ネオーラル(免疫抑制剤)によるアトピー性皮膚炎治療について(1)
ノバルティス・ファーマ社が提供している「アトピー性皮膚炎ドットコム」というサイトがあります。
http://www.a-to-pi.com/experience/index.html
ネオーラルという免疫抑制剤を販売している製薬会社です。2008年から16才以上のアトピー性皮膚炎に保険適応となりました。ステロイド外用剤でコントロールできない、すなわち「効かない」患者に対して、用いられる内服薬です。
http://www.a-to-pi.com/experience/index.html
ネオーラルという免疫抑制剤を販売している製薬会社です。2008年から16才以上のアトピー性皮膚炎に保険適応となりました。ステロイド外用剤でコントロールできない、すなわち「効かない」患者に対して、用いられる内服薬です。
対象となる患者の典型的経過として「アトピー体験記」が記されています。Aさん~Dさんまで4人が登場する予定のようですが、Aさん以外はまだ「準備中」です。
なので、Aさんの経過を見てみます。
なので、Aさんの経過を見てみます。
という方だそうです。
皮膚炎に関しては、成人発症の患者のようです。ということは、フィラグリンとか、表皮バリア系の遺伝の関係は薄そうですね?
病院でステロイド外用剤の処方を受け始めました。
いくつか間違った記述があります。
1)脱ステロイドは「治療法」ではありません。ステロイド依存や抵抗性という副作用からの脱出を言います。
2)言葉の問題ですが、この方が行ったのは、「脱ステロイド」というよりも「ステロイド忌避」と思われます(→こちら)。依存に陥ってどうしようもなくなった状態であれば、このように入院してステロイドを外用してすぐによくなるはずがないです。多少治まっても、減量すればすぐ再燃します。経過からは、就職に関連した何らかの悪化要因への暴露が疑われ、それを解除する作業が大切です。もともとアトピーじゃなかったわけだし。
1)脱ステロイドは「治療法」ではありません。ステロイド依存や抵抗性という副作用からの脱出を言います。
2)言葉の問題ですが、この方が行ったのは、「脱ステロイド」というよりも「ステロイド忌避」と思われます(→こちら)。依存に陥ってどうしようもなくなった状態であれば、このように入院してステロイドを外用してすぐによくなるはずがないです。多少治まっても、減量すればすぐ再燃します。経過からは、就職に関連した何らかの悪化要因への暴露が疑われ、それを解除する作業が大切です。もともとアトピーじゃなかったわけだし。
正しくステロイドを塗ることで、皮疹が治まるならば、それは依存や抵抗性ではないです。
正しく塗っても治まらない患者がいるから、ネオーラルが必要だ、ってことになったんでしょ?
正しく塗っても治まらない患者がいるから、ネオーラルが必要だ、ってことになったんでしょ?
このお医者さん(アドバイザー?)は「悪化要因を探しましょう」とは決して言わないみたいですね。転勤後悪化なら、居住環境かもしれないじゃないですか?悪化要因に気がつくチャンスかもしれないじゃないですか?もうちょっと気の利いたこと言えんかなあ。「標準治療」でも悪化要因排除は3本柱でしょ?
ぼかした書き方ですが、ステロイドを正しく塗っても、コントロールできなくなってきた、ってことでいいですね?でなきゃ、ネオーラル内服の話になりませんから。
ところで、ネオーラル内服を利用して、依存からの離脱(脱ステロイド)を行うことは。理論的には可能だと思います。ステロイド外用剤による表皮バリアの慢性的破壊が、自然回復するまでの間、ネオーラルで炎症を抑えるというのは、理にかなっているからです。
ただし、
1)その間、ステロイド外用剤は中止・減量していかなければならない。(あたりまえですが、ステロイド依存を認めない立場からはここをどう説明・納得させるのだろう?)
2)ネオーラルは、血中濃度が高い領域では効く(炎症を抑える)が、低濃度になると、アトピーの炎症を悪化させる(IgE産生を亢進させる)。だから、血中濃度が高すぎると非可逆的な腎毒性がある。一気に血中濃度を上げなければならないし、切るときは漸減してはいけない(→こちらとこちら)。
90年代に、シクロスポリンが乾癬に対して保険適応されて以降、これを利用して保険適応外治療で、アトピー性皮膚炎の脱ステロイドを行おう、という試みは実はあちこちでなされていました。しかし「一度投与すると止められなくなる」という理由で廃れました。今、振り返ってみると、「血中濃度が高い領域では効く(炎症を抑える)が、低濃度になると、アトピーの炎症を悪化させる」という性質が関係していたのかもしれません。止めようと漸減すると、血中濃度が低くなり、炎症を悪化させ、あたかも「リバウンド」様になってしまっていたのかもしれません。
もし、そうなら、この点を明確に意識して血中濃度をしっかり管理すれば、脱ステロイドに使えるかもしれません。
しかし、そのためには、
3)ステロイド依存や脱ステロイドの経過をよく知っている医師の下で、はっきりと脱ステロイド目的として使用するべき。でなければ、患者が混乱して、うまくいかないだろう。
と思われます。
残念ながら、現在、そういうかた(ネオーラルを利用して、脱ステロイドをすすめようという医師)を、私は知りません。
ステロイドが効かなくなった患者に、試行錯誤でネオーラルを使ってアトピー治療を行う若手の皮膚科医が、ネットで調べて、この記事に辿り着いてくれるといいんですけどね・・。
2011.12.01
ただし、
1)その間、ステロイド外用剤は中止・減量していかなければならない。(あたりまえですが、ステロイド依存を認めない立場からはここをどう説明・納得させるのだろう?)
2)ネオーラルは、血中濃度が高い領域では効く(炎症を抑える)が、低濃度になると、アトピーの炎症を悪化させる(IgE産生を亢進させる)。だから、血中濃度が高すぎると非可逆的な腎毒性がある。一気に血中濃度を上げなければならないし、切るときは漸減してはいけない(→こちらとこちら)。
90年代に、シクロスポリンが乾癬に対して保険適応されて以降、これを利用して保険適応外治療で、アトピー性皮膚炎の脱ステロイドを行おう、という試みは実はあちこちでなされていました。しかし「一度投与すると止められなくなる」という理由で廃れました。今、振り返ってみると、「血中濃度が高い領域では効く(炎症を抑える)が、低濃度になると、アトピーの炎症を悪化させる」という性質が関係していたのかもしれません。止めようと漸減すると、血中濃度が低くなり、炎症を悪化させ、あたかも「リバウンド」様になってしまっていたのかもしれません。
もし、そうなら、この点を明確に意識して血中濃度をしっかり管理すれば、脱ステロイドに使えるかもしれません。
しかし、そのためには、
3)ステロイド依存や脱ステロイドの経過をよく知っている医師の下で、はっきりと脱ステロイド目的として使用するべき。でなければ、患者が混乱して、うまくいかないだろう。
と思われます。
残念ながら、現在、そういうかた(ネオーラルを利用して、脱ステロイドをすすめようという医師)を、私は知りません。
ステロイドが効かなくなった患者に、試行錯誤でネオーラルを使ってアトピー治療を行う若手の皮膚科医が、ネットで調べて、この記事に辿り着いてくれるといいんですけどね・・。
2011.12.01