の蒸発)、食物アレルギーなどが関係した下痢のために、脱水に陥りやすい傾向がありそうです。
一方、アトピー性皮膚炎の治療方法のなかには、1)飲水制限(いわゆる「脱保湿」の一環として、飲水量を少なくすることで、皮膚の浸出液をも少なくして、皮表のミクロ環境の湿潤度を下げ、皮膚を乾燥した外界に慣らして皮膚自体が本来持つ保湿・耐乾燥能力を高めていく(→こちら))や、2)食物アレルギー対策、など、脱水に陥る危険を内包したものがあります。
非アトピーの乳児でも、ウイルス性の下痢をきっかけに脱水に陥ることがあります。アトピーの乳児は、非アトピーの乳児よりも脱水に対する用心が必要です。
また、アトピーを治そうとするあまり、患児が脱水におちいってしまったのでは、元も子もありません。本末転倒です。
成人では、脱水気味になってふらふらしてくれば、これはさすがにおかしい、ということで自己調節可能ですが、乳幼児はそうはいきません。お母さんや保護者の方が、患児の状態をよく観察して気をつける必要があります。また、脱水になってしまったときには、すみやかに治療を受けなければなりません。 脱水の治療は、アトピーの治療やステロイド使用の是非に優先します。
仮に、受診先の小児科の先生が、依存や忌避に関する理解や知識が乏しく、「ステロイドの外用は必要だ」という意見であったならば、一時的にはそれに従ってください。全身状態が落ち着いてから、また、ステロイドの減量・離脱に努めればよいです。一時的にステロイドを外用したからといって、それまでの努力が元の木阿弥になってしまうわけではありませんし、一時的にステロイドを使用したからといって、即、依存になってしまうわけでもありません。
以前にも記しましたが、脱水や感染症の治療をステロイド外用を行わずにすることは十分可能です。皮膚からの浸出液(水分)の喪失は、適切な輸液で補えるからです。しかし、乳児が脱水に陥ってしまった場合に、脱ステロイドにこだわって治療を遅らせることは、益よりも害のほうが大きいです。目の前の担当の先生に頭を下げて、まずは危機から脱出してください。
ここでは、乳幼児の脱水の症状や兆候、治療についてまとめてみます。患児を持つ親御さんや、また、脱ステロイドの診療に携わる小児科以外の先生がたの参考になろうかと思います。
軽度の症状
1. 頻回に水分を欲しがる。
2. 機嫌がわるい。
3. 興奮気味。
重症の症状
1. 目が落ちくぼんでいる。大泉門が陥凹している。
2. 泣いているのに涙が出ない。唇が乾いている
3. ぐったりして動けない。
4. おしっこがほとんどでない(とても少ない)。
5. 意識が薄まって、うつらうつらしている。
通常は、以上に加えて皮膚の乾燥やツルゴール(張り)の低下が挙げられますが、アトピー児の場合は皮膚の状態からは脱水を判断しにくいです。
大泉門というのは、頭頂部にある骨がまだ出来上がっていない柔らかい部分です。
一方、アトピー性皮膚炎の治療方法のなかには、1)飲水制限(いわゆる「脱保湿」の一環として、飲水量を少なくすることで、皮膚の浸出液をも少なくして、皮表のミクロ環境の湿潤度を下げ、皮膚を乾燥した外界に慣らして皮膚自体が本来持つ保湿・耐乾燥能力を高めていく(→こちら))や、2)食物アレルギー対策、など、脱水に陥る危険を内包したものがあります。
非アトピーの乳児でも、ウイルス性の下痢をきっかけに脱水に陥ることがあります。アトピーの乳児は、非アトピーの乳児よりも脱水に対する用心が必要です。
また、アトピーを治そうとするあまり、患児が脱水におちいってしまったのでは、元も子もありません。本末転倒です。
成人では、脱水気味になってふらふらしてくれば、これはさすがにおかしい、ということで自己調節可能ですが、乳幼児はそうはいきません。お母さんや保護者の方が、患児の状態をよく観察して気をつける必要があります。また、脱水になってしまったときには、すみやかに治療を受けなければなりません。 脱水の治療は、アトピーの治療やステロイド使用の是非に優先します。
仮に、受診先の小児科の先生が、依存や忌避に関する理解や知識が乏しく、「ステロイドの外用は必要だ」という意見であったならば、一時的にはそれに従ってください。全身状態が落ち着いてから、また、ステロイドの減量・離脱に努めればよいです。一時的にステロイドを外用したからといって、それまでの努力が元の木阿弥になってしまうわけではありませんし、一時的にステロイドを使用したからといって、即、依存になってしまうわけでもありません。
以前にも記しましたが、脱水や感染症の治療をステロイド外用を行わずにすることは十分可能です。皮膚からの浸出液(水分)の喪失は、適切な輸液で補えるからです。しかし、乳児が脱水に陥ってしまった場合に、脱ステロイドにこだわって治療を遅らせることは、益よりも害のほうが大きいです。目の前の担当の先生に頭を下げて、まずは危機から脱出してください。
ここでは、乳幼児の脱水の症状や兆候、治療についてまとめてみます。患児を持つ親御さんや、また、脱ステロイドの診療に携わる小児科以外の先生がたの参考になろうかと思います。
軽度の症状
1. 頻回に水分を欲しがる。
2. 機嫌がわるい。
3. 興奮気味。
重症の症状
1. 目が落ちくぼんでいる。大泉門が陥凹している。
2. 泣いているのに涙が出ない。唇が乾いている
3. ぐったりして動けない。
4. おしっこがほとんどでない(とても少ない)。
5. 意識が薄まって、うつらうつらしている。
通常は、以上に加えて皮膚の乾燥やツルゴール(張り)の低下が挙げられますが、アトピー児の場合は皮膚の状態からは脱水を判断しにくいです。
大泉門というのは、頭頂部にある骨がまだ出来上がっていない柔らかい部分です。
脈拍・呼吸にも変化があらわれます。脈は速くなり、脱水が重度になると脈圧が減少して弱くなります。呼吸は、「呼吸努力を伴わない頻呼吸」と表現されますが、胸の筋肉を使った息苦しそうな頻呼吸ではなく、ただ、回数が増えます。
乳児の脈拍数・呼吸数は成人よりも多いです。だいたいの目安は、 脈拍は80~180回/分、呼吸数は30~60回/分が正常です。ふだんからお子さんの脈拍を確認していると良いと思います。
乳児の脈拍は、上腕または大腿で確認します。
乳児の脈拍数・呼吸数は成人よりも多いです。だいたいの目安は、 脈拍は80~180回/分、呼吸数は30~60回/分が正常です。ふだんからお子さんの脈拍を確認していると良いと思います。
乳児の脈拍は、上腕または大腿で確認します。
脱水が疑われて、脈拍が確認しにくい場合には、お医者さんはCapillary refilling time(毛細血管再充満時間)によって、緊急性(ショック)の有無を確認します。皮膚を指で押し当ててから離し、白くなった皮膚が何秒で血色を回復するか?を見るもので、2秒以内であれば正常です(正常というのは、ショックにはまだ陥っていないという意味で、脱水を否定するものではありません)。YouTubeに動画がありますので、ご覧ください(→こちら)。
治療は、輸液(ボーラス投与といって、注射器で一度に押し込むように注射するか、点滴投与)です。内容は生理食塩水などで、脱水の治療でここにステロイドが加わることはありません。
血管内に投与しなければならないため、血管探しが必要となりますが、小児科の先生や看護師さんは乳児の点滴に慣れているので、うまく見つけてくれることが多いです。しかし、うまく見つからない・点滴がとれない場合には、最近では骨髄内輸液という方法がとられます。
治療は、輸液(ボーラス投与といって、注射器で一度に押し込むように注射するか、点滴投与)です。内容は生理食塩水などで、脱水の治療でここにステロイドが加わることはありません。
血管内に投与しなければならないため、血管探しが必要となりますが、小児科の先生や看護師さんは乳児の点滴に慣れているので、うまく見つけてくれることが多いです。しかし、うまく見つからない・点滴がとれない場合には、最近では骨髄内輸液という方法がとられます。
骨髄に針を刺すというと大変そうに聞こえるかもしれませんが、骨髄のスペースは大きく確実に輸液路が確保できるので(骨髄と血管はつながっているので、骨髄からの補液は血管内へ移行します)、緊急性が高く皮下の血管が取りにくい場合には、普通に行われる処置です。「皮下で点滴が取りにくいので骨髄から取ります」と告げられたときには、「ああ、この先生は緊急事態に対処できるスキルをもった、頼りになる先生なんだ。」と判断していいです。
治療は、生理的食塩水など等張晶質液の20mL/kgのボーラス投与で始まります。
小児の脱水は、体重の4%から症状が現れますから、20mL/kgすなわち体重の2%では不足です。しかし、脱水の不足分をいちどに投与することは、脱水に耐えていた体のバランスを崩してしまう危険があり、一回目のボーラス投与のあと、再びボーラスを追加するか、あるいは残りの不足分を24時間くらいの時間をかけてゆっくり補うかは、ボーラス投与後の患児の反応によります。ケースバイケースなので、お医者さんの判断にゆだねてください。
多くの場合、24時間~48時間ほどで危機を脱して循環が安定したころに、あなたは今回の担当の小児科の先生に呼ばれて、「お母さん、こんな風にお子さんが脱水に陥ってしまったのは、日ごろからステロイド外用をして、浸出液や皮膚からの不感蒸泄を抑えてやることの大切さを軽視していたからです。脱ステロイドなどといった非科学的なものを信じるのはやめたらいかがでしょうか?」と、説得されるかもしれません。わが子を脱水という危機に陥らせてしまい、自信をなくしてしまったあなたは、大きく心が動くことでしょう。
最初に記しました通り、アトピー性皮膚炎の乳幼児は脱水に陥りやすい傾向がありそうです。そして脱ステロイド(というより乳幼児はステロイド依存に陥っていないことが多いので厳密には「ステロイド忌避」ですが(→こちら))の手法には、さらにこのリスクを高めるものがあります。しかし、それは「脱水」という事態をよく把握し、リスク回避に気をつけながらであれば、避けられるものです。
ご両親、とくに母親は賢明でなければなりません。なぜなら、仮に脱ステロイド系の先生のもとに通って定期的に診てもらっていたとしても、毎日お子さんの様子を見て、水分や栄養の摂取に気をつけていることができるのは、お母さんだけだからです。脱水は、健康な赤ちゃんでも、ウイルス性の下痢が続いて元気がなくなり水分補給が不足すれば、起こることです。アトピー性皮膚炎や脱ステロイド(またはステロイド忌避)は、脱水の素因ではありますが、直接のきっかけではありえません。もしそうなら、アトピーでステロイド忌避の子はすべて脱水に陥っていることでしょう。
1) 脱水に陥らないように、適度な水分補給には気をつける、これが一番大切。
2) 脱水の兆候が出てしまったら、迷わず、輸液をしてくれる小児科を受診して指示に従うこと。脱水の治療はアトピー治療に優先します。
3) 状態が落ち着いてから、再び脱ステロイド(ステロイド忌避)の方針でいくかどうかは、冷静に、さまざまな情報を吟味した上で、自己決定すること。未来への確実な路など、誰にもわかりません。もちろん私にもわからない。
私にはっきり言えることは、私の子供がアトピーだったら、たとえ脱水で大変な思いをしたあとであっても、私は子供にステロイドを外用しません。依存に陥ってしまった患者の離脱の辛さ・苦しさを知っているから。
しかし、これは、1)わたしが医者で、脱水に陥らないように気をつけることができる、あるいは早期発見して自らそれに対処することができる、2)脱ステロイドの外来をやっていた関係で、ステロイドを使いながら自然治癒する患者よりもはるかに多くの依存患者を目の当たりにしてきた、という条件のもとでの自己判断です。だから、あなたやあなたを取り巻く環境において、あなたがどう判断するのがベストな結果に導けるのか?は、私にはわかりません。ステロイド外用をしながら、うまく離脱というか依存に陥ることなく、自然治癒してしまう患児も多いでしょう。それを期待し、そちらにベットする(賭ける)ことは、必ずしもおかしな判断ではない。
その一方で、脱ステロイドや依存に理解や知識の無い医者が、感染症(→こちら)や脱水をきっかけに、鬼の首をとったように、ステロイド外用によるスキンケアを強要するという現実、それはそれで非常に理不尽で非科学的な話だと考えます。脱水は、ステロイドを外用しなくても、しっかりとした患者(父母)教育によって予防・早期発見が可能です(今回の記事はまさにその目的で書いています)。脱水をきたして病院に運ばれたアトピー児の親に医師が行うべきことは、ステロイドを使いなさいという脅迫ではなく、脱水の早期発見と対策の指導です。
私は今、アトピーや乳幼児の診療をしていませんが、仮にもし診療をしていて、開業医などですぐに小児科医に相談することが出来ない状況で、目の前の患児が、脱水によるショックの状態にあったら、迷わず骨髄留置針を用いて輸液路をとって生理食塩水のボーラス投与を行ったうえで(あるいは同時進行で)、救急搬送の手続きを取るでしょう。最初から骨髄針を用いるのは、小児科医ではないので、そのような緊急時での乳児の皮下静脈路確保に自信が無いからです。
最近では、こういった救急時の対処法は、BLS,ACLS,PALS,JATEC,ALSO,FCCS,JPTEC,ISLSといって各分野で用意されており、医者であれば私のような元皮膚科医の美容外科医でも受講することが出来ます。小児救急はPALSと言い、骨髄針の留置の仕方を含めて小児の緊急時蘇生一般が学べます。わたしは美容外科開業医の身ではありますが、病気を治すことの出来る医師である、というプライドとスキルを捨ててはいません。上記コースはすべて受講しました。PALSについても5年ほど前にプロバイダーとなって、2年毎の更新コースの受講も続けています。いつか再び「病気を治す医者」という立場になったとき、あるいは、市中で突然医師として立ち振る舞わなければならなくなったときのために、槍だけは錆付かせずに磨いているような心境です。
治療は、生理的食塩水など等張晶質液の20mL/kgのボーラス投与で始まります。
小児の脱水は、体重の4%から症状が現れますから、20mL/kgすなわち体重の2%では不足です。しかし、脱水の不足分をいちどに投与することは、脱水に耐えていた体のバランスを崩してしまう危険があり、一回目のボーラス投与のあと、再びボーラスを追加するか、あるいは残りの不足分を24時間くらいの時間をかけてゆっくり補うかは、ボーラス投与後の患児の反応によります。ケースバイケースなので、お医者さんの判断にゆだねてください。
多くの場合、24時間~48時間ほどで危機を脱して循環が安定したころに、あなたは今回の担当の小児科の先生に呼ばれて、「お母さん、こんな風にお子さんが脱水に陥ってしまったのは、日ごろからステロイド外用をして、浸出液や皮膚からの不感蒸泄を抑えてやることの大切さを軽視していたからです。脱ステロイドなどといった非科学的なものを信じるのはやめたらいかがでしょうか?」と、説得されるかもしれません。わが子を脱水という危機に陥らせてしまい、自信をなくしてしまったあなたは、大きく心が動くことでしょう。
最初に記しました通り、アトピー性皮膚炎の乳幼児は脱水に陥りやすい傾向がありそうです。そして脱ステロイド(というより乳幼児はステロイド依存に陥っていないことが多いので厳密には「ステロイド忌避」ですが(→こちら))の手法には、さらにこのリスクを高めるものがあります。しかし、それは「脱水」という事態をよく把握し、リスク回避に気をつけながらであれば、避けられるものです。
ご両親、とくに母親は賢明でなければなりません。なぜなら、仮に脱ステロイド系の先生のもとに通って定期的に診てもらっていたとしても、毎日お子さんの様子を見て、水分や栄養の摂取に気をつけていることができるのは、お母さんだけだからです。脱水は、健康な赤ちゃんでも、ウイルス性の下痢が続いて元気がなくなり水分補給が不足すれば、起こることです。アトピー性皮膚炎や脱ステロイド(またはステロイド忌避)は、脱水の素因ではありますが、直接のきっかけではありえません。もしそうなら、アトピーでステロイド忌避の子はすべて脱水に陥っていることでしょう。
1) 脱水に陥らないように、適度な水分補給には気をつける、これが一番大切。
2) 脱水の兆候が出てしまったら、迷わず、輸液をしてくれる小児科を受診して指示に従うこと。脱水の治療はアトピー治療に優先します。
3) 状態が落ち着いてから、再び脱ステロイド(ステロイド忌避)の方針でいくかどうかは、冷静に、さまざまな情報を吟味した上で、自己決定すること。未来への確実な路など、誰にもわかりません。もちろん私にもわからない。
私にはっきり言えることは、私の子供がアトピーだったら、たとえ脱水で大変な思いをしたあとであっても、私は子供にステロイドを外用しません。依存に陥ってしまった患者の離脱の辛さ・苦しさを知っているから。
しかし、これは、1)わたしが医者で、脱水に陥らないように気をつけることができる、あるいは早期発見して自らそれに対処することができる、2)脱ステロイドの外来をやっていた関係で、ステロイドを使いながら自然治癒する患者よりもはるかに多くの依存患者を目の当たりにしてきた、という条件のもとでの自己判断です。だから、あなたやあなたを取り巻く環境において、あなたがどう判断するのがベストな結果に導けるのか?は、私にはわかりません。ステロイド外用をしながら、うまく離脱というか依存に陥ることなく、自然治癒してしまう患児も多いでしょう。それを期待し、そちらにベットする(賭ける)ことは、必ずしもおかしな判断ではない。
その一方で、脱ステロイドや依存に理解や知識の無い医者が、感染症(→こちら)や脱水をきっかけに、鬼の首をとったように、ステロイド外用によるスキンケアを強要するという現実、それはそれで非常に理不尽で非科学的な話だと考えます。脱水は、ステロイドを外用しなくても、しっかりとした患者(父母)教育によって予防・早期発見が可能です(今回の記事はまさにその目的で書いています)。脱水をきたして病院に運ばれたアトピー児の親に医師が行うべきことは、ステロイドを使いなさいという脅迫ではなく、脱水の早期発見と対策の指導です。
私は今、アトピーや乳幼児の診療をしていませんが、仮にもし診療をしていて、開業医などですぐに小児科医に相談することが出来ない状況で、目の前の患児が、脱水によるショックの状態にあったら、迷わず骨髄留置針を用いて輸液路をとって生理食塩水のボーラス投与を行ったうえで(あるいは同時進行で)、救急搬送の手続きを取るでしょう。最初から骨髄針を用いるのは、小児科医ではないので、そのような緊急時での乳児の皮下静脈路確保に自信が無いからです。
最近では、こういった救急時の対処法は、BLS,ACLS,PALS,JATEC,ALSO,FCCS,JPTEC,ISLSといって各分野で用意されており、医者であれば私のような元皮膚科医の美容外科医でも受講することが出来ます。小児救急はPALSと言い、骨髄針の留置の仕方を含めて小児の緊急時蘇生一般が学べます。わたしは美容外科開業医の身ではありますが、病気を治すことの出来る医師である、というプライドとスキルを捨ててはいません。上記コースはすべて受講しました。PALSについても5年ほど前にプロバイダーとなって、2年毎の更新コースの受講も続けています。いつか再び「病気を治す医者」という立場になったとき、あるいは、市中で突然医師として立ち振る舞わなければならなくなったときのために、槍だけは錆付かせずに磨いているような心境です。
クリニックの手術室の壁に掲げた各種救急講習会の受講証・認定証。わたしなりの誇りです。
追記1
佐藤小児科の佐藤美津子先生(阪南病院の佐藤先生の奥様)からコメントを頂きました。大変参考になる内容なので、そのまま掲載します。
ーーーーー(ここから)-----
赤ちゃんのアトピーを診ていく上での注意点などのマニュアルがいるのかなと思っています。食物除去などの有無にかかわらずです。
ところで深谷先生は誤解されているのではと思います。私たち(私と連れ合い)は赤ちゃんや幼児での非ステ脱ステ治療においては一切水分制限はしていません。
赤ちゃんで一番問題なのは、母乳の赤ちゃんです。しかもアトピーが発症してくる3カ月から離乳食がきちんと食べることができる5~6か月までの期間がクリティカルな期間です。先生もご存知のように、母乳は87%水です。蛋白質が少ない。(母乳、ミルク、牛乳の順に蛋白質は多くなります)アトピーがあると母親は疲れてしまって母乳の出が悪くなる、除去のために母親の体重が減る、その結果母乳も出なくなる。母乳が不足すると体重が増えなくなる。(ここを捕まえることが大切)その内体重が減る。体重が減るのは非常に具合悪いことです。脱水になって電解質が崩れ、勿論低蛋白も進行するという事態になります。先日関東の方からfaxが入りました。5カ月で7.5kg8か月で6kgです。増えないといけない時期に1.5kgの減少です。泣いても涙が出ない、笑顔も出ない。近くの病院に入院予定だがステロイドを使いたくないということで当院へfax。即阪南への入院になりました。
私たちは、母乳をしっかり飲ませてもらう、不足ならミルクを足す(10%増しの濃度で)4か月なら離乳食を始めてもらうということで、このクリティカルな時期を何とか入院せずにと願って治療しています。
ミルクをきちんとのんで体重が増えていれば、電解質バランスは崩れないことが多いです。しかし低蛋白は食べないと改善しません。離乳食を食べるにつれて、母乳・ミルクの摂取量が自然に減少し、その結果摂取水分量が減少、十分カロリーがとれることで乾燥し、皮膚も良くなるということになります。
阪南中央病院の症例報告で、感染性胃腸炎で、前日からの下痢で、朝から1時間毎の下痢によって脱水性ショックに陥った6か月の赤ちゃんが報告されていました。骨髄針でのボーラス輸液で助かっています。
ちょっとしたことで非常に重症になる爆弾を赤ちゃんは抱えているのかもしれません。
ーーーーー(ここまで)-----
「深谷先生は誤解されている」とあるのは、多分、わたしが、乳幼児が脱水に陥りやすい傾向の原因として、治療法としての「飲水制限」を挙げたからだと思いますが、私は佐藤先生が乳幼児に飲水制限を指導しているとは考えていません。むしろ逆でして、このくだりは、以前、佐藤先生が「自宅で自己流で乳幼児に飲水制限をして、浸出液を抑えようとする親がいるが、脱水症のリスクが高く危険だ」といった内容のことを、メーリングリストで記していらっしゃったことを思い出して記したものです。読者の方々も誤解の無いようにお願いいたします。
追記2
脱水をきたしたアトピー児の学会抄録をみつけました。今回の記事で私が用心してくださいと訴える内容の具体例として引用します。
ーーーーー(ここから)-----
アトピー性皮膚炎に対して民間療法が施され救急状態に陥った一例
日本小児アレルギー学会誌 Vol.19(2005) No.4 p694
意識障害で救急搬送された4ヶ月の男児。痂皮化したびらんを全身に認め、皮膚ツルゴールは著明に低下していた。低張性脱水と高カリウム血症をみとめ、処置中にモニター上wideQRS波形が出現するなど危険な状態であった。ご家族の話などから、アトピー性皮膚炎に対して行われていた外気浴療法などのために、極度の脱水を来したものと考えられた。入院後、輸液を開始できてから全身状態は改善した。アトピー性皮膚炎に対する治療も徐々に受け入れられるようになり、ステロイド塗布等でコントロールしながら退院となった。IT化社会が進み、民間療法の情報も入手が容易となった。その結果、医学的知識によらない治療が安易に行われ得ることとなり、本例のように救急疾患の対象となりうることに留意しなければならない。
【症例】4ヶ月の男児で、生来、母乳のみを与えられていた。2ヶ月半頃よりアトピー様の皮膚炎を認めたため、インターネットを通じて購入した乳酸菌の粉末が母の判断で与えられていた。しかし改善しないためインターネットで得た晴報をもとに、3ヶ月半頃より、病変部を乾燥させる目的で自宅ベランダでの外気浴や、塩水浴などが行われていた。入院前日より、普段よりも活気が乏しくなり、入院となった日も朝から活気が乏しかったが外気浴を施行されたところ、その後より全く哺乳しなくなった。夕に意識障害とチアノーゼを認めたため当院へ救急搬送となった。
ーーーーー(ここまで)-----
2012.06.11
追記1
佐藤小児科の佐藤美津子先生(阪南病院の佐藤先生の奥様)からコメントを頂きました。大変参考になる内容なので、そのまま掲載します。
ーーーーー(ここから)-----
赤ちゃんのアトピーを診ていく上での注意点などのマニュアルがいるのかなと思っています。食物除去などの有無にかかわらずです。
ところで深谷先生は誤解されているのではと思います。私たち(私と連れ合い)は赤ちゃんや幼児での非ステ脱ステ治療においては一切水分制限はしていません。
赤ちゃんで一番問題なのは、母乳の赤ちゃんです。しかもアトピーが発症してくる3カ月から離乳食がきちんと食べることができる5~6か月までの期間がクリティカルな期間です。先生もご存知のように、母乳は87%水です。蛋白質が少ない。(母乳、ミルク、牛乳の順に蛋白質は多くなります)アトピーがあると母親は疲れてしまって母乳の出が悪くなる、除去のために母親の体重が減る、その結果母乳も出なくなる。母乳が不足すると体重が増えなくなる。(ここを捕まえることが大切)その内体重が減る。体重が減るのは非常に具合悪いことです。脱水になって電解質が崩れ、勿論低蛋白も進行するという事態になります。先日関東の方からfaxが入りました。5カ月で7.5kg8か月で6kgです。増えないといけない時期に1.5kgの減少です。泣いても涙が出ない、笑顔も出ない。近くの病院に入院予定だがステロイドを使いたくないということで当院へfax。即阪南への入院になりました。
私たちは、母乳をしっかり飲ませてもらう、不足ならミルクを足す(10%増しの濃度で)4か月なら離乳食を始めてもらうということで、このクリティカルな時期を何とか入院せずにと願って治療しています。
ミルクをきちんとのんで体重が増えていれば、電解質バランスは崩れないことが多いです。しかし低蛋白は食べないと改善しません。離乳食を食べるにつれて、母乳・ミルクの摂取量が自然に減少し、その結果摂取水分量が減少、十分カロリーがとれることで乾燥し、皮膚も良くなるということになります。
阪南中央病院の症例報告で、感染性胃腸炎で、前日からの下痢で、朝から1時間毎の下痢によって脱水性ショックに陥った6か月の赤ちゃんが報告されていました。骨髄針でのボーラス輸液で助かっています。
ちょっとしたことで非常に重症になる爆弾を赤ちゃんは抱えているのかもしれません。
ーーーーー(ここまで)-----
「深谷先生は誤解されている」とあるのは、多分、わたしが、乳幼児が脱水に陥りやすい傾向の原因として、治療法としての「飲水制限」を挙げたからだと思いますが、私は佐藤先生が乳幼児に飲水制限を指導しているとは考えていません。むしろ逆でして、このくだりは、以前、佐藤先生が「自宅で自己流で乳幼児に飲水制限をして、浸出液を抑えようとする親がいるが、脱水症のリスクが高く危険だ」といった内容のことを、メーリングリストで記していらっしゃったことを思い出して記したものです。読者の方々も誤解の無いようにお願いいたします。
追記2
脱水をきたしたアトピー児の学会抄録をみつけました。今回の記事で私が用心してくださいと訴える内容の具体例として引用します。
ーーーーー(ここから)-----
アトピー性皮膚炎に対して民間療法が施され救急状態に陥った一例
日本小児アレルギー学会誌 Vol.19(2005) No.4 p694
意識障害で救急搬送された4ヶ月の男児。痂皮化したびらんを全身に認め、皮膚ツルゴールは著明に低下していた。低張性脱水と高カリウム血症をみとめ、処置中にモニター上wideQRS波形が出現するなど危険な状態であった。ご家族の話などから、アトピー性皮膚炎に対して行われていた外気浴療法などのために、極度の脱水を来したものと考えられた。入院後、輸液を開始できてから全身状態は改善した。アトピー性皮膚炎に対する治療も徐々に受け入れられるようになり、ステロイド塗布等でコントロールしながら退院となった。IT化社会が進み、民間療法の情報も入手が容易となった。その結果、医学的知識によらない治療が安易に行われ得ることとなり、本例のように救急疾患の対象となりうることに留意しなければならない。
【症例】4ヶ月の男児で、生来、母乳のみを与えられていた。2ヶ月半頃よりアトピー様の皮膚炎を認めたため、インターネットを通じて購入した乳酸菌の粉末が母の判断で与えられていた。しかし改善しないためインターネットで得た晴報をもとに、3ヶ月半頃より、病変部を乾燥させる目的で自宅ベランダでの外気浴や、塩水浴などが行われていた。入院前日より、普段よりも活気が乏しくなり、入院となった日も朝から活気が乏しかったが外気浴を施行されたところ、その後より全く哺乳しなくなった。夕に意識障害とチアノーゼを認めたため当院へ救急搬送となった。
ーーーーー(ここまで)-----
2012.06.11