クロフィブラート軟膏のパイロットスタディ・ケース1
4週間終了したお一人目の方が、本日いらっしゃいました。
概略を以下に示します。この方は、最初の2週間はプラセボ(クロフィブラートを含まない白色ワセリンなど基剤単独)で、2週目から4週目はクロフィブラート軟膏の外用でした。
=====
20才台男性、ステロイド外用歴2年半、中止後5年半。
【経過】転居で悪化、季節的には冬に悪化。1年前に脱保湿するが、今年の冬に再び悪化。
【診断】ステロイド依存・リバウンドではなく、環境系・季節性の何らかの悪化因子が関与したアトピー性皮膚炎でステロイド忌避のケースと考えられる。
【使用した軟膏】
0 week →2 weeks プラセボ36g(白色ワセリン6g+WZS(白色ワセリン:亜鉛華単軟膏1:1)30g)
2 weeks →4 weeksクロフィブラート入り軟膏120g(軟膏白色ワセリン30g+WZS90g)
【VAS判定】
患者側 0 week : 60、 2 week : 60、 4 week : 40
医師側 0 week : 45、 2 week : 62、 4 week : 30
【総合判定】
改善(クロフィブラート奏効)
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概略を以下に示します。この方は、最初の2週間はプラセボ(クロフィブラートを含まない白色ワセリンなど基剤単独)で、2週目から4週目はクロフィブラート軟膏の外用でした。
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20才台男性、ステロイド外用歴2年半、中止後5年半。
【経過】転居で悪化、季節的には冬に悪化。1年前に脱保湿するが、今年の冬に再び悪化。
【診断】ステロイド依存・リバウンドではなく、環境系・季節性の何らかの悪化因子が関与したアトピー性皮膚炎でステロイド忌避のケースと考えられる。
【使用した軟膏】
0 week →2 weeks プラセボ36g(白色ワセリン6g+WZS(白色ワセリン:亜鉛華単軟膏1:1)30g)
2 weeks →4 weeksクロフィブラート入り軟膏120g(軟膏白色ワセリン30g+WZS90g)
【VAS判定】
患者側 0 week : 60、 2 week : 60、 4 week : 40
医師側 0 week : 45、 2 week : 62、 4 week : 30
【総合判定】
改善(クロフィブラート奏効)
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この方の場合、最初の2週間、それまで脱保湿していた経過から、外用自体があまりしっかり出来ていなかった、という問題点があります(保湿剤の外用だけでも2週→4週の効果が得られたのではないか?ということ。)が、一応、結果としては、クロフィブラート軟膏の奏効例に分類されます。
二重盲験というのは、このような症例報告を重ねていって、最終的に統計(有意差検定)で、有効性を評価する作業です。個々の症例においては判断が限界であった「基剤が効いたのかクロフィブラートが効いたのか?」といった問題を、確率的に解決します。
一方、うちのクリニックのスタッフや常連さんの子供さんでアトピーの人が数名います。その方たちには、先立って、クロフィブラート軟膏を試用してもらっているのですが、それによって現時点でだいたい判って来ている事は、
1)クロフィブラート軟膏は、ステロイドほどに強くはないが、炎症を抑える力は確かにある(ステロイドで1日で治まるところ、クロフィブラートでは4日かかる)。
2)かゆみを抑える力は無い。
3)アトピーの湿疹は、それまで治まっていたところから出始めると、面積的には広がりつつ消えていく経過を取る事が多いが、クロフィブラートはこの「広がり」を抑える力は無い。しかし、赤みなど、炎症自体は抑える。結果として「広がりつつ消える」経過が、穏やかになる。
4)止めても「リバウンド」は無さそう。
だいたいこんな感じです。アレロックなどの抗ヒスタミン剤剤には、リバウンドを抑える効果も確認されています(→こちら)から、かゆみ対策も考えて、とくに依存・リバウンド例ではアレロックの内服を追加するといいかもしれません。
上の第一号のかたの経過は、上記の私の予備的な経験に合致するもので、2週目→4週目の変化は、クロフィブラートによる改善効果だと、私は臨床的直観として、思います。
・・臨床的直観というのは、大切なものです。多くのケースを診てきて、はじめて身につくものです。頭の中で、記憶にある様々なケースと比較して判断するわけです。馬鹿にしたものじゃないんですよ。しかし、科学的証明ではないから、上記のような、統計的根拠が必要です。また、人(医者)によっては真っ赤な嘘をもって「臨床的直観」と言い張ることも有り得ますからね。
以上に紹介した、4週目を経過した第一号の方は、名古屋市内在住ですので、今後も、しばらく経過フォローさせていただく事にしました。具体的には、このあと、
1)2週間休薬期間をもうけて、リバウンドの有無を確認します。
2)そのあと、4週間外用→2週間休薬、を繰り返して、約1年くらいの長期経過をみます。
ただし、この方の場合は、依存例ではなさそうだし、明らかな環境・季節悪化の傾向が見られるので、若く、両親の経済的庇護が受けられて、やり直しのきくうちに、生活の本拠地を、アトピーが悪くならないところ、とくに冬悪化傾向ですから、冬の無いところ(沖縄とか南のほう)に移してしまうのが一番良いです。私だったら、あるいは私の息子だったら、そうします。
ただし、これは、絶対確実という保証は無いし、経済的社会的に負担の大きい提案なので、難しい、と言われればそれまでなのですが・・。
また、この方の場合、ステロイドを使っても効くと思いますが、使うべきかどうかは、目的(計画)次第だと思います。まったく将来のことを考えずに、使って肌を良くしても、その先につながらなければ(いつ中止するという計画がなければ)、ずるずると長期連用となって、依存のリスクを負います。はっきりと期限・期間を区切った一時使用であれば、有用なアイテムになり得ます。
クロフィブラート軟膏が、効果は弱くても、依存性がなく、長期連用に耐えるものであれば、それはそれでもちろん有用なはずです。
ほかの参加された方の経過も、こんな感じで今後1人ずつ紹介・コメントしていこうと考えています。
2012.08.13
二重盲験というのは、このような症例報告を重ねていって、最終的に統計(有意差検定)で、有効性を評価する作業です。個々の症例においては判断が限界であった「基剤が効いたのかクロフィブラートが効いたのか?」といった問題を、確率的に解決します。
一方、うちのクリニックのスタッフや常連さんの子供さんでアトピーの人が数名います。その方たちには、先立って、クロフィブラート軟膏を試用してもらっているのですが、それによって現時点でだいたい判って来ている事は、
1)クロフィブラート軟膏は、ステロイドほどに強くはないが、炎症を抑える力は確かにある(ステロイドで1日で治まるところ、クロフィブラートでは4日かかる)。
2)かゆみを抑える力は無い。
3)アトピーの湿疹は、それまで治まっていたところから出始めると、面積的には広がりつつ消えていく経過を取る事が多いが、クロフィブラートはこの「広がり」を抑える力は無い。しかし、赤みなど、炎症自体は抑える。結果として「広がりつつ消える」経過が、穏やかになる。
4)止めても「リバウンド」は無さそう。
だいたいこんな感じです。アレロックなどの抗ヒスタミン剤剤には、リバウンドを抑える効果も確認されています(→こちら)から、かゆみ対策も考えて、とくに依存・リバウンド例ではアレロックの内服を追加するといいかもしれません。
上の第一号のかたの経過は、上記の私の予備的な経験に合致するもので、2週目→4週目の変化は、クロフィブラートによる改善効果だと、私は臨床的直観として、思います。
・・臨床的直観というのは、大切なものです。多くのケースを診てきて、はじめて身につくものです。頭の中で、記憶にある様々なケースと比較して判断するわけです。馬鹿にしたものじゃないんですよ。しかし、科学的証明ではないから、上記のような、統計的根拠が必要です。また、人(医者)によっては真っ赤な嘘をもって「臨床的直観」と言い張ることも有り得ますからね。
以上に紹介した、4週目を経過した第一号の方は、名古屋市内在住ですので、今後も、しばらく経過フォローさせていただく事にしました。具体的には、このあと、
1)2週間休薬期間をもうけて、リバウンドの有無を確認します。
2)そのあと、4週間外用→2週間休薬、を繰り返して、約1年くらいの長期経過をみます。
ただし、この方の場合は、依存例ではなさそうだし、明らかな環境・季節悪化の傾向が見られるので、若く、両親の経済的庇護が受けられて、やり直しのきくうちに、生活の本拠地を、アトピーが悪くならないところ、とくに冬悪化傾向ですから、冬の無いところ(沖縄とか南のほう)に移してしまうのが一番良いです。私だったら、あるいは私の息子だったら、そうします。
ただし、これは、絶対確実という保証は無いし、経済的社会的に負担の大きい提案なので、難しい、と言われればそれまでなのですが・・。
また、この方の場合、ステロイドを使っても効くと思いますが、使うべきかどうかは、目的(計画)次第だと思います。まったく将来のことを考えずに、使って肌を良くしても、その先につながらなければ(いつ中止するという計画がなければ)、ずるずると長期連用となって、依存のリスクを負います。はっきりと期限・期間を区切った一時使用であれば、有用なアイテムになり得ます。
クロフィブラート軟膏が、効果は弱くても、依存性がなく、長期連用に耐えるものであれば、それはそれでもちろん有用なはずです。
ほかの参加された方の経過も、こんな感じで今後1人ずつ紹介・コメントしていこうと考えています。
2012.08.13