アトピー性皮膚炎患者にステロイドを外用してTEWL値が低下しても、それは表皮バリア機能の改善を意味しない
医者なのかどうか知らないが、適当な論文を拾ってきては、自分勝手な解釈をこじつけて意図的な誤発信をくりかえしてるcam_englという匿名のブロガーがいる。
ちなみに私の実名は深谷元継で、日本皮膚科学会認定皮膚科専門医だ。なぜcam_englは実名で記さないのか?卑怯で小心者で、自分の書いたことに責任を取るつもりがないからだろう。
そのcam_englが,
Different effects of pimecrolimus and betamethasone on the skin barrier in patients with atopic dermatitis. Jensen JM,et al.J Allergy Clin Immunol. 2009 May;123(5):1124-33
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19410693
という論文中のデータを取り上げて、「アトピー患者にステロイドを外用するとTEWLは低下する。だからステロイド外用は表皮バリア機能を改善する。脱ステのブログはステロイドが表皮バリア機能を低下させると書いているがインチキだ。」と主張している。
実のところ相手にもしたくないのだが、誤情報というのは、どんなきっかけでネット上を拡散しないとも限らない。だから解説しておく。
論文中にはっきりと書いてあるが(というよりもまさにそれが、著者がこのTEWLのデータを出してきた意図そのものなのだが)、強いステロイド外用剤には血管収縮作用があって、TEWL(経皮的水分蒸散量)は、表皮バリアと、真皮の血流量の2つの影響を受ける。したがって、アトピー性皮膚炎の患部のような、発赤して明らかに真皮血流量が増えているような皮膚に、ステロイドを外用してTEWLが低下しても、それはステロイドの血管収縮作用によって真皮血流量が減ったことを意味するのであって、表皮バリア機能が改善したことを意味するのではない。
その証拠に、ステロイド外用後の表皮は萎縮して薄くなっており、電子顕微鏡で見ると、ラメラ小体と呼ばれる表皮バリア機能に関係する構造には改善が見られない。ただし、フィラグリン・ロリクリン・インボルクリンといった角質の分化に限っては、これを改善するようだ。また、色素試験についても同様に真皮血管収縮の影響を受けることが既に1970年代に明らかにされているので、外用ステロイドにおいては色素試験の改善をもって表皮バリア機能の改善と即断すべきでは無い。
だいたい、こういう趣旨のことがこの論文には書いてある。
したがって、TEWLによって、ステロイド外用剤の表皮バリア機能への影響を確認するには、Dr Kaoが行ったように(→こちら)、皮膚の発赤(血管拡張)の少ない健常者で行う必要がある。cam_englは「動物実験のデータなどヒトには当てはまらない」などという寝言のようなことも書いているが、Dr.Kaoの論文はヒトでのTEWL値だ。論文をろくに読んでいない証拠だろう。
あんまり傑作なんで、魚拓を取っておいた。
http://megalodon.jp/2013-0811-2159-42/blogs.yahoo.co.jp/cam_engl/62443143.html
私は、ネットで文章を書くときは、必ず実名で記すことにしているが、それによって自分を律するという目的と、もうひとつ、匿名なんてものは、いつか必ずどこかからバレると考えているからだ。2chが良い例だ。最近はいともたやすくIPアドレスを開示するようになった。
昔本当にあったことだが、あるアトピー患者向けの掲示板で、ほとんどの人は匿名のハンドルネームで記していたが、私は例によって実名で記し、脱ステ医の立場からのアドバイスを書き込んでいた。ある日、私に対する酷い中傷が書かれたことがあり、私はよくあることと気にしていなかったのだが、誰かがその人の個人名を晒してしまった。私の知っている皮膚科開業医だった。その皮膚科医のもとでステロイド依存に陥った患者が私のところに来て、私がしつこく前医処方を照会したことがあったので、逆恨みしたのだろう。
また、YahooJapanではないが、他の大手企業の重役の方と知り合いで、個人的な酒席で聞いたことがある。ネット上の匿名なんてものは、少なくともその企業の重役レベルの人が、担当者に照会すれば、少なくともその企業の内部レベルでは個人情報保護義務もないので、わかってしまう。
だから、あんまりおかしな扇動的なことを調子に乗って書いていると、誰かが義憤にかられて匿名を公開してしまうかもしれない。読者も、匿名なんてものをあまり過信しないほうがいいですよ。
【追記】
cam_englが追記した以下のくだりが、またまた傑作だ。
=====
著者らも、論文自体に『betamethasone appeared to improve the skin barrier (べタメタゾンは皮膚バリアを改善したと思われる)』と明記している。
=====
単純にこの英文を訳せば「ベタメサゾンは皮膚バリアを改善したように見える」だ。appeared to improve というのは、そのあとに「が、実は・・」というニュアンスを想起させる。それで、論文中のどこにこのフレーズが使われているのか探してみた。
=====
Although betamethasone appeared to improve the skin barrier, as judged based on TEWL and dye penetration, it did not restore the structure of the lamellar body extrusion and lipid bilayer formation in the lower stratum corneum, which are known as epidermal barrier structures.
(TEWLや色素透過試験の結果からは、ベタメサゾンは皮膚バリアを改善するように見えるが、表皮バリア構造(そのもの)として知られている角層下部のラメラ小体放出や脂質二重層形成を回復させてはいない。)
=====
の赤線部分を切り取ったようだ。
この一点だけで、いかにcam_englが姑息で幼稚な情報誤操作をしようとしているかの証拠として十分だろう。
ただ、不思議で仕方が無いのは、これだけたやすく突っ込める意図的誤訳を、どうしてこの人は繰り返すのか?ここが解らない。どんなに明らかに馬鹿げた誤情報であっても、とにかくネット上に流すこと自体が意味があると考える確信犯なのだろうか?すなわち患者をよほど馬鹿にしているのだろうか?
それともcam_engl自身がただの本当の馬鹿なのだろうか?
とにかく、cam_englが匿名である理由は、このあたりにあるのだろう。cam_englは自分が流している情報が誤っていることを知っているから匿名なのか、自分が馬鹿であることに薄々気がついていて恥ずかしいから匿名なのか、どちらかだ。
面白いからまた魚拓を取っておいた。
http://megalodon.jp/2013-0813-0016-00/blogs.yahoo.co.jp/cam_engl/62443143.html
【追記2】
=====
血管収縮作用のないピメクロリムスもTEWLを改善している。
=====
ついでにこの点も引っかかる人がいるかもしれないので、ちょっと解説しておく。ただし、これは論文中に書かれていることではなくて、私の解釈になる。
ピメクロリムスを外用すれば、湿疹病変は短期的には改善する。湿疹と言うのは発赤(血管拡張)を伴うので、これが改善すると言うことは、血流変化が生じているということだ。
ピメクロリムスは湿疹を抑えることによって間接的にTEWLに影響を及ぼすが、ステロイドはこれに直接的な血管収縮作用が加わってTEWLをより大きく変化させる。
要は、発赤を伴う病変部のTEWL値は、表皮バリア機能を正確に反映しないということだ。
論文中には書かれていないが、ちょっと考えれば医者なら誰でも気がつくだろう。
2013.08.11
ちなみに私の実名は深谷元継で、日本皮膚科学会認定皮膚科専門医だ。なぜcam_englは実名で記さないのか?卑怯で小心者で、自分の書いたことに責任を取るつもりがないからだろう。
そのcam_englが,
Different effects of pimecrolimus and betamethasone on the skin barrier in patients with atopic dermatitis. Jensen JM,et al.J Allergy Clin Immunol. 2009 May;123(5):1124-33
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19410693
という論文中のデータを取り上げて、「アトピー患者にステロイドを外用するとTEWLは低下する。だからステロイド外用は表皮バリア機能を改善する。脱ステのブログはステロイドが表皮バリア機能を低下させると書いているがインチキだ。」と主張している。
実のところ相手にもしたくないのだが、誤情報というのは、どんなきっかけでネット上を拡散しないとも限らない。だから解説しておく。
論文中にはっきりと書いてあるが(というよりもまさにそれが、著者がこのTEWLのデータを出してきた意図そのものなのだが)、強いステロイド外用剤には血管収縮作用があって、TEWL(経皮的水分蒸散量)は、表皮バリアと、真皮の血流量の2つの影響を受ける。したがって、アトピー性皮膚炎の患部のような、発赤して明らかに真皮血流量が増えているような皮膚に、ステロイドを外用してTEWLが低下しても、それはステロイドの血管収縮作用によって真皮血流量が減ったことを意味するのであって、表皮バリア機能が改善したことを意味するのではない。
その証拠に、ステロイド外用後の表皮は萎縮して薄くなっており、電子顕微鏡で見ると、ラメラ小体と呼ばれる表皮バリア機能に関係する構造には改善が見られない。ただし、フィラグリン・ロリクリン・インボルクリンといった角質の分化に限っては、これを改善するようだ。また、色素試験についても同様に真皮血管収縮の影響を受けることが既に1970年代に明らかにされているので、外用ステロイドにおいては色素試験の改善をもって表皮バリア機能の改善と即断すべきでは無い。
だいたい、こういう趣旨のことがこの論文には書いてある。
したがって、TEWLによって、ステロイド外用剤の表皮バリア機能への影響を確認するには、Dr Kaoが行ったように(→こちら)、皮膚の発赤(血管拡張)の少ない健常者で行う必要がある。cam_englは「動物実験のデータなどヒトには当てはまらない」などという寝言のようなことも書いているが、Dr.Kaoの論文はヒトでのTEWL値だ。論文をろくに読んでいない証拠だろう。
あんまり傑作なんで、魚拓を取っておいた。
http://megalodon.jp/2013-0811-2159-42/blogs.yahoo.co.jp/cam_engl/62443143.html
私は、ネットで文章を書くときは、必ず実名で記すことにしているが、それによって自分を律するという目的と、もうひとつ、匿名なんてものは、いつか必ずどこかからバレると考えているからだ。2chが良い例だ。最近はいともたやすくIPアドレスを開示するようになった。
昔本当にあったことだが、あるアトピー患者向けの掲示板で、ほとんどの人は匿名のハンドルネームで記していたが、私は例によって実名で記し、脱ステ医の立場からのアドバイスを書き込んでいた。ある日、私に対する酷い中傷が書かれたことがあり、私はよくあることと気にしていなかったのだが、誰かがその人の個人名を晒してしまった。私の知っている皮膚科開業医だった。その皮膚科医のもとでステロイド依存に陥った患者が私のところに来て、私がしつこく前医処方を照会したことがあったので、逆恨みしたのだろう。
また、YahooJapanではないが、他の大手企業の重役の方と知り合いで、個人的な酒席で聞いたことがある。ネット上の匿名なんてものは、少なくともその企業の重役レベルの人が、担当者に照会すれば、少なくともその企業の内部レベルでは個人情報保護義務もないので、わかってしまう。
だから、あんまりおかしな扇動的なことを調子に乗って書いていると、誰かが義憤にかられて匿名を公開してしまうかもしれない。読者も、匿名なんてものをあまり過信しないほうがいいですよ。
【追記】
cam_englが追記した以下のくだりが、またまた傑作だ。
=====
著者らも、論文自体に『betamethasone appeared to improve the skin barrier (べタメタゾンは皮膚バリアを改善したと思われる)』と明記している。
=====
単純にこの英文を訳せば「ベタメサゾンは皮膚バリアを改善したように見える」だ。appeared to improve というのは、そのあとに「が、実は・・」というニュアンスを想起させる。それで、論文中のどこにこのフレーズが使われているのか探してみた。
=====
Although betamethasone appeared to improve the skin barrier, as judged based on TEWL and dye penetration, it did not restore the structure of the lamellar body extrusion and lipid bilayer formation in the lower stratum corneum, which are known as epidermal barrier structures.
(TEWLや色素透過試験の結果からは、ベタメサゾンは皮膚バリアを改善するように見えるが、表皮バリア構造(そのもの)として知られている角層下部のラメラ小体放出や脂質二重層形成を回復させてはいない。)
=====
の赤線部分を切り取ったようだ。
この一点だけで、いかにcam_englが姑息で幼稚な情報誤操作をしようとしているかの証拠として十分だろう。
ただ、不思議で仕方が無いのは、これだけたやすく突っ込める意図的誤訳を、どうしてこの人は繰り返すのか?ここが解らない。どんなに明らかに馬鹿げた誤情報であっても、とにかくネット上に流すこと自体が意味があると考える確信犯なのだろうか?すなわち患者をよほど馬鹿にしているのだろうか?
それともcam_engl自身がただの本当の馬鹿なのだろうか?
とにかく、cam_englが匿名である理由は、このあたりにあるのだろう。cam_englは自分が流している情報が誤っていることを知っているから匿名なのか、自分が馬鹿であることに薄々気がついていて恥ずかしいから匿名なのか、どちらかだ。
面白いからまた魚拓を取っておいた。
http://megalodon.jp/2013-0813-0016-00/blogs.yahoo.co.jp/cam_engl/62443143.html
【追記2】
=====
血管収縮作用のないピメクロリムスもTEWLを改善している。
=====
ついでにこの点も引っかかる人がいるかもしれないので、ちょっと解説しておく。ただし、これは論文中に書かれていることではなくて、私の解釈になる。
ピメクロリムスを外用すれば、湿疹病変は短期的には改善する。湿疹と言うのは発赤(血管拡張)を伴うので、これが改善すると言うことは、血流変化が生じているということだ。
ピメクロリムスは湿疹を抑えることによって間接的にTEWLに影響を及ぼすが、ステロイドはこれに直接的な血管収縮作用が加わってTEWLをより大きく変化させる。
要は、発赤を伴う病変部のTEWL値は、表皮バリア機能を正確に反映しないということだ。
論文中には書かれていないが、ちょっと考えれば医者なら誰でも気がつくだろう。
2013.08.11
私が作製した中間分子量ヒアルロン酸化粧水「ヒアルプロテクト」のショップはこちら(下の画像をクリック)