非皮膚科医に対する「標準治療」指導が強化されるらしい
=====(ここから引用)=====
アレルギー疾患対策の均てん化に関する研究班(研究代表者・国立成育医療研究センター・斎藤博久)が2014年2~3月に行った医師・患者双方の大規模全国調査の結果を公表した。それによると、アレルギー科と標榜していてもアレルギー学会専門医でない場合がかなりあり、非専門医でも専門医より多数の患者を診ているケースがあることが分かった。また、「アナフィラキシー経験がある患者に対し、5割しか「エピペン処方」しない」「2~5割が、外用剤を「できるだけ薄くのばす」指導をする」「2割弱は、喘息発作が月1回以上あっても発作予防薬を使わない」など、ガイドラインに外れた治療をする医師が珍しくない実態が明らかになった。ガイドラインと乖離した治療は非専門医だけでなく専門医にも見られた。
―――――(中略)―――――
3.ガイドラインから外れた治療をしている医師がいる
診療ガイドラインの最新版の所持率は、小児気管支喘息が最も高く47%で、食物アレルギーが最も低く38%であった。専門医の方が非専門医よりも所持率が高く、理解度も高い傾向にあった。ところが実際の診療内容のなかにはガイドラインに外れたものも珍しくなく、かつそのような治療をする医師には専門医も含まれていた。
ガイドラインに外れた診療内容の代表例は、以下の通り:
【アトピー性皮膚炎】
1. いまだにステロイド「使いたくない」患者が多数派
2. 外用剤を「できるだけ薄くのばす」方がよいとの誤解が多い
3. 1割が「入浴時の石けん不使用」
―――――(中略)―――――
現在のアレルギー診療の水準は、ほとんどのアレルギー疾患はガイドラインに準拠した治療を徹底すれば、症状はほとんどなくなり、健常者とほぼ同じ程度の生活ができるまでにコントロールが可能な時代になっている。患者が安心してアレルギー科標榜医にかかれるようにするには、ガイドラインに準拠した水準の治療が受けられるアレルギー科標榜医の割合を限りなく増やす必要がある。
日本アレルギー学会は、非学会員や非専門医に対しても門戸を開き、学会への参加、専門医資格の取得に関する便宜を図り、診療内容の向上に役立つプログラムを提供する考えである。また、専門医に対しては、急速な学問の進歩や標準治療の変化についていけるように再教育プログラムの充実を図る予定である。
その手始めに、第1回総合アレルギー講習会を今年12月に開催する。また、学会運営を大会長主導から学会主導に変え、毎年一貫した教育プログラムが実施され医学医療の進歩に資するように計画している。
=====(ここまで引用)=====
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000327.000000347.html
「アレルギー疾患対策の均てん化に関する研究」というのは、厚労省の研究事業として平成25年度に2300万円の予算がついています(→こちら)。どういう「研究」かと言うと、こちら(→ここ)のサイトにまとめられているように、医師に対する郵送アンケートと患者に対するインターネット調査であったようです。
突っ込み所は多く、どこからお話すればよいのやら悩ましいくらいですが、簡単にまとめてみます。関連するブログ記事を引用してありますので御参照ください。
1 ガイドライン診療はEBM(エビデンスに基づく医療)ではない(→こちら)。例えば、入浴時の石鹸使用がアトピー性皮膚炎発症のリスクかもしれないことは先回記したように指摘されており、アメリカでは近日はじまる大規模調査に取り入れられる予定です(→こちら)。すなわち、石鹸使用がガイドラインに記されているからというだけの理由で、石鹸を推奨しない臨床指導は間違っているというのは、まさにガイドライン診療とEBMとを混同しています。
2 アメリカ皮膚科学会のガイドラインは自らを「標準治療」と看做すべきではないことを警告している(→こちら)。さらには、ガイドラインの冒頭に免責宣言が付されて、ガイドライン作成者たちの責任は回避されています。将来ガイドラインの内容が医学的に間違っていたことが判明したときに、日本のガイドライン推進者たちは、いったいどのように責任を取るつもりなのだろうか?(→こちら)
3 医療を「標準治療」化することは、それによって対応できない少数患者を無視することである(→こちら)。たとえば、10人のうち9人がよくなる治療があったとして、この治療を「ほとんどのアレルギー疾患はガイドラインに準拠した治療を徹底すれば、症状はほとんどなくなり・・」のように社会に情報発信することは、残る1人の患者を孤立させ医療を受ける機会をなくすことにつながります。なぜなら、そのような少数派の患者を引き受けて診ている医師は「標準治療を行っていない」という理由で排斥されるということだから。
もしもこのような論が通るなら、「国民のほとんどはアレルギー疾患を有していない。従ってアレルギー専門医など必要ない」という論だって通るでしょう。患者の皆さんは「患者である」というだけで既に自分は少数派なのだということを自覚してほしいと思います。医療とは、少数派に徹底的に配慮し続けることにほかなりません。
4 学会が定めたガイドラインの普及に厚労省の研究費が使われるというのは、研究費の使われ方としておかしい(→こちら)。
真の臨床研究と言うのは、10人のうち9人が既存の治療でよくなるが1人はよくならない、という場合に、その1人がどう治療されるべきか?を考えるものであるべきです。10人のうち9人がよくなるのだから、1人は存在しないことにして、その治療ですべてが解決するかのように啓蒙しよう、というのは、どう言葉を取り繕おうがおかしい。先日、アトピックと言う患者団体が、ステロイド治療を望まない署名を日本皮膚科学会に提出しました(→こちら)。こういった活動もまた、「まだまだガイドラインに従わない患者が多いので、普及活動を推進していかなければならない」という発想に転換され、厚労省の研究費がそのために使われていくのでしょうか。嘆かわしいことです。
アレルギー疾患対策の均てん化に関する研究班(研究代表者・国立成育医療研究センター・斎藤博久)が2014年2~3月に行った医師・患者双方の大規模全国調査の結果を公表した。それによると、アレルギー科と標榜していてもアレルギー学会専門医でない場合がかなりあり、非専門医でも専門医より多数の患者を診ているケースがあることが分かった。また、「アナフィラキシー経験がある患者に対し、5割しか「エピペン処方」しない」「2~5割が、外用剤を「できるだけ薄くのばす」指導をする」「2割弱は、喘息発作が月1回以上あっても発作予防薬を使わない」など、ガイドラインに外れた治療をする医師が珍しくない実態が明らかになった。ガイドラインと乖離した治療は非専門医だけでなく専門医にも見られた。
―――――(中略)―――――
3.ガイドラインから外れた治療をしている医師がいる
診療ガイドラインの最新版の所持率は、小児気管支喘息が最も高く47%で、食物アレルギーが最も低く38%であった。専門医の方が非専門医よりも所持率が高く、理解度も高い傾向にあった。ところが実際の診療内容のなかにはガイドラインに外れたものも珍しくなく、かつそのような治療をする医師には専門医も含まれていた。
ガイドラインに外れた診療内容の代表例は、以下の通り:
【アトピー性皮膚炎】
1. いまだにステロイド「使いたくない」患者が多数派
2. 外用剤を「できるだけ薄くのばす」方がよいとの誤解が多い
3. 1割が「入浴時の石けん不使用」
―――――(中略)―――――
現在のアレルギー診療の水準は、ほとんどのアレルギー疾患はガイドラインに準拠した治療を徹底すれば、症状はほとんどなくなり、健常者とほぼ同じ程度の生活ができるまでにコントロールが可能な時代になっている。患者が安心してアレルギー科標榜医にかかれるようにするには、ガイドラインに準拠した水準の治療が受けられるアレルギー科標榜医の割合を限りなく増やす必要がある。
日本アレルギー学会は、非学会員や非専門医に対しても門戸を開き、学会への参加、専門医資格の取得に関する便宜を図り、診療内容の向上に役立つプログラムを提供する考えである。また、専門医に対しては、急速な学問の進歩や標準治療の変化についていけるように再教育プログラムの充実を図る予定である。
その手始めに、第1回総合アレルギー講習会を今年12月に開催する。また、学会運営を大会長主導から学会主導に変え、毎年一貫した教育プログラムが実施され医学医療の進歩に資するように計画している。
=====(ここまで引用)=====
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000327.000000347.html
「アレルギー疾患対策の均てん化に関する研究」というのは、厚労省の研究事業として平成25年度に2300万円の予算がついています(→こちら)。どういう「研究」かと言うと、こちら(→ここ)のサイトにまとめられているように、医師に対する郵送アンケートと患者に対するインターネット調査であったようです。
突っ込み所は多く、どこからお話すればよいのやら悩ましいくらいですが、簡単にまとめてみます。関連するブログ記事を引用してありますので御参照ください。
1 ガイドライン診療はEBM(エビデンスに基づく医療)ではない(→こちら)。例えば、入浴時の石鹸使用がアトピー性皮膚炎発症のリスクかもしれないことは先回記したように指摘されており、アメリカでは近日はじまる大規模調査に取り入れられる予定です(→こちら)。すなわち、石鹸使用がガイドラインに記されているからというだけの理由で、石鹸を推奨しない臨床指導は間違っているというのは、まさにガイドライン診療とEBMとを混同しています。
2 アメリカ皮膚科学会のガイドラインは自らを「標準治療」と看做すべきではないことを警告している(→こちら)。さらには、ガイドラインの冒頭に免責宣言が付されて、ガイドライン作成者たちの責任は回避されています。将来ガイドラインの内容が医学的に間違っていたことが判明したときに、日本のガイドライン推進者たちは、いったいどのように責任を取るつもりなのだろうか?(→こちら)
3 医療を「標準治療」化することは、それによって対応できない少数患者を無視することである(→こちら)。たとえば、10人のうち9人がよくなる治療があったとして、この治療を「ほとんどのアレルギー疾患はガイドラインに準拠した治療を徹底すれば、症状はほとんどなくなり・・」のように社会に情報発信することは、残る1人の患者を孤立させ医療を受ける機会をなくすことにつながります。なぜなら、そのような少数派の患者を引き受けて診ている医師は「標準治療を行っていない」という理由で排斥されるということだから。
もしもこのような論が通るなら、「国民のほとんどはアレルギー疾患を有していない。従ってアレルギー専門医など必要ない」という論だって通るでしょう。患者の皆さんは「患者である」というだけで既に自分は少数派なのだということを自覚してほしいと思います。医療とは、少数派に徹底的に配慮し続けることにほかなりません。
4 学会が定めたガイドラインの普及に厚労省の研究費が使われるというのは、研究費の使われ方としておかしい(→こちら)。
真の臨床研究と言うのは、10人のうち9人が既存の治療でよくなるが1人はよくならない、という場合に、その1人がどう治療されるべきか?を考えるものであるべきです。10人のうち9人がよくなるのだから、1人は存在しないことにして、その治療ですべてが解決するかのように啓蒙しよう、というのは、どう言葉を取り繕おうがおかしい。先日、アトピックと言う患者団体が、ステロイド治療を望まない署名を日本皮膚科学会に提出しました(→こちら)。こういった活動もまた、「まだまだガイドラインに従わない患者が多いので、普及活動を推進していかなければならない」という発想に転換され、厚労省の研究費がそのために使われていくのでしょうか。嘆かわしいことです。
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