アメリカのアトピー性皮膚炎ガイドライン
Guidelines of Care for Atopic Dermatitis JAAD Vol50 391-404 2004
あまり気が付かれていないことだと思うのですが、アメリカのアトピー性皮膚炎ガイドライン(Guidelines of Care for Atopic Dermatitis 2004年)は、現在は失効しています。 アメリカ皮膚科学会のHP(注:現在はリンク切れ)を見ると、2004年Publishedとあり、2009年Sunsetです。つまり作成当初から、賞味期限を5年と区切ってあったわけです。
改訂版は2011年秋に発行予定のようです。
ですから、いま、アメリカにはアトピー性皮膚炎のガイドラインはありません。本来は2009年に改訂版が出来る予定だったのが遅れているということでしょう。
アメリカの新しいガイドラインで、ステロイド依存の問題が、取り上げられるか?というと、わたしは少なくとも顔面のステロイド依存については、取り上げられるんじゃないかと思います。なぜなら、アメリカ皮膚科学会の会誌の2006年1月号(p1-p15)に(新年の巻頭です)、Adverse effects of topical glucocorticosteroids という総説が掲載されていて、4人の共著なのですが、その1人が、「表皮バリア破壊説」のDr. Corkだからです。全文を読むのは有料ですが、http://www.mdconsult.com/das/article/body/208028186-2/jorg=journal&source=MI&sp=15919978&sid=0/N/517107/1.html?issn=0190-9622&issue_id=18180
の左「Full Text」を見ると、小見出しが書かれており、そこに「Steroid addiction」が独立した一項目として記されているのが確認できます。「ステロイド酒さ」は別項目として取り上げられているので、あくまで依存現象そのものを独立した副作用として記述する意図とわかります。
この部分を下記に抜粋します。
ーーーーー(ここから引用)-----
Steroid addiction
Corticosteroid addiction has been described as an ongoing inadvertent use of potent topical corticosteroid applied mostly to the face.(46). Patients who become addicted ar continuing treatment because of concerns that acne, rosacea, perioral dermatitis, or telangiectasia may flare up when treatment is withdrawn.(52,53) Some cases may also present as the ‘‘red burning skin syndrome.(54)’’ To distinguish erythroderma due to steroid withdrawal from chronic eczema, the serum nitric oxide levels maybe used.(54)
ステロイド依存 ステロイド依存は強いステロイドを主に顔面に長期間不注意に使用することによって生じる(46)。依存に陥った患者は、中止によって、にきびや酒さ、口囲皮膚炎、毛細血管拡張が悪化する怖れから外用を続ける(52,53)。「赤くて灼熱感を伴う皮膚症候群(54)」とよばれる状態に陥るケースもある。慢性湿疹でのステロイド離脱に伴う紅皮症と区別するためには、血清の一酸化窒素(NO)の測定が有用かもしれない(54)。
()内は引用文献。
46. Rapaport MJ, Rapaport V. Eyelid dermatitis to red face syndrome to cure: clinical experience in 100 cases. J Am Acad Dermatol 1999;41:435-42.
52. Kligman AM. Topical steroid addicts. JAMA 1976;235:1550.
53. Wells K, Brodell RT. Topical corticosteroid ‘‘addiction.’’ A cause of perioral dermatitis. Postgrad Med 1993;93:225-30.
54. Rapaport MJ, Rapaport VH. Serum nitric oxide levels in ‘‘red’’ patients: separating corticosteroid-addicted patients from those with chronic eczema. Arch Dermatol 2004;140:1013-4.
ーーーーー(ここまで引用)-----
わたしは、自著「ステロイド依存2010」を、全文英訳して(http://topicalsteroidaddiction.weebly.com/にUPしてあります)Dr Rapaport とDr Corkに送りました。ひょっとしたら、Dr Cork やDr Rapaportがアメリカのガイドライン策定に関与するかもしれないと考えたからです。
Dr Rapaportとは面識があるのですぐに、Dr Corkからもしばらくしてから返事が来ました。もちろんどちらも好意的なものでした。Dr Corkは日本の状況、すなわち、Steroid addictionが日本のガイドランに組み入れられていないが、それに異議を唱えて、要望書を提出した皮膚科医たちがいるということを知ったと思います。
ひょっとしたら、日本のガイドライン作成委員の方々は、アメリカのガイドラインの動向にあわせて、日本のガイドラインを修正すればいい、くらいに思っているのかもしれません。もしそうなら、彼ら彼女らは、目の前の患者も見ず、日皮会会員であるほかの皮膚科医の意見にも耳を貸さず、1970年代から繰り返し報告されてきた、このブログで引用しているような医学論文にも眼を通してこなかったということです。実に恥ずべきことであり、責任は重いでしょう。
2010.07.03
あまり気が付かれていないことだと思うのですが、アメリカのアトピー性皮膚炎ガイドライン(Guidelines of Care for Atopic Dermatitis 2004年)は、現在は失効しています。 アメリカ皮膚科学会のHP(注:現在はリンク切れ)を見ると、2004年Publishedとあり、2009年Sunsetです。つまり作成当初から、賞味期限を5年と区切ってあったわけです。
改訂版は2011年秋に発行予定のようです。
ですから、いま、アメリカにはアトピー性皮膚炎のガイドラインはありません。本来は2009年に改訂版が出来る予定だったのが遅れているということでしょう。
アメリカの新しいガイドラインで、ステロイド依存の問題が、取り上げられるか?というと、わたしは少なくとも顔面のステロイド依存については、取り上げられるんじゃないかと思います。なぜなら、アメリカ皮膚科学会の会誌の2006年1月号(p1-p15)に(新年の巻頭です)、Adverse effects of topical glucocorticosteroids という総説が掲載されていて、4人の共著なのですが、その1人が、「表皮バリア破壊説」のDr. Corkだからです。全文を読むのは有料ですが、http://www.mdconsult.com/das/article/body/208028186-2/jorg=journal&source=MI&sp=15919978&sid=0/N/517107/1.html?issn=0190-9622&issue_id=18180
の左「Full Text」を見ると、小見出しが書かれており、そこに「Steroid addiction」が独立した一項目として記されているのが確認できます。「ステロイド酒さ」は別項目として取り上げられているので、あくまで依存現象そのものを独立した副作用として記述する意図とわかります。
この部分を下記に抜粋します。
ーーーーー(ここから引用)-----
Steroid addiction
Corticosteroid addiction has been described as an ongoing inadvertent use of potent topical corticosteroid applied mostly to the face.(46). Patients who become addicted ar continuing treatment because of concerns that acne, rosacea, perioral dermatitis, or telangiectasia may flare up when treatment is withdrawn.(52,53) Some cases may also present as the ‘‘red burning skin syndrome.(54)’’ To distinguish erythroderma due to steroid withdrawal from chronic eczema, the serum nitric oxide levels maybe used.(54)
ステロイド依存 ステロイド依存は強いステロイドを主に顔面に長期間不注意に使用することによって生じる(46)。依存に陥った患者は、中止によって、にきびや酒さ、口囲皮膚炎、毛細血管拡張が悪化する怖れから外用を続ける(52,53)。「赤くて灼熱感を伴う皮膚症候群(54)」とよばれる状態に陥るケースもある。慢性湿疹でのステロイド離脱に伴う紅皮症と区別するためには、血清の一酸化窒素(NO)の測定が有用かもしれない(54)。
()内は引用文献。
46. Rapaport MJ, Rapaport V. Eyelid dermatitis to red face syndrome to cure: clinical experience in 100 cases. J Am Acad Dermatol 1999;41:435-42.
52. Kligman AM. Topical steroid addicts. JAMA 1976;235:1550.
53. Wells K, Brodell RT. Topical corticosteroid ‘‘addiction.’’ A cause of perioral dermatitis. Postgrad Med 1993;93:225-30.
54. Rapaport MJ, Rapaport VH. Serum nitric oxide levels in ‘‘red’’ patients: separating corticosteroid-addicted patients from those with chronic eczema. Arch Dermatol 2004;140:1013-4.
ーーーーー(ここまで引用)-----
わたしは、自著「ステロイド依存2010」を、全文英訳して(http://topicalsteroidaddiction.weebly.com/にUPしてあります)Dr Rapaport とDr Corkに送りました。ひょっとしたら、Dr Cork やDr Rapaportがアメリカのガイドライン策定に関与するかもしれないと考えたからです。
Dr Rapaportとは面識があるのですぐに、Dr Corkからもしばらくしてから返事が来ました。もちろんどちらも好意的なものでした。Dr Corkは日本の状況、すなわち、Steroid addictionが日本のガイドランに組み入れられていないが、それに異議を唱えて、要望書を提出した皮膚科医たちがいるということを知ったと思います。
ひょっとしたら、日本のガイドライン作成委員の方々は、アメリカのガイドラインの動向にあわせて、日本のガイドラインを修正すればいい、くらいに思っているのかもしれません。もしそうなら、彼ら彼女らは、目の前の患者も見ず、日皮会会員であるほかの皮膚科医の意見にも耳を貸さず、1970年代から繰り返し報告されてきた、このブログで引用しているような医学論文にも眼を通してこなかったということです。実に恥ずべきことであり、責任は重いでしょう。
2010.07.03