アトピー性皮膚炎では表皮のコルチゾール産生がパッチ状に低下しているのかもしれない
しばらくぶりのブログ更新です。このブログはもともと「脱ステロイド関連の文献を読む」という表題で、脱ステロイドを理解するヒントになりそうな文献を掘り起こして紹介することを目的としていましたが、この9年ほどでだいたい掘り尽くした観があります。なかなか新しい情報に巡り合えません。
しかし、更新はゆっくりになっても、私はこの問題から離れる気はまったくありませんので、Pubmedを定期的にチェックしたり、あるいは論文から着想を得たり確認したいと思ったことを、外部研究機関に委託して調べてもらったりしています。幸い今の仕事は順調なので多少の資金には困りません。ここ2~3年はそういった記事が多いです。
今回も後者のネタです。過去に何人かご協力いただいて、皮疹部を生検しておいた標本を、抗コルチゾール抗体で染色してみました。コルチゾール(ヒトが生理的に産生するステロイドホルモン)を直接免疫組織学的に観察するという発想は、なぜかこれまで無かったようなのですが、たまたま試薬会社の抗体リストを見ていて、抗コルチゾール抗体に「免疫組織学的にも使用可」と付記があったので、ひょっとしたらと考えて購入して染色したところ、きれいに染まりました。
下はは副腎を染色したものです。茶色く染まっているのがコルチゾールで、皮質の細胞質に豊富に存在するのがわかります。
しかし、更新はゆっくりになっても、私はこの問題から離れる気はまったくありませんので、Pubmedを定期的にチェックしたり、あるいは論文から着想を得たり確認したいと思ったことを、外部研究機関に委託して調べてもらったりしています。幸い今の仕事は順調なので多少の資金には困りません。ここ2~3年はそういった記事が多いです。
今回も後者のネタです。過去に何人かご協力いただいて、皮疹部を生検しておいた標本を、抗コルチゾール抗体で染色してみました。コルチゾール(ヒトが生理的に産生するステロイドホルモン)を直接免疫組織学的に観察するという発想は、なぜかこれまで無かったようなのですが、たまたま試薬会社の抗体リストを見ていて、抗コルチゾール抗体に「免疫組織学的にも使用可」と付記があったので、ひょっとしたらと考えて購入して染色したところ、きれいに染まりました。
下はは副腎を染色したものです。茶色く染まっているのがコルチゾールで、皮質の細胞質に豊富に存在するのがわかります。
下は皮膚を染色したところ。表皮が確かに染まっており、この症例では毛嚢がとくに強く染まっています。真皮繊維芽細胞も染まっており、これらの細胞がコルチゾール産生能を有するという報告に一致します。
下は私の皮膚です。表皮細胞が均一に染色されています。
ア
トピー性皮膚炎患者ではどうかというと、これはヒアルプロテクトの試用に参加して頂いたケース18番の方(→こちら)で、長くステロイドを使用していない状態ですが、ステ
ロイドの産生は部分的に行われていますが、まったく染まらない部分もあります(まだら状=patchyに茶色く染まっている)。
表皮がステロイドを産生しないとどうなるかというと、ステロイドは表皮の厚さを薄くして分化させる方向に働いていますから、表皮が肥厚します。また、外界からの 刺激やアレルゲンに対する応答を抑えて負の調節を担うとも考えられますから、炎症反応が亢進します。免疫反応も非特異的な過敏反応も強 くなるということです。アトピー性皮膚炎の病態をほぼ説明できます。
下は別の方で、ここ数年ステロイドを連日外用してアトピーを抑えている方です。この方の表皮は厚くは無く、コルチゾールの産生もまだらではありません。
外用ステロイドを使用すると表皮細胞のコルチゾール産生は正のフィードバックがかかって亢進します(→こちら)。その結果、本来はまだらなコルチゾール産生が均一化していると考えられます。そしてこれが外用ステロイドの表皮に対する治療効果なのかもしれません。
下は別の方で、ここ数年ステロイドを連日外用してアトピーを抑えている方です。この方の表皮は厚くは無く、コルチゾールの産生もまだらではありません。
外用ステロイドを使用すると表皮細胞のコルチゾール産生は正のフィードバックがかかって亢進します(→こちら)。その結果、本来はまだらなコルチゾール産生が均一化していると考えられます。そしてこれが外用ステロイドの表皮に対する治療効果なのかもしれません。
ただし、部位を少し変えて生検すると、下のようにコルチゾールの産生の悪い部分もみられるようです。その部は表皮がやや肥厚しています。
注目すべきは、ケース7の方(→こちら)で、皮膚が悪い時期は下のようにコルチゾール産生がまだらだったのですが、
皮膚症状が改善(ステロイドを外用していないので自然軽快と考えられる)してきた時点では、下のようにコルチゾール産生が均一化してきています。
以 上から考えると、あくまで仮説域ではありますが、アトピー性皮膚炎では、表皮細胞のコルチゾール自己産生能が、まだらに低下している部分があって、そのた めに表皮が肥厚し、分化(成熟)不十分となり、また一方で、外界からの刺激やアレルゲンに対する炎症反応を自前のコルチゾールでコントロールできなくなり、皮膚炎を引き 起こしてしまうのではないかと考えられます。
ステロイド外用剤を使用すると、正のフィードバックによって表皮自身のコルチゾール産生が高まりますから、一見正常化します。ただし、これを長く続けると、表皮がステロイド外用に反応しなくなったりするのかもしれません。
表皮がステロイドにより正のフィードバックを受けるということは、ある表皮細胞がコルチゾールを産生すると、それにつられて近傍の表皮細胞もコルチゾールを 産生するという働きを意味します。表皮がステロイドに反応しなくなれば、この近傍の細胞の反応も弱くなりますから、炎症反応はさらに強く出 るでしょう。これが「リバウンド」と解釈できます。
また、自然治癒というものが、どうして起きるかと言うと、上のケース7の方 のように表皮がまだらではなく均一にコルチゾールを産生するようになるということだと考えられます。いわゆる脱保湿というのは、表皮のコルチゾール産生を 増やす効果がありますが(→こちら)、それはコルチゾール産生の均一化に働いているのかもしれません。UVB照射も表皮コルチゾールを増加させることが 判っていますから(→こちら)、アトピー性皮膚炎の治療に用いられるというのも納得できます。
以上のように、今回の仮説はいろいろな現象をうまく説明してくれるので、有望だと思うのですが、仮説は仮説であって、実際に染色した症例数も少ないし、さらなる検証が必要です。色々なタイプの皮疹で確認しなければなりません。
そ れで、この記事を読んでいただいた患者の皆様にお願いしたいのですが、皮疹部の皮膚の生検にご協力お願いできないでしょうか?お礼に、ヒアルプロテクト30ml一本とク ロフィブラート軟膏約50g(通常サイズの1/10ですが試用にはちょうどいいと思います)を差し上げます。生検というのは局所麻酔をした上で直径 1.5mmの小片を専用の器具で採取することで、痕は数か月の経過でほとんど判らなくなります(私は自分の腕から20回以上採取しています。見た目まった く痕は判りません)。
ご協力いただける方は、TEL 052-264-0213までお電話ください。よろしくお願いいたします。
ステロイド外用剤を使用すると、正のフィードバックによって表皮自身のコルチゾール産生が高まりますから、一見正常化します。ただし、これを長く続けると、表皮がステロイド外用に反応しなくなったりするのかもしれません。
表皮がステロイドにより正のフィードバックを受けるということは、ある表皮細胞がコルチゾールを産生すると、それにつられて近傍の表皮細胞もコルチゾールを 産生するという働きを意味します。表皮がステロイドに反応しなくなれば、この近傍の細胞の反応も弱くなりますから、炎症反応はさらに強く出 るでしょう。これが「リバウンド」と解釈できます。
また、自然治癒というものが、どうして起きるかと言うと、上のケース7の方 のように表皮がまだらではなく均一にコルチゾールを産生するようになるということだと考えられます。いわゆる脱保湿というのは、表皮のコルチゾール産生を 増やす効果がありますが(→こちら)、それはコルチゾール産生の均一化に働いているのかもしれません。UVB照射も表皮コルチゾールを増加させることが 判っていますから(→こちら)、アトピー性皮膚炎の治療に用いられるというのも納得できます。
以上のように、今回の仮説はいろいろな現象をうまく説明してくれるので、有望だと思うのですが、仮説は仮説であって、実際に染色した症例数も少ないし、さらなる検証が必要です。色々なタイプの皮疹で確認しなければなりません。
そ れで、この記事を読んでいただいた患者の皆様にお願いしたいのですが、皮疹部の皮膚の生検にご協力お願いできないでしょうか?お礼に、ヒアルプロテクト30ml一本とク ロフィブラート軟膏約50g(通常サイズの1/10ですが試用にはちょうどいいと思います)を差し上げます。生検というのは局所麻酔をした上で直径 1.5mmの小片を専用の器具で採取することで、痕は数か月の経過でほとんど判らなくなります(私は自分の腕から20回以上採取しています。見た目まった く痕は判りません)。
ご協力いただける方は、TEL 052-264-0213までお電話ください。よろしくお願いいたします。
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