1997年のドキュメンタリー番組・その2
---(クリックすると動画へジャンプします。30分の番組が1/3、2/3、3/3と3つに割られています。)---
しのびよる薬害!?~急増するアトピー重症患者~NNNドキュメント97(1/3)
しのびよる薬害!?~急増するアトピー重症患者~NNNドキュメント97(2/3)
しのびよる薬害!?~急増するアトピー重症患者~NNNドキュメント97(3/3)
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97年に放映された、このドキュメンタリーに取材協力してくださった「清水さん」(氷嚢を当てて寝ているひと)は、99年に出版した「ステロイド依存」(柘植書房新社)への写真の掲載も了承して下さいました。それで、わたしの手元に、経過写真の原版が残っています。カルテは勤務先の病院に置いてきてしまったので、正確さを欠くかもしれませんが、本の記載と、記憶を頼りに解説しようと思います。 下の写真は、初診時のもので、これに先立つ15年間、ステロイド外用歴があります。5ヶ月前から悪化してきました。
しのびよる薬害!?~急増するアトピー重症患者~NNNドキュメント97(1/3)
しのびよる薬害!?~急増するアトピー重症患者~NNNドキュメント97(2/3)
しのびよる薬害!?~急増するアトピー重症患者~NNNドキュメント97(3/3)
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97年に放映された、このドキュメンタリーに取材協力してくださった「清水さん」(氷嚢を当てて寝ているひと)は、99年に出版した「ステロイド依存」(柘植書房新社)への写真の掲載も了承して下さいました。それで、わたしの手元に、経過写真の原版が残っています。カルテは勤務先の病院に置いてきてしまったので、正確さを欠くかもしれませんが、本の記載と、記憶を頼りに解説しようと思います。 下の写真は、初診時のもので、これに先立つ15年間、ステロイド外用歴があります。5ヶ月前から悪化してきました。
「離脱経過の皮疹の分類」を参照しつつご覧いただきたいのですが、これは、タイプ5「痒疹拡散型」に当たります。ステロイド外用歴の長さ、効きが悪くなってきて治まらなくなってきた、といった訴えも合致します。
彼は当初「徐々に離脱」を選びました。この皮疹型で「徐々に離脱」は難しいです。ステロイド外用剤の量や強さを少し減じただけで、下の写真のように悪化してきます。
彼は当初「徐々に離脱」を選びました。この皮疹型で「徐々に離脱」は難しいです。ステロイド外用剤の量や強さを少し減じただけで、下の写真のように悪化してきます。
このあと、入院して離脱しました。取材はちょうどその頃で、動画は全身のリバウンドに苦しんでいた様子です。彼は、このあと、耐え切れずに、ステロイド全身投与(ケナコルト注射)でリバウンドをコントロールする方法を選びました。ステロイド外用剤の再使用はしていません。外用剤は用いずに注射でリバウンドを調節するという考え方は誤解を招きやすいですが、「1983年のステロイド依存」の項をご参照ください。
番組中で、冒頭の強い皮疹が、途中でやや治まって、新しく入院してきた患者と談笑しているのは、注射が効果出てきた頃だったのだと思います。
下の写真は、4ヶ月経って、かなりリバウンドが落ち着いてきたところです。ここまでくれば、あとは時間の問題です。
番組中で、冒頭の強い皮疹が、途中でやや治まって、新しく入院してきた患者と談笑しているのは、注射が効果出てきた頃だったのだと思います。
下の写真は、4ヶ月経って、かなりリバウンドが落ち着いてきたところです。ここまでくれば、あとは時間の問題です。
半年後。
初診から1年後です。
1年半後、離脱からほぼ1年。
1年半。
もうじき2年。
2年。
2年を越えたところで、悪化がありました。
ここが非常に重要なところで、ステロイド離脱直後からの悪化は、純粋にリバウンド(離脱皮膚炎)であるわけですが、そのあと、一定期間良い状態が保たれてからの悪化は、必ず何か悪化要因への暴露があります。「1997年のドキュメンタリー番組・その3」および、「リバウンドを抑える研究・その3」(最後のほうの「離脱後の過敏性の亢進」)をお読みください。
離脱後に一定期間続く過敏性の亢進自体、ステロイド長期連用の後遺症ですから、ステロイド外用剤の副作用と言ってもいいですが、そういう議論は置いておいて、ここで重要なのは、何か原因・誘因があるはずなのだから、それを探して解除することです。それがないと、一回目の離脱のときのように、「待っていればいずれ治る」というものでは無いかもしれないです。
焦らせるつもりはありません。落ち着いて、科学的態度をもって、問題解決に臨みましょう、ということです(もし、原因がわからなくても、暴露が一過性のもので、気がつかないうちに解除されていれば、待っているだけでも良くなっていくこともあります)。次回、この「悪化要因探し」の話しを書こうと思っています。
阪南病院の佐藤先生が強調される「脱保湿」の考え方も、保湿系外用剤が刺激して悪化因子となっていることがある、と理解すれば納得しやすいです。ただし、「清水さん」の場合は、悪化因子は保湿剤ではありません。離脱後すでに1年以上良好な状態が続いていたからです。外用していた保湿剤が悪化因子なら、離脱後ずっと悪いはずです(もっとも、厳密には、途中から感作されたという可能性が無いわけではありませんが)。「科学的に考えましょう」というのは、そういうことで、決して難しい話ではありません。
それと、ここでの悪化ですが、皮疹型が、前回の「痒疹拡散型」とは異なったタイプであることにも注目ください。これは、タイプ2の「紅斑融合型」になります。前回見られた痒疹結節はまったく見られません。この辺の話しは、皮膚科医のかたには興味深いと思います・・。このタイプの皮疹型は、「ステロイド中止後の再燃が治まった後、数ヶ月を経た後に再燃する場合」に見られることが多いです。
離脱後に一定期間続く過敏性の亢進自体、ステロイド長期連用の後遺症ですから、ステロイド外用剤の副作用と言ってもいいですが、そういう議論は置いておいて、ここで重要なのは、何か原因・誘因があるはずなのだから、それを探して解除することです。それがないと、一回目の離脱のときのように、「待っていればいずれ治る」というものでは無いかもしれないです。
焦らせるつもりはありません。落ち着いて、科学的態度をもって、問題解決に臨みましょう、ということです(もし、原因がわからなくても、暴露が一過性のもので、気がつかないうちに解除されていれば、待っているだけでも良くなっていくこともあります)。次回、この「悪化要因探し」の話しを書こうと思っています。
阪南病院の佐藤先生が強調される「脱保湿」の考え方も、保湿系外用剤が刺激して悪化因子となっていることがある、と理解すれば納得しやすいです。ただし、「清水さん」の場合は、悪化因子は保湿剤ではありません。離脱後すでに1年以上良好な状態が続いていたからです。外用していた保湿剤が悪化因子なら、離脱後ずっと悪いはずです(もっとも、厳密には、途中から感作されたという可能性が無いわけではありませんが)。「科学的に考えましょう」というのは、そういうことで、決して難しい話ではありません。
それと、ここでの悪化ですが、皮疹型が、前回の「痒疹拡散型」とは異なったタイプであることにも注目ください。これは、タイプ2の「紅斑融合型」になります。前回見られた痒疹結節はまったく見られません。この辺の話しは、皮膚科医のかたには興味深いと思います・・。このタイプの皮疹型は、「ステロイド中止後の再燃が治まった後、数ヶ月を経た後に再燃する場合」に見られることが多いです。
彼の場合は、確か転居が悪化要因だったと思います。それで再転居したと思います(記憶なのではっきりしませんが)。
その後は、ゆっくり治まっていきました。今回は注射・外用剤謂含めて、ステロイドは一切使っていません。再転居によって悪化要因から解除されたのでしょう。
その後は、ゆっくり治まっていきました。今回は注射・外用剤謂含めて、ステロイドは一切使っていません。再転居によって悪化要因から解除されたのでしょう。
再燃から半年後。
再燃から1年半。
再燃から2年。
再燃から3年。
ときに少し湿疹はでますが、本来の「アトピー性皮膚炎」に戻ったといっていいと思います。
ここまでくれば、ときどきステロイド外用剤を使って、抑えても、依存に陥らないように気をつければ、使いこなせるかもしれません。しかし、それを利用するかどうかは、まったくもって、患者本人の自由です。医者が決めることではないです。
ときに少し湿疹はでますが、本来の「アトピー性皮膚炎」に戻ったといっていいと思います。
ここまでくれば、ときどきステロイド外用剤を使って、抑えても、依存に陥らないように気をつければ、使いこなせるかもしれません。しかし、それを利用するかどうかは、まったくもって、患者本人の自由です。医者が決めることではないです。
最後の写真の日付は02年になっています。この年の夏、わたしは勤務先を退職しました。なので、その後の彼の経過を知りません・・。
賢明なかたですから、良い状態を維持できていることと信じ、祈ります。
2010.06.05
賢明なかたですから、良い状態を維持できていることと信じ、祈ります。
2010.06.05